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大阪府知事選挙告示を前に

 大阪府知事選挙は明日(1月10日)告示されるが、その行方は混沌としている。
 現在のところ立候補を表明しているのは、弁護士の梅田章二(うめだ・しょうじ)氏、元大阪大学教授の熊谷貞俊(くまがい・さだとし)氏、タレントの橋下徹(はしもと・とおる)氏の3人(正式表明順)だが、ほかにも立候補があるとの報道もあり、選挙戦の見通しは不透明である。
 当初、橋下徹氏は自民・公明両党の推薦を求めていたが、結局自民党は大阪府連の推薦、公明党は大阪府本部の支持にとどまり、両党本部は推薦・支持を見送った。毎日新聞(2008/01/08 19:46)によれば、自民党の選対幹部が「推薦しない方が、無党派層の取り込みに有利だ」と述べたと言うが、実際は与党内に橋下氏の過去の暴言や狂信的な体質へのアレルギーがあることや、大阪の財界主流が民主・国民新両党推薦の熊谷貞俊氏に親近感を示すなど、足並みが崩れているからにほかならない。特に公明党は橋下氏の選対に人員を提供していないとも伝えられ、支持母体の創価学会は事実上の自主投票で臨むようだ。

 昨日(1月8日)、関西経済同友会主催の会員向け政策討論会と市民団体主催の公開討論会が開かれたが、相当激しい応酬が繰り広げられたようだ。
 産経新聞(2008/01/08 22:58)は「テレビのコメンテーターとして活躍してきた橋下氏のペースで、ユーモアを交えて会場の笑いを誘った」と、読売新聞(2008/01/09朝刊)は「コメンテーターとして活躍してきた橋下氏が攻め入り、熊谷、梅田両氏が負けじと対抗する展開が続いた」と、「討論慣れ」している橋下氏が場をリードしたように報じているが、一方で関西経済同友会の討論会では、与党支持のはずの財界人から橋下氏へのツッコミが相次いだという。特に春次メディカルグループ理事長の春次賢太郎氏は「『2万%出ない』はほかに表現方法があったはず。子どもがマネしますよ」と述べたという(日刊スポーツ2008/01/09)。出馬を全面否定していたにもかかわらず、人々を欺いて出馬を強行したことへの反発が未だ根強いことが窺われる。
 各報道を読む限り、どの候補も他の候補の弱点を突くのに終始し、冷静な議論は行えなかったようで、テレビやスポーツ紙のようなメディアが選挙戦をパフォーマンス合戦に煽っている現状の悪影響が出ているといえよう。言うまでもないことだが、選挙において重視しなければならないのは政策であって、それは机上のディベートからは決してわからない。

 今日の日本経済新聞の関西電子版に、関西経済同友会の公開質問状に対する3人の候補者の回答が掲載されており、各候補者の公約を知る上で非常に便利である。表層的な「舌戦」よりも文字の方がわかりやすく、確実である。
 大阪府知事選公開討論会、産業振興策で3候補火花|日経ネット関西版
 http://www.nikkei.co.jp/kansai/news/news001930.html

 やはりというか、何というか、橋下氏の「投げやり」ぶりが際立っている。
 財政再建に関しては「出資法人を見直し、府有施設も市町村への移譲や売却を進める」、道州制に関しては「住民サービスにかかわる事業は市町村に移譲。府は各市町村に対する投資会社化する」、環境については「市町村レベルで対応してもらい、調整が必要な問題に府が関与する」ととにかく市町村への「丸投げ」を主張する。市町村の財政状況はほとんどどこも苦しく、こんな「丸投げ」を受け入れる余力など全くない。大阪府庁を小さくさえすればすべて解決という非常に安直な「小さな政府」論の地方版であり、市町村の自治を破壊するものだ。
 もっとひどいのは産業政策で、「行政に産業振興の立案能力はない」「民間企業にがんばってもらうしかない」と行政の責任を放棄してこれまた企業に「丸投げ」、関西国際空港の活性化については「伊丹空港とのすみ分けを政策的に行うしかないが、ほぼ不可能」と全くやる気なしである。某厚生労働大臣のように出来もしないことを口約束するよりはましという見方もありうるが、少なくともこれでは財界の支持は得られまい。

 逆に熊谷氏は財界を意識している。表現が抽象的なのも特徴だ。
 産業政策で「産学提携を中心としたネットワークつくり」を提起しているのが、いかにもアカデミズム出身らしいが、後は現状維持的という印象だ。財政再建については「業務の効率化と、施策の選択と集中で歳出削減を徹底する」と典型的な歳出削減によるコストカット論を提唱。関空問題では「関空と阪神港、彩都などを結ぶ物流ネットワークを構築。経済損失の原因の交通渋滞を緩和する」、環境については「府民と問題意識を共有し、事業所や家庭で温暖化ガス削減につながる取り組みを支援する」といかにも抽象的である。
 目立つのは道州制に関する項目で、熊谷氏は「国からの大幅な権限・財源移譲を前提に、議論したい」と道州制推進の立場を鮮明にしている。政策討論会では「府と市の合併に道筋を付けることが大事。関西州として一丸となるなら最後の府知事でいい」とまで言ったという(読売新聞、前記記事)。
 公開質問状への回答にはないが、「府民所得を50万円以上引き上げる」という公約も実現性への疑問はあるが異色と言えよう。

 梅田氏は「貧困と格差」の是正を明言している唯一の候補で、公共性重視の視点が際立っている。
 財政問題では「国に自治体への財源確保を強く求めるとともに、府政の無駄を厳しくチェックする」と一見すると熊谷氏の歳出削減論と通じるが、ここで言う「無駄」とは大企業への補助金やダム建設のような大型開発事業への支出であって、単なる効率化論ではない。道州制にも反対している。産業政策では「大型店の規制」「中小企業向け融資制度を拡充」と地場の中小企業の保護を強く訴えている。関空の2期事業の見直しも唱えている。財界の支持を意識している熊谷氏とは一線を画している。
 一方、橋下氏との決定的相違は教育問題で、橋下氏が「府立高校の学区制の撤廃」やら「低料金の民間塾」やら安倍晋三内閣ばりの「民営化・競争」万能論を唱えるのに対し、梅田氏は「公立学校の教育は民営化・民間委託はしない」「『格差と貧困』解消や教育条件の整備が必要」と公教育を行政が責任を持って維持することを明言している。
 梅田氏の問題は政策の中身よりも、今回の知事選に国政の対立軸が持ち込まれ、与党(自公)対野党(民主)の枠組みで埋没していることにあるだろう。政策の対立軸だけ見れば、むしろ梅田氏と熊谷氏が左右対照的で、橋下氏は政策云々以前の与太話レベルである。

 以上、大阪府知事選の立候補予定者の公約を比較検討してみたが、公職選挙法とブログの利用規約に従い、ここでは特定の候補者への投票を呼びかけるようなことはしない。私は大阪府民ではないので投票権がないということもある。投票権のある人には是非とも熟慮して選挙に臨んで欲しい。
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by mahounofuefuki | 2008-01-09 15:52

「はてなアンテナ」公開しました

 はてなのIDをもっているのに、はてなリング-歴史修正主義に反対しますに参加している以外、さっぱり他のサービスを利用していなかったのだが、今年からはてなアンテナを利用している。

 当ブログには常設の「お気に入り」とか「ブックマーク」といったリンク集がないので、その代替として数日前から公開し、サイドバーにもリンクした(このブログもアンテナに入れているのはご愛敬)。一応、改めてお知らせします。
 はてなアンテナ-mahounofuefukiのアンテナ
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by mahounofuefuki | 2008-01-08 23:08

労働者派遣法改正問題の行方

 昨年の参院選における与党大敗の直接的な影響は、既定路線だったいくつかの貧困拡大策が先送りされたことである。消費税引き上げも、生活保護基準引き下げも、参院選で与党が勝利していたら間違いなく今年粛々と実施されていただろう。もちろんあくまでも「先送り」であって、新年度の予算編成は消費税増税込みであるし、生活保護も既定通り母子加算は廃止され、依然として政府の社会保障つぶしは続いている。ただ少なくとも全面的な政策転換の機会が残っているわけで、それは今後の闘いにかかっているとも言える。

 そんな先送りされたものの1つに労働者派遣法の改正がある。厚生労働省の当初の思惑では、昨年内に労働政策審議会の議論をまとめて今年の通常国会に改正案を提出する手筈であったが、労政審の議論はまとまらず、改正案提出は先送りになった。12月25日に行われた労政審職業安定分科会の労働力需給制度部会は、労使間の意見対立を残したまま中間報告を提出し、学識経験者による研究会での検討を求めた。少なくとも使用者側が要求する派遣労働の「完全自由化」を盛り込んだ「改正」案が阻止されたことは評価するべきである。
 昨年は人材派遣大手のフルキャストやグッドウィルで、派遣労働者のユニオンなどの告発と闘争が一定の実を結び、偽装請負や不透明なピンハネが社会問題として大きく報道され、ついに業務停止に追い込んだ。特に日雇い派遣などの登録型派遣労働が「ワーキングプア」の温床となっている実態が広く認知されことも、厚労省や労政審に対するプレッシャーになっただろう。

 労政審の資料を読むと、労働者派遣法の「改正」の方向性をめぐって労使間は真っ向から対立している。
 不安定な登録型派遣の是非については、労働側が原則禁止を求めたのに対し、使用側は「一時的な対応要員として」活用したいと明言し、相変わらず雇用調整弁としての役割を担わせようとしている。日雇い派遣についても、使用者側は「派遣先の要請に応じて迅速かつ円滑に一定量の労働力を提供できる」と労働者の生活を無視した暴論を貫いた。
 企業による派遣社員への直接雇用申込義務については、労働側が正社員登用の門戸を維持するために継続が必要としているのに対し、使用側は派遣期間制限直前の「雇い止め」の横行を口実に撤廃を要求している。現行法では禁止されているものの実際は既成事実化している派遣先による事前面接は、労働側が規制の強化を訴えたのに対し、使用者側は全面解禁を唱えた。
 社会保険の加入問題でも派遣元のみならず、派遣先の連帯責任を要求する労働側に対し、使用側は法制化に反対している。正社員と派遣社員の均等・均衡待遇についても、使用側は「均等・均衡は、どこを基準にどうやって比べる必要があるのか、よくわからない」と欧州では当たり前となっている同一労働・同一賃金の原則すら認めようとしない。
 何よりも決定的な対立点は、派遣業種の全面解禁問題である。経営側は「派遣労働者の業務・職種選択の自由を担保するために」という理由で、現行法では禁止されている建設業や港湾運送業や医療関係などでの派遣解禁を要求した。労働者派遣法は1985年の制定以来、20度にもわたる「改正」を重ねて、その都度派遣適用業種を拡大してきた。元々は専門職だけだったのが、特に1999年の「改正」でほぼ「自由化」され、2004年には製造業も解禁となり、雇用の在り方を激変させた。経営側は次の「改正」で派遣労働の完全全面解禁を目論んでいる。実際には最後に残った禁止業種でも偽装請負という形で実質的な派遣労働が横行しており、使用者側の要求は偽装請負の公認を求めているようなものである。

 現在の貧困と格差の原因は、ひとえに金持ち優遇税制と非正規雇用の増大にある。貧困と格差の縮小のためには非正規雇用を正規雇用へ転換していくことが何よりも必要である。そのためには労働者派遣法の抜本的な全面改正が必要で、財界が望む派遣労働の完全解禁などもってのほかである。
 昨年10月に野党各党の参院議員も参加して行われた「格差是正と労働者派遣法改正をめざす国会内シンポジウム」では、実行委員会が7点にまとめた抜本的改正案を提示している。
 「派遣法は改正を」国会内シンポで訴え-JANJAN
 また、12月には共産党がやはり労働者派遣法の全面改正要綱を発表している。
 労働者派遣に新しいルールを確立し、派遣労働者の正社員化と均等待遇を実現します/日本共産党の労働者派遣法改正要求-しんぶん赤旗
 特に共産党の改正案は、①労働者派遣法を「派遣労働者保護法」とする。②派遣労働を臨時的、一時的業務に制限した上で常用型を原則とし、登録型雇用を厳しく規制する。③日雇い派遣を禁止する。④派遣期間を1年限定とする。⑤1年超の派遣は派遣先が直接雇用したとみなし、正社員とする。⑥派遣労働者への差別を禁止する。⑦派遣元による手数料の上限を規制する、というように派遣労働の現状の改良に必要な要素がほぼ揃っており、野党はこれをたたき台として政府よりも先に労働者派遣法改正案を提出して、審議の主導権を握るべきである。

 読売新聞(2007/12/29 11:25)によれば、昨年末に厚労省が発表した2006年度の派遣労働状況は、派遣労働者数が延べ321万人に達し、過去最高を記録する一方、派遣先が派遣元に支払う派遣料金のうち労働者の賃金の割合は、特定労働者(派遣会社の正社員)派遣で61.7%、一般労働者(登録型など)派遣で67.9%と、実にマージン率が3~4割にもなっている。
 すでに派遣労働者が1つの階層を形成し、それが固定化しており、少しでも早い労働者派遣法の抜本的な改正が求められる。この問題の行方は今後の日本社会の進路を決定づける試金石となるだろう。

【関連リンク】
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律-法庫
厚生労働省:第108回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会資料
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by mahounofuefuki | 2008-01-07 22:58

「日中歴史共同研究」について~委員人選の偏り

 日本・中国両政府の合意によって設立された「日中歴史共同研究」の第3回会合が1月5~6日に北京で開かれ、今年7月までに東京で開催する最終会合で研究成果をまとめた報告書を作成することが決まったという(毎日新聞 2008/01/06 19:39、時事通信2008/01/06 18:16など)。
 この「日中歴史共同研究」は2006年10月の日中首脳会談で立ち上げが決まったものだが、この会談は小泉純一郎元首相の靖国神社参拝強行で冷却化した日中関係打開のために、安倍晋三前首相が就任直後に中国を訪問して実現したもので、その経過からも非常に政治的なプロジェクトである。歴史認識をめぐっては日本対中国という国家間の対立よりも、両国の国内における対立の方が深刻であり、そうした実態を軽視して国家間の外交レベルの問題にすり替えるのはいただけない。しかも、2002年に始まり現在も続く「日韓歴史共同研究委員会」と同様、委員の人選が偏向しており、政府にははじめから合意する意思がないのではないかという疑念が拭えないのである。

 「日中歴史共同研究」では両国の各10人の専門家が委員となっているが、近現代史分科会には文学部系統の歴史学専攻研究者が1人もいない。東京大学教授の北岡伸一氏は近代政治外交史の第一人者で『日本陸軍と大陸政策』という名著があるが、近年は自民党タカ派のブレーンであり、国連次席大使も務めるなど、非常に政治的な人物である。筑波大学副学長の波多野澄雄氏はアジア・太平洋戦争期の外交史の研究者だが、昨年の当ブログで指摘したように、教科用図書検定調査審議会の委員で、沖縄戦の「集団自決」に関して文部科学省の言いなりになった人である。大阪大学教授の坂元一哉氏は戦後の日米関係史の研究者だが、安倍晋三が集団的自衛権行使のお墨付きをもらうために作った諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」のメンバーで、日米同盟を讃美する論調を繰り返している親米タカ派である。
 あとの2人、慶応義塾大学教授の小島朋之氏と防衛省防衛研究所戦史部第1戦史研究室長の庄司潤一郎氏については、私はその著書・論文とも読んだことがないので明言はできないが、小島氏はプロフィールを見る限りでは現代中国政治の研究者で、どうも歴史学者ではないようで、庄司氏は防衛研に勤務しているものの、業績の書題から判断すると戦史というよりも国際関係史の研究者のようである。
 外務省発表の第2回会合の合意内容によれば、近現代史分科会が扱う時期は1840年のアヘン戦争から現在にいたる長期にわたり、「日中における歴史認識、歴史教育等について」というテーマも設定されている。しかし、この委員では現代外交史に専攻が偏っており、たとえば日清戦争や日露戦争などの専門家がいないし、ましてや歴史教育論の研究業績など全くない。共同通信(2008/01/06 17:15)によれば、南京大虐殺についても議論したようだが、このメンバーはいずれも南京事件研究の素人で、まともな議論ができたとはとうてい考えられない。主要テーマごとに専攻の研究者を選ぶ方法を採らず、政府の息のかかった学者ばかり選ぶからそういうことになったのである(ただしいわゆる歴史修正主義者=歴史偽造趣味者は除いている)。

 ちなみに、北東アジアにおける歴史認識の溝を埋めて、一国史を超えた歴史叙述を形にする試みは民間の方がはるかに先行している。
 特に有志の歴史学者や歴史教育者による日中韓3国共通歴史教材委員会が3年間の討議と研究を経て2005年に完成させた『未来をひらく歴史 東アジア3国の近現代史』(高文研)は、版を重ねて副教材として教育現場でも使われている。この時も特に日中間では記述を巡って衝突があり、何度も修正を重ねて相互が歩み寄って完成にこぎつけた。
 また、日韓両国間では東京学芸大学とソウル市立大学の研究者が中心となって『日韓歴史共通教材 日韓交流の歴史』(明石書店)が刊行されている。これは10年がかりで完成させたもので、先史時代から始まる通史である。
 いずれも教材用なので、政府間のプロジェクトと同列には論じることができないが、はじめから時には国家支配層の利害のために史実を隠蔽することも厭わない国家主義者だけを送って、「両論併記」で終わらせることを目論む政府の不誠実な姿勢と比較するとき、国家の壁を越えて歴史認識の共有化を図る試みはやはり評価せねばなるまい。

 とりあえず今年夏にできるという「日中歴史共同研究」の報告書を期待しないで待つことにしよう。

【関連リンク】
外務省:日中歴史共同研究(概要)
外務省:日中歴史共同研究第2回会合(概要)
財団法人 日韓文化交流基金 日韓歴史共同研究委員会
日韓歴史共通教材【明石書店】
第2版 未来を開く歴史-高文研
日本での反応は?日中韓共同編集『未来をひらく歴史』完成-JANJAN
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by mahounofuefuki | 2008-01-06 23:33

企業・団体の政治献金を全面禁止するしかない

 今日の朝日新聞が、国から補助金を受給している企業・団体による自民党の政治資金団体「国民政治協会」への政治献金について報じている。朝日は過去にもこの国民政治協会を巡る不透明な献金ルートを何度となく報じているが、その都度うやむやのままになっている。過去には政治資金規正法の定める献金の量的規制を逃れるために、国民政治協会を通して特定の議員へ献金する「迂回献金」が問題になったこともある。
 今回の報道では、政治資金規正法が国から補助金を受けた企業・団体の1年以内の政治献金を禁止しているにもかかわらず、例外規定の拡大解釈により事実上野放しになっている実態が問題になっている。
 以下、朝日新聞(2008/01/06 06:09)より(太字は引用者による、以下同じ)。
(前略) 各省から企業・団体への補助金交付状況と国民政治協会の06年分政治資金収支報告書を朝日新聞が調べた結果、補助金の交付決定後1年以内に同協会に寄付をした企業・団体数は109あった。自動車、電機、建設、鉄道などの日本を代表する大手企業が多い。寄付額は計7億8030万円で、同年に協会が集めた企業・団体献金の総額27億9903万円の4分の1以上を占めた
 これらの企業・団体が献金までの1年間に交付決定を受けた補助額は判明分だけで280億円にのぼる。経済産業、国土交通、環境、農林水産の各省の補助金で、目的も先端技術開発、新エネルギー導入や温室効果ガス排出削減などの設備投資、交通施設のバリアフリー化など広範囲に及ぶ。
 献金額の多い20余りの企業・団体に国民政治協会への献金について見解を聞くと、大半が「補助金は利益を伴うものではなく規正法の適用外」と説明し、適法な寄付だと主張した。 (後略)
 政治資金規正法は第22条で「国から補助金、負担金、利子補給金その他の給付金の交付の決定を受けた会社その他の法人は、当該給付金の交付の決定の通知を受けた日から同日後1年を経過する日までの間、政治活動に関する寄付をしてはならない」と定めている。しかし、但書で「試験研究、調査又は災害復旧に係るものその他性質上利益を伴わないもの及び政党助成法第3条第1項の規定による政党交付金を除く」とあり、この例外規定の「利益を伴わない」をどう解釈するかが問題になる。
 以下、朝日新聞(2008/01/06 10:01)より。
(前略) どの補助金が例外に当たるのか。総務省政治資金課の担当者は「規正法の中でも最も解釈が難しい」と打ち明ける。
 同課には時折、寄付前の企業から違法かどうか見解を尋ねる電話が入る。だが、「補助金の要綱の検討や、交付官庁や法務省への問い合わせなどで判断に2カ月ほどかかる」と告げると、結論を待たない企業がほとんどだという。
 補助金受給法人による政治献金の規制は、もとは造船疑獄事件(54年)などをきっかけに公職選挙法に設けられた。その後も政界で汚職事件や不祥事が相次いだことを受けて75年に政治資金規正法が大きく改正され、この規制が盛り込まれた。
 違反すると3年以下の禁固または50万円以下の罰金が科せられる。しかし、改正から30年余りたっても「この罰則が適用された例は聞いたことがない」と総務省や専門家らは口をそろえる。(後略)
 要するに完全なザル法になっているということだ。言うまでもないことだが、国からの補助金は税金から出ている。その補助金を受けた企業・団体が自民党に政治献金するということは、税金を使って自民党に献金しているに等しい。あるいは自民党議員側が献金欲しさに特定企業へ補助金を出させるよう各省庁に口利きしているとも言える。
 利益を追求する企業が「利益の伴わない」活動をするはずもなく、企業の活動はすべて「利益の伴う」活動である。それがどんなに公益性があってもだ。例外規定の存在は無意味である。だいたいなぜ献金禁止期間が1年限定なのか。政治資金規正法は公職選挙法と並んで意味不明な規定が多い法律だが、こんな抜け道だらけでは全く用を足していない。

 改めて企業・団体の政治献金を全面禁止する必要を痛感した。そうすれば法の瑣末な操作や拡大解釈の余地はない。自民党も民主党も企業献金を受けているためになかなか実現しないが、ここをはっきりしない限り「政治とカネ」を巡る問題が解決することはない。世論の圧力が必要だろう。

【関連リンク】
政治資金規正法-法庫
財団法人 国民政治協会
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by mahounofuefuki | 2008-01-06 12:42

「歳出の公平性」だけでなく「歳入の公平性」も必要だ

 北海道大学大学院教授の山口二郎氏といえば一般にリベラル派(という呼び方は嫌いだが)の代表的な政治学者と目されており、その行動力と鋭い知性において比類がない。故に学生時代から私は一定の敬意を持っているし、その発言に影響も受けてきた。
 しかし、一方で常に山口氏に対するある種の違和感も持っているのも事実で、それは1990年代の「政治改革」の熱狂が渦巻いた時代に、二大政党制推進のオピニオンをリードし、結局小選挙区制への道を開いたことだったり(死票が多く、1票の格差が大きい反民主主義的な選挙制度であることは言うまでもない)、民主党を露骨に支援したりする姿勢だったり(昨年の「大連立」を巡る騒動でその矛盾が露呈した)、要するにあまりに「現実的」であろうとする傾向に対する疑問であった。

 なぜこんな話をするのかというと、村野瀬玲奈の秘書課広報室経由で知ったふじふじのフィルターが紹介している山口氏の東京新聞(2007/12/24朝刊)でのコラム(電子版には出ていない)と、山口氏自身のブログにも転載されている週刊東洋経済2007/12/22号でのコラムとの間に「矛盾」を感じたからで、しかもそれは今後の財政問題にとって重大な論点であり、決して見過ごせないことなのである。
 両方のコラムの全文はそれぞれのブログで確かめて欲しいが(下記の関連リンク参照)、東京新聞では歳出について、東洋経済では歳入について論じており、両者は一対のものである。

 東京新聞のコラムでは、財政支出の増大を「バラマキ」と非難するマスメディアの論調への批判を通して、国家による公平な「富の再分配」の必要性を強調している(引用文中の太字は引用者による、以下同じ)。
 「そもそも政策とは分配の変更をもたらすものである。労働分野の規制緩和を進めて低賃金を可能にすることは、労働者から企業への富の再分配をもたらす。小泉-安倍政権の時代には、そうした再分配を改革と美化してきたものだから、それに対する反動で弱者にもっと再分配しろとの声が高まるのも当然である。強者への再分配は改革と賞賛し、弱者への再分配はバラマキと非難する。このような言質のゆがみに、確信犯である日経新聞は仕方ないとしても、他メディアはもっと敏感になるべきだ」というくだりはもっともで、私も全面的に賛成である。
 貧困と格差が拡大した第一の原因が、国家の再分配機能の低下にあることを考えれば、「歳出の有効性と公平性」こそ問われなければならないという山口氏の主張は真っ当だ。

 一方、東洋経済のコラムでは、民主党の政権担当能力をめぐる議論を通して、社会保障の恒久的財源としての消費税引き上げを主張している。
 「これからの社会保障、環境保全、少子化対策など様々な政策需要を考えたとき、小さな政府が解決策になるはずがない。したがって、中期的な観点から財源についても真剣に考えなければならないはずである」というのはその通りだが、なぜそれが「消費税の引き上げについても、本格的な議論を始めるべきである」ことに直結するのか。社会保障や環境保全の財源が消費税でなければならない理由が何なのか示さずに消費税引き上げを語るのは無責任である。
 しかも、消費税増税論の提唱が政権担当能力を示すという論調は「政権を取りたかったら消費税増税を公約すべき」と言っているようなもので、まるで脅しのようで非常に危険である。

 山口氏は歳出については「有効性と公平性」を唱えながら、歳入については「有効性と公平性」を度外視しているのである。歳出における再分配機能を重視するのに、なぜ歳入においては逆進性が強くて弱者に不利な消費税の増税を求めるのか。再分配は歳出のみならず、徴税においても行われなければ無効である。
 「中期的観点」と限定している以上、山口氏はおそらく消費税の即時引き上げには慎重で、順序として「歳出における再分配の回復・強化」→「消費税の社会保障目的税化」→「消費税増税」という道筋を考えているのかもしれない。北欧型の「高負担・高福祉」を想定しているのだろう。
 しかし、いかに歳出において弱者への再分配を手厚くしても、消費税が高くなれば所得再分配効果は激減する。北欧諸国の消費税が高くても問題がないのは所得の平等度が高いからで、不平等度が今やアメリカに次いで大きい日本では消費税を引き上げたら貧困と格差はますます拡大する。所得の平等度を高くするのがまず必要なことであり、それは財政出動だけでは実現できない。何としても所得税の累進課税の強化と企業の税負担の増強(できれば資産課税の強化も)がなければ無理である
 消費税増税を検討する前に、所得税や法人税のあり方こそまず検討するのが順序として正しい。

 実態として自公政権下においては、「歳出削減」(いわゆる「上げ潮」派)か「消費税増税」(いわゆる財政再建派)かの二者択一の議論に終始している以上、「骨太の方針」の継続を狙う「上げ潮」派を批判すると、財政再建派に肩入れしてしまいがちである(山口氏は財政再建派の中心人物である与謝野馨氏を「常識と責任感を持った政治家」と持ち上げている)。
 しかし、そもそもそんな二者択一は欺瞞である。その証拠に日本経団連をはじめとする財界は、依然として「小さな政府」を要求しながら、消費税の増税も要求している。なにせ大企業は輸出戻し税によって消費税が上がれば上がるほど儲かる仕組みになっている。当ブログで何度もしつこく指摘しているように、社会保障の財源を消費税に限定するということは、現在社会保障に用いている消費税以外の財源が浮くことを意味する。この「浮いた財源」こそが消費税増税派の狙いであり、政府税調の中からもこの財源で法人減税を行うべきだとの声があった。

 山口氏は民主党に影響力があり、民主党が安易な消費税増税論に転換するのが心配だ。昨年末すでに民主党が消費税増税を検討するとのニュースが流れている。もう一刻の猶予もない。
 私が言いたいのは「歳出削減でも消費税増税でもなく金持ちたちに応分の負担を」ということに尽きる。山口氏の再考を強く望みたい。

【関連記事】
消費税増税問題に関するリンク

【関連リンク】
ふじふじのフィルター:バラマキとは何か
村野瀬玲奈の秘書課広報室 「バラマキ」という言葉を安易に使う報道機関を信用したくない (不定期連載「決まり文句を疑う」)
YamaguchiJiro.com|07年12月:政権担当能力の試金石となる税制論議
全商連[全国商工新聞] 大企業上位10社で1兆円超の消費税環付金
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by mahounofuefuki | 2008-01-05 15:34

もっと「時短」を重視してほしい~春闘方針

 今日のNHKニュースが春闘について報じている。すでに労組の組織率が2割を切り、非正規雇用が全雇用の3分の1を占め、企業間格差が極限まで増大している現在、もはや春闘は一部の大企業正社員以外には「遠い国の出来事」だが、逆に言えば、市場原理主義に対する批判意識が高まり、国会では与野党逆転状態にある今こそ、春闘を真の労働者の権利闘争とすることができるか試されていると言えよう。
 以下、NHKニュース(2007/01/03 18:57)より。
(前略)ことしの春闘は、今月23日に連合と日本経団連のトップが会談し、交渉が本格化します。連合は、戦後最長の景気回復が続く中で企業の利益が役員報酬や株主への配当に回され、労働分配率が下がり続けているのはおかしいとして、毎月支払われる「月例賃金」の引き上げを一斉に要求していく方針です。また、働く人の3分の1を占める非正規の労働者の待遇改善にも力を入れ、格差の解消や労働者全体の賃金の底上げを目指す考えです。これに対して日本経団連は、企業の業績の改善についてはボーナスに反映させることが基本だという姿勢を強調するとともに、賃金は企業の業績に応じて個別に決めるべきだとして一斉の引き上げについては否定的な考えを示しています。その一方で、景気の回復傾向が続いているにもかかわらず個人消費が力強さを欠いていることに配慮して、好調な業績が続くと見込まれる企業については賃金の引き上げを事実上容認する方針です。(後略)
 大企業が空前の収益を上げているのに、株主と経営者の取り分ばかりが増大し、労働者の所得が減少し続けている以上、連合が賃金の一斉引き上げを要求するのは当然である。
 しかし、賃金引き上げが正社員に限定した場合、むしろ非正社員の賃金が抑制される可能性がある。連合は今年の春闘方針で、パートタイム労働者の均等・均衡待遇を目標に掲げているが、要求の優先順位をどう考えているのか。報道が伝えるように、すでに日本経団連が業績の良い企業の引き上げを容認しているようだが、それに乗じて非正規雇用の条件問題よりも、既成の正社員の賃上げ要求を優先すれば、またしても正規・非正規労働者間の格差が拡大する。

 もう1つ気になるのは、現在の労働現場における「国民病」とも言える長時間労働の是正について今のところ具体的な動きがないことだ。連合の闘争方針では「長時間労働を是正しワーク・ライフ・バランスを実現するため、総実労働時間の短縮、36協定の内容の再確認など労働時間管理の徹底と不払い残業撲滅に取り組む」という抽象的な文言だけで、具体的に月あたり何時間短縮するといったようなことは書かれていない。賃金の引き上げ要求については、非常に具体的な目標水準を明記しているのとは対照的である。
 極端な話、非正社員のほとんどは正社員の賃上げなど望んでいない。ますます不均衡を思い知らされるだけで、余計屈辱感を増すからだ。ましてや正社員の賃上げ分だけ非正社員の賃下げが行われたり、正規雇用から非正規雇用への切り替えが行われては元も子もない。
 しかし、長時間労働の方は、現在正規・非正規に共通した問題である。確かに非正社員の中には正社員を憎むあまり、正社員の過労を喜んでいる歪んだ人も少なくないが、不当に長い残業や休日の少なさは非正社員にとっても切実な課題である。これだけ過労死が横行し、過労による精神疾患が急増している以上、ある意味、賃上げよりも時短の方が重要なのではないか。

 どの世代、どの階層、どの職種の人々と話しても、長時間労働に苦しんでいる人が非常に多いのが実感だ。1人当たりの労働時間の短縮は雇用数の増加にもつながる。賃上げが不要とは言わないが、労組にはもっと時短を強く要求してほしい。

【関連リンク】
連合|2008春季生活闘争方針
連合|2008春季生活闘争 当面の方針 その1
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by mahounofuefuki | 2008-01-03 23:34

年頭所感を読む

 新年あけましておめでとうございます
 我々を取り巻くひどい社会状況を考えると、全然おめでたくないというのが本音ではありますが、本年もよろしくお願いします。


 さて、元日は各界の年頭所感が発表されるのが恒例である。たいていは形式的な建前上のあいさつだが、それだけに品格が問われるところであるし、その人物や団体の志向性が読み取れる好材料でもある。

 まずは何を措いても読まねばならないのは内閣総理大臣の年頭所感であろう。
 年頭所感-首相官邸
 福田康夫首相の所感はその現状認識の甘さにあきれる。「日本は、目覚ましい戦後復興を成し遂げ、高度経済成長を経て、世界にも誇る経済大国へと発展しました。経済発展とともに、医療の充実や国民皆保険・皆年金などを目指して安定した社会を作りあげた結果、今や、平均寿命世界一の長寿国となっています」と言うが、この国のどこが「国民皆保険・皆年金」なのか。国民健康保険料を支払えず、保険証を取り上げられる人々が続出し、治療費の滞納が蔓延する現状をどう説明するのか。中曾根政権が国保の国費負担を減額して以来、自民党政権はすでに国民皆保険の放棄を指向しているのである。国民年金も未納率はすでに4割近くに達する。そのほとんどが低所得者であり、未納期間が長いほど受給額は減るから貧しいものほど社会保障が受けられないという「逆転現象」が起きている。首相の発言はこうした現状を無視した暴言とさえ言える。
 福田氏は先月公表した社会保障に関する「国民会議」にも言及しているが、「これまで日本がとってきた社会保障制度、すなわち中福祉中負担のままでよいのか、スウェーデンのような高福祉高負担の方向が望ましいのかなど、広い視野から議論し、多くの国民が納得する制度を考えていただきたい」という発言も、単に消費税の社会保障目的税化と引き上げの口実にしか思えない。毎年2200億円ずつ社会保障費を削減している現在の予算編成はどうなのか。スウェーデンは高負担だが、同時に税制を通した所得再分配を行っている。所得の平等化を目指さずに「高福祉高負担」と言ってもリアリティはない。今のままでは社会保障削減の「骨太の方針」を継続しながら、消費税だけは引き上げ、現在社会保障に使っている消費税以外の財源を金持ちと大企業の減税に使い、結局「低福祉高負担」になるのではないか。

 福田以上に最悪なのは日本経団連の年頭所感である。
 日本経団連:成長創造~躍動の10年へ~
 「いま国民が感じている閉塞感は、成長が足踏みしていることによる面も大きく、いわゆる格差問題への対応も、全体の規模拡大がなければ限られたパイの奪い合いに陥りかねない」と言うが、経済が成長していようが、停滞していようが、資本主義経済は基本的にパイの奪い合いである。パイがいくら大きくなっても欲望に際限がない人間はどこまでも自分の取り分を増やそうとする。パイが大きくなっても公平な分配機能がなければますます格差は拡大し閉塞感は高まるだろう。
 「10年以内に世界最高の所得水準を達成」することを目標に上げているが、日本の所得水準はすでに世界最高水準にある。これ以上引き上げて、ますます途上国を貧困にするのか。1人あたりの所得が少ないのは、労働者への分配率が低いからで、それは日本経団連をはじめ財界が進めた新自由主義政策の結果である。いいかげん経済成長ですべて解決という「神話」の誤りに気づいて欲しい。

 ちなみに経済同友会も年頭所感で相変わらず競争万能を謳っている。
 魅力ある日本の再構築に向けて:経済同友会
 「国の責務は、最低限のナショナル・ミニマムの保障によるセイフティネットの提供と再挑戦を可能にする制度整備などに限定し、小さくて効率的な、信頼される政府の構築を目指すべきである」と未だに小泉政権の「構造改革」路線を主張しているが、それがとっくに破たんしていることがわからないのか。人口当たりの公務員数がすでに世界最低レベルなのに、これ以上「小さな政府」にしたら社会は崩壊する。最低限のセーフティネットすら破壊したのはどこの誰だったか。バカバカしくて話にならない。

 財界とは対極にあるはずの労組も頼りない。連合の高木剛会長の年頭所感を読むと、もう連合は再生不能なのではないかとさえ思ってしまう。
 日本労働組合総連合会(連合)ホームページ
 「歪みの根底に非正規雇用労働者問題があると指摘し、運動の柱に据えてきました」という言葉が空虚だ。連合は具体的に何か非正規労働者のための実効的な活動をしたのか。昨年、非正規労働者の権利確立のために目立った闘いを敢行していたのは、各地の地域ユニオンや派遣企業のユニオンだった。連合はカネを出すなりヒトを出すなりしたのか。非正社員の多くが正社員からの差別と侮辱に苦しんでいる現状を無視している限り、組織率の回復など画餅にすぎない。

 政党はどうか。民主党は党役員の新春メッセージ映像を発表している。
 民主党 web-site
 このうち小沢一郎代表は「政治は生活である」と強調し、自民党の「半世紀以上の長期政権」の腐敗を批判し、「政権を替える以外に方法はない」と述べているが、その「半世紀以上」の政権中枢には小沢氏自身もずいぶんと長い間いた事実はどう説明するのか。ついでに言えば細川・羽田政権はどこへ消えたのか。あれも政権交代だったはずだが、すっかり忘却しているようである。自民党政治の主流にどっぷりと浸かり、自民党と連立しようと画策した人が「何としても総選挙で勝利しなければなりません」と言っても説得力に欠ける。

 共産党の志位和夫委員長の所感はシンプルである。
 2008年 志位和夫委員長のごあいさつ-日本共産党
 「暮らしの悲鳴がこんなに深刻に聞こえてくることはありません」とはその通りだし、「もう自民党ではやっていけない」という声も多いが、「共産党がんばって」という声は志位氏が言うほど私には聞こえない。むしろ「とりあえず政権交代」という考えで民主党に支持を奪われているのが実情ではないか。共産党に肩入れすることの多い私だが、今回は物足りなさを感じた。

 今回読んだ年頭所感の中で個人的に最も共感し、感銘を受けたのは社民党の福島瑞穂党首のメッセージである。
 社民党全国連合|2008年を迎えて 社民党党首・福島みずほ
 「大政翼賛会は、戦争一直線への道です」というあたりは教条的で史実にも反するが(翼賛体制が戦争を生んだのではなく、戦争が翼賛体制を生んだ)、「政治は、人の人生を応援すべきものであるにもかかわらず、今の政治は、人々の人生を破壊していっています」というくだりには全面賛成だし、「政治の結果生じた格差と貧困の拡大は、政策の転換でしか根本的には変えることができません」というのもその通りで、「政権交代」しても「政策転換」がなければ無意味という事実を下敷きにしている。また文章自体に何となく「優しさ」がにじみ出ているのも好感が持てる。

 もう1つ、意外と良かったのは新党日本の田中康夫代表である。
 新党日本代表 田中康夫「年末年始のご挨拶」-新党日本
 田中氏が言うように、「おかしいことは、おかしいと言う」だけでなく「おかしいことを、一緒に変えていく」という姿勢は現在の日本社会に最も必要なことである。貧困や格差が存在するとアピールする時期は終わり、貧困や格差をどう直すか、具体的に行動することが必要だろう。「怯まず・屈せず・逃げず」というモットーも、現に田中氏は参議院本会議で労働契約法案の採決に際して、統一会派を組んでいる民主党の党議を無視して反対票を投じただけに説得力がある。

 以上、いろいろな年頭所感を読んでみたが、2008年こそは「社会的平等」の価値回復への転換の年になってほしいと切に祈願している。
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by mahounofuefuki | 2008-01-01 17:40