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文部科学省はまだ「軍の強制」を弱めようとしている~「集団自決」教科書検定は訂正再申請へ

 来年度の高校用歴史教科書の沖縄戦に関する記述に対し、文部科学省が教科書検定を通して、沖縄住民の「集団自決」に日本軍の強制があった事実を否定する「修正」をさせていた問題について大きな動きがあった。

 周知の通り、9月29日の沖縄県民大会以降、教科書検定に対する非難の声が高まり、史実を改竄した検定意見の撤回を求める動きが続く中、教科書出版社各社は11月上旬、教科用図書検定規則第13条に基づき、「軍の強制」を記述に盛り込む訂正申請を行った。これを受けて文部科学省は、教科用図書検定調査審議会に訂正申請の扱いを諮問していたが、昨日になって審議会の動向が明らかになった。
 沖縄タイムス12月7日付朝刊によれば、文部科学省は12月4日、教科書出版社の担当者を呼び、記述内容を再申請させるための審議会の「指針」を示したという。この「指針」は、「軍命」の明記を禁じる一方、「集団自決」には「複合的な要因」があったとし、「天皇中心の国家への忠誠を強いた皇民化教育の存在」「軍が手榴弾を配った事実」「沖縄戦は軍官民が一体となった地上戦」などの事情を説明するよう求めたという。また、琉球新報12月7日付朝刊によれば、「指針」は「日本軍の直接的な命令で『集団自決』が起きた例は確認できていない」とし、「断定的記述は避けるよう」示唆したという。
 要するに、審議会は出版社側からの訂正申請をそのまま受け入れず、「指針」に沿った書き直しを命じたのである。一部の報道(たとえば共同通信)では、審議会が「軍の直接的な関与」は否定したものの「軍による強制」の記述の復活を認めたとされているが、それならば訂正の再申請をさせる必要はない。再申請をさせるということは、依然として文部科学省が「軍の強制」を明記することに抵抗していると見てよい。

 正直、開いた口が塞がらない思いだ。もともとこの問題のきっかけは、検定前の申請本が、すべての「集団自決」について軍が強制したとも、軍が直接命令したとも書いていないにもかかわらず、文部科学省側が曲解して、どの「集団自決」にもまったく日本軍が関与していないような記述に書き換えさせたことにある。住民の「集団自決」が「日本軍の強制と誘導によって起きたこと、日本軍の存在が決定的であったことは、沖縄戦研究の共通認識である」(関東学院大学教授の林博史氏が審議会に提出した意見書より)が、文部科学省は日本軍を主語とする記述を一切認めなかった。
 今回の訂正申請に対しても、文部科学省に反省の色は全くなく、相変わらず「軍の強制」を何とかして否定しようとしている。「皇民化教育」や「軍官民一体」の強調は、軍が住民に敵軍への投降を固く禁じた事実や、軍が存在しなかった所では「集団自決」など起きていない事実を無視し、「集団自決」の要因を当時の教育による「自発的忠誠心」や総力戦体制下での「官(軍ではない)の強制」に転嫁することで、軍の責任を弱めようという意図がある。「指針」が言うところの「複合的な要因」とは、「軍の関与だけではない」というニュアンスが込められている。
 また今回の「指針」でも「軍の直接命令」の否定に躍起となっているが、これは歴史修正主義勢力への配慮であろう。「軍の命令」という記述さえ教科書に載らなければ、「新しい歴史教科書をつくる会」をはじめとする彼らは、「軍の命令がない」=「軍の強制はない」と拡大解釈する余地がある。今回の訂正申請で「軍の直接命令」を盛り込んだ会社はないはずだが、わざわざ「指針」で「軍の直接的命令」を記述するのを厳禁したのは、修正主義者たちが絶対に譲れない一線を文部科学省が守っているという政治的アピールであろう。

 再申請が行われることで、この問題はまだ続くことが確実になった。これは時間との戦いである。教科書を来春に間に合わせるためには遅くとも今月いっぱいには内容が確定しなければならない。文部科学省は教科書出版社の足元を見て難癖をつけている。今後もぎりぎりの駆け引きが続くだろう。
 今回の件で、改めて現行の教科書検定制度の廃止を含む全面的な見直しの必要性を痛感させられた。特に教科書検定調査審議会の独立性の確保と委員の人選の透明化が早急に必要である。また、教科書調査官は廃止するべきである。教科書の作成と採択についてのあるべき姿については、機会を改めて書こうと思う。

【関連記事】
教科書改竄の「黒幕」
教科書検定の徹底検証を
沖縄戦の「集団自決」に関する教科書検定問題の資料
【転載】沖縄戦検定にかかわる訂正申請提出にあたっての声明-社会科教科書執筆者懇談会

【関連リンク】
教科用図書検定規則-文部科学省
高等学校歴史教科書に関する検定結果(平成18年度)-文部科学省
教科書検定の手続-文部科学省
沖縄戦「集団自決」問題-沖縄タイムス
沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会
日本の現代史と戦争責任についてのホームページ 林博史研究室へようこそ
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by mahounofuefuki | 2007-12-07 21:31

生活保護基準引き下げは小泉が与えた「宿題」

 厚生労働省社会・援護局長の私的研究会「生活扶助基準に関する検討会」が来年度からの生活保護基準引き下げを提言した問題に対する反響が広がっている。

 まずマスメディアだが、全国紙こそ相変わらずこの問題を軽視しているが、いくつかの地方紙が論説で生活保護基準引き下げの不当性を訴えている。中国新聞12月2日付朝刊社説は「低所得世帯に対しては不足分の保護申請を促すのが筋だ」と至極まっとうな見解を示した。沖縄タイムス12月3日付朝刊社説は「生活保護費の生活扶助を引き下げよりも、最低賃金制度の拡充などによって低所得世帯をてこ入れしていく政策を優先していくべき」と政府の「減額ありき」の姿勢に疑問を呈している。信濃毎日新聞12月5日付朝刊社説は「生活保護水準の引き下げが逆に低所得者の足を引っ張る結果を招きかねない」と最低賃金への影響を危惧している。
 生活保護切り下げ 物差しの当て方が逆だ-中国新聞
 [生活保護費減額]低所得層対策こそ本筋-沖縄タイムス
 生活保護 安易な引き下げは疑問-信濃毎日新聞
 いずれも今回の生活保護基準の引き下げが貧困の拡大を促進する危険性を警告しているのである。

 また日本弁護士連合会(日弁連)が平山正剛会長名で生活保護基準引き下げの拙速に反対する声明を発した。
 安易かつ拙速な生活保護基準の引き下げに反対する会長声明-日弁連
 声明では、生活保護基準に連動して、地方税の非課税基準、介護保険の保険料・利用料や障害者自立支援法による利用料の減額基準、公立高校の授業料免除基準、就学援助の給付対象基準、国民健康保険料の減免基準などが引き下げられる可能性を指摘し、生活保護の引き下げが、受給者のみならず、生活保護を受給していない低所得層全般にも大きな影響を与えることを明らかにしている。
 声明はさらに、昨年7月に日弁連が実施した生活保護全国一斉電話相談の結果から「福祉事務所が保護を断った理由の約66%が違法である可能性が高」いと、蔓延する「水際作戦」を告発している。当ブログでも以前、生活保護申請者に申請書を渡さない「水際作戦」受給者を脅迫して「辞退」に追い込む不法行為を指摘したが、行政が堂々と違法行為を繰り返す状況に日弁連からも危惧の声が出ているのである。
 なお権力とマイノリティ:精力的にロビーイング活動を行う生活保護や貧困に取り組む弁護士らによると、生活保護や貧困問題に取り組む弁護士や司法書士らが国会議員へ生活保護切り下げ中止の請願活動を行っているという。このことも法曹界の危機感の表れだろう。

 以上のように、生活保護切り捨てに抗議する声が高まっているためか、民主党が12月5日、生活保護基準の引き下げに反対する談話を政策調査会長と「ネクスト厚生労働大臣」の連名で発表した。
 民主党:生活保護の引下げに反対する(談話)
 今国会で参院の第1党となり、議事運営の主導権を握ったにもかかわらず、改正最低賃金法と労働契約法で政府・与党に一方的に妥協した「前科」があるだけに、どこまで本気かは不明だが、少なくとも現時点でははっきりと「慎重な検討」を要求したことは心強い。民主党が裏切ることのないよう、同党に対して恒常的に生活保護基準の引き下げに正当性がないことを訴える必要があるだろう。

 「生活扶助基準に関する検討会」は生活保護基準引き下げの理由として、2004年の全国消費実態調査をもとに、最も低い年収階層の所得よりも生活保護の給付額の方が多いことをあげたが、これは「生活保護が高い」のではなく、生活保護を受けるべき低所得者が生活保護を受給できていないことを示す。生活保護を受けさせずに、「生活保護以下」の貧困層を増やしておいて、それで「生活保護が高い」と言うのは政府の「自作自演」の貧困拡大策でしかない。
 重要なのは、「検討会」が挙げた「生活保護が高い」という理由は、「減額ありき」という結果が先に決まっている上での後付けであり、生活保護引き下げの真の理由は別のところにあることだ。

 前記の中国新聞や信濃毎日新聞が言及しているように、厚生労働省が生活保護の切り捨てに躍起になっているのは、政府がすでに社会保障費の削減を決めていて、来年度予算編成までに削減分を提示しなければならないからである。
 小泉内閣末期の2006年7月に経済財政諮問会議が定めた「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」(いわゆる「骨太の方針2006」)は、2011年までに国が歳出する社会保障費を1.1兆円削減することを命じ、毎年平均2200億円の削減を義務付けている。生活保護に関しては「生活保護扶助基準について、低所得世帯の消費実態等を踏まえた見直し」「母子加算について、就労支援策を講じつつ、廃止を含めた見直し」「級地の見直し」などを「可能な限り2007年度に、間に合わないものについても2008年度には確実に実施する」と具体的な指示を行っている。
 この「骨太の方針2006」に従い、今年度は雇用保険の失業給付の国庫負担削減や生活保護の老齢加算の廃止・母子加算の段階的廃止により、2200億円の削減分を捻出した。そして来年度も同じく社会保障費の削減分2200億円を捻出しなければならず、厚労省はあわてて「検討会」を作り、おざなりの議論で生活保護基準の引き下げを決定したのである。
 要するに、小泉内閣が決めた「弱者切り捨て」方針が、内閣が交替しても財政を拘束しているのである。いわば小泉純一郎が残した「宿題」を今も政府はこなしているといえよう。究極のところ「骨太の方針」をやめさせない限り、生活保護を含む社会保障制度はどんどん悪化する一方なのは明らかだ。

 政府・与党は今後、生活保護のモラルハザードを喧伝し、長時間労働と低賃金に喘ぐ労働者との「不公平」を前面に出すだろうが、以上のような経過を考慮すれば、それはまやかしにすぎない。
 繰り返しになるが、「生活保護が高い」のではなく、「生活保護以下」なのに保護を受けられないことが問題であることをはっきりと認識してほしい。

【関連記事】
新たな「棄民政策」
「ネットカフェ難民」排除の動き
民間給与実態統計調査
最低賃金法改正案・労働契約法案における民主党の妥協
最低賃金と生活保護-北海道新聞の記事より
生活保護切り下げは厚生労働省の「自作自演」の貧困拡大策

【関連リンク】
厚生労働省:生活扶助基準に関する検討会第1回資料
厚生労働省:生活扶助基準に関する検討会第2回資料
厚生労働省:生活扶助基準に関する検討会第3回資料
厚生労働省:生活扶助基準に関する検討会第4回資料
厚生労働省:生活扶助基準に関する検討会第5回資料
生活扶助基準に関する検討会報告書(案)*PDF
生活扶助基準に関する検討会報告書参考資料*PDF
厚生労働省:平成18年度社会福祉行政業務報告(福祉行政報告例)結果の概況
経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006*PDF
社会保障予算~歳出削減と制度構築の在り方~-厚生労働委員会調査室 秋葉大輔*PDF
生活保護問題対策全国会議blog
生活保護問題対策全国会議
特定非営利活動法人 自立生活サポートセンター もやい
反貧困ネットワーク
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by mahounofuefuki | 2007-12-06 22:36

「生きのびるための労働法」手帳

 フリーター全般労働組合「生きのびるための労働法」手帳を配布している。
 以下、同組合のホームページより。
手帳つくりました。内容は「労働組合ってなに?」/解雇(いきなりクビにはできない)/休暇(給料をもらって休める有給休暇)/給与(残業・深夜・休日労働には割り増しがある)/労災(仕事中にケガをしたら労災で補償される)/社会保険(社会保険に入るとこんなにおトク)等々。働いて生きのびるために必要な情報を文庫本サイズに凝縮した手帳です。必要な方に無料で差し上げます。(後略)
 A5サイズのPDFでも公開しているので、そのままプリントアウトして使える。
 フリーター全般労働組合の「生きのびるための労働法」手帳*PDF 
 見れば一目瞭然だが、労働者の基本的な権利をわかりやすく説明しており、非常に便利である(「フリーター」だけでなく、正社員でも使える)。

 私たちの世代は一般にとかく労働法に関し無知である。特に非正規雇用だと、まったく権利がないと思い込まされている。解雇されても、労災を受けられなくとも、残業代が支払われなくとも、ピンハネされても、ただ「そういうものなんだ」と考えて泣き寝入りする人々が非常に多い。
 それ以上に問題なのは、たとえ権利を知っても、実際に行使する勇気をもてないことにある。「弱肉強食」社会を変えることのできないものとして受け入れ、何事にもあきらめてしまっている人々にとって、企業に異を唱えることは、かえって自分の立場を悪くするものとしか映らない。また実際に今や経営者は「やくざ」とほとんど変わらないので、暴力的脅迫を受けることも日常茶飯事である。

 この「生きのびるための労働法」手帳は、そうした実情にも配慮している。
 たとえば「解雇」の項では「いくら法律や判例に照らして問題があると主張しても、雇い主が受け入れないことがよくあります。そのような困難に直面した場合には労働組合に加入して、一緒に交渉することをお勧めします」と、1人でも加入できるフリーター全般労組ならではの忠告をしているし、労災の項では「よく会社が労災を認めないなどと言われますが、労災かどうかは労働基準監督署が決めるもので、会社が決めることではありません。ですから、会社を通さずに、本人が直接申請を行えばよいのです」と会社側との摩擦を極度に恐れる人々に配慮している。労働時間の記録ページがあるのも残業時間の算定の証拠として有効である。
 
 ところで、日本最大の労働団体である連合は、組織率が過去最低を更新したそうだが(朝日新聞 2007/12/04 19:29)、公務員や大企業の正社員の既得権益の維持ばかり追求して、時には経営側と一体化してリストラを進めているようだから、労働者に見放されるのである。
 少しはフリーター全般労働組合を見習って、本当に役に立ついきとどいた活動をしてほしいものだ。

 いずれにせよ、この「いきのびるための労働法」手帳はかなりすぐれものなので少しでも広めたい。


《追記 2007/12/20》

 朝日新聞が紹介して以来、「生きのびるための労働法」手帳が広がっているようで、うれしい限り。
 ちなみに一時期、検索サイトで「生きのびるための労働法」で検索すると、なぜかフリーター全般労働組合のサイトよりも当ブログが上位に表示され、非常に恐縮していた(今は正常になったようだ)。せっかくなので、同労組のホームページかブログからダウンロードしてください。下記の関連リンクからいけます。

【関連記事】
相変わらず多い残業代不払い
「反貧困たすけあいネットワーク」

【関連リンク】
フリーター全般労働組合
PDF版-Spiders'Nest::フリーター全般労働組合
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by mahounofuefuki | 2007-12-05 23:09

労働契約法に関するリンク

*2007/10/23に投稿し、2007/11/14に再投稿、その後何度か編集した記事ですが、残念ながら労働契約法が成立したので、それに合わせて加除訂正をしました。再掲します。

第166回 閣第80号 労働契約法案
政府が衆議院に提出した時点の労働契約法案全文。

閣法 第166回 80 労働契約法案に対する修正案
労働契約法案の修正部分。

労働契約法案に対する修正案要綱/労働契約法案に対する修正案*PDF
修正案の内容及び政府当初案との比較。

第166回国会 厚生労働委員会 第24号 平成19年5月25日(金曜日)
第166回国会 厚生労働委員会 第27号 平成19年6月1日(金曜日)
第166回国会 厚生労働委員会 第28号 平成19年6月6日(水曜日)
第166回国会 厚生労働委員会 第29号 平成19年6月8日(金曜日)
第166回国会 厚生労働委員会 第30号 平成19年6月13日(水曜日)
第166回国会 厚生労働委員会 第32号 平成19年6月20日(水曜日)
第168回国会 厚生労働委員会 第3号 平成19年10月31日(水曜日)
第168回国会 厚生労働委員会 第4号 平成19年11月2日(金曜日)
第168回国会 厚生労働委員会 第5号 平成19年11月7日(水曜日)
衆議院厚生労働委員会の会議録より。労働契約法案の審議。第166回国会では年金記録問題の陰に隠れて十分な審議が行われず、第167回国会では実質審議が行われず、第168回国会では政府・与党と民主党の妥協により修正案が可決された。

参議院会議録情報 第168回国会 厚生労働委員会 第5号 平成十九年十一月十五日(木曜日)
参議院会議録情報 第168回国会 厚生労働委員会 第6号 平成十九年十一月二十日(火曜日)
参議院会議録情報 第168回国会 厚生労働委員会 第7号 平成十九年十一月二十二日(木曜日)
参議院会議録情報 第168回国会 厚生労働委員会 第8号 平成十九年十一月二十七日(火曜日)
参議院厚生労働委員会の会議録より。参考人質疑が行われ、衆議院よりは突っ込んだ審議が行われたが、結局可決された。

労働契約法~図解-労務安全情報センター
政府当初案の図解。

労働契約法に関する意見書-より望ましい労働契約法の実現に向けて--日本弁護士連合会*PDF
労働契約法案に盛り込まれた就業規則による労働条件変更をどうみるか-自由法曹団*PDF
労働契約法案及び労働基準法改正法案に対する見解-日本労働弁護団
労働契約法および最低賃金法「改正」法の成立に抗議する-自由法曹団*PDF
労働契約法に対する弁護士団体の見解。

労働契約法案の可決・成立についての談話(事務局長談話)-連合
【事務局長談話】労働契約法制の可決・成立にあたって-全労連
労働契約法-レイバーネット
働く女性の全国センター
労働運動、市民運動の見解・運動。
特に「働く女性の全国センター(ACW2)」は、最も積極的に労働契約法問題に取り組んでおり注目。

特集「労働契約法制」-独立行政法人 労働政策研究・研修機構
労働契約法制に関する資料とリンク。

社会法の広場
労働契約法について鋭い詳細な分析。多文化・多民族・多国籍社会で「人として」の御教示による。

労働契約法の解説・条文
行政書士のサイト。

雇用ルールと労働契約法
社会保険労務士のブログ。

清水ブログ:労働契約法案審議に見る民主党の裏切り
弁護士の清水建夫さんのブログより。

【関連記事】
最低賃金法改正案・労働契約法案における民主党の妥協
最低賃金法改正案・労働契約法案成立へ~民主党に贈る書
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by mahounofuefuki | 2007-12-05 19:22

大阪府民へ、こんな下劣な男を知事にしてはならない

 *2007/12/11 改題、編集しました。

 タレントで弁護士の橋下徹氏が、大阪府知事選挙に立候補するという。自民・公明両党が推薦するという。

 以下、すべて橋下徹氏のブログ橋下徹のLawyer's EYEより。

「世の中法律だけじゃないんだよ!!」
「弁護士はそんなに偉いのか!!」
「お前ら勝手に来年まででも期日の調整をしてろよ!!」
「この集会はカルト集団の自慰(オナニー)集会だね。」
「そして、やっぱりと思ったけど、いましたよ、チンカス弁護士が。」
「コメンテーターの仕事や、番組に出演する仕事は、この裁判よりも重要でないっていうのか!!」
「日弁連の模擬裁判のリハーサルなんて、くだらない鼻くそイベント」
「弁護士自治も全く都合がいいもんだぜ。そんな団体なら強制加入団体なんかにすんなよ!!」
「ありがたい情報を頂いたんだから,弁護士会が手前らでコピーしろよ!!」
「分かってんのか!この似非人権団体の横浜弁護士会よ!」

 弁護士どころか、社会人とは思えない罵詈雑言の数々である。
 こんな品性下劣にして傍若無人な「不良弁護士」を本当に知事にしていいのか!?
 大阪府民へ。「橋下徹」の名を投票用紙に書くすべての人を私は深く軽蔑し、絶対に許しません。良心があったら、間違っても彼に投票してはいけません。

【関連記事】
橋下発言はツッコミどころ満載
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by mahounofuefuki | 2007-12-05 12:20

灯油が高い!助けて!!

 灯油が高い高すぎる
 周知の通り、原油市場の異常な高騰により石油製品をはじめ軒並み物価が高騰しているが、特に灯油価格の急騰ぶりは北国に住む人間にとっては死活問題である。

 どのくらい高くなっているか、札幌市の灯油価格の変動を例示しよう。
 石油製品小売価格調査結果-札幌市消費者センター(2007/11/22)*PDF
  *調査日 灯油1リットルあたりの平均小売(多量配達売り)価格 [前年同期の同価格]
09/10 79.57円 [82.64円]
10/10 80.44円 [80.10円]
10/25 80.81円 [78.18円]
11/09 85.71円 [75.70円]
11/22 89.52円 [75.04円]
 この1か月余りで1リットルあたり10円近くも上昇している。しかも、現時点で昨年の同時期よりも15円近くも高い。言うまでもないことだが、寒冷地では暖房がなくては生きていけない。灯油は衣食住に並ぶ必需品なのである。北海道では1世帯あたりの平均年間消費量は1900リットルくらいなので、昨年よりも灯油代が約2万8000円は上がる計算になる。

 問題なのは、灯油価格の上昇が確実にまだまだ続くことである。
 全国の灯油価格の指標となるのは、北海道最大の灯油共同購入者である「生活協同組合コープさっぽろ」だが、すでに12月1日より札幌地区の灯油小売価格を1リットルあたり96円に引き上げている。先月よりも21.5%もの値上げであり、史上最高値を更新している。
 なお札幌はそれでも北海道では最安値で、稚内や根室などではすでに1リットルあたり100円を超えている (北海道新聞 2007/11/26 07:15)。

 コープさっぽろの灯油センターが、原油価格の高騰は「原油先物市場に投機マネーが流入していることが大きく影響して」いるとはっきりと告知しているように、一連のサブプライム問題で株式投資などから逃避した資金が原油市場に流入し、原油価格を押し上げているのは間違いない。
 労働者から巻き上げたカネでマネーゲームを繰り返し、生活必需品の取引を不安定にして、生活を破壊する巨大資本にはもはや怒りを通り越して殺意すらある。原油をめぐる最近の動向からも市場原理主義がいかに「人類の敵」であるかがわかるだろう。

 ところで、北海道、東北各県及び長野県の生活協同組合連合会が昨日(12月3日)、資源エネルギー庁に対し灯油高騰対策を緊急に要請した。
 以下、しんぶん赤旗(2007/12/04)より。
 北海道、東北各県と、長野県の生活協同組合連合会は三日、住民生活を直撃している灯油価格の高騰や需要増に便乗した灯油の値上げを監視し、価格の適正化を図ることなどを求めて経済産業省資源エネルギー庁に緊急に要請しました。各道県生協連の理事、灯油実務担当者ら二十九人が参加しました。資源エネルギー庁側は、「便乗値上げはすべきでないと考えている」と回答しました。
 要請団は、昨年比で一リットル当たり二十円以上の支出増を余儀なくされており、「緊急事態」以外のなにものでもないと強調。にもかかわらず、製品在庫は前年比76%と大幅に低い水準になっていると指摘し、国に(1)業界による出荷制限など便乗値上げが行われないように監視・指導する(2)各道県の在庫量を把握し、必要なら国の原油備蓄を取り崩してでも、安心できる量の確保と安定供給ができるように万全の態勢でのぞむ(3)卸売価格の公表など、国民に対し機敏に情報を提供する―ことを求めました。
 いわて生協の本多多津子理事は、「灯油が高く、できるだけ使わないようにするため、たくさん着込んで生活している」と、十日間で二百八十五人もの会員から集まった悲痛な声を紹介、「もう暮らしていけません」と訴えました。
 「自宅で蓄えた灯油缶から、灯油を持ち去る窃盗事件が横行し、公民館の灯油が一晩で盗まれた事例もある」(青森)、「イラク戦争など、アメリカ軍に対しては給油が必要といっているが、私たちにはどうなのか、という声が集会で出された」など各生協連の代表から、灯油の安定的供給に力を尽くすよう、必死の訴えがありました。(後略)
 根本的解決には投機マネーを国際的に規制するしかないが、当分それは困難である以上、政府が市民生活を守る手だてを尽くすのは当然の責務だ。
 アメリカ軍にアメリカから購入した燃料をタダでくれてやるような余裕があるのなら、そのカネを灯油価格適正化のために使ってほしいものだ。
 今日から参議院で新テロ特措法案の質疑が始まったが、日本政府のこうした矛盾をきちんと追及できるかどうかが、インド洋での給油活動再開阻止に世論の支持を得られるかどうかの分かれ目だろう。

 ちなみに私も灯油を節約するため、家の中でオーバーコートを着込んでいる。
 はっきり言って、寒い。助けて!! 

【関連リンク】
財団法人日本エネルギー経済研究所 石油情報センター
コープさっぽろ コープの灯油
札幌市消費者センター 石油製品
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by mahounofuefuki | 2007-12-04 13:15

中堅官僚のアメリカ派遣制度!?

読売新聞(2007/12/02 09:56)によると、人事院は来年度、中堅官僚がアメリカ政府の省庁に派遣され、省庁の一員として働く研修制度を新設するという。
人事院は今後派遣先をEU諸国などにも拡大するとしているが、まずアメリカを優先するあたり、現在の日本政府の指向性がはっきりしていよう。

まだ詳細は不明だが、この制度はますます高級官僚の対米従属傾向を強める結果になるような気がする。
1970~80年代にアメリカの大学や研究機関に留学した経済学者や財政官僚が、アメリカ流の新自由主義を身につけ、日本で「構造改革」を主導したことを思い起こす。
アメリカの官庁で働き、アメリカの行政のやり方を「スタンダード」と思い込まされ、日本に帰国後、日本でもアメリカと同じ政策を実行する、という未来が容易に想像できる。
あるいは、アメリカに派遣中にアメリカ側の意のままにコントロールされるような人格にされ(たとえば弱みを握られ、情報提供者にさせられる)、アメリカ政府はこうした官僚を通して日本政府に対し、政策立案段階で介入することも可能になるのではないか。

小さなニュースだが、歪んだ日米関係の永続化を図るための謀略になりかねない危険性をもっているという点で、決して見逃すことはできない。

【関連リンク】
人事院
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by mahounofuefuki | 2007-12-03 12:12

ロシア下院選の日に考える~「下から」の民主化の帰結と政治文化

「なぜ日本では議会制民主主義が定着せず、機能しないのか?」
今から10年くらい前まで、私はその原因を、日本の民主主義が「下から」勝ち取ったものではなく、「上から」占領軍に与えられたものだからだと考えていた。
主権者として自立した人々による「市民社会」の可能性を純粋に信じていた頃の話である。

しかし、いつしかその考えはすっかり霧散してしまった。
考えが変わった第1の要因は、日本近代史を学習する中で、自由民権運動や大正デモクラシーなど戦前の日本における民主化の波が、私の勝手に思い込みとは違って、西欧の市民革命に劣らない、非常に充実したものだったと知ったことである。
日本には「下から」の民主化の伝統は実際に存在し、現在に至るまで着々と受け継がれているという事実は、占領軍が西欧型民主主義を「遅れた日本人」に授与したという皮相な見方を打ち消した。特に明治・大正期の帝国議会の会議録を読んで、当時の議員たちの憲政に賭ける気迫や演説の巧みさに驚かされた。現在の世襲議員ばかりの国会よりはるかに優秀であり、議会政治という点では、多数党の独裁になってしまっている戦後よりもよほど機能していたのではないか、とさえ考えるようになった。

第2の要因は、「下から」の革命を何度も経験しているはずのロシアの変貌である。
ロシアは周知の通り、第1次世界大戦のさなか、2度の革命で専制政治が倒され、史上初の社会主義国家であるソビエト連邦を打ち立てた。しかし、その結果はこれも周知の通り、スターリン独裁による全体主義を生みだし、民主主義の灯は完全に潰された。
その後、ソ連は1980年代末に、「下から」の民主化運動によって、全体主義の放棄を余儀なくされ、旧勢力によるクーデターの失敗を機にソ連は解体された。少年時代の私は「東欧革命」からソ連解体に至る、民衆が独裁権力を打ち倒す姿に素直に感動していた。
だが、ソ連解体後、民主化は順調に進むかと思いきや、急激な市場経済の導入でロシアは混乱し、議会制は機能せず、内戦寸前の状況が続いた。
そして、今世紀に入り、一連の革命劇がまるでなかったかのように、プーチンによるファシズム的な独裁が成立してしまった。「下から」の民主化と民主主義の定着には何ら相関関係がないことをようやく悟った。

今日、そのロシアで下院総選挙の投票が行われている。
どの報道もプーチン大統領の与党が圧勝すると伝えている。
先月、モスクワでプーチン独裁に抗するデモが行われ、チェスの元世界王者のカスパロフ氏らが逮捕された。彼は最近釈放されたが、記者会見で拘束中には弁護士との接見も許されなかったと語り、「ソ連時代にもなかった無法な反体制派抑圧がなされている」と告発した(毎日新聞 2007/12/01 20:42)。
政府に批判的なジャーナリストや言論人が何人も「消され」、スターリン時代を彷彿とさせるプーチン礼賛のプロパガンダが全国を覆っている。今やロシアには言論の自由も表現の自由もなく、権力分立も議会制民主主義もまったく存在しない。「カネ儲けの自由」=「搾取の自由」だけがあるぶん、ソ連時代よりも閉塞した社会であると言えよう。

ロシアはこの300年あまり、終始カリスマへの個人崇拝を生んできた。
イワン雷帝、ピョートル大帝、エカテリーナ2世といった専制君主たち。レーニン、スターリンといった巨人たち。それが東方正教の影響なのか、別の要因があるのか不明だが、ロシアの近世・近代はカリスマ的人格への「帰依」という政治文化が脈々と流れているような気がする。

ちなみに日本の方は、これとは対照的に責任の所在が不明確な「権力の多元性」の伝統が、徳川幕府以来続いていると言える。
日本とロシアは政治文化こそ異なるが、「下から」の民主化が制度化できないという点では共通する。プーチン独裁の行方は、現在、変動期にある日本の政治にとっても決して無縁ではない。
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by mahounofuefuki | 2007-12-02 15:47

トヨタ過労死訴訟で画期的な判決

2002年にトヨタ自動車堤工場で、当時30歳の社員が過労により死亡したにもかかわらず、豊田労働基準監督署が労災を認定しなかったため、死亡した社員の妻が労災不認定処分の取り消しを求めていた訴訟で、名古屋地裁は死亡と過労の因果関係を認め、処分の取り消しを命ずる判決を下した。

最近の司法は、過労死による労災を認める傾向があるが、今回の判決の画期的な点は、トヨタが従業員の自発的な活動で業務ではないと主張している、生産方式の「カイゼン活動」を業務と認めたことである。
トヨタは「創意くふう提案」「QC(クォリティーコントロール)サークル」などの小集団による「業務改善」を社員に行わせて、社員の企業共同体への一体化を進めているが、今に至るも経営側はこれらを会社の業務とみなしておらず、労基もトヨタに迎合して「カイゼン活動」時間を労働時間に算入しなかった。
今回の判決はそうしたトヨタと労基の欺瞞を突いたのである。
以下、毎日新聞(2007/12/01 01:05)より。
(前略) 判決で多見谷裁判長は「業務は精神的ストレスをもたらしたと推認できる。上司と職場に残っており、相当時間残業している勤務状況を上司は認識できた」と指摘。また、徹底的に職場の能率向上を図るトヨタ生産方式「カイゼン」のため、同社が社員に「創意くふう提案」などをさせる「小集団活動」についても、原告が業務の一部と主張したのに対し、判決は「運営に必要な準備を社内で行っており、業務と同様にとらえられる」と認定した。労基署は03年12月、「拘束時間すべてが労働時間ではなく、実際の残業は約45時間」と業務と死亡の因果関係を否定していた。(後略)
以下、朝日新聞(2007/12/01 07:57)より。
(前略) トヨタは、社員が創意くふう提案に費やす時間や、月2時間を超えるQCサークル活動を自発的活動とみなして、残業代も支給してこなかった。
 QC活動を「業務」と認定した理由について判決は、(1)会社紹介のパンフレットにも積極的に評価して取り上げている(2)上司が審査し、その内容が業務に反映される(3)リーダーは活動の状況を自己評価していた、などの点を指摘。QC活動はトヨタの自動車生産に「直接役立つ性質のもの」であり「使用者の支配下における業務」とした。
 原告側の弁護士は「外見上、自発的な活動としながら、企業が残業代を払わずに労働者に仕事をさせる巧妙なシステム。トヨタの急成長の秘密の一つだ」と指摘する。(後略)
要するに巧妙な「タダ働き」であり、労働者の生存権などこれっぽちも考えていない、奴隷労働である。

判決は、いわゆる「トヨタ方式」と呼ばれる徹底したコストカット管理については、判断を回避したが、莫大な政治資金で自民・民主両党の国会議員などを意のままに動かし、莫大な広告費でマスメディアを黙らせているトヨタの「実力」を考えれば、今回の裁判官は非常に勇敢であったと言えよう。

ちなみに、前記毎日電子版には、トヨタのコメントが載っているが、その内容は「ご遺族と国の訴訟でコメントする立場にございません。元社員がお亡くなりになられたことは心からお悔やみ申し上げ、社員の健康管理に一層努めてまいる所存です」という、反省のかけらもないものだ。
労働者が「社畜」と化して、身を粉にして全身全霊を尽くしても、「飼い主」は飼っている虫が1匹死んだくらいにしか考えていないのである。

なお、この過労死については、妻のインタヴューをもとに書かれた以下の記事が必読である。
MyNewsJapan-トヨタで死んだ 30歳過労死社員の妻は語る(1) 生体リズム壊す変則勤務体制
MyNewsJapan-トヨタで死んだ 30歳過労死社員の妻は語る(2) 利益1兆円を生む「賃金のつかない業務」
MyNewsJapan-トヨタで死んだ 30歳過労死社員の妻は語る(3) 「死んだら、もういらないの?」
*記事の全部閲覧は、有料会員限定。

《追記》

トラックバックしてくださった酒井徹の日々改善に、法廷での判決言い渡しの様子が記されている。
通常、裁判長は判決の主文のみを読み、あとは判決文を配布することで代えるのだが、今回の裁判長は自ら判決理由も述べ、原告に直接ねぎらいの言葉をかけ、さらに一部原告側の要求を判決理由に盛り込まなかったことの事情も説明したという。
司法権の独立、裁判官の独立が形骸化しつつある現在、まだこんな判事がいたことに深い感銘を覚えた。今や国を敗訴にすることは命がけである(住基ネットに違憲判決を出した判事が変死したことを忘れてはならない)。自己の良心に忠実な判事に敬意を表する。
なお、言うまでもないが、被告の国は控訴するべきではない。


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by mahounofuefuki | 2007-12-01 12:45