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「社会保障のための消費税増税」というまやかし

消費税増税への動きが加速している。
先月の経済財政諮問会議で、内閣府が社会保障維持のためには消費税を最低でも11%以上に引き上げる必要があるという試算を公表し、それを機に全国紙が一斉に「消費税増税やむなし」という宣伝を始めた。
伊藤隆敏・丹羽宇一郎・御手洗冨士夫・八代尚宏 「有識者議員提出資料 (給付と負担の選択肢について)」*PDF
伊藤隆敏・丹羽宇一郎・御手洗冨士夫・八代尚宏 「持続可能な基礎年金制度の構築に向けて」*PDF
今月に入ると、原油高騰やサブプライム問題による景気減速への不安から、政府・与党は来年度の消費税増税を見送る方針を固めたが、財政・税制関係の機関は動じることなく消費税増税路線を続けている。

まず財政制度等審議会が、来年度予算編成に関する意見書で、社会保障目的の消費税増税を提起した。
平成20年度予算の編成等に関する建議-財政制度等審議会*PDF
次いで政府税制調査会が、来年度税制改正の答申で、やはり社会保障の水準を維持するための消費税増税の必要性を明記した。
平成19年11月 抜本的な税制改革に向けた基本的考え方-税制調査会*PDF
さらに自民党の財政改革研究会は、明日の中間報告で、消費税の社会保障目的税化、2段階による消費税増税、消費税の名称変更などを提起するという。
社会保障目的明確化、消費税の名称変更を・・・財革研報告原案(読売新聞 2007/11/21 10:16)-Yahoo!ニュース
2009年度に基礎年金の国庫負担率が2分の1に引き上げられるのに合わせて、消費税増税を目論んでいるのが明白だ。

一連の動きに共通するのは、「社会保障給付を維持するために消費税を増税しなければならない」という思想である。
高齢化社会による社会保障費の増大→財源の不足→消費税増税」と「誘導」しているのである。

しかし、その思想は完全な誤りである。
第一に、社会保障の財源を消費税に限定する正当な理由は何もない
政府税調は今回の答申で、消費税を「経済の動向や人口構成の変化に左右されにくい」「世代間の不公平の是正に資する」と述べているが、実際は経済の動向の影響を受けやすく(家計が縮小すれば消費も減退する)、世代間の不公平を拡大する(年金生活の高齢者も税負担させられる)税である。現在、消費税以外の税も社会保障費に使っているが、何ら不都合はない。

第二に、消費税を増税すれば所得格差が増大し、結果として社会保障が貧弱になる
一般に社会保障は再分配機能があると思われているが、これは誤解である。年金も健康保険も保険料は所得にかかわらず定額で、消費税以上に逆進性をもつ。たとえば国民年金だと未納があれば給付が減額される。厚生年金だと報酬比例部分は生涯平均所得に左右される。いずれも高所得者に有利だ。
特に年金の場合、寿命に左右されるという宿命的な問題がある。社会保障の最高の受益者は「長命の金持ち」であり、最も不利なのは「短命の貧乏人」である。つまり、社会保障制度はそれ自体不平等なのである
この上、低所得者ほど不利な消費税を増税したら、ますます貧しい人の社会保障の負担力は低下し、受益も減少する。消費税増税は社会保障を安定にするどころか、保険料の不払いなどで社会保障の枠から脱落する人々を増やすだけである。
社会保障制度を持続させたかったら、所得の平等度を高くして、誰もが負担に耐えられるようにする必要がある。消費税がそれに逆行するのは言うまでもない。

第三に、財界や与党の本音は、企業減税の穴埋めに消費税増税分を使うことにある
そもそも消費税増税が社会保障目的であるという言説がまゆつばである。仮に歳出の社会保障費を全額消費税でまかなえば、今まで社会保障費に回していた他の税の分が浮く。実際はこれを利用して法人税の税率引き下げを企んでいるのである。
政府税調の井堀利宏委員(東京大学大学院教授)は、以前「消費税を上げる形での企業減税」を主張していた(ロイター 2007/10/02 19:04)。日本経団連をはじめ巨大企業の経営者たちは、ことあるごとに企業減税を唱え、法人税の実効税率の引き下げを要求している。これらの要求は消費税増税とワンセットである。

以上のように、「社会保障のための消費税増税」というのは真っ赤なウソである。
低所得から年金を払えず、健康保険証も取り上げられる人々が続出する中で、追い討ちをかけるように消費税を引き上げたらどうなるか、誰でも想像がつくだろう。
現在必要なのは、社会保障制度からはじかれた貧困層を制度内に取り込むことである。そのためには消費税の増税などもってのほかであり、所得格差を縮小するために所得税の累進を強化すること、資産への課税を強化することが何よりも必要である。


《追記》

この記事を書いたあと、消費税について興味深い記述を見つけたので、引用する。
晴天とら日和:消費税の社会保障財源化は選択肢のひとつとして幅広く検討すべき=政府税調答申⇒でもねぇ、「消費税導入」時には「福祉目的で導入する」とおっしゃってませんでしたか! 社民党は福祉削減の脅しで大増税あおるなと大反撃!⇒クソ自公チューのニャロメ!より。
(前略)消費税で苦しんでいる人たちがいる一方で、消費税をもらう人たちがいます。不公平の極みです。トヨタ、キャノン、ソニー、ホンダ、東芝、NECなどわが国を代表する大企業は消費税を一銭も納めません。納めないどころか、トヨタは年間二〇〇〇億円もの輸出戻し税を受け取っています。輸出戻し税制度です。輸出する場合、輸出先の国の税金がかかるので、輸出品に消費税をかけない。消費税をかけないのだから、輸出企業が下請けなどに払ったとされる消費税は戻しましょうという制度です。

その輸出戻し税が毎月、税務署から輸出企業の口座に振り込まれます。輸出戻し税の総額は、年間で約二兆円。これほど財政危機だと騒いでいるのに、税務署は輸出している大企業に二兆円も支払っているのです。このような輸出戻し税制度は、ヨーロッパにはありますが、アメリカにはありません。この輸出戻し税は一種の輸出補助金であり、ただちに廃止すべきと私は主張しています。トヨタは輸出戻し税があるから消費税を導入した、と言っています。

税務署は全国に五百十二あります。税金を徴収するのが税務署の仕事ですから、徴収する税金が上がる税務署ほど、署長の評価が高くなります。トヨタがある愛知県の豊田税務署は、徴収する税金が上がるどころか、トヨタ一社に対する輸出戻し税のためにマイナスです。トヨタなどが主導している日本経団連が、なぜ消費税引き上げに必死になるのか、おわかりと思います。五%の消費税で、トヨタは年間二〇〇〇億円の輸出戻し税を受け取ります。消費税が一〇%になれば、トヨタの受け取りは二倍の四〇〇〇億円になります。消費者や大部分の事業者に負担が重く、大企業に利益となる、これほど不公平な税金はありません。(後略)


【関連記事】
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消費税増税問題に関するリンク
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by mahounofuefuki | 2007-11-21 16:19

「死亡38人」の重み

血液製剤投与による薬害C型肝炎感染の疑いが濃厚な患者リスト(厚生労働省が放置していた)に記載された418人に関する調査状況を、田辺三菱製薬(旧ミドリ十字)が厚労省に報告した。

11月16日時点で、418人のうち242人をほぼ特定し、このうち73人に医療機関から血液製剤投与の事実を告知したという。73人のうち治療済みは13人、治療中は23人で、残りは治療の有無を確認できないという(読売新聞 2007/11/20 12:37)。
一方、身元判明者のうち38人の死亡を確認し、24人が所在不明だという(同前)
田辺三菱製薬は「厚生労働省から具体的な指示がない」として38人の死因調査を行っていない(朝日新聞 2007/11/20)。
また、身元不明の残りの176人については、医療機関の廃院や投与記録の廃棄などで特定が難しくなっているようだ(毎日新聞 2007/11/20 12:45)

死者が242人中38人というのは、想像以上に多い。
投与時期や年齢を考慮すれば、このうちの相当数が肝炎による死亡ではないか。もっと早くしっかりした調査を行っていれば、こんなことにならなかったことは誰の目にも明らかだ。
製薬会社はこの期に及んで、死因調査を渋り、死亡した患者への遺族への通知を医療機関の判断に委ねているというのだから(朝日同前)、その無責任ぶりにあきれるしかない。

薬害C型肝炎訴訟は裁判所が和解勧告を出し、微妙な状況に入っているが、一部の報道では政府側はすべての患者ではなく、投与時期により限定して、一部の患者のみに賠償に応じる準備を進めているという。厚労省の狙いは原告の分断であり、少しでも責任を回避しようという姿勢が明白だ。
厚労省といい、製薬会社といい、まったく反省はなく、自己保身しか考えていない。

一連の問題の教訓は、行政や企業は腐りきっており、何も期待してはならず、不正に対しては妥協することなく闘い続けるしかないということだ。
泣き寝入りして殺される前に、あらゆる手を尽くして闘うしか、虐げられた者が生きる道はない。これはすべての問題に通じるだろう。

【関連記事】
薬害C型肝炎
反省しない厚生労働省
「下」には厳しいが「上」には甘い官僚組織

【関連リンク】
Yahoo!ニュース-薬害問題
薬害肝炎訴訟 リレーブログ B型・C型肝炎患者の早期全面救済を!
薬害肝炎訴訟全国弁護団ホームページ
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by mahounofuefuki | 2007-11-20 22:47

財政審の生活破壊路線

財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会が、来年度予算編成への意見書を提出した。
平成20年度予算の編成等に関する建議-財政制度等審議会*PDF
例年のことだが、あれも減らせ、これも減らせと、上から下まで「歳出削減」のオンパレードであり、頭の痛くなる内容である。
1つだけ例年と異なるのは、消費税増税を進言したことである。

福田政権は、小泉・安倍政権の「構造改革」という名の「庶民いじめ」を一定程度修正するそぶりを見せて登場したが、むしろ財務省はこれを機に歳出削減は今まで通り進め、他方で小泉・安倍時代には叶わなかった消費税増税を何としても実現しようとしている。
すでに政府税調・自民党税調が来年度の消費税増税を見送る方針を固め、福田首相も消極姿勢に転換したにもかかわらず、財政審は財務省の意向に沿って消費税増税を主張したのである。
これは財務省が消費税増税を前提とした予算編成を企てていることを意味する。
以前からこのブログで警告していたように、消費税増税は「今そこにある危機」なのである。

恒例の「歳出削減」要求についてはリンクしたファイルを参照してほしいが(量が膨大なので、最後のページの要約だけでも)、相変わらずの生活破壊路線である。
ただでさえ医師が不足して、特に勤務医は過労に苦しんでいるのに、さらなる診療報酬の削減を要求する傲慢さ。
1学級あたりの子ども数は欧米諸国より多いが、教員1人あたりの子ども数は遜色ないので、教員の増員は不要であるという詭弁(都市部もへき地も一緒の統計ではそうなるのは当然)。
地方法人2税の「共同財源」化を提起して、税収の多い都府県とそうでない県との離間を図る狡猾(だまって地方交付税を元に戻せ)。
大量の資料を挙げてはいるが、いずれも財務省に有利な偏向したデータばかりであり、検証が必要である。
唯一評価できるのは、在日米軍への「思いやり予算」の見直しと透明化を提起したことくらいであろう。

そもそも、まるで国家財政が今にも破たんするようなプロパガンダを行っているが、その原因は再三にわたり金持ち減税を繰り返したからである。その歪みを無視して歳出削減も消費税増税もありえない。
現在必要なのは、法人税の復旧と所得税の累進強化と資産課税の強化であって、国家の所得再配分機能を回復することが何よりも求められている。

「消費税増税」でも「歳出削減」でもなく「金持ちに応分の負担を」と、声を大にして言いたい。

【関連記事】
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by mahounofuefuki | 2007-11-20 00:12

【転載】沖縄戦検定にかかわる訂正申請提出にあたっての声明-社会科教科書執筆者懇談会

http://susumerukai.web.fc2.com/appeal15.pdf

沖縄戦検定にかかわる訂正申請提出にあたっての声明

1.私たちは、社会科教科書執筆者として、沖縄戦に関する今回の不法な検定によって歪められた教科書記述を回復する方法について模索してきた。そのなかで去る9 月25 日に歴史学・歴史教育関係者17 人の呼びかけによって開かれた社会科教科書執筆者懇談会において、一つの方法として、困難ではあるが訂正申請を提出する方向で各社それぞれに努力することを申し合わせた。その結果、今回の検定意見の対象になったすべての教科書で訂正申請にむけての準備が進むことになった。
 ところがその後、沖縄県民大会で示された意思を受け、政府は訂正申請が出されれば対応するむねをにわかに表明するにいたった。しかしながら検定意見の撤回はあくまで拒否する姿勢であることから、訂正申請受理によって、問題の本質的根本的解決をうやむやにしたまま政治的決着をはかるのではないかとの疑念が沖縄県民はじめ関係者のなかに生まれることになった。私たちはこのようなあいまいな決着に組みすることは本意ではないので、しばらく状況の推移を見守りつつ訂正申請を保留し熟慮してきたところである。
 しかし11 月をむかえようとするなかで、以下の4に述べる理由によって、訂正申請を行うことに決した。その結果、おおむね11 月1 日から5 日の間に、すべての教科書の訂正申請が文科省に提出されることになった。提出された訂正申請の内容は、少なくとも検定前の記述の回復を実現しようとするものであり、さらに若干の改善を含むものもあることをこの間の執筆者懇談会における協議で確認している。本年4 月以降にさらに明らかになった「集団自決」をめぐる歴史事実や沖縄戦検定問題の経緯をふまえ執筆者の学問的・教育的良心にもとづいて行われたこれらの訂正申請を、文科省は当然受け入れるべきである。
 訂正申請の提出がほぼ完了するにあたり、このことについての私たちの真意をいっそう明らかにするため、ここに声明を発表する。

2.今回の検定意見が担当の教科書調査官によって執筆者と教科書会社に口頭で説明されたとき、林博史氏の著書『沖縄戦と民衆』の記述が根拠にあげられた。たしかに林氏の著書には、慶良間諸島の事例について、軍からの明示の自決命令はなかったと書いた箇所がある。しかし林氏の著書全体の趣旨は、さまざまな形での軍からの強制がなければ「集団自決」は起こりえなかったと、「自決」が起こらなかった地域との対比のなかで結論づけている。教科書調査官は初歩的かつ明白な誤読をしており、検定審議会委員もそれを追認した。このような初歩的な誤読にもとづく検定意見が、文科省のいうように、学問的立場から公正に審議した結論だなどとはいえない。
 林氏の著書はすでに2001 年に刊行されたものである。なぜそれが突然今回の検定で持ち出されたのか。今回、軍による強制を削除する結論が先にあって、それにあわせて急遽この数年前の著書を持ち出したのではないかとの疑いが消せない。
 文科省は、執筆者・教科書会社への説明では言わなかった別の根拠を、記者への説明で明らかにした。執筆者への説明と記者への説明が異なるということ自体、きわめて不正常であるが、その別の根拠が、座間味島駐屯の梅沢元戦隊長らが大江健三郎氏らを名誉毀損で訴えた裁判での梅沢氏自身の陳述書である。係争中の裁判の一方の側の主張を検定意見の根拠にしたものであり、係争中の裁判での一方の側の主張を教科書に記述してはならないと言ってきた文科省自身のこれまでの言明とも明らかに反するものである。しかもそれすら検定審議会はなんらの疑問を呈することなく、そのまま通してしまった。なぜこのようなことがおこったのか、強い疑問をもたざるを得ないが、この点も文科省によってなんら説明されていない。
 以上から明らかなように、そもそも今回の検定意見自体が、内容的にも、手続き的にもきわめて不正常なものである。
 このようなきわめて不正常な検定意見はただちに撤回されるべきである。同時にこのような検定意見が付された経過と原因、およびそれに対する責任を明らかにすべきであり、そのためにも今回の沖縄戦に関する検定意見は撤回するしかないと考える。

3.訂正申請にもとづく記述の回復・訂正も、本来検定意見撤回という前提のもとに行われるべきものである。検定意見が撤回されないもとで、訂正申請に対して何を基準にその内容を審査するのかを、文科省はまったく明らかにしていない。このような不明朗な審査を行うべきではない。その意味で、訂正申請のみによって問題が正しく解決されるとは到底考えられない。よって私たちは、問題の根本的解決のために検定意見の撤回をあくまでも求める立場に変わりはない。

4.けれども一方で、来年4 月に高校生に教科書が手渡される前になんとしても記述の回復・改善を実現したいという思いを私たちは強く持っている。いまだ検定意見が撤回されないため、記述の回復・改善のための条件が十分に整っているとはいえないが、今後の検定意見撤回に向けた動きのなかで、文字通りの記述の回復・改善の実現をさらに追求していくことを前提にしつつ、来年4 月の教科書の供給に間に合わせることを考え、記述の回復・改善のための一つの方法として、この時点での訂正申請の提出に踏み切った。

5.3でも述べたように、検定意見が撤回されないもとでは、今後、訂正申請に対しても恣意的な修正要求が文科省・検定審議会から出される可能性がある。ここでも文科省・検定審議会が沖縄県民や各研究者などから示された具体的歴史事実、とくに最近続々とあらわれている新しい証言などにどれだけ真摯に対応するのかが問われることになる。
 このような状況のもとで、私たちは訂正申請の内容およびその後の経過について、できるかぎり公開することにより、市民の監視と健全なる批判のもとで訂正申請が処理されることを期したい。
 そのさい文科省の不当な対応があればただちに批判の声をあげてくださることをすべての人々にお願いしたい。また、執筆者としても、市民の皆さまの適切な批判・助言を仰ぎつつ、今後のさまざまな動きに対応していきたいと考えている。
 訂正申請の内容とその処理の過程が公開されることは、これだけの大きな社会問題となった沖縄戦検定についての市民の知る権利を保障するためにも重要である。

6.さらに、今回の検定問題を通じて明らかになった、次のような検定制度の改善すべき点についても検討し取り組んでいく所存である。
1)教科書調査官、検定審議会委員の人選を透明化、公正化すること。
2)検定審議会の審議を公開すること。
3)検定意見に対する不服申し立てについては、実際に機能する制度にすること。
4)検定基準に沖縄条項を設け、それに対応して検定審議会委員に沖縄近現代史の専門家を任命すること。
5)教科書調査官制度について、その権限の縮小ないしは廃止を検討すること。
6)検定審議会を文科省から独立した機関とするよう検討すること。

2007 年11 月7 日
 社会科教科書執筆者懇談会
   呼びかけ人
     荒井信一 石山久男 宇佐美ミサ子 大日方純夫 木畑洋一 木村茂光 高嶋伸欣
     田港朝昭 中野 聡 西川正雄 浜林正夫 広川禎秀 服藤早苗 峰岸純夫
     宮地正人 山口剛史 米田佐代子
      連絡責任者 石山久男 170-0005 豊島区南大塚2-13-8 歴史教育者協議会内
                     TEL 080-3023-6880 03-3947-5701

【関連リンク】
沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会
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by mahounofuefuki | 2007-11-18 20:30

「アカの壁」を越えるために

最近忙しくて自分のブログを更新するのが精一杯で、なかなかよそ様のブログを精読できない(故にTBもあまり出せない)。
以前何度かTBをいただいた(なぜか当方からは成功したためしがないのが心苦しい)SIMANTO BBSの連載中(?)の力作記事「『バカの壁』より『アカの壁』」も「読みたい~」と思いつつ、RSSリーダーでタイトルをチェックするだけで、今日まで読めずにいた。
今日ようやく今までの6回分の記事を全部読めたので、私も前々から関心をもっている「アカの壁」について、自分なりの考えをまとめておきたい。

「アカの壁」とは人々の思考に根を張る「共産党嫌い」の心理のことである。
「反共主義」というほどではなくても、何となく「共産党は胡散臭い」「共産党は怖い」という大衆心理を指す。
日本共産党が「労働者の党」を称しながら、肝心の労働者に支持が広がらず、党勢が衰える一方なのは、この「アカの壁」が立ちはだかっているからである。
「アカの壁」の最大の要因は権力側の「反共宣伝」であるが、それが誤解と偏見にすぎないことはsimantoさんがお書きなので(特に「自共共闘」の実体験は必読!)、私は共産党側が抱える課題を指摘する。

実は「アカの壁」と言っても、世代や階級によってずいぶん違いがある。
70代以上の人々に話を聞くと、1950年代に共産党が武力革命路線をとり、「山村工作」というゲリラ活動をやっていた頃の恐怖を今も語る。その時の実体験と戦中に受けた教育の影響で共産党に対するアレルギーはすさまじい。共産主義と軍国主義を同一視している老人も少なくない。

また、1970年前後に大学生だった「団塊の世代」だと、学生運動のトラウマが今も深く刻まれていて、反共産党系のセクトにいた人々の共産党に対する憎しみはこれまたすさまじい。
藤原伊織の小説『テロリストのパラソル』に、東大の安田講堂を学生が占拠していた当時、1階を抑えていた民青(共産党の青年組織「民主青年同盟」)系が、上階を抑える全共闘へのいやがらせに燻煙式殺虫剤「バルサン」を焚く場面があるが、そういう神経戦や、実際に殴り合いを経験している人々は、今も複雑な感情をもっている(ついでに言えばそんな学生抗争に無縁だった低学歴層は疎外感からやはり反共主義へ流れやすい。私の父親がそうだった)。

特に何らかの理由で共産党を除名されたり、離党した人々は、思い切って右翼へ「転向」し、共産党への粘着質な攻撃に身を委ねる場合も少なくない。拉致の「救う会」会長の佐藤勝己や「自由主義史観」の藤岡信勝らがその典型であろう(筆坂さんは大丈夫かな?)。

一方、そうしたトラウマのない40代以下の世代の場合、共産党に限らず徒党を組むことへの抵抗感が何よりも強く、彼らの視点では共産党は宗教団体と同じである。
1970~1990年代は「政治離れ」の時代であり、下手に「お上」に逆らって悲惨な生活を送るよりも、適当に実社会と折り合いをつけて個人の「ささやかな幸福」を追求する「小市民的保守主義」が主流となった。そんな状況では革命政党たる共産党の基盤が拡大するはずもない。
もちろん「小市民的保守主義」にあきたらない人々も少なからずいたが、彼らは一般の大衆よりも組織や党派への不信感が強く、小規模な市民運動の方へ流れた。この流れは今も続いている。

それでは貧困と格差が拡大した現在、「小市民的保守主義」を望んでも「小市民」になりえない若い貧困層が共産党を支持するかというと、これも重大な「アカの壁」がそびえたつ。
『世界』先月号で、プレカリアート運動の雨宮処凛さんが、その昔右翼に加わった原因として、左翼の言っていることは難しくて理解できなかった、と回想していたが、はっきり言って共産党の「言葉」はテレビやゲームで育った若者には難しすぎるのである。

simantoさんがブログで共産党の綱領をたくさん引用されているが、文体の固さに加え、「科学的社会主義」「独占資本主義」「半封建的地主制」「絶対主義的天皇制」などの専門用語は、社会科学系の高等教育を学んでいないと「呪文」でしかない(かといって逆に知識があると、その教条主義的な解釈に近年の学界の研究動向との矛盾を感じる)。
「しんぶん赤旗」の記事やパンフレットなどは表面的にはずいぶん平易な言葉で書かれているが、インテリ臭はなかなか消えていない。いくら「労働者の味方」「庶民の味方」と口先で言っても、当の「労働者」や「庶民」は「インテリ以外お断り」という体臭を嗅ぎ取ってしまうのである。

私のブログの文章も読みやすさを度外視しているし、私はある種の大衆不信をもっているので(そのあたりは当ブログの光市母子殺害事件の記事を読んでいただければご理解いただけると思う)、人のことは言えないが、現在の共産党員・支持者の主力が公務員・教員・看護師・薬剤師などの専門職に限られている状況を打破するには、もっと綺麗事ではない世俗に生きる本当の庶民に響く主張と言葉が必要だろう。

ちなみに、私の知っている党員(やそれらしき人)は、不破哲三氏のコピーみたいな人から「ソ連は良かった」とか「アメリカから自立するためには核武装が必要だ」とのたまう人まで千差万別だが、共通するのは「頭がいい」ことと「面倒見がいい」ことで、こちらに偏見さえなければ頼りになるし、自民党に与する某巨大宗教団体の人々のように「勧誘活動」をするわけでもない。
「完璧な政党」などありえないのだから、組織の閉鎖性や党綱領の教条主義性を理由に排除するのはあまりにも狭量だ。

何といっても唯一、企業・団体の政治献金も国からの政党助成金も受けていない政党であることを忘れてはならない。
私は政権交代の意義を否定するわけではないが、小沢一郎率いる民主党は、最低賃金法改正案や労働契約法案の例を挙げるまでもなく(あるいは郵政民営化凍結法案も参院に出しただけで未だ何ら審議が行われていない)、本質的には「自民党政治」を転換する意思が不透明であるばかりか、もっと悪政になる可能性すら秘めている。
政権交代よりも共産党の議席が衆院で40以上になることの方がよほど政界にインパクトがある。現状では絶望的に厳しいが、人々が「アカの壁」を越えるきっかけさえつかめば不可能ではない。


(本当は「国民」と「人民」の問題とか、民主集中制の意義と限界とか、労働運動史・社会主義運動史における日本共産党の位置とか、社会主義とナショナリズムの関係とか、もっとディープな話もしたいが、学生時代ならともかく、今やすっかり錆びついた私の脳では技術的にも時間的にも無理なので見送る。)

【関連リンク】
SIMANTO BBS 104:「バカの壁」より「アカの壁」 その1
SIMANTO BBS 105:「バカの壁」より「アカの壁」 その2
SIMANTO BBS 106:「バカの壁」より「アカの壁」 その3
SIMANTO BBS 107:「バカの壁」より「アカの壁」 その4
SIMANTO BBS 108:「バカの壁」より「アカの壁」 その5
SIMANTO BBS 109:「バカの壁」より「アカの壁」 その6

(追記)
SIMANTO BBS 110:「バカの壁」より「アカの壁」 その7
SIMANTO BBS 111:「アカの壁」 その8(大阪弁で語る綱領)
SIMANTO BBS 112:「アカの壁」 その9(大阪弁で語る綱領)
SIMANTO BBS 113:「アカの壁」 その10(大阪弁で語る綱領)
SIMANTO BBS 114:「アカの壁」 その11(大阪弁で語る綱領)
SIMANTO BBS 115:「アカの壁」 その12(大阪弁で語る綱領)
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by mahounofuefuki | 2007-11-18 16:33

10億円寄付は「美談」ではない

神奈川県大磯町の88歳の女性が、出身地の同県足柄市に10億円を寄付したニュース。
市役所の机の上に積み上げられた札束に庶民ならだれもが驚いただろう。

「難民世代」の貧民としては、貧困と格差が拡大し続けるこの国で、こういう有り余るほどのカネをもつ人間の存在を許すことができない。
何者かは知らないが、資本主義社会では誰も犠牲にせず、悪事を働かないで富豪になることなどまずありえない。企業経営者ならば労働者が、地主ならば土地を奪われた人々が犠牲になっているのである。今回の人の良さそうな老婆も例外ではない。その手は確実に汚れている。

その有り余るカネを市役所なんかに寄付してしまうのが何とも偽善的だ。
彼女のような「上流階級」は、この日本で餓死者が出ていることも、孫のような年の若者が住むところもなく、ネットカフェ難民やホームレスになっていることなど、まったく知らないのだろう。
その10億円があれば、ホームレスやネットカフェ難民の相当数の敷金・礼金をまかなえるだろう。
その10億円があれば、何人の多重債務者を救えるだろう。
市役所なんかに寄付しても財政赤字の穴埋めになるだけだ。

この国の矛盾が如実に現れた不快なニュースだ。
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by mahounofuefuki | 2007-11-16 17:07

【転載】11/14 労働契約法NO!で、250名国会前で 共同集会盛り上げる!!-働く女性の全国センター

http://acw2.org/news?id=166

11/14 労働契約法NO!で、250名国会前で 共同集会盛り上げる!!

転載・転送歓迎  報告 NO 1

みなさま
働く女性の全国センターは、
本日、朝10時から、参議院民主党全員に対してロビー
昼休み集会に合流しました。参加者は約250名


下記 動画サイトアドレス 

ユニオンチューブにアップされました。

http://video.labornetjp.org/Members/akira/videos/1114.wmv/view

パートや派遣、女性や若者の声を聞け!
労働条件の一方的切り下げのための労働契約法NO!
人間らしい生活ができる最低賃金法の改正を!
新テロ特措法反対!緊急国会前共同集会 

主催団体は、働く女性の全国センター(ACW2)、全労協、全労連、
労働法制中央連絡会、公務労組連絡会、安保廃棄中央実行委員会

司会は、働く女性の全国センターの代表伊藤みどりが行いました。
3分間スピーチは、(実際の順番は、別)

コミュニティユニオン関西ネットワーク運営委員 屋嘉比さん
女性ユニオン東京 藤井さん
新婦人の会 古田さん
首都圏青年ユニオン 松崎さん
全労協全国協議会 遠藤さん
中小ネット    田宮さん
全港湾本部   伊藤さん
全労連自治労連 野村さん
全労連政策局長 井筒さん
安保破棄中央実行委員会 日本平和委員会 佐藤さん

らが、それぞれアピール

国会議員は、

赤嶺政賢 衆議院議員、高橋ちづ子 衆議院議員
川田龍平 参議院議員が、駆けつけ激励の挨拶
(福島みずほさんは、参加予定でしたが間に合いませんでした。)

最後のシュプレヒコールは、
働く女性の全国センター 藤井さん
労働法制中央連絡会 高島さんが、行い
全員で団結がんばろーをしました

ようやく、ナショナルセンターを越え、一緒に行動が実現
たぶん、ユニオンチューブにアップされるのではと思いますので
詳細は、後で又、知らせます

発言できなかったけど、参加した労働組合、ユニオンの皆さん
明日からも、あきらめないで頑張りましょう。


今後の審議予定です。参考人質問が入りました!!!

11月15日(木)
10時から 労働契約法、最低賃金法趣旨説明

11月20日(火) 10時 厚生労働省 審議 
11月22日(木) 厚生労働省 参考人質問 (ついに、ここまで動いたぞ!)

傍聴希望者は、本日7時までに、ACW2事務局にご連絡下さい
氏名・職業 明記 


今後の行動案 
19日の、夜、パレード?  リレーハンスト?
    ダイイン ? もっと盛り上げないと駄目!
    労基法を燃やす? アイデア大至急募集 
    誰か、非暴力抵抗で タ■ホ? されても良い方も!?
    募集します!! 
   (冗談じゃないよ!ユニオンへの死の宣告になるほどの悪法だから)

FAX作戦は、連合本部 高木会長あてにも 送りましょう!!
労働組合の多数でも、世間の少数だってことを訴えてください。
非正規雇用センター作ったのはいいけど、パートや派遣や
女性のために労働契約法を廃案にしてと訴えて下さい。

民主党のロビーは、賛成、反対、保留の意見表明を求めました。
党の決定に従うと言う主体のない議員も多かったですが。
賛成するなら次期選挙で入れませんよ というと保留という
答えが返ってきました。

労働契約法NO!のFAX 行動 びかけです。できることをやりましょう
あきらめないで、将来に禍根を残さないで、
派遣法成立の時、反対を労働団体はしませんでした。
そのつけが、今回ってきているんだから
今行動するときです。後悔しても今度こそ遅すぎることに
ならないように!!!、

■ 連合 代表 FAX 03-5295-0535

■連合東京 FAX 03-5444-0303

■連合総合人権 男女平等局 FAX 03-5295-0549

■連合 雇用法制対策局 FAX 03-5295-0545 

■連合への要望書 見本 http://files.acw2.org/rengo.doc

■参議院民主党のFAX  http://files.acw2.org/sangin2.xls

■民主党議員向け FAX意見書見本 
http://files.acw2.org/syusei.doc


(以下は「世界の片隅でニュースを読む」管理人の追記)

労働契約法案の最大の問題は、使用者が定める就業規則を「労働契約」と位置づけ、使用者側が一方的に労働条件を労働者にとって不利な内容に変更をすることを合法化する点にある。
法案の第9条但し書きと第10条の例外規定の削除が何としても必要である。
民主党は衆院で政府案に賛成したが、問題の重大性を理解していない議員も少なくないと考えられる。参院の審議では第1党の民主党の動向にかかっていることは言うまでもない。

なお、国会議員などへ要望を伝える場合には、村野瀬玲奈の秘書課広報室備え付け資料が便利である。活用したい。


【関連記事】
労働契約法に関するリンク
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by mahounofuefuki | 2007-11-16 12:37

消費税増税の危機は続く

すでに何度もブログに書いてきたが、政府の消費税増税への動きは本格化している

最近、原油市場の高騰やそれに連動した物価の高騰のためか、政府・与党内の消費税増税の動きは一見鈍化してはいるが、一時的な擬態にすぎない。
税制に最も大きな影響力をもつ自民党税調が、来年度の消費税増税を見送る方針を固めたと伝えられているし(時事通信 2007/11/15 01:01)、福田康夫首相も「中期的に財政健全化が必要なのは理解できるが、消費増税に結論を求めるかは慎重に見極める必要がある」と述べて(朝日新聞 2007/11/13 19:08)、慎重な姿勢を見せてはいるが、あくまでも来年度の増税を見送るというだけの話であり、消費税増税への権力の意思は何ら衰えていない。

政府税調の来年度税制改正答申には、具体的な税率や引き上げ時期こそ明記しないようだが、消費税率引き上げの必要性を盛り込むことがすでに決定している(朝日新聞 2007/11/09 22:03など)。
自民党の伊吹文明幹事長は、14日の日本記者クラブでの記者会見で、段階的な消費税引き上げを表明している(朝日新聞 2007/11/15 06:05)
そして何よりも、企業減税の財源を何としても捻出したい財界が、今すぐにでも消費税を増税したがっており、まったく諦めていないからだ。

今日(11月15日)開かれた財務省と日本経団連の意見交換会で、財界側は執拗に消費税増税を要求している。
以下、ロイター(2007/11/15 13:35)より。*太字は引用者による。
(前略)経団連の大橋光夫・昭和電工会長は、日本の財政状況を考えると税財政の抜本改革が必要だとし「法人税率引き下げも課題だが、それよりも消費税の拡充は不可避だ」との認識を示した。
 これに対し額賀財務相は「社会保障の安定財源として消費税を含む税制の抜本改革に取り組む。ただこうした国家的課題は与野党で十分検討する必要がある。消費税については、こうしたことや政治・経済情勢全般を見て総合的に判断する必要がある」と従来の見解を繰り返すにとどめた。
 また、経団連側が証券優遇税制の継続を求めたのに対し、額賀財務相は「経済状況も踏まえながら、一方で将来の姿などいろいろな議論がされているので、これらを踏まえて年末までに結論を得たい」と述べたという。(後略)
現実には法人税は「引き下げ」ではなく、「引き上げ」こそが課題なのだが、巨大企業の資本家たちはどこ吹く風、法人税減税路線は既定として、政府側に消費税増税を迫ったのである。
額賀福志郎財務大臣は消費税引き上げの必要性を認めた上で、ご丁寧にも「与野党で十分検討する必要がある」と、野党(といっても民主党だけだろうけど)を消費税増税に引き込む意思を示したのである。

財界側は消費税にあきたらず、証券優遇課税の延長をも要求し、財務大臣も考慮を約したというから、まったく虫のいい話である。連中には金持ちたちのエゴしか頭になく、富の配分をさらに株主や経営者に大きく偏らせようとしているのだ。

「社会保障の財源」という美名に絶対だまされてはいけない。一方で政府は年金や生活保護などの給付を減らす策を練っているのだから、矛盾もはなはだしい。
同時に「消費税を引き上げる前に、歳出削減を」という俗論も間違っている。これ以上歳出削減して「小さな政府」にしたら、行政サービスを悪化させるだけだ。
必要なのは所得再配分の回復であり、そのためには不労所得や資産への課税強化と、累進課税の強化こそが必要なのだ。間違っても消費税増税論に賛成してはならない。

企業の政治献金を受ける自民党や民主党がいつでも庶民への増税を強行する危険性を常に念頭に置かねばならない。
この問題は嫌がられても何度でも取り上げる。私はしつこいのだ。

【関連記事】
政府とマスコミが一体化した「消費税増税キャンペーン」
消費税増税問題に関するリンク
法人申告所得過去最高でも消費税上げますか?
本格化する消費税増税の動き

【関連リンク】
Yahoo!ニュース-消費税引き上げ問題
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by mahounofuefuki | 2007-11-15 17:57

堺市の入院患者置き去り問題について

堺市のある総合病院の職員らが、糖尿病で入院中だった60代の全盲の患者を連れ出し、大阪市内の公園に放置していた問題が明るみになった。

東京新聞(2007/11/14 朝刊)より。
(前略) 調べや病院などによると、職員と医事課員三人は九月二十一日午後一時ごろ、男性を車に乗せ、大阪市住吉区の男性宅に連れて行ったが、住んでいた前妻(63)が引き取りを拒否。午後二時二十分ごろ、病院から約十キロ離れた西成区の公園に連れて行ってベンチに座らせ、下着類などの荷物とともに置き去りにした。
 四人のうち一人は直後に匿名で「目の見えない男性が倒れている」と一一九番し、サイレンの音を確認して立ち去った。男性は別の病院に運ばれ、現在も入院中。搬送時、救急隊に「熱がある」と訴えていた。
 渉外係の職員は「前妻から『持病があり、困る』と拒否され、どうにもならず、救急隊に任せれば大丈夫と思った」と話しているという。
 男性は糖尿病で約七年前から入院。当初は生活保護を受けていたが、約二年前に打ち切られたという。病院側は「治療は必要だが通院で対応できる」として退院を勧めていた。入院費約百八十五万円が未払いだったほか、待遇などをめぐりトラブルになっていた。(後略)
毎日新聞(2007/11/13 21:00)より。
(前略) 同病院や堺市保健所によると、男性は約2年前から入院費用など治療費を滞納。約3年前から退院可能な病状だった上、自宅が判明したため、職員4人が9月21日午後1時ごろ、男性を車に乗せて大阪市住吉区内にある男性の自宅を訪れた。しかし、同居する前妻が本人の持病を理由に引き取りを拒否したことから、同2時20分ごろ、西成区内の公園で男性を降ろして放置した。(中略)
 男性は約7年前に入院。生活保護が打ち切られて治療費が滞納状況となり、備品を壊したり看護師に暴言を吐くなどトラブルもあったという。(後略)
既に大阪府警が保護責任者遺棄容疑で病院を捜索し、堺市保健所が医療法違反にあたるとして病院へ行政指導したという。

前記東京新聞には院長のコメントが出ている。
 医療人として非常に恥ずかしい。この一言に尽きる。職員が独断でやったことだが、反省しきりだ。ただ、病室でのトラブルが続き、入院費も未納で、福祉事務所や保健所に何度も相談に行ったが対応してもらえなかった。私たちが(患者と行政側の)谷間だった。治療は必要だが通院で対応できる状況で「通院してください」とお願いしていた。
病院が問題の患者を持て余していたこと、事件が起きるまで行政が何ら対応していなかったことがわかる。

この問題について、弁護士の津久井進さんが論じており、一部引用する。
津久井進の弁護士ノート 本当に保護責任者遺棄をしたのは誰か?~現代姥捨山
(前略) まだ立件されているわけではないけれども,私は,この病院を弁護したい。

 もちろん,この職員の行為は,医療関係者としてあるまじき行為であるであって,当然,責任はあるだろう。
 しかし,本当に悪いのは,別のところにあるのではないか。
 真の原因は,違うところにあるのではないか。

 第1に,最初にこの患者を見捨てたのは,大阪市の生活保護課ではないのか。
 詳しい事情はよく分からないけれども,2年前に生活保護が打ち切られたとのこと。
 生活保護の受給を受けていたら,医療扶助があるので,医療費滞納などという事態は起こりえない。
 生活保護の打ち切りで,現実の不利益を受けるのは,病院ではないのか。

 第2に,病院を追い詰めたのは,厚生労働省の政策にほかならない。
 厚生労働省は,「療養病床」の削減計画を打ち出している。
 「療養病床」というのは,治療目的の一般病床ではなく,長期入院のお年寄りの受け皿の病床だ。
 医療費圧縮のために,現在,全国に約35万床あるのを,5年後までに約15万床に減らそうという締め付け政策だ。
 病院は,この患者の追い出し行為につき国から褒められこそすれ,保護すれば責められるのだ。

 家族に見捨てられ,生活保護からも放逐された社会的入院患者の行き場は,どこにあるのだろうか。(後略)
津久井さんの見解に全面的に賛同したい。
生活保護の切り捨てと療養病床の削減という政府の施策が、医療従事者を極限にまで追い込んだのである。
最近は入院費のみならず、通院患者の医療費滞納や、保険料未納による保険証取り上げなども問題になっている。
いずれも貧困と格差の拡大に起因する。

誰もが病気になりうるし、誰もが必ず老いる。
誰もがある日突然、介護する側にも介護される側にもなりうる。
故に今回の問題は決して他人事ではない。
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by mahounofuefuki | 2007-11-14 12:21

新テロ特措法案のタイムスケジュール及び自衛官の自殺増加について

新テロ特措法案が衆議院テロ対策特別委員会で可決された。
明日(13日)の衆議院本会議でも与党の賛成多数により可決され、審議の舞台は参議院へ移る。
各種報道によれば、参院第1党の民主党は、参院ではイラク特措法廃止案の審議を優先し、新テロ特措法案の審議を遅らせて「時間切れ」を目指すという。

実は衆議院を通過したことで、政府・与党があくまで新テロ特措法案の成立に固執するのならば、タイムスケジュール上は十分可能になってしまった。
なぜか。今国会の会期は先に12月15日まで延長になったが、もしそれまでに参議院で法案が議決されなければ、審議未了で廃案となる。政府・与党がここで断念すればそれでよしだが、その可能性は限りなく低い。国会法第12条2項により、臨時国会は2度まで延長が認められており、今国会の会期はあと1度延長が可能だからだ。

憲法第59条2項により、参議院で否決された法案は、衆議院で3分の2以上の賛成で再可決すれば成立する。
現在、与党は衆議院で3分の2以上の議席を占めており、再議決に持ち込めば新テロ特措法案は成立する。再議決のためには「参議院の否決」が必要で、参議院が採決しない限り可決も否決もないから、参議院がねばって採決を延ばせば衆議院での再議決は防げるかというと、さにあらず。憲法第59条4項の「60日規定」があるからだ。

憲法第59条4項は「参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて60日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる」と定めている。つまり、明日(11月13日)衆議院を通過した場合、60日後の1月12日以降は、たとえ参議院が法案を採決せずとも「否決」とみなして衆議院で再議決が可能なのである。
報道では再議決の場合、野党は参院で内閣問責決議を行うとしているが、衆院の内閣不信任決議とは異なり、首相の衆院解散権を拘束するものではない。そして厚顔無恥な福田首相は開き直って問責を無視し、そのまま臨時国会は終了するだろう。

国会法は第2条で、1月中の通常国会招集を定めている。つまり今国会は最長でも1月中旬までしか延長できない(当たり前だが通常国会の前に臨時国会が終わっていなければならない)。そこから逆算すれば11月中旬までに衆院通過することが、政府・与党にとって是が非でも必要だったのである。
与党が今日の委員会採決、明日の本会議採決に踏み切ったのは、何も首相のアメリカ訪問に合わせただけではないのだ(その辺も込みで訪米日程が決まったのだろう)。

こうなると返す返すも「小沢騒動」がいかに民主党にとって失点であったかがわかる。
もし「小沢騒動」がなければ、世人の目は一斉に防衛省汚職へ向いていたはずだ。この問題は攻めるに事欠かない。守屋武昌へのあの手この手の接待攻勢など、大衆好みの話題もたくさんある。世論は激高し、政府・与党はテロ特措法どころではなかったかもしれない。
しかし、小沢一郎をめぐる一連の「騒動」のインパクトがあまりに強く、山田洋行の元専務が逮捕されたというニュースも霞んでしまった。「騒動」の間に国会の会期延長もすんなり決まり(国会法第13条により、会期延長は衆議院の議決が優先される)、野党は十分に抵抗できなかった。

しかも、最低賃金法改正案と労働契約法案で、与党と民主党の修正協議という前例もできてしまった
福田政権は今後、通常国会でも予算案では憲法第60条2項の「30日規定」を用いて乗り切り、他の法案は個別に民主党と修正協議を行い、衆院解散を先延ばしするだろう。綱渡りの議会運営が可能なのは「衆院の3分の2」という「小泉の遺産」のためであり、どうやっても次の選挙では自民党は現有議席を減らすからだ。
衆院解散に追い込むには野党が結束して、政策協議やら修正協議など断固拒絶し、一切与党とは妥協せず、与党がもうだめだと政権を投げ出すくらいまで追い詰めなければならないのだが、果たして小沢一郎氏にその意思があるのかまったく疑問だ。

以上のように先行きは暗いが、参議院で野党がテロ特措法やイラク特措法の問題性を浮き彫りにし、さらに防衛省の汚職を攻めることができれば、まだ逆転勝利はあるとも言える。
今日発表されたNHKの世論調査では、特措法にについて「賛成」よりも「反対」よりも「どちらともいえない」が最も多く、総じて関心が薄いことが明らかになっている。この無関心状況から「テロ特措法はおかしいんじゃないか?」という「空気」を作り出せるかが、勝負の分かれ目だろう。

ところで、そのテロ特措法の基盤を揺るがすようなニュースがある。北海道新聞(2007/11/12 07:22)より。
*漢数字をアラビア数字に変換した。
2004-06年度で、自殺した自衛官が毎年度100人に達していることが11日、防衛省の調べで分かった。05、06の両年度は共に101人と過去最多で、07年度も半年間(4-9月)で53人とこれらを上回るペース。ストレスや部隊内でのいじめを背景に挙げる声もあるが、同省は原因は不明とする一方で「自殺者増は深刻。カウンセリングの充実を図りたい」としている。
 
 同省人事教育局によると、06年度の自殺自衛官は陸自65人(前年度比1人増)、海自19人(同4人増)、空自9人(同5人減)、事務官8人(増減なし)。過去10年間では、01年度の64人が最少で、04年度に初めて100人となり、3けたに突入した。10万人当たりの自殺者は06年度で38.3人。人事院がまとめた国家公務員の17.7人(05年度)の2倍強に当たる。

 原因をみると、同省の06年度調査で「その他・不明」が63人、「借財」23人、「家庭の悩み」11人と続く。

 自衛隊に詳しいジャーナリスト三宅勝久さんは、自殺の背景として「いじめや借金苦も後を絶たず、組織の閉鎖性も要因。海外派遣、テロ関連の警備強化もストレス増を後押ししている」と指摘。04年-06年7月にイラクへ派遣された陸空両自衛官のうち、帰国後の自殺者は7人を超す。(後略)
私は以前ある元自衛隊員から、海外派遣が増え、「テロ対策」の強化や日米軍事一体化が進んだこの数年、自衛隊の訓練が厳しくなり、隊内のいじめが激しくなって、自殺者が増加していると聞いたことがある。
また、2003年7月に衆院厚生労働委員会で、共産党の小沢和秋議員が、自衛官の自殺者が1993~2003年の10年間で601人に達していることを取り上げている(衆議院会議録 厚生労働委員会 第156回第25号)。

この記事はその後も自殺者が増加し続けていることを示しており、防衛省が何ら実効的な対策を取って来なかったことも証明している。
自衛隊に限らず、一般に自殺は「事故死」として処理することも多いので、もっと多い可能性もある。参議院の審議では、是非とも自衛官の自殺問題を取り上げ、自衛隊がとうてい海外派遣に耐えられる状況にないことを明らかにして欲しい。


《追記 2007/11/13》

社民党の照屋寛徳衆院議員の質問主意書に対する政府の答弁書によると、インド洋とイラクに派遣した自衛隊の自殺者は16人で、派遣全隊員の0.08%に相当するそうだ(毎日新聞 2007/11/13 16:39)。
防衛省は派遣と自殺の因果関係を認めていないようだが、内地よりも過酷な環境が自殺者を多くしているのは間違いない。
この問題を取り上げた照屋氏に敬意を表す。


《追記 2007/11/15》

昨日、「再議決可能になるのは1月11日」と「修正」追記したが、専門家に問い合わせたところ、本文で述べたとおり、「1月12日以降」で間違いないそうだ。二転三転して混乱したことをお詫び申し上げます。


【関連リンク】
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NHK調査 内閣支持率54%-NHKニュース
衆議院-会議録
自衛官が3年連続、年間100人超の自殺者-オーマイニュース
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by mahounofuefuki | 2007-11-12 22:54