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横暴で単細胞な「軍人」

日中戦争のさなかの1938年3月3日、国家総動員法案を審議する衆議院の特別委員会での出来事である。
政府側の説明員として出席していた陸軍省軍務課員の佐藤賢了中佐が、議員の野次にたまりかね「黙れ!」とどなりつける事件があった。
今ならさしずめ防衛省の課長補佐クラスが、国会で議員を一喝するようなものであり、処分は免れない。しかし、当時佐藤は何ら処分も受けず、すでに軍部の強勢に屈していた帝国議会は、衆議院・貴族院ともに満場一致で国家総動員法案を可決した。この国家総動員法によって政府は好きなだけ民衆を動員できるようになり、戦争への協力を強要していく。

自民党の中谷元衆院議員が14日のテレビ番組で、テロ特措法による海上自衛隊の給油活動継続問題について「これに反対するのはテロリストくらいしかいない」と暴言を吐いた。
このニュースを聞いた時、私は真っ先に佐藤賢了の一喝事件のことを思い起こした。中谷氏は陸上自衛隊の二等陸尉から、加藤紘一氏や宮沢喜一氏らの秘書を経て、国会議員に転身した人物であり、いわゆる「制服組」出身である。中谷元に佐藤賢了と共通する「横暴さ」を感じた。
いつの時代も軍人というのは横暴な単細胞なのである

「アメリカか、テロリストか」という短絡的な二者択一はブッシュ政権の論法である。
アメリカに従わないものはすべて「テロリスト」だというのは、世界を「敵」と「奴隷」に二分する暴論であり、まったく現実的ではない。アフガニスタンへの武力行使に全世界の国々が参加しているのならばともかく、たかだか10数カ国の「有志」が中央アジアの天然資源に群がっている状況で、そんな二者択一は成立しない。
「テロリスト」というレッテルを張ることで批判を封じるやり方は、言論の自由を封じるに等しく、とても国会議員の発言とは思えない。

中谷氏はすみやかに発言を撤回し、主権者と野党に謝罪するべきである。
同時にこんな「軍人」を議員に選んだ高知2区の有権者は深く反省してほしい。
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by mahounofuefuki | 2007-10-15 11:30

イラク戦争への「転用」だけが問題ではない

インド洋での海上自衛隊による給油問題は、テロ特措法が認めないイラク戦争への転用があったかどうかが焦点となっている。
市民団体や野党の調査では転用疑惑はもはや「疑惑」というより「事実」であるが、日本政府はあくまでもイラク戦争への転用がなかったと押し通すようだ。共同通信(10/14 07:43)によれば、防衛省はアメリカなどから提供された公開日誌などの資料を精査し、2002年12月以降の800件近い給油事案すべてでイラク作戦への転用がなかったと結論づけたという。アメリカ政府も最近は日本政府に口裏を合わせるように転用を否定しており、これで何とか国会を乗り切ろうという腹積もりだろう。

はじめから結論ありきの防衛省の「精査」など全く信用ならないのは言うまでもない。
2003年2月に海自の補給艦「ときわ」がアメリカ軍の空母「キティホーク」に間接給油していた問題の時も、政府は当時給油量を20万ガロンと国会で答弁していたにも関わらず、その後ピースデボの調査で実際の給油量が4倍の80万ガロンであったことが判明し、「データの入力ミス」という取ってつけたような理由で訂正した(しんぶん赤旗9月22日付)。
政府の防衛関係の発表など所詮は「大本営発表」でしかなく、そのまま信じるのはよほどのバカだけである

ところで、野党、特に民主党はこの転用問題を国会で追及して、給油活動継続のためのテロ特措新法を葬り去ろうとしているようだが、私はあまりにも転用問題だけに注目が集まり、給油活動ひいてはアメリカ軍などへの後方支援そのものの正当性が議論されなくなるのを危惧している。
もちろん自衛隊が法令に違反する活動を行っているというのは文民統制上からも危険であり、転用問題は軽視してよい問題ではない。
しかし、転用問題にばかり目を奪われると、まるでイラク戦争に転用さえしていなければ、インド洋での海自の活動は問題がないと錯覚してしまうのではないか。

本来問われているのは、テロ特措法により行われている自衛隊の活動が本当に必要なのかどうかである。テロ特措法が期限付きの法律なのは、期限切れの時点で活動の必要性や正当性を再検討することを前提としているからである。
しかし、政府・与党は何ら根拠も示さず、ただ国際公約だからとか各国から評価されているからとか、「外圧」を繰り返すばかりである。挙句の果てには「給油活動を続けなければ石油の輸入が減る」といった類のデマすら流している。
今国会ではこういう政府・与党の無責任な姿勢をただすべきなのだが、もっぱら転用があったか、なかったかという議論に絞られると、テロ特措法そのものの問題は矮小化してしまうのではないか。

だいたいイラクでもアフガニスタンでも、アメリカがやっているのは戦争である。仮にイラク作戦に転用されていなくても、アフガニスタンでの武力行使に日本が加担していることに変わりはない。そしてアフガニスタンでは一向に治安が良くならず、難民が増え続けている。現在アメリカ以下の国々が行っている「テロとの戦い」がまったく成果を挙げていないことは一目瞭然である。

マスメディアの誘導で給油活動継続に賛成する人々が増えている現在、テロ特措法をめぐる問題はイラク戦争への転用だけではないことをはっきりさせないと、政府・与党のごり押しがまかり通ってしまう危険性がある。野党はこの問題で足元をすくわれないよう気をつけねばならない。
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by mahounofuefuki | 2007-10-14 21:39

不快な小泉の動き

不快なニュースが入ってきた。
以下、朝日新聞(07/10/12/20:05)より一部引用する。
 自民党の小泉元首相が表舞台で動き始めた。6年半ぶりに出身派閥の会合に出席したかと思えば、12日夜には他派閥の合同懇親会にも姿を見せた。来月には東南アジアへの外遊も予定している。安倍前首相の辞任に伴う総裁選で擁立論が再燃した「政局の小泉氏」。活動の再開ぶりが「政界再編への布石」との憶測も呼んでいる。
 12日、小泉氏が顔を出したのは、武部勤・党改革実行本部長のグループ「新しい風」(32人)と二階派「新しい波」(16人)の会合。両グループとも、05年衆院選で大量当選した新人議員を多く抱える。「郵政反対組」で落選した前衆院議員の復党も取りざたされる中、新人議員からは「無節操な復党に小泉氏が黙っているはずがない」との期待感も集める。
 この日の会合で、小泉氏は「人生には上り坂、下り坂。政治は『まさか』がよくある。来年には選挙があるだろう。次の選挙に向け、何らかの形で協力していきたい」と強調した。
今でも小泉純一郎氏の人気は高い。先の参院選でも彼が応援にやって来ると、常に満場の人だかりだった。安倍「逃走」直後にも再登板を乞う動きがあった。巧みな弁舌に衰えはない。「選挙の顔」としては小泉以上の人材はいないだろう。
そして何よりも、参院選の大敗による国会の「ねじれ」状態を受けて、福田政権は今後露骨な市場原理主義路線を取りにくくなるという事情がある。庶民にとって小泉は生活を破壊した「極悪人」だが(ただしそれに気づいていない人も多いが)、富裕層にとっては「神」である。特に株や不動産で莫大な収益を得ている不労高所得者たちにとっては、市場原理主義政策の継続が至上命題であり、自分らを最大限に優遇した小泉に期待している。

次期衆院選までに自民党総裁への返り咲きを目指すのか、あるいは自民・民主両党の市場原理主義者たちを集めて新党を結成するのか、今後の政局次第だが、これ以上貧困と格差を拡大させないためには、絶対に小泉再登場を阻止しなければならない。
イメージだけで小泉に騙されて、生活が苦しいのに選挙では小泉を支持するという矛盾した行動をとる人々の目を覚まさせる必要があるだろう。
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by mahounofuefuki | 2007-10-13 10:23

舛添のパフォーマンスにだまされるな!

社会保険庁が、年金保険料を着服して懲戒免職になった宮城県大崎市の元職員を、業務上横領の容疑で刑事告発した。
大崎市が告発を見送ったにもかかわらず、「牢屋に入ってもらう」と豪語する舛添要一厚生労働大臣のゴリ押しである。以下、朝日新聞(10月12日14時33分)より引用する。

 告発状などによると、当時30代だった元職員は旧田尻町(現大崎市)町民生活課に勤めていた00年11月から01年3月にかけ、加入者10人が持参した国民年金保険料28万円を社会保険事務所に納めず着服した疑い。元職員は問題発覚後の01年8月に懲戒免職となった。
 この問題をめぐっては、舛添厚生労働相の意向を受け、社会保険庁が業務上横領罪の公訴時効が成立していない00年以降の9件について、自治体側に告発などの厳正な対処を要請。
 これに対し大崎市は、元職員が全額弁済しており、すでに社会的制裁を受け現在は更生しているなどとして告発を見送ると表明。伊藤康志市長は「当時としては十分厳しい対応をとった」と述べていた。
舛添氏のやり方は、弱い「いけにえ」を徹底していたぶることで、人々の目をくらましているにすぎない。
すでに職場を追われ、横領したカネを全額返済した人を今さら捕まえても、政府が流用した6兆7000億円余りの年金が戻るわけでも、不明となった5000万件の年金記録が復活するわけでもない
下っ端役人いじめが大臣の仕事ではない。大臣にはもっともっとやらねばならない仕事が山ほどあるはずだ。

間違っても舛添氏を「不正と闘うヒーロー」などと思ってはいけない。
彼は自民党と高級官僚の犯罪には目をつむり、弱い下級公務員を切り捨てているだけにすぎない。肝心の安心できる年金制度づくりは何もやっていないのだ。
しつこいようだが、何度でも言う。舛添のパフォーマンスにだまされるな!

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by mahounofuefuki | 2007-10-12 20:22

家計を圧迫する教育費

国民生活金融公庫総合研究所が、今春「国の教育ローン」を利用した世帯を対象にした「教育費負担の実態調査」(PDF)の結果を発表した。
公開資料の巻頭で「節約や奨学金で重い教育費負担に耐える」と題しているように、現在の日本社会において教育費がいかに家計を圧迫しているかよくわかる調査結果である。

主な事項を摘出しよう。
①1人当たりの入学費用(受験費用や入学金など)は、高校が47.7万円、大学が99.1万円(私立101.1万円、国公立89.6万円)である。このうち国公立大学の場合、入学しなかった私立大学への納付金が16.9万円も占める。
②1人当たりの年間の在学費用(授業料や仕送りや通学費用など)は、高校が100.2万円、大学が149.3万円(私立157.8万円、国公立107.2万円)である。このうち高校の場合、家庭教育費(塾や予備校などの費用)が15.1万円も占める。
③1人当たりの高校入学から大学卒業までにかかる費用は、合計1,045万円(高校348.3万円、大学696.3万円)である。
④世帯の年収に対する在学費用(小学校以上の子ども全員にかかる費用)の割合は、平均33.6%である。年収の低い世帯ほど在学費用の割合が大きく、年収200~400万円の世帯では54.3%に達する。一方、年収が高い世帯ほど在学費用の割合は小さいが、金額は高くなる。
⑤自宅外通学者1人当たりの年間の仕送り額は、平均104.0万円(月額8.7万円)である。
⑥自宅外通学を始めるための費用(アパートの入居にかかる費用など)は、1人当たり平均49.3万円である。これに入学費用を合わせると平均142.3万円になる。
⑦教育費の捻出方法は、回答数の多い順に1)節約2)奨学金3)在学者のアルバイト4)預貯金・保険5)残業・パートなどである。

年収400万円以下の世帯で支出の過半数が教育費というのは異常である。また、自宅からの通学者と自宅外からの通学者の格差が大きすぎる。この国の教育現状が「低所得者」と「地方」に厳しいことがよくわかる。
これでは貧しい親の元に生まれた子どもは高い教育を受けることができず、その子どもは成長しても学歴の不利により就職も不利になり、さらに貧しくなるという悪循環である。まさに「格差と貧困の再生産」である。

こうした実情が表面化すると、必ず「奨学金の充実」という声が出るが、奨学金にしろ教育ローンにしろ借金である。私も大学の時に奨学金を受けたが、現在も毎月支払い続けている。雇用に恵まれなかった「難民世代」にとって奨学金の返済は加重負担である。奨学金という小細工ではなく、高すぎる入学金や授業料を大幅に減額し、国の歳出で補填するべきだ。
そもそも本来教育は完全国庫負担で無償にするのが望ましい。その方が、ゼネコンに利益を誘導するだけの公共事業や「国際貢献」という名の大量殺人に税金を使うより、有能な人材が育つという点で、ずっと「国益」にかなっているのではないか? 子どもは親を選べない。当人にはいかんともできない要因で教育機会が奪われるのは非合理である。まさか貧困家庭に生まれたことまで「自己責任」とは言うまい。
このまま教育格差が広がれば、所得格差・資産格差の拡大と併せて、日本社会の「身分社会」化が進むだろう。それこそ支配階級の狙いかもしれないが・・・。
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by mahounofuefuki | 2007-10-12 09:17

「過労自殺」は企業による「殺人」である

失跡から約1年半後に富士山麓の樹海で遺体となって見つかった人が、「過労自殺」として労災認定されたという。
この男性は三菱電機の社員で、関連会社へ出向後、毎月100時間超の残業をしていた。死後、両親らの尽力で労災申請にこぎつけ、失踪から1年以上経過した自殺としては初めて労災を認定された。

こうした事件を聞くたびにいつも思うのは、過労問題は当の労働者が死んでからでないと、「問題」にならないのか、という疑問である。
死ぬ前にどうにかする手だてを考えない限り、労働者は決して救われることはない。こんなことが続けば、過労死が起きても遺族に「はした金」さえ支払えば解決という認識を経営者に与えることになるだろう。企業は安心して従業員から労働力を搾り取ることができるのだ。
現在進行形で過労に苦しむ労働者を実質的に助けられる取組みが必要なはずだが、なぜかまったく政治課題にならない。

労働者が過労を自覚していても、会社側に是正を要求する力はない。あるいは労基や弁護士に訴えるにしても、訴えるという行為自体が加重負担であり、何よりも会社側の報復を恐れている。
さらに問題なのは「自発的」に長時間労働している場合である。「自発的」といっても、こなせないようなノルマを課せられていたり、成果主義による競争を強いられていたりするので、実は「強制的」であるのだが、この場合当人が「自分は無能だから」と「自己責任」に帰することが多い。実際は無能なのは労働者ではなく、労働者に長時間労働を強いるような管理しかできない経営者こそ無能なのだが、巧妙な心理操作でなかなか気付かない。
今回の事例もおそらく徹底して自分の「弱さ」を責め、富士の樹海をさまよい息絶えたのだろう。「弱さ」は罪ではなく、人間性の証なのに。
あえて言おう。「過労自殺」は「自殺」ではない。企業による「殺人」である。

過労問題は現在、日本最大の社会問題である。せっかく国会が与野党逆転状況なのだから、もっと大きく取り上げるべきだ。特に労働規制の強化は最優先課題である。年金も結構だが、長時間労働にも目を向けて欲しい。
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by mahounofuefuki | 2007-10-11 11:36

「自白偏重主義」の危険性

最近の日本の世論はとにかく「犯罪者」に厳しい。
犯罪の社会的・経済的背景を考える余裕もなく、被害者でもないくせに、憎悪の炎を燃やし、復讐を扇動し、時には本当の被害者に「悲劇のヒーロー」の役割を強要する。それも犯罪を憎み、正義感をもってやっているのではなく、単に優越した立場からバッシングして自尊心を満たすために、「安心して攻撃できる絶対悪」を求めているにすぎないから始末に終えない。そういう人々に限って、同じ犯罪でも経済犯罪とか不当労働行為には寛容で、「騙されるほうが悪い」「仕方がない」と逆に被害者を攻撃する。彼らの「好み」は殺人や暴行や強姦といった事件で、難しいことを考えずに済む「勧善懲悪」物語を要求しているのである。

しかし、その「犯罪者」が本当は「犯罪者」ではなかったら? 警察の誤認逮捕だったら? あるいは自白を強要されていたら? 証拠が捏造されていたら? もしかすれば事件そのものが架空のでっち上げだったら? 
まさにそういう事例が、今日再審の判決が出た富山での冤罪事件である。

2002年に富山県で起きた強姦と強姦未遂事件で、タクシー運転手が逮捕・起訴され、「自白」により懲役3年の実刑判決が確定、刑務所に服役した。ところが、その後別の事件で逮捕された人が富山の事件の犯行を自供し「真犯人」であることがわかった。服役までした人はまったくの無実だったのである。
検察が無罪を求刑するという異例の再審となり、今日ようやく富山地裁から無罪判決が出た。判決は犯行現場の足跡やDNA鑑定などの物証から「自白」の信用性を否定したが、逆に言えばそこまで物証がありながら、最初の裁判で有罪だったのは、日本の刑事訴訟が依然として「自白」を偏重していることを示している。しかも「真犯人」がわかったのも「自白」である。もし「真犯人」が「自白」していなければ真相は闇に葬られていた可能性が極めて高い。地道な捜査を行わず、「自白」に頼るやり方がいかに危険であるかが明白だ。
それにもかかわらず、今日の判決は「自白」を誘導した検察の取調手法について不問にしたのが残念だ。以下、毎日新聞より一部引用しよう。
「納得いかない」。富山地裁高岡支部で10日あった富山冤罪事件の判決公判。逮捕から5年半ぶりに無罪判決を手にした柳原浩さん(40)は、ぶぜんとした表情を浮かべた。再審には、自らが「容疑者」「犯人」とされた理由の解明こそを望んだ。この日の法廷で得たものは、わずか10分で読み上げられた判決と、心に響かない藤田敏裁判長の付言だけ。柳原さんの声は、またも司法に届かなかった。
 午後3時。紺のスーツ姿で入廷した柳原さんは被告席に着き、緊張をほぐすように肩を1度回した。裁判長が読み上げる判決を、じっと座って聴き入った。判決は、不適切な捜査には触れず、誤審への謝罪もなかった。
 判決後、柳原さんと弁護団は、富山市の県弁護士会館で記者会見した。裁判長が「無実であるのに服役し誠にお気の毒に思う」などと、人ごとのように付け加えた言葉に対し、柳原さんは「当時、いいかげんな裁判をしなければ、こういうことにはならなかった」と、怒りをあらわにした。
 ただ、取調官の証人申請が2度にわたり却下されていたことから「裁判官には期待していなかった」との本音も漏らした。
 弁護団は「検察が請求して行われる現行の再審では、事実上、冤罪の原因究明のための活動が何もできなかった」と、悔しさをにじませた。
あくまでも自らの誤りを認めない裁判所の姿は実に醜い。日本の刑事訴訟では1度証拠採用された供述調書はなかなか覆らない。たとえ矛盾する物証があっても、「自白」が優先される傾向がいまだに続いている。しかし、裁判所も検察も警察も「自白偏重主義」をやめるつもりは当分ないらしい。
日弁連は取り調べの完全録音・録画を要求しているが、何としても実現する必要があるだろう(それも問題がないわけではないが、その件はまた別の機会に)。

こういうことは他にもきっとあるのだろう。
安易に逮捕=「犯人」と決めつけバッシングする行為がいかに危険であるか、深く自省を促す事件である。
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by mahounofuefuki | 2007-10-10 23:10

袋小路の「対話と圧力」

2002年の日朝首脳会談とそれに伴う日朝ピョンヤン宣言は、日朝間の不幸な関係に終止符を打つ明るい兆しとなるはずだった。
しかし、実際は朝鮮の国家機関による日本人拉致の事実が日本社会に衝撃を与え、被害者の帰国問題の混乱や朝鮮の核開発の発覚により、国交正常化交渉は決裂し頓挫してしまった。その間、マスメディアが拉致被害者家族会や「救う会」に迎合した情緒的報道を垂れ流した結果、日朝間の歴史や実情を知らないまま、「北朝鮮」=「拉致」=「おかしな国」というパブリックイメージが形成され、再び排外主義が台頭した。ヒステリックな世論を背景に、「拉致問題」を通して安倍晋三氏が一躍ヒーローとなり、彼はついに首相にまで上りつめた。

日本政府は「対話と圧力」路線を唱え、昨年のミサイル発射実験と核実験を機に朝鮮に対する経済制裁を断行した。一方、国内では在日朝鮮人総連合会に対する弾圧・攻撃を強めた。
この路線は「圧力」に耐えられなくなった朝鮮側から「対話」に出てくるのを待つという「あぶり出し」戦術であり、アメリカの朝鮮「封じ込め」政策と軌を一にしていた。逆にいえば、アメリカが朝鮮の出口を塞いでいる限りは有効だが、そうでなくなれば無効になる弱点をもっていた。

しかも、日本政府は「拉致・核・ミサイル」の解決を国交正常化の条件としたが、「拉致」が突出した結果、北東アジアの安全保障にとって緊急の脅威である核開発問題は、日本社会においては相対的に低く扱われ、ましてや日本の植民地支配の「清算」に至っては一般の人々には完全に無視されてしまった。それどころか一部の人々は、「拉致」を植民地時代の日本の国家犯罪を正当化する道具に利用しているほどである。(忘れてはならないが、拉致被害者支援者の多くは日本の植民地支配を正当化している人々である。)
核問題の軽視は関係各国に疑念を与え、「過去の清算」の軽視は日本の「誠意」の欠如を印象付けた。日朝関係はもはや修復困難になってしまった。

このような現実的・歴史的思考を排除した一方的な「対話と圧力」路線は、現在完全に破たんしつつある。
「頼みの綱」であるアメリカは現在「封じ込め」をやめて米朝2国間協議を再開し、核の無力化を最優先とする交渉が続いている。ブッシュ大統領が平和条約締結の可能性を示唆するまでになった。また、韓国政府は先の南北首脳会談で、休戦状態の朝鮮戦争を完全終結させるための南北及び中国・アメリカの4カ国協議を提唱した。これがもし実現すれば、朝鮮戦争の直接の当事国ではない日本はカヤの外である。
こうなると「圧力」路線は単なる「何もしない」路線でしかない

そして、ついにこんな報道が流れてきた。
米、拉致解決に固執せず 米、拉致解決に固執せず 北朝鮮の追加説明で判断 (47NEWS)
【ワシントン8日共同】米国による北朝鮮のテロ支援国家指定解除に当たり、日本が拉致問題解決まで解除しないよう求めている問題で、米側が、問題が進展したかどうかを判断する上で、横田めぐみさん=失跡当時(13)=ら北朝鮮が「死亡」したと主張している8人に焦点を絞り、日本への追加説明など「北朝鮮の協力姿勢」の有無を重視していることが8日、分かった。米政府の立場について説明を受けた外交筋が明らかにした。
 指定解除の「条件」を6カ国協議で合意した北朝鮮の核施設無能力化と核計画申告にとどめ、拉致問題の「解決」を解除の前提とはみなさない米政府の姿勢が明確になる一方、日本との立場の違いが浮き彫りとなった。
要するに「拉致被害者の全員帰国」を「テロ支援国家」指定解除の条件とはしないということである。残りの被害者の「死亡」について、もう少し「ウソくささ」のない説明さえしてくれれば、「拉致問題」を終わりにするということである。
すでに先月もライス国務長官が、「拉致」の解決を指定解除の条件としない考えを示唆しており(読売新聞9月25日)、アメリカ政府は「拉致」切り捨てに向かっているとみてよいだろう。小泉・安倍両政権の外交は完全に失敗したのである。

日本政府は9日の閣議で、対朝経済制裁の半年延長を決定した。
対北朝鮮制裁を閣議決定 輸入禁止など半年延長 (47NEWS)
このままでは経済制裁をやめるタイミングもないまま、日朝関係の不正常状態が続いてしまうだろう。福田首相は先の所信表明で日朝国交正常化への意欲を示していたが、どうやっても全面的解決が望めない「拉致」に拘泥するかぎり、とてもではないが国交など夢のまた夢である。
今さらではあるが、2002年の日朝首脳会談当時の、国交正常化交渉を通して「拉致」を協議するという路線を続けていれば、もっと違う展開がありえたかもしれない。そう考えると安倍前首相と彼を支持した人々の罪はやはり大きい。

正直なところ核問題はアメリカに任せられる問題ではない。世界最大の核保有国であるアメリカは、自国主導の世界秩序さえ揺るがさなければ、核の完全放棄にこだわらないからである(現にインドやパキスタンの核保有を黙認した)。
日本政府は「拉致」よりも「核」を優先する思い切った政策転換が必要だろう。そして失った信用を取り戻すためには「過去の清算」に最大限の誠意を示すことが必要だろう。世論も冷静さを取り戻してほしい。
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by mahounofuefuki | 2007-10-09 16:10

大臣も自信なし!?

テロ特措法による海上自衛隊のインド洋での給油活動で、海自がアメリカの艦船に給油した燃料がイラク戦争に転用されていたという問題。
テロ特措法はアフガニスタンでの活動に対する「支援」のための法であり、イラク戦争への転用は言うまでもなく違法である。
すでに、アメリカの公開文書でも疑惑はほぼ証明されているが、相変わらず日本政府はシラをきるつもりのようだ。

ただ注目したいのは、関係閣僚の発言である。
まず、高村正彦外務大臣(10月7日 NHK)
「対イラク作戦に使われたことはないと思っているし、米国からもそういう回答を得ている」
次に、石破茂防衛大臣(10月7日 テレビ朝日)
「目的外使用はないという心証を得つつある

「思っている」「心証を得つつある」とは、なんとあいまい!
言っている当人も自信がないことを表明しているようなものである。
ウソでも「そんなことはない!」と断言できないあたり、参院を野党が握る事態の反映か、彼らの良心の残存かは不明だが、いずれにせよ大臣が自信をもって「イラク戦争への転用はない」と言えない以上、この問題を放置したまま給油活動を継続するなどもってのほかである。

政府・与党やマスメディアが国際的孤立の恐怖を煽っているため、世論は給油活動継続賛成が増えているが、こんなデタラメな違法状態を続けることは法治国家として許されることではない。こんなものに多額の税金を投入していることに怒りをもってほしい。
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by mahounofuefuki | 2007-10-08 11:20

相変わらず多い残業代不払い

厚生労働省が「監督指導による賃金不払残業の是正結果」を発表した。
これは、2006年度に残業代不払いで労働基準監督署が是正を指導した事案のうち、1企業あたり100万円以上の割増賃金を支払った事案の状況である。

是正指導を受けて不払い賃金を支払った企業は1,679件、対象となった労働者は18万2,561人、割増賃金の合計は227億1,485万円である。
1企業平均1,353万円、1人平均12万円になる。
相変わらず「サービス残業」という名の「タダ働き」が横行していることがよくわかる。しかも、この統計は労基に見つかり、是正された例だけだから、実際はもっと多くの企業で残業代が支払われず、是正もされずに闇に葬られていると言ってよい。

業種別では「製造業」と「商業」で不払い企業の数が多く、不払い額では「金融・広告業」が最も多い。ただ官公庁と「畜産・水産業」を除く、全業種で残業代不払いが確認でき、この問題が業種を問わないことを示している。

言うまでもなく労働基準法は、第32条1項で「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない」、同2項で「使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない」と規定している。
つまり本来残業を禁じているのだが、第36条で労働者側と協定を結べば「労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる」とも規定しているため、実質的には労働時間は無規制である(最近は若い労働者の無知に付け込んで就業規則すらない企業があるほど)。
それでも第37条で「労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令に定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない」と定めている。要するに時間外労働には必ず割増賃金を支払わなければならないのだが、すでに指摘したようにまったく守られていない。労働者の多くも泣き寝入りするばかりである。

残業代不払いは明白な違法行為である
某厚生労働大臣は年金横領の告発には血眼だが、こうした不当労働行為にはまったく無頓着で、そのうえ、残業代ゼロを「家族だんらん」とうそぶいて合法化しようとさえしている。
「年金をネコババした公務員」を「牢屋」に入れるのならば、「給料をネコババした経営者」も「牢屋」に入れてほしいものだ。
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by mahounofuefuki | 2007-10-05 20:42