<   2007年 09月 ( 40 )   > この月の画像一覧

年金「着服」と「流用」の間

社会保険庁による年金保険料の着服・不正受給の追加調査が発表になった。
社会保険庁職員と市町村職員の不正はさらに増え、計153件、総額4億1300万円余りに達したという。
一連のニュースに多くの人々が怒り、今や社会保険庁はまるで「犯罪集団」の扱いである。

しかし、これら一連の年金着服・横領報道は、もっと大きな「犯罪」を隠すための情報操作である。

民主党が国政調査権を行使して出させた社会保険庁の資料によれば、1952年度以降、国民年金や厚生年金の保険料を給付以外に流用した総額が、なんと6兆7878億円にものぼるのだ。
その内訳は次のとおりである。

福祉施設費(厚生年金会館など) 5兆4281億円
年金福祉事業団への出資金(グリーンピア、住宅融資など) 1兆953億円
年金事務費(年金記録管理システムなど) 8519億円
(以上、読売新聞http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070914it15.htm?from=topによる)

着服の4億円などどうでもよくなるような、とんでもない数字である。
特に問題なのは、年金福祉事業団への出資である。グリーンピアなどの年金保養施設は、ほとんどが地域への利権であり、需要を考慮せずに乱立した結果、どこも不採算に終わった。
しかも、この年金福祉事業団は、厚生省の高級官僚の天下り先を確保するために作られたような組織だ。いわば、キャリア官僚の所得に年金が流用されたのである。
さらに、保養施設の誘致には自民党議員が絡んでおり、その責任は重大である。

ところが、この「流用問題」はあまり報道されず、もっぱら下級職員の「着服問題」ばかりがクローズアップされている。
これは、エリート官僚と自民党の「犯罪」から人々の目を逸らすために、わざと下級職員の「犯罪」を大きく発表して誘導しているのである。情報操作以外の何物でもない。

社会保険庁は、解体・民営化が既定路線となっているが、そこで最も打撃を受けるのは、現場の職員である。いまや「公認の敵」として大衆からバッシングを受け、与党も野党も得点稼ぎのために、社会保険庁攻撃を利用している。
厚生省の高級官僚たちは、民営化しても別に困らない。しかし、現場の職員にとっては死活問題である。一部の不心得者のせいで、大半の真面目に働いている職員の生活が破壊されるのは心苦しい限りだ。

「着服問題」という「小さな犯罪」よりも、「流用問題」という「大きな犯罪」にこそ注目してほしい。「4億円」と「6兆7000億円」の差をもっと重視してほしい。
そうすれば、本当の「敵」が見えてくるはずである。
[PR]
by mahounofuefuki | 2007-09-22 02:52

無題

「光市母子殺害事件」の差し戻し控訴審は、3日間の集中審理を終えた。
無期懲役の判決を最高裁が差し戻している以上、裁判所の慣例により、この訴訟は死刑判決で終わるだろう。
結果がわかっている訴訟は茶番でしかない。
その茶番を少しでも公正な裁判にしようと、あえて「貧乏クジ」を引いた弁護団に深く同情し、敬意を表する。

実のところ、私は事件や訴訟そのものにはさしたる関心がない。
たくさんある殺人事件のなかで、光市事件だけに関心を寄せる理由はないからだ。
本ブログは私個人が「気になるニュース」を読み解く(というより、単につっこみを入れてるだけだが)ことを目的としているため、その基準に従えば、特に述べることもない。

私が気になるのは、多くの人々が光市事件に大きな関心を寄せ、特に被害者の夫に過剰なまでに共感して、被告やその弁護団をバッシングしている「現象」である。
以前も大衆の「狂気」で述べたように、被告や弁護団をバッシングしている人々は、「義憤」にかられてというより、実際のところは「安心して攻撃できる"絶対悪"」を求めているとしか、私には思えないのだ。
繰り返しになるが、この事件の被告が「元少年」ではなく、「暴力団員」だったらここまで世論は高まっただろうか? 実際、関西で大学院生が暴力団員に虐殺された事件に、世論は沈黙した。光市事件の場合、被害者の夫がより戦闘的であることを差し引いても、ここまで人々が関心を寄せるのは、「犯人」が「少年」だったという点が大きい。
つまり、自分より「絶対的下位」にいるべき「少年」の「横暴」に普段何もできないのを誤魔化し、他者(この場合は、被害者の夫)が自己の「代わりに」攻撃してくれることに喝采を送っているのだ。
電車内で警察官が高校生に暴行を働いた事件も、事実関係をよく調べもせずに、警察官をまるで「英雄」として扱い、高校生をバッシングした。この事件のとき、私は報道だけでは詳細がわからないので(今もわからない)、ノーコメントを貫いてきたが、残念ながら、多くの人々にはそういう慎重さがまるでない。

日常のうっぷんを晴らすために、光市事件を利用するのはもういいかげんやめて欲しい。
まあ、そうは言ってもやめないんだろうけど(苦笑)。
[PR]
by mahounofuefuki | 2007-09-21 08:12

陵墓の全面公開を望む

宮内庁が考古学会・歴史学会に対して、伏見桃山陵(明治天皇陵)と五社神古墳(「神功皇后」陵)の立ち入り調査を許可するという。
諸学会は約30年前から、何度も陵墓の公開を求めていたが、政府・宮内庁は皇室祭祀を理由になかなか認めてこなかった。今回相当な制約付きではあるが、立ち入りを認めたことは非常に画期的である。

皇室のさまざまな慣習については、まるで古来一貫した「伝統」であると誤解している人が多いが、現在行われている皇室祭祀のほとんどが、明治維新後に整備されたものであり、常に時代とともに変化してきた。

陵墓はその最たるものであり、江戸時代中期に、幕府が朝廷との協調のために、陵墓復興作業を行うまで、古代の陵墓は多くが野ざらしであり、墳丘の上に村がある例すらあった。
陵墓の本格的復興は、天皇の権威が浮上し、「万世一系」イデオロギーが台頭する幕末になってからで、特に1862年からの「文久の修陵」はその後の陵墓治定の基礎となった。
しかし、さしたる根拠もなく、記紀や「延喜式」などの文献や地方の伝承をもとに、短期間で強引に決めていったため、多くの陵墓が実際とは異なる結果となった。

例えば、「継体天皇陵」は太田茶臼山古墳ということになっているが、歴史学・考古学の通説では今城塚古墳の方だとみられている。あるいは「欽明天皇陵」は、檜隈坂合陵ではなく、見瀬丸山古墳の方が有力である。
また、相当する陵墓が見つからない場合は、捏造も行われた。
そもそも、今回の「神功皇后」も含めて、古代の「天皇」や「皇族」の中には実在しないことがはっきりしている者も多く、実在しない者に墓などあるはずもない。

このように現在、宮内庁が指定している陵墓は実にデタラメなのだが、「万世一系」の虚構を守るために一向に修正しようとはしなかった。
専門家の調査を拒んできたのも、宮内庁のウソが大衆に知られることを恐れていたからにほかならない。
陵墓はあくまで文化財である。皇室の私的所有物ではない(現に国有財産である)。公費をもって維持している以上、主権者に公開するのが当然の責務である。
今回の限定的公開が、陵墓の全面公開の端緒となるよう切に願う次第である。
[PR]
by mahounofuefuki | 2007-09-20 16:29

山崎拓のトンデモ発言

自民党の山崎拓衆院議員が、朝鮮の昨年の核実験について、「私はやらせてよかったと思う。核兵器を持っているかいないか、いろいろと憶測があったが(保有が)はっきりした」と講演で述べたという。
久間前防衛大臣の「原爆しょうがない」発言に匹敵する、とんでもない暴言だ。

山崎氏は、朝鮮の核保有が、結果としてアメリカを2カ国間交渉に引き出したと評価しているようだが、誤解もはなはだしい。
ブッシュ政権の方針転換は、イラク戦争の行き詰まりと、選挙で与党・共和党が敗北した結果、政府内の強硬派が失脚したからであって、仮にイラクで親米政権が安定し、議会で野党を圧倒していたら、今も「封じ込め」政策を続けていた可能性が高い。
朝鮮の核保有の既成事実化は、北東アジアのパワーバランスを崩すものであり、日本のどの階層の人間(在日朝鮮人も含む)にとっても、まったく益がない。
依然として核兵器の放棄の道筋が定まっていない中で、極めて危険な発言である。

日本政府は「拉致ヒステリー」以降、「拉致・核・ミサイル」の解決を日朝国交正常化の条件としてきたが、喫緊の課題である「核」より、どうやっても誰もが納得できる完全解決などない「拉致」を上位に据えることで、核問題を軽視してきた。
世界最大の核保有国であるアメリカは、これまでもイスラエル、インド、パキスタンの核保有の既成事実化を黙認してきた。要はアメリカ主導の世界秩序を揺るがさなければ、限定的な核拡散を容認しているのである。朝鮮に対しても、アメリカは完全な核廃棄を貫く保証はない。
だからこそ、被爆国である日本こそが、核問題では強硬姿勢を採らなければならないのだが、実際は「拉致」の方で「死人を生き返せ」と無理な要求を続けている。
(「死亡組」が「消された」ことは誰でも想像がつく。拉致被害者を目撃したと証言していた「元工作員」はヤク中の詐欺師だった。)

こうした中、山崎氏は、安倍首相ら「拉致問題」一辺倒の政治家とは、一線を画してきた。今年1月に訪朝した際にも、問題解決の糸口を見つけようと努力していた。
その山崎氏にして、この体たらくなのだから、結局のところ、安倍首相や中川昭一衆院議員と同様に、わざと朝鮮に核保有させて、それを理由に日本の核武装を狙っているとしか思えない。

日本が核武装すれば、中国に核戦力強化の口実を与え、韓国や台湾にもあっという間に核は拡散するだろう。北東アジアは終始、核戦争の危機にさらされる。
「難民世代」の利害関係で言えば、核開発のために、膨大な税金が投入され、その分社会保障は貧弱になり、行政サービスは低下する。核保有国はどこも貧富の差が大きいことを忘れてはならない。平等度の高い国はみな非核保有国である。

この山崎発言はなぜ大きく報道されないのだろう?
[PR]
by mahounofuefuki | 2007-09-19 12:21

ずるい金持ちの罪

FXで得た所得1億数千万円を隠し、脱税した疑いで、四日市の医師が告発された。
先月にも、FXで4億円を稼いだ主婦が脱税した事件が話題になったが、多額な不労所得ほど納税したがらない輩は相変わらずいるらしい。
医師という高給取りのエリートでありながら、その高給にあきたらず、個人投資で所得を増やそうとするあたり、現代人の飽くなき強欲さを象徴している。

投資というのは、基本的により大きな資産をもつ者ほど得をするシステムである。
しかし、金融資本は、まるで誰でも儲かるチャンスがあるように見せかけ、お手軽にカネを増やそうという欲望をかきたてる。
人々には誰かが儲かった分、誰かが損をしている(もしかすると破産すらしている)という想像力がない。自分で稼いだカネを何で社会なんかに還元しなければならないのだと開き直る。まるで生まれた時から、世界を自分1人の力だけで生きてきたような錯覚に陥る。

市場原理主義の最大の罪は、大衆の自己肥大化欲望を高め、社会のあらゆる局面で生存競争を強要し、個々人を分断して孤立化させ、しかもそれが「自己責任」であるかのように偽装したことにある。FXのようなハイリスク・ハイリターンな投資は、まさにそんな社会の縮図である。

こういう事件が起きると、多くの人々はけしからんとは思わず、自分もそういう風に稼ぎたいと羨ましがる。
しかし、「経済成長」の踏み台にされた「難民世代」としては、少数の人々を儲けさせるために、多数の人々を貧困と不安に陥れるやり方は、絶対に許せない。
少年犯罪の容疑者をバッシングしている暇があったら、今回のような「ずるい金持ち」の方こそ徹底して攻撃して欲しいものだ。
[PR]
by mahounofuefuki | 2007-09-18 14:43

給油継続要求の実相

インド洋における海上自衛隊の給油活動継続を求めるため、アメリカ・イギリスなど10カ国の駐日大使が、与野党の国会議員向けに合同説明会を開くという。
安倍首相の突然の退場により、テロ特措法の期限切れが現実味を帯びてきたため、派兵している各国は相当焦っているようだ。あまりにも露骨な「外圧」である。

なぜ、こうも日本の給油が「期待」されるのか。
外務省の谷内事務次官や、アメリカのシーファー駐日大使は、パキスタン海軍の艦艇が日本の「高品質な」油でなければ動かないと説明してきた。パキスタンは、アフガニスタンでの「テロとの戦い」の最前線であり、パキスタン軍が動けなくなれば大きな支障をきたすというのである。
ところが今月11日に、他でもない海自の制服トップである幕僚長が、パキスタンの艦艇が日本の給油でなくとも(他国の給油でも)動くことを認めたのである。燃料清浄機はどこの国でもつけているとも指摘したという。「高品質」説を全面否定したのも同然だ。

それでは、なぜ日本の給油に諸外国が固執するのか。
「無料で配っていること、(イスラム国家の)パキスタンが米国から給油を受けるとパキスタンの国内世論がもたないからだ」(防衛閣僚経験者)
気前よくタダで他国に燃料をくれるような国は、日本以外にない。政情不安が続くパキスタンにとっても都合がいい。「テロとの戦い」の内実などこんなものである。

政府・与党はこうした「外圧」を最大限利用してくるだろう。
10カ国には、イラク攻撃には反対したが、アフガンやインド洋には派兵しているフランスやドイツも含まれる。「国際社会」での「孤立」の恐怖を煽ることで、世論の転換を図るだろう。(実際、既に各世論調査で給油継続賛成が微増している。)

しかし、騙されてはいけない。世界180カ国あまりのなかの「10カ国」である。派兵している国よりも、していない国の方が多いのだ。
「有志連合」によるアフガニスタン攻撃が、「テロの撲滅」に成果を挙げるどころか、むしろ治安を悪化させていることは、今や誰の目にも明らかだ。戦争の真の目的である、中央アジアの天然資源の安定的確保も、覚束なくなっている。
目の前の利権に惑わされることなく、むしろ日本が撤退の先鞭をつけるくらいの気概が欲しい。それが長期的には日本の支配層にとっても「得」だと思うのだが。
[PR]
by mahounofuefuki | 2007-09-17 11:30

アパートにおける隣の「音」

なんともやりきれない事件だ。
61歳の女性が、73歳の女性を殺したという。それも原因は被害妄想だという。
容疑者は夫と別居し、娘と同居していた。その夫の死により、隣人に対する被害妄想が悪化したようだ。隣室のドアの開閉に過敏だったという。

実は私は、大学時代に住んでいたアパートで、隣の「音」に悩まされたことがある。
隣に別の大学の学生が引っ越してきたのだが、こいつがギターが趣味で、夜でも部屋でギターを弾きながら歌うような男だった。しかも、下手ときてる。「十八番」はチャゲ&飛鳥で、おかげで私はすっかりチャゲ&飛鳥が嫌いになってしまった。
このギター男は女性と同棲していて、夜になると、この女性の「あえぎ声」が漏れてくるのにも参った。ケンカでもしたのか、女が延々3時間くらい号泣していたこともあった。

集合住宅でこういう「音」のトラブルが続くと、つい自分に対する嫌がらせか?と疑うようになる。
実際は周囲なんか気にしていないから、意図せず騒音を出すのだが、被害者はあくまで自分個人への攻撃と感じてしまう。
私の場合、その都度容赦なく即時に大家に電話通告し、管理人を通してしつこく抗議を繰り返した結果、そのギター男は私のあまりのしつこさに根を上げ、アパートから出て行った。
もし、彼が住み続けていたら、私も被害妄想が悪化し、刃傷沙汰を起こしていたかもしれない。

振り返れば、実は騒音というほどでもないのだが、神経質になってしまうのは、相手とまったく面識がないことが一因であろう。
隣の住人の顔すら知らない、という時代になって久しい。アパートだと住人の入れ替わりも激しい。そんな「孤独」が、自己を肥大化させ、些細な物音にも「意味」を与えようとするのではないか。

私たちの世代は、子ども時代には密閉された自分の部屋を持っていた者が多い。しかし、大人になると一戸建てに住める者は少数で、アパートやせいぜいマンション暮らしである。
安普請のアパートだと壁は筒抜けである。「未知の他者」と共生したことがない者が、不安のあまり、今回のような事件を起こしていまう可能性は、ますます増えるような気がする。
誰もがもっとまともな住居に住めるような社会を望むのは、ぜいたくなのだろうか・・・。
[PR]
by mahounofuefuki | 2007-09-16 11:53

世界遺産は増えすぎではないか

政府が、国立西洋美術館を世界文化遺産に推薦することを決定した。

世界遺産条約によれば、登録される世界遺産とは、「特別の重要性を有しており、したがって、人類全体のための世界の遺産の一部として保存する必要があるもの」「顕著な普遍的価値」のあるものと規定されている。
現在、日本からは、
「法隆寺地域の仏教建造物群」
「姫路城」
「白神山地」
「屋久島」
「古代京都の文化財(京都市、宇治市、大津市)」
「白川郷と五箇山の歴史的集落群」
「広島平和記念碑(原爆ドーム)」
「厳島神社」
「古代奈良の文化財」
「日光の神社群や寺院群」
「琉球王国のグスク遺跡群と関連する遺産群」
「紀伊山地の聖地と巡礼路網」
「知床」
「石見銀山の銀鉱遺跡とその文化的景観」
が世界遺産として登録されている。

また、現在までに、
「古代鎌倉の寺院群、神社群、その他の構造物群」
「彦根城」
「平泉の文化財と遺跡群」
「富岡製糸工場と関連する産業遺産」
「小笠原諸島」
「長崎の教会群とキリスト教徒の遺跡群」
「飛鳥=藤原:日本の古代首都群の考古遺跡群と関連する遺産群」
「富士山」
が候補として推薦されている。
今回、さらに国立西洋美術館が候補リストに加えられたのである。

遺産の保護が必要であることは言うまでもない。
しかし、正直なところ、世界遺産は増えすぎではないか
すべてが本当に「特別の重要性」や「普遍的価値」を持つのか、はなはだ疑問である。
しかも、日本では昨年から立候補制になった。「世界遺産」という名前だけが独り歩きし、単なる観光客集めのコマーシャルになっているのが現状だ。
戦後の1959年に建てられ、現在も使用されている国立西洋美術館が、果たして世界遺産と呼ぶに適した文化遺産だろうか。遺産というには新しすぎる気がする。

もともと世界遺産の制定は、戦火や財政難で保存が危機に瀕している遺産を、国際的連帯で守ろうという意図から始まった。
しかし、各国の思惑から、自然遺産も文化遺産も、「先進国」に偏りがちであるし、本当に危機に瀕している遺産の保護に対する国際的支援は十分とはいえない。
日本のような、特に世界遺産基金から援助がなくとも遺産を保護する能力がある国は、世界遺産の推薦をもっと抑制するべきではないのか。

世界遺産の保存にかかる資金で、何人もの飢えた人々や、病気の人々を救えるだろう。就職難と低賃金に喘ぐ「難民世代」としては、「遺産より生存」というのが本音である。
逆にいえば、そうした人々を犠牲にする価値がある遺産だけが、本当に世界遺産と呼ぶに値するのである。

このまま世界遺産が増え続ければ、世界遺産そのものの希少性が低下し、その「ありがたみ」も薄くなるだろう。
地方の振興策ではなく、あくまでも学術的・歴史的見地に立って、世界遺産を選定してほしい。
[PR]
by mahounofuefuki | 2007-09-15 17:29

日雇い派遣にアブレ手当

厚生労働省が、日雇い派遣労働者に失業保険を適用する方針を固めた。
実際の仕事内容は同じでも、「派遣」であるために、失業保険の給付を受けることができなかった不公平を是正する措置で、何もないよりはましになった。

しかし、そもそも日雇い派遣(これも例の如く企業側は本質を誤魔化すために「スポット派遣」などと呼称しているが)という雇用形態が、常態化しているのを、このまま座視するのか、という問題には相変わらず無頓着である。
「構造改革」のもとで労働者派遣法を「緩和」した結果、多くの業種で日雇い派遣が可能になった。毎日異なる職場、単純労働、低賃金、不安定・・・・・労働者の生活など微塵も考えていない「トンデモ法」になってしまった。

連合の高木剛会長は、13日の記者会見で、日雇い派遣を含む登録型の派遣労働を禁止するよう主張したが、単に禁止してしまえば、登録型派遣で暮らす労働者は職を失うだけである。
連合加盟の労働組合自体がワークシェアリングを主導するなど、非正規労働者との連帯を本気で模索しなければ、正規・非正規間の溝は深まるばかりだ。

失業保険といっても、日雇い労働者に対する給付は「アブレ手当」で、とても生活できる額ではない。日雇い労働とは、ある意味毎日失業を繰り返しているわけだから、本当に辛い。

一方で、こんなニュースがある。
グッドウィルが、折口雅博会長愛用の36億円のジェット機を売却したという。
派遣労働者から給与をピンはねしながら、オーナーの「戦闘機ごっこ」なんかに無駄遣いをしていたのだ。
36億円というと、年金の着服額の比ではない。
公務員の「ネコババ」には激怒する人は、経営者の「ネコババ」のはなぜ怒らないのだろう?
[PR]
by mahounofuefuki | 2007-09-14 21:51

さようなら、アベ

昨日退陣を表明した安倍内閣。
1年あまりの短命政権であったが、この1年でこの内閣の残した傷跡はあまりにも深い。

安倍晋三は、もともと従来の政治力学では、とても首相になれる器ではなかった。
国会の当選回数、閣僚経験、政策実績いずれも浅く、健康不安も早くから囁かれていた。
それにもかかわらず、首相になれたのは、小泉政権時代のポピュリズム状況のためであった。
2002年の歴史的な日朝首脳会談と、それに続く「拉致ヒステリー」の喧噪のなかで、当時内閣官房副長官だったアベは対朝強硬姿勢を貫き、拉致問題を国交正常化交渉のなかで解決するという小泉首相の当初路線を転換させたことで、一躍マスメディアの寵児となった。
情報操作とイメージ戦術を重視する小泉はアベを重用し、自らの後継に据えるようになった。

小泉とメディアの力で政権の座に就いたアベを待っていたのは、「構造改革」による貧富や地域間格差の拡大による民衆の疲弊であった。前政権のいわば「尻拭い」をさせられたのである。
アベは「再チャレンジ」というコイズミ流のワンフレーズの掛け声で乗り切ろうとしたが、もはや日本社会はそんな中身のないスローガンに騙されるほど愚かではなかった。
小泉政権が先送りした所得税や住民税の定率減税の打ち切りで、庶民の負担増大は誰の目にも見えるようになった。もはや「再チャレンジ」どころではなかった。
しかし、アベは政策転換することなく、巨大企業の言いなりに、市場原理主義政策を続け、貧困と格差はさらに拡大し続けた。

一方、アベは彼本来のイデオロギーで、独自色を出そうとした。それが「教育再生」であった。
もともと自民党は日本国憲法とともに、民主的主権者の育成を目指す教育基本法を邪魔に考えており、憲法改悪の露払いとして、教基法の改悪を行った。
情報操作により、教職員を「公認の敵」に仕立て上げ、「教育再生会議」なる素人の井戸端会議に教育政策を丸投げし、子どもを権力に従順な奴隷にするため、国家による教育統制の強化を図った。
アベは歴史認識においても、保守派の歴史観そのままに、日本のアジア侵略の史実を歪め、ついには沖縄戦の「集団自決」強制の事実までも歴史教科書から消し去ろうとした。
これらのアベ「独自の政策」は、50年は修復できないほどの傷になった。

巨大企業とアメリカの利益を最優先する市場原理主義と、主権在民を否定する国家主義という2本柱で、強引な政治運営を続けたアベだが、内外の情勢はアベの足元を揺さぶった。

まず、アメリカのブッシュ政権が、対朝「封じ込め」政策を転換し、米朝2国間交渉に切り替えた。強硬姿勢1点張りのアベ外交は、国際社会のなかで孤立化しはじめた。アベの1枚看板である拉致問題は解決の見通しを失った。
日本国内では、相次ぐ閣僚の不祥事に見舞われた。柳沢厚労相や久間防衛相の失言とその後処理のまずさは、アベの未熟さを印象づけた。
そして、松岡農水相の自殺。現職閣僚の自殺という過去に例のない異常な事態は、それまでメディアに操作されてアベを支持してきた人々も、なんとなくアベ政権の「きな臭さ」を感じるようになった。
さらに追い打ちをかけるように、年金不安が再浮上した。かつて清新なイメージで売ったアベも日に日に憔悴ぶりが目立つようになった。

今年8月の参院選で、アベ自民党は大敗を喫したが、アベは民意を無視し、政権に居座り続けた。しかし、口先だけの政策転換を信じる者はもはや誰もいなかった。
身も心もボロボロになったアベはついに、政権から「逃げ出した」。

安倍内閣の施策で評価できるのは、中国との関係改善くらいで、あとは最悪のタカ派路線を突っ走り、大きな禍根を残した。
最後まで内閣支持率が、なかなか落ちなかったのも、アベに憲法改悪を期待する右翼勢力が支持し続けたからにほかならない。アベの最大の罪は、これら右翼勢力を陽のあたる場に引き出したことだろう。
しかし、もはやアベの再登場はあるまい。
あまりにも情けない引き際は、「美しさ」のかけらもなかった。「美しくない人」に「美しい国」を語る資格などない。今にも泣きだしそうな子どもみたいなアベの顔に、右翼も失望したのではないか。

もうあの顔を見なくてすむのは、とりあえず嬉しい。
さようなら、アベ
[PR]
by mahounofuefuki | 2007-09-13 12:36