2008年 01月 21日 ( 2 )

北国の本音は、ガソリン<道路<灯油

 通常国会が開幕したが、なぜか揮発油税の暫定税率の存廃が「最大の争点」ということになっている。3月で暫定税率を定めた租税特措法の期限が切れるからだが、政府・与党は暫定税率の10年延長に固執する一方、民主党は暫定税率の廃止でガソリンの価格が1リットルあたり25円下がると喧伝し、貧困問題も年金問題もそっちのけでこの問題に血眼である。
 そもそもこの問題の焦点は小泉政権の頃から道路特定財源の存否だったはずだが、微妙に問題がずらされている。道路特定財源は揮発油税だけではなく、自動車重量税石油ガス税もあり、それらを包括した議論が必要だがそうはなっていないのが実情だ。

 暫定税率廃止によるガソリン値下げはおおむね歓迎されそうだが、地方では道路建設の停滞を心配する声が多いのも事実である。これは何も既得利権の擁護ばかりではない。地方では依然として自動車事故のリスクが高い山道や峠があり、またすでに途中まで建設された自動車道路を放置されるのも困る、というのは地方在住者の正直な思いである。私は道路特定財源の一般財源化には賛成だが、十把ひとかけらで「道路はいらない」という暴論は容認できない。
 問題はどの道路が必要でどの道路が必要でないかを公正に決定するプロセスがなく、今も道路族議員の政治的力学関係に左右されていることにある。客観的で合理的な方法をきちんと考えねばならないはずだが、なかなか進まない。

 ところで民主党はガソリン価格のことばかり熱心だが、北国に住む者にとってはガソリンよりも道路よりも切実な問題がある。言うまでもなく灯油の高騰である。
 原油価格の高騰が今も続くなか、中央の政治やメディアの世界ではガソリン価格のことばかり取り上げているが、北国では何よりも灯油の高騰に悩まされている。札幌市消費者センターの定例調査によれば、灯油1リットルあたりの平均小売価格の最近の変遷は次の通りである。
 石油製品小売価格推移表 灯油-札幌市消費者センター*PDF
10/10 80.44円
10/25 80.81円
11/09 85.71円
11/22 89.52円
12/10 98.62円
12/25 98.62円
01/10 98.66円
 12月以降、値上がり幅は落ち着いたが、それでも一貫して値上がりを続けており、昨年に比べて30%以上も高い。小売店によっては1リットルあたり100円を超えるところも少なくない。札幌は北海道で最も灯油価格が低いので、他の地域ではもっと高いことは言うまでもない。ちなみに北海道では灯油の盗難事件が相次いでいる。

 日銀札幌支店は1月8日付で灯油高騰が北海道の家計に及ぼす影響についてレポートを発表している。
 北海道金融経済レポート 灯油高が道内家計に及ぼす影響-日本銀行札幌支店*PDF
 それによると、灯油需要期である昨年11月から今年3月までの1世帯当たりの灯油支出額は13.2万円(1か月あたり2.6万円)で、前年度に比べ4割も増加している。また灯油の家計に占める割合は、消費支出30万円程度の世帯で1割近くに達する(一般に消費支出の低い家計ほど灯油の占める割合が多くなる)。灯油代の分は他の支出を抑制するしかなく、日銀は北海道全体の消費支出抑制額を1か月あたり170億円程度と試算している。
 ここでは北海道の資料しか示さないが、他の寒冷地でも家計への圧迫は同様だろう。新テロ特措法審議時、アメリカ軍に給油支援する余裕があるのなら我々の灯油を支援しろという声をずいぶん聞いた。

 ガソリンよりも道路よりも、高すぎる灯油をなんとかして欲しい。一部の自治体では生活保護世帯などへの福祉灯油を実施しているが、灯油高は全階層にまたがる切実な課題である。寒冷地以外の人々も他人事として突き放さないで欲しい。

【関連リンク】
札幌市消費者センター|石油製品
日本銀行札幌支店ホームページ
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by mahounofuefuki | 2008-01-21 21:20

教科書調査官の系譜~「さるのつぶやき」より

 今年度発行の高校用日本史教科書の検定で、沖縄戦での住民「集団自決」に対する「軍の強制」の記述を文部科学省が改変させた問題は、周知の通り、昨年末の教科用図書検定調査審議会が「軍の関与」の記述の復活は認めたものの、「軍の強制」の記述を結局認めずに、教科書が発行される結果に終わった。
 その後も沖縄の人々を中心にあくまでも審議会の検定意見撤回を求める動きが続いているが、一方で自民党沖縄県連が沖縄県民大会実行委員会の解散を提起するなど、昨年中は曲がりなりにも超党派でまとまっていた運動は綻びが出てきている。正直、保守派の離反は当初から予想していたので驚きはないが、こうした分断が教科書問題を結局うやむやにしてしまうと思うと非常に憂鬱である。

 ところで、教科書検定において決定的な役割を果たしているのが文部科学省の常勤職員である教科書調査官であることは、昨年の当ブログで何度も指摘してきたが、1月20日付の「しんぶん赤旗 日曜版」が戦後の教科書調査官の人事変遷について報じている。「赤旗」の日曜版は電子版には載らないが、さるのつぶやきさんが当該記事転載している。
 さるのつぶやき:教科書調査官、縁故採用の系譜━平泉澄→村尾次郎→時野谷滋→(伊藤隆→)照沼康孝・村瀬信一(・福地惇)
 詳細はぜひ「さるのつぶやき」さんの記事(過去の「赤旗」の教科書関連の記事を紹介したエントリもリンクされている)を読んでもらいたいが、教科書調査官の系譜をたどると戦前「皇国史観」を主唱した平泉澄に行き着くところに、戦後一貫した人事の偏向は明らかである。問題は「調査官は文科省専任職員=国家公務員なのに採用試験がなく、選考基準を文科省は明らかにしていません」というところで、そんな不透明な選考で任命された人物が教科書内容の決定権を事実上握っているのは「民主主義国家」にあるまじき事態である。

 教科書調査官については、昨年当ブログの記事のコピペがあちこちに出回ってしまったが、子どもと教科書全国ネット21事務局長の俵義文氏が、戦後の検定制度の歴史も踏まえてより正確なレポートを公表しているので、リンクしておく。
 俵のホームページより
  教科書調査官とは何か*PDF
  社会科主任教科書調査官はなぜ解任されたか*PDF
 また、現在の教科書調査官と教科用図書検定調査審議会委員については、昨年10月24日の衆議院文部科学委員会で共産党の石井郁子氏が質疑を行っている。
 第168回国会 文部科学委員会 第2号
 教科書調査官の人選の公正化と透明化については、社会科教科書執筆者懇談会が昨年末の声明で要求している。
 沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会|訂正申請の結果についての社会科教科書執筆者懇談会の声明

【関連記事】
教科書改竄の「黒幕」
教科書検定の徹底検証を
沖縄戦の「集団自決」に関する教科書検定問題の資料
教科書検定に関する石井郁子議員の質問
文部科学省はまだ「軍の強制」を弱めようとしている~「集団自決」教科書検定は訂正再申請へ
文部科学省は「軍の強制」否定に固執した~「集団自決」検定問題は終局へ
文部科学省はやはり「軍の強制」を認めなかった~「追いこまれた」と「強いられた」の差
教科用図書検定調査審議会が聴取した「専門家」の意見について

【関連リンク】(2008/01/22追記)
高等学校日本史教科書に関する訂正申請について(沖縄戦関係)-文部科学省
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by mahounofuefuki | 2008-01-21 16:51