連合が2009年春闘で8年ぶりにベースアップを要求する方針を決めたという。
連合、8年ぶりベア要求 物価上昇に見合う賃上げを – 47NEWS(2008/12/02 15:47)*web魚拓 http://s01.megalodon.jp/2008-1202-2056-40/www.47news.jp/CN/200812/CN2008120201000625.html 「方針は、08年度の消費者物価上昇率の見通しを1%台半ばと想定。デフレによる物価下落が続いた昨年までと異なり、物価上昇で賃金が目減りする恐れが強いとしてベア要求を決めた」 物価上昇率が上がった以上、その分賃金を引き上げねば実質的には賃下げになるので、賃上げ要求自体は正当である。昨日、麻生太郎首相が日本経団連など財界団体に対し、雇用の安定や内定取り消しの中止とともに賃上げも要請したことも追い風となろう。輸出産業主体の景気回復路線の下では国際競争力の強化を口実に労働者は我慢を強いられてきたが、現在はそうしたモデルが金融危機で破たんし、国際的にも内需拡大の必要性が説かれており、大義名分にも事欠かない。 とは言え、単に賃上げだけを前面に押し出すのは、労働者間の分断を促進する危険性が濃厚であることも事実である。連合の中心を占める大企業の正規労働者が賃上げを要求するほど、政府の歳出削減政策と「無駄遣い」論者に扇動された大衆のバッシングのために賃上げを望めない公務員や、昇給など口にしようものならすぐに解雇されてしまう非正規労働者や、何よりも現実に賃上げをする体力のない中小企業の労働者はやるせない思いを抱くだろう。ある民主党系の有名ブロガーが麻生首相の賃上げ要請に対し解雇を促進すると非難したそうだが、首相は「雇用の安定」も要請している以上、その非難は言いがかりにすぎないことは別として、個別の賃上げに限らず、あくまで全労働者の賃金総額の(正確には労働分配率の)引き上げをはっきりと要求しなければ、不安定な労働者から同じような反発が出るのは間違いない。 単に大企業の正規労働者の利害だけでなく、全労働者の利害を代表するためには、労働時間の短縮も強く押し出すべきである。2008年春闘の際も弊ブログは賃上げ以上に時短を重視せよと主張したが、日本の労組はなかなか時短について賃上げほど具体的な要求をしない。しかし、正社員層ほど長時間労働による過労や賃金不払い残業=「サービス残業」に苦しんでおり、これは本来喫緊の課題である。何より残業の削減は「雇用のイス」を創出する効果がある(本当の景気対策とは「労働法制遵守による雇用創出」と「消費税減税」ではないのか参照)。正規労働者の時短とその穴埋めとしての非正規労働者の正規化を要求することは、正規労働者と非正規労働者の溝を埋めるためにも必要なことである。実質的な手取りが減ることへの反発はあるだろうが、そもそも残業をはじめから想定した働き方や賃金体系自体に問題があることを認識するべきである。 労働分配率が高止まりしている中小企業については、政府の介入がなければ立ち行かない。公的支出による賃金補助を求めるべきだろう。いずれにせよ1980年代以降、連合はその前身時代も含めて「小さな政府」路線や非正規労働拡大に手を貸した前歴があり、現在も個別の加盟労組レベルでは依然として経営側の御用労組に堕している例が多い。そうした体質から脱皮して、大企業の正規労働者だけでない雇用待遇を越えた労働者の代弁者に生まれ変わらない限り未来はないと断言しよう。その点で「個別の賃上げ」だけが独り歩きしないよう注意しなければならない。
by mahounofuefuki
| 2008-12-02 21:11
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