自民党税制調査会が来年度税制改正での相続税強化を見送る方針を決めたという。
相続税:課税強化見送り 景気悪化に配慮(毎日新聞2008/11/20 02:30)*web魚拓 http://s04.megalodon.jp/2008-1120-2048-47/mainichi.jp/select/seiji/news/20081120k0000m010137000c.html 「しかし、秋以降、景気が一段と悪化。麻生政権が『景気最優先』を掲げていることを踏まえ、自民党税調は『相続税も当面、(税収を上下させない)税制中立でいくしかない』(幹部)との判断を固めた」 貧富の差を本当に縮小するためには、所得の再分配のみならず、資産の再分配が必要なのは言うまでもない。いわゆる「結果の平等」を考慮せず、「機会の平等」を重視する立場であっても(いやむしろそういう立場こそ)、「競争」のスタートラインを等しくするために、相続税は強化しなければ辻褄が合わない。現在最大の社会問題である貧困の再生産の是正策として、相続税の増税は避けて通れないはずだ。 ところが自民党は「景気対策」のために相続税の課税ベース拡大を行わないという。全く不可解な理由づけである。なぜ相続税を据え置くことが景気対策なのか。景気が悪いから企業への課税を弱める、というならまだ理解できるが(ただし実際は金融危機だ減益だと騒いでいても、大企業に関しては依然として内部留保を相当抱えているので、応能原則により法人税や保険料の企業負担分を減らす必要は全くないが)、死亡した個人の資産継承への課税を弱めても、相続後の「二世」が有効な経済活動を行うかどうか全く不確定である以上、景気を左右するようなことにはなりえない。 本当のところは一連の金融危機で金融資産が目減りした富裕層の単なるエゴであって、どさくさに紛れて「景気対策」という名目でごり押ししているのだろう。雇用の保護規制緩和、公共投資・公務員の削減、法人税減税、教育・医療の民間委託推進など市場原理主義的政策を要求したOECDの「対日経済審査報告書」でさえ、「死亡件数の4%しか課税されない相続税を強化する」ことを求めていたことを想起すれば、今回の自民党の判断の特異性が浮かび上がる。 税制をめぐっては専ら再分配効果のない消費税の増税ばかりが議論され、相変わらず直接税は蚊帳の外に置かれている。所得の捕捉が難しいというような技術問題は、再分配機能の強化と言う正当な大目的を否定する根拠にはならない。特に相続税は「金持ちの子は何もしなくても金持ち」という不条理を修正するために絶対に強化しなければならない。残念ながら自民党のみならず野党も含め、ほとんどまともに議論されていないが、理論上は相続額2000万円以上に100%の相続税を課すと国の歳入を全て賄えるという試算(*)すらある以上、政治課題に載せるべきである。 *消費税論議を吹き飛ばす、相続税改正の大きなパワー/SAFETY JAPAN [森永卓郎氏] http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/o/122/
by mahounofuefuki
| 2008-11-20 20:53
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