奈良市環境清美部の清掃職員の最高年収が1100万円に上っていたことを、今日のJ-CASTがやり玉に挙げている。
J-CASTニュース:清掃職員が年収1100万円の「高給」 「給与体系に問題あり」と奈良市見直しへ http://www.j-cast.com/2008/09/19027292.html 「この清掃職員の年収の内訳は、500万円の給料に加え、残業手当が234万円、特殊勤務手当て68万円、賞与223万円、通勤手当などもろもろの諸手当となっている」「この職員は工場勤務をしており、夜勤勤務や祝祭日でも出勤していた。給与体系という意味では、年功序列の加算体系に加え、管理職ではないため、時間外勤務手当て、365日祝祭日も働いていたものだから割り増しになった」 ・・・ということが事実ならば、問題は「年収が高すぎる」ことではなく、「労働時間が異常に長い」ことにある。この報道はそもそもの問題の立て方が間違っていると言わざるをえない。公務員となるとすぐに「厚遇」がどうのと攻撃する輩が多いが、残業手当をはじめとする各種手当は労働者の当然の権利であって、公務員が「厚遇」なのではなく、民間の労働待遇がひどすぎると理解しなければならないことは、過去にも弊ブログで指摘してきた。 以前、トヨタの取締役の平均報酬1億2200万円にもっと怒るべきというエントリで、公務員よりも民間の巨大企業の経営者の方がずっと不公平だと、やや挑発的に論じた時、「トヨタの役員は別世界なので庶民にはどうでもよい」「自分ができないような凄いことで稼ぐのは構わないが、自分でもできるようなことで稼いでいるのが許せん」というような批判コメントをしていたブログがあったが、今回のJ-CASTの場合も結局のところ「清掃職員のくせにもらいすぎだ」という認識が前提にある。 私に言わせれば、多くの労働者や下請け企業を苦しめ、排気ガスを撒き散らすクルマを製造しているメーカーの経営者なんかより、清掃職員の方がずっと社会的に有用で立派な仕事をしていると思うのだが、そうは考えない人の方が多いらしい。今回の件は、恒例の公務員への嫉みと同時に、清掃業に対するあからさまな差別と侮蔑が背景にある。 そこでこの記事のもう一つの狙いが問題となる。別件の「不適切な勤務が最初に発覚した男性職員は部落解放同盟奈良市支部協議会の副議長を務め、市側と何度も交渉していた」「清掃職場での就業には特殊な職場環境がある」。一方で「高給」職員は「給与システム以外の背景はない」と述べていながら、明らかに奈良市環境清美部が部落解放同盟の強い影響下にあることを示唆しているのである。ここから「部落特権」だとか何とか扇動しようという意図を読み取るのは容易だが、むしろ解同との関係で問題としなければならないのは、「なぜ清掃行政と解同の関係が深いのか」ということではないのか。 その答えも、ある程度地域差別や職業差別の歴史を知っていれば容易に導ける。つまり清掃業務が長らく「ヨゴレ」仕事とみなされ、あたかも「ケガレ」の領域を担わされたかつての被差別身分と重なり、そこに差別と清掃行政が結びつく余地を残しているのである。最近はゴミ収集が機械化され、下水道整備が進んだのでそうでもないが、かつてはごみ処理や屎尿汲み取りはとかく人々の「ケガレ」観をかき立てた。解同のやり方に問題があるのは確かだが、同時に差別を前提として特定の業務を特定の集団に請け負わせるかのようなやり方で、事実上差別の温存に手を貸す行政や、大衆の差別意識も俎上にのせなければ公平性を欠くだろう。 単に奴隷根性に支配された人々の嫉みを煽るだけのニュースでも、読みようによっては社会構造の歪みについて考えさせられるという好例であった。
by mahounofuefuki
| 2008-09-19 22:55
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