この国の政治シーンではしばらく前から、年金制度のずさんな実態が表面化しては、年金への不信が増大し、その都度社会保険庁が叩かれるも、抜本的な改良が行われないままうやむやになり、またしばらくすると新たな問題が浮上するというサイクルを繰り返しているが、またしてもとんでもない不祥事が表面化している。
今日の参院厚生労働委員会の閉会中審査で、舛添要一厚生労働大臣は厚生年金の標準報酬月額改竄に社会保険庁の組織的関与があったことを認めた。以下、朝日新聞(2008/09/18 13:08)より。 (前略) 舛添厚労相によると、年金記録の訂正申し立てを審査する「年金記録確認第三者委員会」が改ざんを認めたケースなど88件を分析。標準報酬の大幅引き下げや、半年以上さかのぼって引き下げる処理など3条件に9割が該当したという。改ざんの可能性が高いこれらの不自然な処理について厚労相は「組織的関与があったと推量する」と述べた。 どの報道も「社会保険庁の不正」というところに力点を置いていて、確かに社会保険庁のやったことはずさんかつ悪質ではあるが、この問題の本質は企業が従業員と折半する厚生年金保険料を滞納していたことにある以上、単に社会保険庁を悪者にして済む話ではない。要は企業が保険料を出し渋りしたり、従業員の報酬を実際より低くごまかしていたのを、保険料収納率引き上げのノルマがかかっている社会保険庁がつじつまを合わせていたわけで、この問題の背景には企業の社会的責任の欠如がある。「社会保険庁が」「官僚が」と言う前に、まずは滞納したり、数字をごまかしたりしていた企業こそ責められなければならない。 大臣は「本人への確認作業を、来年早々に開始する」などと答弁しているが、これまでの「消えた年金」同様、またしても確認作業に膨大な時間とコストがかかるわけで、ただでさえ社会保険庁は解体されて「日本年金機構」なる意味不明な法人に衣替えを強制されることが決まっている中で、本当にそんな作業ができるのか疑問である。そうしている間にも年金への不信は高まり、さらに新たな問題が発生しないとも限らない(今まではその繰り返しだった)。 年金記録問題については、以前も指摘したが、もはや大量の年金記録を回復するコストをかけるよりも、この際現役時代の年金負担額に関わらず、すべての人々に一定の年金給付を保障する「年金一律救済」を真剣に検討するべきではないか。現行の年金制度は「自助」を基本としており、だからこそ厚生年金の場合、生涯の勤労年間における標準報酬月額を算出するのだが、「一律救済」ならばそんな複雑な計算も不要である。年金制度のパラダイムを「自助」から「共助」へ転換するしか、年金制度の「安心」を取り戻すことはできないのではないか。その場合、保険料制度の改廃や生活保護制度との関係など、新たに検討すべき課題が生じるが、年金記録の確認作業をエンドレスに続けるよりはよほどましであろう。 政治課題としての年金は専ら財源問題に絞られ、それも消費税増税の口実に利用されているが、多くの人々が年金の持続可能性に不安をもっている以上、今一度、日本に住むすべての人々を包摂し、誰もが人間らしい老後を送れる年金制度の再構築が必要である。そして、財源については、消費税に限定するのではなく、諸外国に比べて少なすぎる企業負担や富裕層の税負担を増やすことをきちんと検討するべきであろう。 【関連記事】 「年金一律救済」論と年金改革私論
by mahounofuefuki
| 2008-09-18 22:13
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