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福田内閣退陣と今後の政局に関する私見

 福田首相の突然の辞意表明は多くの人々にとって青天の霹靂だったようで、いわゆる政治ブログ界隈でもこの時期に退陣する意図や今後の政局の動向について、見事なまでに百家争鳴である。例のごとく私はアンテナが狭いので、その全貌はつかめないが、いくつか論点を整理して、当面の私論を述べておきたい。

 まず福田氏がこのタイミングで退陣を決意したことをどう見るかという点。これに関しては大方が政権運営に自信を喪失した末の無責任な「投げ出し」とみなし、当ブログもそういう見方を示したが、一方で民主党の代表選を埋没させるために、あえてこの時期に退陣表明したという穿った見方や、そもそも先の国会で参院が内閣問責決議を行っている以上、退陣は当然で「投げ出し」ではないとする見方もある。

 民主党云々の件については、私は今回の退陣劇とは関係ないとみている。それというのももともと民主党の代表選には関係者や支持者以外、誰もたいした関心を払っておらず、別に与党側が特別な「花火」を打ち上げずとも、少なくともメディアに大きく取り上げられるようなことはなかっただろうからである。小沢一郎氏の無投票再選ではなく、複数の候補による選挙が行われていても、よほど耳目を集めるような珍事(たとえば姫井由美子氏が出馬するとか)がない限り、無風だっただろう。現在の民主党はあくまで「自民党でない」ということ以外に存在意義がなく、支持者たちにも「誰それを首相に」という積極的な熱意が欠けていることも影響している。

 内閣問責決議の件は私には考え及ばず、なるほど一理あると思うが、しかし、先の問責決議は福田首相への問責というより、自公政権への問責であった以上、単に首がすげ替わる「退陣」では問責に応えたとは言えないとも思う。そもそも問責から相当時間がたっている以上、今回の政変を問責に結びつけ、退陣は当然とするのは無理があると思われる。その立場ならむしろ問責された時点で総辞職か衆院解散を行わなかったことが責められるべきであろう。

 次に衆院の解散時期について。当ブログは昨年から早期解散を主張し、前のエントリでも「即刻」解散すべしと指摘したが、一方で即時解散には否定的な見解も少なくないようである。たとえば今日の「赤旗」は臨時国会での徹底審議を経た上で、主権者の審判を仰ぐべきであると主張し、今月末の臨時国会召集前及び冒頭での解散に反対している。また民主党からは新内閣発足の「御祝儀」相場が生きたままでの早期解散に不安の声が出ていると報道されている。

 臨時国会で国政の争点を主権者に提示した上で総選挙を行うというのは確かに正論ではある。本来ならその方が憲政の常道なのだろうが、私は現実的にはあまり意味がないとも考える。仮に臨時国会の会期中に解散となれば、その時点で成立していない法案はすべて廃案となる。廃案込みで十分な審議ができるとはとうてい思えない。また臨時国会終了後の解散ならば、またしても自公政権の悪法を通してしまうことになりかねない。とにかく衆院で自民・公明両党が再議決可能な3分の2の絶対多数を握っている状態を潰さないことには、抜本的な政策転換は全く望めないと私は考えており、一日でも早く総選挙を行いたいというのが本音である。

 またメディアによる自民党総裁選報道を通して新内閣の支持率が上がり、その余勢をもって解散した場合、総選挙で自民党が有利になるのではないかという問題については、確かに今日も竹中平蔵氏が自民党への支持回復のために「総裁選をドラマティックに盛り上げよ」と入れ知恵していたが、私はそれほど心配していない。その根拠は第一に、自民党に即効的な人気のあるリーダー候補が枯渇していること、第二に、大衆の支持を調達するのに不可欠な明瞭なパフォーマンスをすぐには用意できないことである。

 第一の点については、現在総裁最有力候補と目されている麻生太郎氏にしろ、出馬が囁かれる小池百合子氏にしろ、普遍的な人気を獲得するにはいかにも弱い。麻生氏の場合、「威勢が良くて何か変革してくれそう」という大衆の要求する指導者像に「相対的に」近いから人気があることになっているにすぎず、いわば消去法の結果での支持であるとみている。小池氏の場合、そもそも自民党の中核支持層は「女性首相」を支持するほど成熟していない。もちろんかつて「ほかよりよさそうだから」という消極的理由で支持されていたにすぎない小泉純一郎氏が、「郵政解散」を機に大化けしたような前例はあるが、今回の場合次に述べる第二の点からそれも難しい。

 その第二の点については、自民党が短期間で人気を回復させるためには、自公政権に対する不満や「誰がやっても同じ」というシニシズムを「新政権への期待感」が凌駕する必要があるが、現行の政治的枠組みを前提とする限り、もはや多くの人々に期待をもたせるようなパフォーマンスの材料は存在しない。たとえば「国会議員の数を半分に」とか「公務員給与を一律2割削減」とかぶちあげれば(そんな政策は私はもちろん願い下げだが)、一挙に大衆の支持を調達できるだろうが、現在の自民党ではそれをすぐに党全体の公約にできるほどの政治力学はない。特に新総裁が選挙に向けて「挙党体制」をとろうとすればするほど、既得権益の維持に意を払う必要が生じ、思い切った「改革」はできない。小泉のような芸当はあくまで彼が「すでに首相だった」からできたことで、政権発足当初には困難であろう。

 故に自民党総裁選直後に総選挙が行われても、決して与党に有利にはならない、少なくとも現有議席を大幅に減らすのは確実である以上、私は早期解散を求める次第なのだが、逆に言えば、新内閣はおそらくすぐには衆院を解散できない。私は前のエントリで解散を極限まで引き延ばすとまで言ったが、それは言い過ぎだとしても、与党に有利な材料が出てくるまで(たとえば民主党が「メール」問題の時のようなボロを出すなど)何とかして「衆院3分の2」を手放そうとしないのではないか、というのが当ブログの見立てである。

 正直、こんな政局については、弱小ブログがどうこう言ったところでどうなるものでもなく、主権者としてはひたすら政治に対し「~してほしい」「~をよこせ」と要求するしかない以上、今回の政変についてはもう語りようがないし、語る気もない。実のところ一番心配なのは、この1カ月政局にばかり目を奪われている間に、いろいろな社会問題が見過ごされることであり、その観点からも今後の自民党総裁選やそれに関連する政局の動きはできるだけスルーしつつ、「シラケ」ムードを醸成するのが賢明だろう

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by mahounofuefuki | 2008-09-03 21:28


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