盆休みも終わり、今日から通常営業だったという人が結構いると思う。有給休暇制度があまり機能していない(というより権利として確立していない)日本では、盆と正月と5月の大型連休に長期休暇が集中しがちで、せっかくの休暇も地獄のような帰省及びUターンラッシュに見舞われるか、どこかへ出かけても人ごみだらけで、全然休めないよ~という場合も多い。それ以前に長期休暇自体がなくて、盆の間も仕事でした、という人も増えていることだろう。日本の労働時間の長さと休暇の少なさは世界有数である。
長野県南箕輪村の田畑地区では、盆休みの終わりに若衆が村の有力者の邸宅をバリケードで封鎖して外に出られなくなるようにし、盆休みをもう1日延ばせと実力で要求する「盆正月」という風習が明治以来続いているそうだ。 信濃毎日新聞(2008/08/18)によると、今年も8月16日深夜から17日早朝にかけて、有志の「伝統行事を守る会」の人々が区長宅や公民館などで行ったという。「区長宅の玄関前は母屋隣の物置から持ち出した小型耕運機や靴箱、一輪車などが積まれ、玄関から出入りするすき間もなかった。玄関前の地面には、石灰のような白い粉で『お正月』との文字が大きく書かれていた」。 *中日新聞(2008/08/18 08:46)によると、もともとは「盆が終われば正月だ」という意味を込めて、最後に正月飾りを取り付けていたという。 今年は17日が日曜なので、いずれにせよ公定休日なのだが、区長は律儀にも区内に「今日は休みにしてください」と周知したという。おそらくそういう対応も含めて定番化しているのだろうが、この種の「奇習」が現代も継続して行われていることに驚きを禁じ得ない。 もともとは盆休みに遊び足りない若い衆が、強引に村役人へ要求を通したのが始まりだそうで(信濃毎日新聞の「信州歳時記」などより)、人によっては「悪ふざけ」に見えるかもしれないが、私はこういう痛快な「伝統」は好きである。これはある意味、休養権を要求して労働者が集団で決起したようなもので、まさに「リアル蟹工船」である。現在のインディーズ系の労働運動にも通じるところがある。 南箕輪を含む長野県伊那地方は、日本近代史上、自生的な青年運動が活発だった地域として知られている。特に1920年代には農民青年による自主教育運動である「自由大学」運動や、社会主義青年運動が広がり、中央政府主導の青年団統制が強化されていた時期にあって、例外的に江戸以来の「若衆組」の伝統を引き継ぎつつ、「下から」のうねりが確固たる地盤をかちえていた。この「盆正月」はそうした過去の遺産の名残なのだろう。 「伝統」というと専ら天皇制国家によって「上から」創出されたものばかりを「固有の伝統」とか「古来の伝統」とありがたがる傾向が強いが、むしろ田畑の「盆正月」のような「奇習」にこそ引き継ぐべき日本社会の「伝統」が息づいていると思う。現在でも「休みを増やせ!」「有給休暇を取らせろ!」と労働者が株主や経営者宅を包囲封鎖できたら面白いのに。 【関連リンク】 信州歳時記|夏 ~ 盆正月(信濃毎日新聞社) http://www8.shinmai.co.jp/saijiki/data/08_002049.php
by mahounofuefuki
| 2008-08-18 17:43
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