厚生労働省の日雇派遣禁止方針に関しては、同省「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」の報告書が不十分な内容であることを当ブログでも批判したが、昨日、森永卓郎氏がさらに厳しい見方を示していた。
「日雇い派遣禁止」の裏に隠された巧妙なからくり / SAFETY JAPAN [森永卓郎氏] / 日経BP社 http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/o/145/index.html 森永氏は特に2つの問題を重視している。第一は、日雇派遣禁止に伴い、日雇労働者が大量に失業する可能性があること、第二は、報告書が派遣対象業務の規制を無視していることである。氏は今回の厚労省の動きについて「結局は大手業者の利権を守りつつ、世間の批判をかわすために出てきた措置ではないか」とまで指摘している。 結論から言えば、森永氏の心配は決して杞憂ではない。 第一の問題に関しては、単に日雇派遣禁止だけでは短期的には失業者が増えることは、すでにグッドウィル廃業で経験済みであって、当然何らかの手当てを行わなければならない。現在、厚労省では「しごと情報ネット」を拡充して、日雇などの短期雇用の求人を派遣会社に代わって紹介する事業を検討していると伝えられるが、実効的に機能するようなシステムが必要だろう。理論的には「日雇派遣」を禁止しても、「日雇」に対する企業の需要がある限り、求人はなくならないが、禁止前に派遣の時給引き上げが必要であるという氏の指摘は正論である。 第二の問題に関しては、当ブログでも「最低でも同一労働の均等待遇を義務づけ、不安定な登録型派遣を廃し、派遣対象業種を制限するところまでやらなければ、雇用待遇差別の解消のスタートラインにすら立てない」と指摘したが、特に派遣の製造業への解禁が貧困を拡大したことは『労働経済白書』も認めているほどで、派遣対象業種の規制は絶対必要不可欠である。 森永氏は「証拠はないものの、製造業務への派遣労働禁止をしないのは、派遣労働を大量に利用している大手製造業と、大きな利益を得ている大手派遣会社に、政府が配慮しているからではないか」と指摘しているが、この点は製造業における「2009年問題」を考えれば、正しい見立てだろう。私は以前から直接雇用申込義務の廃止と日雇派遣禁止の「抱き合わせ」を警戒しているが、政府・財界は日雇派遣中心の新参派遣業者を切り捨ててでも、大手メーカーの利益を擁護しようとするだろう。今後の展開によっては「大手業者の利権を守りつつ、世間の批判をかわすために出てきた措置」になってしまう可能性がある。 派遣労働問題に関しては、派遣それ自体の解消で完結するのではなく、正規雇用や他の非正規雇用(請負など)も含めた、この国の労働環境全般を視野に入れて、人間らしい働き方を確立する方向性につなげる必要性を、最近特に感じている。非正規雇用の正規化をもって雇用待遇差別是正の突破口にしたいという考えは変わっていないが、政府や財界が巧妙な罠を次々と仕掛ける中で、より戦略的な対応を求められているのも事実だろう。 【関連記事】 労働者派遣法改正問題リンク集 日雇派遣禁止は当たり前。問題はそのあと。 派遣労働見直しへのバックラッシュと「抱き合わせ」改正への警戒 厚労省「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」報告書は不十分
by mahounofuefuki
| 2008-08-12 12:34
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