大分県の教員採用をめぐる汚職がにわかにクローズアップされている。新規教員の採用や管理職への昇格など県教委所管の人事において、教育委員会幹部や学校管理職らとの間に金品の贈収賄や口利きが常態化していたことが明らかになりつつある。県議会議員の口利きも表面化し、もはや問題は底なしに拡大している。
教員や公務員の採用をめぐっては、特に地方に行けば行くほど「縁故採用」の噂が従来から絶えなかった。詳細は私にも実生活上の立場があるので述べられないが、地方の教員採用・異動でいくつか縁故優遇の具体的な疑惑を実際に見聞きしたこともある。私が大学時代、周りの教員採用試験合格者に小学校や中学校の校長の子弟が少なくなかったという事実もある。今回の大分県の場合はやり方があまりにも露骨で異常と言うしかないが、ここまで露骨ではない方法での口利きや工作は全国どこでも行われているのは間違いない。 元来、地方の小中学校の教員採用は、ほぼ地元の旧師範学校系の教員養成大学出身者で固められていた。大学の教員養成課程を出ればまず間違いなく地元の教員に採用されていた時代は、受験の競争率も低く、採用過程では不正が行われる可能性は低かった(ただし臨時採用や非常勤講師の採用で縁故がモノを言ったり、採用後の人事をめぐり人事権をもつ校長が縁故者を優遇したことはあったと思われる)。 しかし、少子化と学校統廃合の拡大による教員採用数の抑制と、長期不況による民間の就職難により、一般大学出身の志願者や地元以外からの越境受験者が増加して競争率が上がると、縁故を頼る傾向が高まった。実力主義を前提とする競争原理が強くなるほど、むしろコネの威力が発揮されるという新自由主義のパラドックスはここでも現れたのである。 一方、教育行政の構造的な歪みも見逃せない。都道府県や市町村の教育委員は一応議会同意人事であるがほとんど仕事をしておらず、実際は都道府県庁や市町村役場の行政マンや文部科学省からの出向官僚から起用される教育長が教育行政の実権を握っている。教育長は都道府県の場合、知事・副知事・出納長に次ぐ幹部であることが多く、教育委員会は自治体の行政機構の枠内に組み込まれている。 かつてGHQの占領改革で地方の教育委員会は民選となり、文部省や自治体からの独立を担保されていたが、「逆コース」下の1956年に地方教育行政組織法が施行されて以降は、文部大臣を頂点とする上意下達の命令系統が整備され、教委は独立性を失った。その結果、教委幹部の官僚化が進み、同時に政府や自治体からの介入や議員の口利きに対する耐性も弱まった。 もう1点、不正の温床として、教職員組合の弱体化も挙げなければならない。教育委員会や管理職と強力な教職員組合が緊張感のある対抗関係を保っていれば、相互に不正に対する抑止機能や監視機能が働くが、周知の通り現在の組合は組織率が低下する一方で、教育行政の抑圧に対する抵抗力はほとんどなくなってしまっている。近年は末端の教員に至るまで上意下達の命令系統に組み込まれており、「日の丸」「君が代」を踏み絵とした教員統制も強まっている。実は教委幹部や管理職の子弟の縁故採用には組合弱体化策としての機能があり(縁故採用者は教委にとって「安全分子」であり、さらには「管理職予備軍」となる)、その点でも教育行政の構造的な歪みは深刻である。 いずれにせよ大分県はもちろん、他の都道府県も含めこの際は膿を出し切り、抜本的な是正策を行う必要あるのは言うまでもない。こういう事態が起きると、単に教育関係者の地位を貶めて、厳罰を与えることに自己満足したり、民営化万能論でかえって教育行政の非合理を進めたりしがちだが、これまで述べたように問題の本質は、教員採用試験の競争率の異常な高さと教育委員会の独立性の剥奪と教職員組合の弱体化にある。つまり、問題の解決には、教員資格取得の厳格化や試験選抜方法の改善、教育委員会の独立性回復、教職員組合の復活が必要である。特に組合は今や大衆の「公認の敵」扱いだが、大衆がバッシングで組合の弱体化に加担したことが不正の原因の1つになっていることを、きちんと理解してほしい。 【関連リンク】 地方教育行政の組織及び運営に関する法律 - 法令データ提供システム http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S31/S31HO162.html
by mahounofuefuki
| 2008-07-09 17:40
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