東郷神社前宮司の松崎暉男氏が近著で、靖国神社が合祀したA級戦犯を東郷神社に分祀するよう提言するという。毎日新聞(2008/05/25 02:30)によれば、松橋氏は「靖国神社に代わる新たな国立追悼施設反対の立場で、神社本庁と一致している」が、「A級戦犯合祀が中国などの反発を招いた問題は、首相参拝が行われなくても解決しない」という立場だという。
政府や保守勢力の一部にある、A級戦犯分祀によって「外交問題としての靖国問題」を解決し、靖国神社の公共性を確固たるものにしようという考えと同じとみられるが、この考えは「外国さえ黙らせれば靖国問題は解決」という立場であって、日本国内の歴史認識の問題、あるいは政教分離の問題としての「靖国問題」を無視しているという点で問題である。 以前も書いたが、靖国問題の本質は、無数の戦没者の中から軍人・軍属だけを特権化し、しかもこれら戦死者・戦傷病死者が実際は国家の愚策によって死を強要されたのを、国家の繁栄のために死んでくれたと顕彰することで、日本国家の戦争責任を糊塗していることである。 あえて極言すれば、国家指導者は本来「国家のせいで死なせてしまい申し訳ありません」と言わなければならないところを、「我々のために死んでくれてありがとう」と換骨奪胎してしまうのが靖国神社である。そこには戦争に対する反省も、民間人や外国人の戦争被害者への視点も、平和への祈願もない。 A級戦犯を分祀すれば、韓国や中国をはじめ諸外国は「戦争指導者と民衆は違う」という立場から靖国参拝を問題としなくなり、「外交問題としての靖国問題」は確かに解決するかもしれない。しかし、日本の主権者にとっての靖国問題は何一つ解決しないどころか、かえって現在法的には一宗教法人にすぎない靖国神社を国家の戦争美化装置として復活させてしまう契機となりかねない。 靖国神社が現実に果たしてきた戦争美化と兵士再生産の機能は、A級戦犯が合祀されていようといまいと何ら変わらない。いまいちど靖国問題を戦没者追悼の在り方の問題として捉え直す必要があるだろう。 【関連記事】 靖国神社とは何なのか
by mahounofuefuki
| 2008-05-25 12:34
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