北海道夕張市の商工会議所が、陸上自衛隊の市街地戦闘訓練用の演習地を誘致する準備を進めているという。北海道新聞(2008/05/24 06:34)によれば「山間部に分散する集落から候補地を選び、住民を市中心部に移転させた後、老朽化した元炭鉱住宅のアパートや民家を演習用に提供」する計画で、国からの周辺整備費交付や自衛隊員滞在による消費効果を見込んでいるという。
周知の通り、夕張市は財政破綻により財政再建団体となり、厳しい債務返済を課せられているが、もはやカネになるものなら何でも誘致しようと形振り構わぬ姿勢を示していると言えよう。発想としては原発や刑務所の誘致工作と同じで、国の側からすれば住民にとってリスクの高い施設を交付金をエサに地元の方から進んで誘致するよう仕向けたに等しい。 記事によれば地元関係者が4月に防衛省陸上幕僚監部を訪問して打診したというが、そもそも陸自が市街戦用の演習地を欲しているという情報を夕張に流したのは誰か。これは素人の思いつきでは出てこない。表向きは夕張側の、それも地元財界の要請だが、実際は防衛省・自衛隊側の発案ではないかという疑問が拭えない。 ところでこの件で私が思ったのは、ある意味で貧困と戦争の関係性を如実に表しているということである。アメリカ軍が貧困層から兵士のリクルートを強化したり、市民権をエサに移民層の志願兵を促進しているように、現代の戦争は「貧困が軍隊を支える」状態にあるが、夕張の件も広い意味で「貧困自治体」の弱みが戦争準備と結びついている。 貧困地域が増えれば、その分軍隊にとっては「使い勝手の良い基地・施設」を手に入れられるという関係は非常にいびつだ。戦争で儲かる人々にとっては、貧困が増えた方が望ましいということになる。 もう1点。この問題は自衛隊にとっては、従来の演習地内の模擬市街地では満足できないところに、本物の住宅や道路でドンパチできますよという「嬉しい」申し出である。かつて現実に人が生活していた市街地で「実戦」さながらの訓練ができるというのは、自衛隊の「実戦」への「渇望」を高める。 これは東映の特撮戦隊モノが採石場で「戦闘」しているような滑稽さと同時に、ある種のうすら寒さを感じる。すでに専守防衛を事実上脱ぎ去り、海外でアメリカ軍の下請け部隊として活動することを予定している自衛隊にとって、想定する市街戦はアジアやアフリカのどこかでのものだろう。あるいは日本国内の「敵」を制圧する治安出動。「テロとの戦い」を口実にその銃口は国内の平和主義にも向いている。演習が「本物」に近いほど、戦争のリアリティは高まる。 夕張の財界はテーマパークの誘致のような気楽な感覚を持っているのかもしれないが、これは慎重を要する問題である。 【関連記事】 グリーンカード兵士から見える軍隊の変容~「国民軍」から「グローバル軍隊」へ
by mahounofuefuki
| 2008-05-24 21:53
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