自衛隊イラク派遣差し止め訴訟で、名古屋高裁はイラクの現状をイラク特措法が定める「戦闘地域」と判断し、派遣中の航空自衛隊の活動には武力行使を含み憲法第9条に違反するとの控訴審判決を下した。
この国の司法はもうかなり前から、日米安保体制や自衛隊の問題について、憲法判断を回避するのが定石となっていただけに、正直なところ驚いている。上級審になるほど政府寄りなのも常識であるだけに、一審でもなかった違憲判断を控訴審が行ったのは(原告や他の賛同者には悪いが)想定外だった。もちろんこの想定外は喜ばしい。 9条に対する違憲を認めた判決は、1973年の長沼ナイキ訴訟一審判決(いわゆる「福島判決」)以来だそうだから、画期的・歴史的判決と言ってよいだろう。青山邦夫裁判長の勇気と気骨に敬意を表したい。 この訴訟は、①自衛隊派遣の差し止め、②イラク特措法の違憲確認、③平和的生存権・人格権侵害の慰謝料支払いを求めたもので、今回の判決は一審同様そのいずれも認めずに控訴を棄却しており、訴訟そのものは原告の敗訴である。しかし、皮肉にも国は勝訴したが故に上告できず、原告が上告しなければ今回の判決は確定する。 読売新聞(2008/04/17 14:24)によれば、判決はイラクについて「多国籍軍と武装勢力との間で、国際的な武力紛争が行われている」と指摘し、空自の輸送活動のうち「少なくとも多国籍軍の武装兵員を戦闘地域であるバグダッドに空輸する活動は、武力行使を行ったとの評価を受けざるを得ない」(太字強調は引用者による)と判断したという。「戦闘地域」での活動を禁じたイラク特措法に違反し、戦争のための武力行使を禁じた憲法にも違反すると認定したのである。 政府は再三、自衛隊のイラク派遣の合憲・合法根拠を派遣地域が「戦闘地域」ではないことに置いていたが、裁判所は「戦闘地域」であるとみなしたのである。イラクの現状認識において国家機構の一部である司法機関が、政府の説明と異なる見方を示した意味は重い。また米軍などの兵員を戦地に輸送する活動を「武力行使」と認定したことは、日米安保体制のなし崩し的強化に警笛を鳴らし、改めて憲法が禁じる「武力行使」の厳密な定義づけの必要性を指摘したと言えよう。 今回の判決が出たことで、反憲法勢力は現憲法下で自衛隊の「武力行使」を「合法化」する限界を痛感し、憲法9条改定への野望を改めて高めることだろう。アメリカからの改憲圧力もますます強まることが予想される。 自衛隊の在り方については護憲派内でも廃止論から専守防衛論までさまざまだが、当面は海外での武力行使禁止と米軍との一体化見直しの2点に絞って、9条擁護の論陣を張る必要がある。今回の判決の憲法判断を十二分に生かすべきだろう。 【関連リンク】 自衛隊イラク派兵差し止め訴訟の会/トップページ イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法-法令データ提供システム
by mahounofuefuki
| 2008-04-17 20:14
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