2001年の9・11同時多発テロ以降、アメリカは「テロとの戦い」を最も重要な国家目標とし、アフガニスタンやイラクへの侵攻もその一環として行ったわけだが、いずれも「外のテロリスト」を「内」に入れないためという論理でもって戦争を正当化した。つまりアメリカにおいて「テロ」は国外から侵入するものであるという前提に立っていたのである。
実は9・11以後、アメリカ国内を最も震撼させたテロは、何と言っても炭疽菌事件である。炭疽菌入りの郵便物が政府機関や報道機関に送り付けられ、実際に死者も出た。このテロの怖さは、たとえば小包や封筒に実際には炭疽菌が入っていなくても、表面に「炭疽菌」と書かれているだけで対象を脅迫することが出来ることで、まさに「恐怖を与える」という本来の意味での「テロ」であった。 この事件は結局真相がわからないままウヤムヤとなる一方、アメリカ政府は対外戦争に邁進するのだが、今日になって次のようなニュースが伝えられた。共同通信(2008/03/29 10:10)より(太字強調は引用者による)。 米FOXテレビは28日、2001年の米中枢同時テロ後に米国で起きた炭疽菌事件で、米連邦捜査局(FBI)がメリーランド州フォートデトリックの陸軍感染症医学研究所で炭疽菌研究にかかわった科学者ら4人を容疑者と特定、捜査を進めていると報じた。現時点では詳細は不明だが、当時からアメリカ国内の炭疽菌を扱う公的機関から漏洩したのではないかという疑惑を指摘されていた。常識的に考えれば、外国のテロリストの仕業とするより、よほど説得的であり、今回の容疑はかなり濃厚だと言えよう。 炭疽菌事件が如実に示すように、テロとはあくまでも犯罪であり、「テロとの戦い」とは犯罪予防の範疇に含まれる。「外」からのテロの侵入のリスクよりも、「内」からのテロの発生のリスクの方がはるかに高いのである。報道の通り炭疽菌事件に軍の機関が関与していたとなれば、まさに足元を掬われたと言わざるをえず、テロと戦っているはずの組織の中に「テロリスト」がいたということになる。アメリカ政府の「テロとの戦い」の内実は非常に杜撰であるとしか言いようがない。 炭疽菌事件の行方はアメリカがこれまで行ってきた「テロとの戦い」の正当性に疑問を投げかけている。アメリカに追随を続ける日本にとってもこの問題は他人事ではない。 【関連リンク】 NBCテロ
by mahounofuefuki
| 2008-03-29 21:33
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