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在宅勤務制度への期待と不安

 帝人が4月より社員の在宅勤務制度を導入するという。以下、共同通信(2008/03/22 16:43)より。
(前略) 仕事と家庭の調和(ワークライフバランス)の実現を目指し、女性が出産後も働き続けられ、男性も育児や介護がしやすい環境を整えるのが狙い。少子化で新規採用が難しくなっていることから、電機、自動車業界などで同制度を採り入れ、化学・繊維業界にも導入が広がってきた。
 在宅勤務制度は、持ち株会社の帝人のほか、合成繊維を手掛ける帝人ファイバー、医薬品事業の帝人ファーマなど国内グループ会社8社が導入する。条件は配偶者も働いていて小学6年生以下の子どもがいるか、妊娠中、介護を必要とする人を抱える社員で、自宅で仕事ができること。
 「少子化で新規採用が難しい」のなら既卒の非正規労働者を正規採用しろというツッコミは別として、企業が社員の育児や介護に配慮するのは良い傾向である。今後、高齢化がますます拡大し、老いた親の介護という問題が現役世代にのしかかる。一方、一昨日の当ブログでも指摘したように、出産率は女性の労働環境(出産・育児のための休業保障など)や男性の家事時間と密接に関係している。在宅勤務制度は労働と家庭生活を両立するための1つの処方箋として評価できる。

 ただし問題もある。在宅勤務では労働時間の制約がない。24時間いつでも仕事ができる。労働時間の裁量が広がれば、労働者は自由に好きな時間で働けるように錯覚しがちだが、出勤・退勤が定まらないということは、仕事量が多い場合、際限なく労働時間が拡大する可能性が高い。
 すでにIT化で職場以外でも仕事が可能になった結果、終業後も自宅に仕事を持ち帰るのが当たり前になってしまったという現実がある。「残業」という概念を消滅させるホワイトカラー・エグゼンプションと同様の危険性があり、労働時間の無限増大化に悪用される不安が拭えない。

 在宅勤務制度には期待と不安が交錯する。今後どう展開するのか長所と短所を見極める必要があるだろう。

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by mahounofuefuki | 2008-03-23 13:03


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