私たちは「主権者」であって、「臣民」ではない。故に国家に対してさまざまな権利を行使するし、国家からは納税の見返りにさまざまなサービスを受ける。国家の存在価値は主権者が生存できるよう保障することにあり、「民」のために国家があるのであって、その逆ではない。
イラク人質事件の際に、人質たちが「国家に迷惑をかけた」と非難した輩がたくさんいたが、そもそも国家とは主権者が「迷惑をかける」ものであり、その「迷惑」を快く受け入れない国家は責任を果たしていないのである。 こんなことを書くのは、次のニュースを目にしたからである。毎日新聞(2008/03/12朝刊)より(太字強調は引用者による)。 離婚後300日規定で「前夫の子」となるのを避け、無戸籍となった男児への児童手当などの支給に当たり、三重県亀山市が母親(37)に対し「前夫または現夫から異議が出た場合は市に迷惑をかけない」などとする「念書」を提出させていたことが分かった。無戸籍でも手当などを支給できると自治体に通知している厚生労働省は「書面を出さないから支給しないというなら問題」としている。「書面を出さないから支給しないというのなら問題」なのではなく、こんな念書を出させたことこそ問題である。市民が困っている時に何とかするのが行政の役割であり、それを「迷惑」と位置づけるのは、全く筋が通らない。「児童の健康・福祉の観点」を口にするのなら、「前夫または現夫より異議」があろうとなかろうと、市は自信をもって公的給付を行うべきである。だいたいそんな念書に法的根拠があるのか。 私がこの問題に過敏になるのは、この国ではあまりにも「お上」に対する「臣民」意識(奴隷根性とも言ってよい)が強く、行政に負担をかけることをあたかも「罪悪」と感じる人が多いからだ。生活保護を受けると財政難の自治体に迷惑だとか、沈没した漁船の捜索に自衛隊を使うと「お国」に迷惑だとか、あまりにも権利に無自覚だ。 行政は厄介をかけるために存在する。何でも「自己責任」で抱え込んで自滅するのではなく、行政の厄介になる方が正しい。 このニュースの本筋は民法の「離婚後300日規定」だが、私は「戸籍を廃止して“個人籍”にしろ」という立場なので、当然無意味な削除すべき規定だと考えている。たとえ現行の戸籍制度を前提にしても、現代ではDNA鑑定で血縁関係は明らかになる以上、特例を容認するべきである。 【関連リンク】 戸籍法-法庫
by mahounofuefuki
| 2008-03-12 20:27
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