日米安保体制とはそもそも日本がアメリカに軍事基地を提供する代わりに、アメリカが日本の安全を保障するというシステムで(アメリカに守ってもらう代わりに、便宜を提供するとも言えるが)、パワーポリティックス的観点に立っても、あくまでも双方にとってメリットがなければならない関係である。
しかし、沖縄をはじめ米軍基地のある地域の現状は、アメリカの「加護」の代償としてはあまりにも大きく、平穏な住民生活の妨げになっている。安保体制の実情は単にアメリカが都合よく日本列島を軍事拠点として利用できる制度であって、現状では日本側にはほとんどメリットがないのではないかと言わざるをえない。岩国市長選挙の争点も、アメリカだけにメリットがある状態の是非が問われていると言えよう。 そんな一方的な日米関係を象徴するような出来事が北海道小樽市で起きた。経過は次の通りである。 今年1月16日、アメリカ海軍第7艦隊の旗艦「ブルーリッジ」が2月7~11日に小樽港に寄港したいという要請が小樽市にあった。ブルーリッジはこれまで何度も小樽に寄港しているが、今回は指定期間中にパナマ船籍などの大型商船が岸壁(バース)を利用する予定があったため、小樽市長は1月28日に入港を断る決定をし、小樽海上保安部を通してアメリカ側へ伝えた。小樽市は2000年にもアメリカ軍艦の入港を断った事例があり、何も問題はないはずだった(北海道新聞2008/01/28 13:43)。 ところが、その直後から小樽市側に対し、外務省北米局の課長補佐クラスから電話が10回近くあり、さらに2月1日には同省日米地位協定室長が市役所を直接訪問して、ブルーリッジを寄港させるよう圧力をかけたという。外務省側は軍艦よりも商船を優先した小樽市の判断を「港湾管理者としての能力に欠ける」とまで言い放ったという。 外務省が港湾管理者である地方自治体の権限に介入する法的根拠はない。山田勝麿市長は「商船を追い払ってまで入れるとしたら、まるで軍港だ」と話し、商船優先の方針を改めて回答した(同前2008/02/01 07:12)。 事態はその1日に急転する。当初2月8~13日に入港を予定していたパナマ商船の代理店が、入港予定が10日ほど遅延すると連絡してきたのである。バースが空いた以上、ブルーリッジの寄港を拒否する理由がなくなった小樽市は、アメリカ側へ入港可能を通知した。 商船の予定変更について小樽市港湾部では「理由はわからない」としているが(同前2008/02/02 07:31)、北海道新聞2008/02/06朝刊社説は「商船の日程変更を国が働きかけたのでは、と勘繰りたくなる」(太字は引用者による)と指摘している。 結局、アメリカ側の当初の要求通り、ブルーリッジは2月7日に小樽港へ寄港する見込みである。 要するに、自治体が商船を優先してアメリカ軍艦の寄港を断ったところ、外務省が法的権限もないのに軍艦を寄港させるよう圧力をかけ、自治体がそれでも姿勢を変えないと、不透明な方法で商船の方の予定を変更させてまで、アメリカ軍艦の寄港をごり押ししたのである。 山田市長は「まるで軍港」と言ったそうだが、これでは「植民地の軍港」である。この事件が示すのは外務省がもはやアメリカ政府・軍の代理人であって、独立国の外交当局ではないという実態であろう。 さらに問題はこんな地方自治と外交の独立性を破壊するニュースを地元のメディアしか報じていないことだ。近年、日米安保体制の矛盾を示す問題はすべて「地域の問題」に還元され、「全国の問題」や「国家の問題」にならなくなっている。日米の軍事一体化がどんどん進むなかで、こうしたことは日本のどこでも起こり得る。単なる一地域の問題と捉えてはならない。
by mahounofuefuki
| 2008-02-06 22:25
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