この国では長らく官僚制の支配が続いているためか、「官」を憎むあまり「民」を過剰に高く評価する傾向がある。
中曽根政権による国鉄民営化や小泉政権による郵政民営化は、そんな大衆の「官」への不信と「民営化」信仰を背景に強行された。最近も社会保険庁がやり玉に挙がり、「ねんきん事業機構」に衣替えさせられることになった(これもいつ民営化の話が出てもおかしくない)。 「行政のムダをなくす」=「民営化」という公式は依然としてこの国の世論を支配している。 現在「行政のムダ」としてやり玉に挙がっているのは、何といっても独立行政法人(独法)である。 もともと橋本政権が「行政改革」の一環として作ったものだが、小泉政権は特にこれを利用し、国の機関の一部や特殊法人や大学などを次々に独法とした。民間企業と同様、納税義務があり、実績により予算が左右されるなど、一種の市場原理が導入された。 しかし、これまでの特殊法人などと同じく、官僚の天下りが多く、厳しい批判にさらされている。最近も次のようなニュースがあった。 共同通信(2007/11/22 17:38)より。 2006年度の独立行政法人(独法)の常勤役員のうち、中央省庁の官僚出身者は200人で、全体に占める割合は39・2%だったことが22日、総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会のまとめで分かった。前年度と比べると27人少なく、割合は4・5ポイントの低下。独立行政法人は、天下りポストを確保するための組織で、税金のムダであるという意識から、容易に独法の民営化論や廃止論が導かれる。たとえば、次のコラムはその典型例であろう。 末期的症状を呈する自民、その9 独立行政法人は廃止すべし 青山貞一 官僚の天下り、高額な役員報酬、国からの補助金の増大、等々の理由を挙げて「私見では大部分の独立行政法人は、主たる存続理由があるとは思えない。それらはすぐにでも廃止すべきである」と結論づけている。 青山氏は小泉流の「構造改革」には批判的なはずだが、独法廃止論はまさに「小さな政府」論そのものである。 独法を十把ひとかけらにして、「ムダ」と決めつけるのは本当に正しいのだろうか。 やはり最近、次のようなニュースがある。 以下、朝日新聞(2007/11/21 15:13)より。 政府が独立行政法人の見直しの一環として、国民生活センター、製品評価技術基盤機構、農林水産消費安全技術センターの3者の統合を検討していることがわかった。政府は国民生活センターについて、(1)消費者から直接相談を受ける窓口の廃止(2)商品の安全性テストの大幅外部化、などを検討していたが、「消費者軽視」との批判を浴びていた。このため、消費者重視を打ち出した福田首相の下で、機能を拡充する方向で再編を目指すことになった。国民生活センターは、消費者からの相談受付や悪質商法の情報伝達や製品・商品テストなど、消費生活上重要な業務を行っている。それが独法の数を削減するために、ほとんど関係のない法人と統合され、機能を弱体化させられそうなのである。 国民生活センターばかりではない。労働政策研究・研修機構も存続が危うくなっているという。 東京大学社会科学研究所教授の玄田有史氏がブログでその危機を訴えている。 JILPT廃止反対要望書への賛同署名及び転送のお願い-玄田ラヂオ 玄田氏ら「独立行政法人労働政策研究・研修機構の存続を求める研究者の会」は、11月13日に厚生労働大臣へ次のような要望書を提出したという。 厚生労働大臣 舛添要一殿労働政策研究・研修機構は、主に雇用環境や労働条件などの労働問題を研究し、格差や貧困についても一般で問題になる前から実証的に明らかにし、社会政策・労働政策への提言を行ってきた。こうした研究は公営の研究機関であるからこそ可能だったのであって、その廃止は労働問題の実証的研究をないがしろにし、貧困や格差を隠蔽する行為である。 独法を「税金のムダ」と主張する人々は、独法の中に私たちの生活にとって重要な活動を行っている機関が少なくないことを知っているのだろうか。 マイナス面が目立つからつぶしてしまえ、というのは暴論である。 私も独法が現状のままでよいとは思っていないが、安易に統廃合を主張することは、結局のところ公共性の高い、国にしかできない(民間にはできない)業務を担う機関を消してしまいかねないことを認識して欲しい。 【関連リンク】 総務省行政評価局-独立行政法人評価-独立行政法人総覧・独立行政法人評価年報 独立行政法人 国民生活センター 独立行政法人 労働政策研究・研修機構 行政改革推進本部事務局ホームページ
by mahounofuefuki
| 2007-11-23 17:42
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