この国の官僚たちは、公文書を「国民共有の財産」とは考えず、各官庁の所有物と考えがちである。
情報公開法はあるが、開示の可否は依然として政府のさじ加減次第であり、何より公文書保存に関するルールは各官庁ばらばらで、包括的な文書管理・保存のための法令がきちんと整備されていない。現用でなくなった公文書が主権者の知らぬ間に廃棄されているなんてことが日常茶飯事なのである。 そんな現状に一石を投じるニュースがある。以下、共同通信(2007/11/21 20:34)より。 旧大蔵省編さんの「昭和財政史」で引用された沖縄返還の関係文書を情報公開請求したのに、財務省が「不存在」を理由に不開示としたのは不当として、特定非営利活動法人「情報公開クリアリングハウス」(東京)の三木由希子室長が21日、処分取り消しを求め東京地裁に提訴した。『昭和財政史』は大蔵省昭和財政史編集室(現・財務省財務総合政策研究所情報システム部財政史室)が編纂した公刊の「正史」である。大蔵省文書をはじめ膨大な資料をもとに書かれ、財政史のみならず経済史・政治史全般の研究に有用な著作である。 しかし、いかに有用であっても、典拠に上げた史料を確認できないのでは問題である。歴史研究の場合、史料を引用するにあたって、必ずどの史料のどこの部分なのか明記しなければならない。そうでなくては他者が検証できないからである。他者が検証できなければ、極端な例では史料を改竄していてもわからない(かつて南京大虐殺否定派が史料を改竄して発表したことがあった)。 今回の件で財務省は、財務省文書管理規則が定める保存期間30年を過ぎたため、廃棄した可能性が高いと回答しているが、もし事実なら公刊書に引用された文書を平気で捨ててしまえる感覚は、情報公開の軽視であり、歴史研究に対する侮辱である。 本来、現用でなくなった文書は国立公文書館へ移管し、随時公開されるべきだが、実際は人件費の不足や官庁の隠蔽体質のためにスムーズに行われていない。移管と廃棄の選別を各官庁に委ねてしまっていることが、今回の問題の原因である。日本の公文書管理の在り方は非常に杜撰なのだ。 ただ、事が沖縄返還の密約にかかわるとなると、そう簡単に廃棄しているとも思えない。 財務省には財政史室のほかにも非公開資料を集積した倉庫があるという噂を聞いたことがある。財務省は今回の件で関係全部局を探索したと言っているが、にわかには信じがたい。厚生労働省が薬害肝炎患者のリストを倉庫に放置していたようなことが、財務省にも十分にありうる。 訴訟となれば行政の審査よりも厳密に調査が行われ、『財政史』の執筆者や当時の担当者への証人尋問もありうるだろうから、少しでも進展を期待したい。 改めて情報公開法の強化と、包括的な公文書管理法の制定が必要であると痛感させられる。 【関連リンク】 財政史-財務省 財務総合政策研究所 特定非営利活動法人 情報クリアリングハウス 理由説明書に対する意見書-三木由希子*PDF 答申書-「大蔵省資料Z27-381」等の不開示決定(不存在)に関する件*PDF
by mahounofuefuki
| 2007-11-22 13:01
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