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「カルト学者」が埼玉県教育委員長に

埼玉県教育委員会が、委員長に明星大学教授の高橋史朗氏を選出した。
高橋氏は2004年に上田清司知事の肝煎りで教育委員に任命された人物だが、実は「新しい歴史教科書をつくる会」の元副会長という、非常にいわくつきの人物である。

高橋氏は1950年生まれ。早稲田大学大学院終了後、スタンフォード大学フーバー研究所客員研究員などを経て、1990年より明星大学の教授を務めている。元々は占領期の教育政策の研究者だったが、一方で復古主義的教育論を唱え、中曽根内閣時代には臨時教育審議会の専門委員に抜擢されるなど、若くして保守派の教育学者として名を成した。近年は性教育やジェンダーフリーに対する狂信的な中傷や攻撃で知られ、「新しい歴史教科書をつくる会」の公民教科書の監修者でもあった。

ちなみに2004年12月に埼玉県教育委員に任命される際、当初「つくる会」教科書とは無関係とウソをついていたが、実際は「つくる会」側が監修者から高橋氏の名を削除して、体裁を取り繕っていた。文部科学省が削除者名を公開したためウソが発覚したにもかかわらず、開き直って教育委員のイスにしがみついたのは周知の事実である。
2006年9月には教員採用・人事権者である教育委員でありながら、現職教員や教員志望者を対象にした私塾「埼玉師範塾」を開くなど、上田知事の「寵愛」を背景に権勢を揮い(「師範塾」名誉会長は上田知事)、国家主義・復古主義的教育を推進している。
今回ついに教育委員長になり、名実ともに埼玉県の教育行政のトップに座ることになったのである。

問題は高橋氏が単なる「右翼」ではないことにある。
以下は、右翼団体「一水会」元代表の鈴木邦男氏の回想である(以下、各引用文の太字はすべて引用者による)。
今週の主張6月12日 いいじゃん。「君が代」の替え歌だって (鈴木邦男をぶっとばせ!)

(前略)そうそう,産経にこのコメントをしていた高橋史朗氏(明星大学教授)だ。実は,知ってる人だ。早稲田の後輩だ。それだけじゃない。「生長の家学生道場」の後輩だ。同じ寮に住み,修業した。毎朝,4時45分に起床して,お祈りし,聖経を読み、講話を聞き、それが終わると中庭に集合して国旗掲揚をした。夕方は降下式がある。ほとんど帰省しないから、350日位、国旗を掲げ、君が代を歌う。朝夕だから1年で700回だ。僕はここに6年いた。4200回は君が代を歌い、日の丸を掲げた。その後、右翼になってからも、年に何回かはやってる。だから軽く、5000回は超えてる。だから、「愛国者のノルマ」は超えとる。
 この話は、『愛国者は信用できるか』(講談社現代新書)に書いた。高橋史朗氏も一緒に「君が代」を歌い、「日の丸」を掲げた。さらに私は、毎日のように大学で全共闘と闘っていた。荒ぶる戦士だった。大学の勉強なんておろそかにしていた。高橋氏はまじめな学生だった。成績も優秀だった。頭もよかった。だから、今は教授だ。偉くなっている。「学生道場」というスタート地点は同じだが、「勝ち組」の高橋氏と、「負け組」の私は、はっきり差がついてしまった。悲しい。(後略)
高橋氏は、保守系宗教団体「生長の家」と深い関係があるのだ。
それだけではない。以下は、東京大学大学院教授の高橋哲哉氏の講演である。
「国家に心を奪われないために」(ヒロシマ県北)

(前略)この高橋史朗氏という人は、「つくる会」のメンバーですから「歴史教科書にいわゆる日本軍慰安婦の問題を書くのはけしからん。削除すべきだ」という主張から始まりまして、「自分たちの主張を載せた教科書を自分たち自身で作ってしまえ」という事で、扶桑社から教科書を出したわけです。同時に彼の一番のフィールドは道徳教育で、とりわけ性教育に関心が強いんです。
 この問題が起きて12月12日に埼玉でも教育基本法改悪に反対する集会が600人ぐらい集めて行われました。これはそれまで対立していて同席する事がなかった複数の教職員組合の人なんかが同席するという画期的な集会でした。そこでこの問題が起こったものですから、この高橋史朗氏がどんな活動してきたのか、という事で彼が出演しているビデオを上演したんですね。このビデオは「性教育過激派のねらい」というビデオです。それで私も初めて見てびっくりしたんですけれども、最初の部分にこういうナレーションが入るんですね。「社会主義国は崩壊したが、共産主義は今『性教育』という名の妖怪に形を変えて子どもたちと家庭に入り込んで来ようとしている」。非常に不気味なビデオなんですけれども、高橋氏がその中で現在日本で進められている性教育と言うのは、いかに過激なものであって人々の常識に逆らうものであるか、「性交教育」「性器教育」「煩悩教育」だというふうに決め付けて攻撃をしている。そしてまた最後が衝撃的な終わり方をするビデオなんです。
 当時、日本で広く使われていた性教育の中学校用と高校用の副読本が画面に現れまして、なんとそれに火が付けられ、燃やされるシーンで終わるんですよね。つまり焚書ですね。かつてナチスドイツが「ユダヤ人の書物が有害である」と言って鎧の広場にそれを集めて燃やしました。それと全く同じ感性でこの性教育を攻撃している、そういうビデオだった訳なんです。このビデオは高橋氏自身が表明しているところでは、勝共連合系の団体から依頼されて出演したという事で、実は彼はいわゆる統一教会系のグループと連動しながら、ずっと現在の性教育を過激だとして攻撃してきた、そういう人物だったんですね。
 そのビデオの中で燃やされている性教育の副読本の中学校用のほうをここに持って来てます。東京書籍のもので、中を見ますと、子どもたちが成長していく過程で、「性」というものを自分の中にどういうふうに統合していくかという事を中心にして書かれています。
 一番最後の所には参考資料として「子どもの権利条約」、それから「女性差別撤廃条約」、そして「世界人権宣言」というものが載っております。至って真っ当な性教育の副読本だと私などには見えるんですが、これが過激派になってしまう。共産主義者の陰謀だという事になってしまうんですよね。(後略)
高橋史朗氏は「生長の家」のみならず、「統一教会」とも深い関係があるというのだ。しかも「焚書」とはもはや狂信者の行いである。これはもはや「カルト学者」と言っても差支えないだろう。
実際、高橋氏の講演を観た人が次のような傍聴記を書いている。
教育者のような顔をした宗教家 (きょうも歩く)

(前略)高橋史朗の話は変だった。「主体変容」「守破離」「人格的知能」だの、変な言葉ばかり使って、できの悪い新興宗教の教祖のような自己完結している講釈を聞かされているだけだった。「主体変容」って何ですかね。チュチェ思想かね。
彼は共産党系教育学の基礎となる発達段階論を無批判に今でも受け入れ右翼的に応用している。いわく、発達段階に応じて、強制をしていくことが教育なんだ、自立はそれからなんだ、という言い方をしている。汐見教授などに冷やかされると、「しっかり抱いて下に降ろして歩かせろ」と同じ話を繰り返し、底の浅さを感じる。
出身地の兵庫で提起したトライアル教育(中高生を一週間程度労働体験させること)が実践に移され成果を上げていることを自慢していた。トライアル教育後は、不登校児の78%が学校に戻ると。しかし一週間経つと30%も来なくなっている。逆に、労働体験させることは意味が大きいんだろうけど、学校が変わらないままなんだから、学校に通えば元の木阿弥になるのは当たり前だということだ。
そんな意味のない話にうんうん頷いている傍聴者が多いのにはびっくり(でも拍手の量は圧倒的に少なかった)。
レジュメらしきものにはもっともっと変なこと書いている。
怪しげな脳科学や、家庭教育への猛烈な信奉と、保育所に対する嫌悪と専業主婦へのばらまき手当の提案が語られている。埼玉の保育環境はほとんど良くならないだろう。自民党ばかりか、県政与党のこの辺の民主党議員たちも、保育所の充実に対しては、同様に家庭教育を弱体化させるものとして後ろ向きだしね。埼玉県の子ども・教育施策は石原東京都政以下になるな、と思った。土屋県政と比べると、私の頭の中では「きれいなファシズムより汚い民主主義」がリフレインする。(後略)
書き手が社会民主連合の活動家であることを差し引いても、高橋氏のオカルトぶりは間違いない。「主体的変容」「人格的知能」など、まともな教育学でありえないトンデモ語である。単なる国家主義者・国粋主義者よりずっとたちが悪い。
こんな男に肩入れする上田知事の見識を疑う。

【関連リンク】
講師紹介 高橋史朗プロフィール (講師依頼.com)
上田埼玉県知事による高橋史朗氏の教育委員任命を阻止するネットワーク
福島みずほ「教科用図書採択の公正確保と検定申請図書流出問題に関する質問主意書」 (参議院)
by mahounofuefuki | 2007-10-25 23:06


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