インド洋での海上自衛隊による給油問題は、テロ特措法が認めないイラク戦争への転用があったかどうかが焦点となっている。
市民団体や野党の調査では転用疑惑はもはや「疑惑」というより「事実」であるが、日本政府はあくまでもイラク戦争への転用がなかったと押し通すようだ。共同通信(10/14 07:43)によれば、防衛省はアメリカなどから提供された公開日誌などの資料を精査し、2002年12月以降の800件近い給油事案すべてでイラク作戦への転用がなかったと結論づけたという。アメリカ政府も最近は日本政府に口裏を合わせるように転用を否定しており、これで何とか国会を乗り切ろうという腹積もりだろう。 はじめから結論ありきの防衛省の「精査」など全く信用ならないのは言うまでもない。 2003年2月に海自の補給艦「ときわ」がアメリカ軍の空母「キティホーク」に間接給油していた問題の時も、政府は当時給油量を20万ガロンと国会で答弁していたにも関わらず、その後ピースデボの調査で実際の給油量が4倍の80万ガロンであったことが判明し、「データの入力ミス」という取ってつけたような理由で訂正した(しんぶん赤旗9月22日付)。 政府の防衛関係の発表など所詮は「大本営発表」でしかなく、そのまま信じるのはよほどのバカだけである。 ところで、野党、特に民主党はこの転用問題を国会で追及して、給油活動継続のためのテロ特措新法を葬り去ろうとしているようだが、私はあまりにも転用問題だけに注目が集まり、給油活動ひいてはアメリカ軍などへの後方支援そのものの正当性が議論されなくなるのを危惧している。 もちろん自衛隊が法令に違反する活動を行っているというのは文民統制上からも危険であり、転用問題は軽視してよい問題ではない。 しかし、転用問題にばかり目を奪われると、まるでイラク戦争に転用さえしていなければ、インド洋での海自の活動は問題がないと錯覚してしまうのではないか。 本来問われているのは、テロ特措法により行われている自衛隊の活動が本当に必要なのかどうかである。テロ特措法が期限付きの法律なのは、期限切れの時点で活動の必要性や正当性を再検討することを前提としているからである。 しかし、政府・与党は何ら根拠も示さず、ただ国際公約だからとか各国から評価されているからとか、「外圧」を繰り返すばかりである。挙句の果てには「給油活動を続けなければ石油の輸入が減る」といった類のデマすら流している。 今国会ではこういう政府・与党の無責任な姿勢をただすべきなのだが、もっぱら転用があったか、なかったかという議論に絞られると、テロ特措法そのものの問題は矮小化してしまうのではないか。 だいたいイラクでもアフガニスタンでも、アメリカがやっているのは戦争である。仮にイラク作戦に転用されていなくても、アフガニスタンでの武力行使に日本が加担していることに変わりはない。そしてアフガニスタンでは一向に治安が良くならず、難民が増え続けている。現在アメリカ以下の国々が行っている「テロとの戦い」がまったく成果を挙げていないことは一目瞭然である。 マスメディアの誘導で給油活動継続に賛成する人々が増えている現在、テロ特措法をめぐる問題はイラク戦争への転用だけではないことをはっきりさせないと、政府・与党のごり押しがまかり通ってしまう危険性がある。野党はこの問題で足元をすくわれないよう気をつけねばならない。
by mahounofuefuki
| 2007-10-14 21:39
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