もう顔を見るつもりはなかったが、見てしまった。
突然の辞意表明から12日。 ひとまわり老けたような覇気のない表情。 呂律が回らない。 用意した原稿を読むのにも何度もつかえていた。 かつて「カメラ目線」にこだわっていた男が、 今は人の目を見ることすらできない。 くたびれ、やつれ、衰弱しきった小さな男がそこにいた。 この12日間、首相は事実上不在だったことが、これではっきりした。 臨時代理を任命することを頑なに拒んだ。 しかし、あの病人がとても執務をできたとは思えない。 首相がいなくても、とりあえず日常の行政に支障がない国。 首相の不在が問題にならない国。 それはもしかすると、成熟した「くにのかたち」なのかもしれない。 彼は図らずも、首相の存在の「軽さ」を実証してしまった。 「美しい国」だの「再チャレンジ」だの、まるで新興宗教の教祖のような物言いをするこの男の顔を見るのが、ずっと苦痛だった。 「従軍慰安婦」の「狭義の強制はなかった」などと虚言を弄する彼の声を聴くのは、ただただ不快だった。 しかし、今日はもうその苦痛も不快感も消えていた。 同情や憐れみを感じたわけではない。 そこにいたのは、かつての彼の抜け殻で、もはや別人だったからだ。 「偉大な祖父」のようにならなければと、自己を追い込んでいた「憑きもの」が落ち、病気になってはじめて、彼の本当の姿が現れたような気がした。 自分の弱さ、情けなさを認めよう。 無理に強がっても、自分が壊れるだけだ。 今の彼の姿を見ていると、そんな言葉が出てくる。 「シンゾーさん、もうおじいさんの影におびえなくてもいいんだよ。」
by mahounofuefuki
| 2007-09-24 21:39
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