宮内庁が考古学会・歴史学会に対して、伏見桃山陵(明治天皇陵)と五社神古墳(「神功皇后」陵)の立ち入り調査を許可するという。
諸学会は約30年前から、何度も陵墓の公開を求めていたが、政府・宮内庁は皇室祭祀を理由になかなか認めてこなかった。今回相当な制約付きではあるが、立ち入りを認めたことは非常に画期的である。 皇室のさまざまな慣習については、まるで古来一貫した「伝統」であると誤解している人が多いが、現在行われている皇室祭祀のほとんどが、明治維新後に整備されたものであり、常に時代とともに変化してきた。 陵墓はその最たるものであり、江戸時代中期に、幕府が朝廷との協調のために、陵墓復興作業を行うまで、古代の陵墓は多くが野ざらしであり、墳丘の上に村がある例すらあった。 陵墓の本格的復興は、天皇の権威が浮上し、「万世一系」イデオロギーが台頭する幕末になってからで、特に1862年からの「文久の修陵」はその後の陵墓治定の基礎となった。 しかし、さしたる根拠もなく、記紀や「延喜式」などの文献や地方の伝承をもとに、短期間で強引に決めていったため、多くの陵墓が実際とは異なる結果となった。 例えば、「継体天皇陵」は太田茶臼山古墳ということになっているが、歴史学・考古学の通説では今城塚古墳の方だとみられている。あるいは「欽明天皇陵」は、檜隈坂合陵ではなく、見瀬丸山古墳の方が有力である。 また、相当する陵墓が見つからない場合は、捏造も行われた。 そもそも、今回の「神功皇后」も含めて、古代の「天皇」や「皇族」の中には実在しないことがはっきりしている者も多く、実在しない者に墓などあるはずもない。 このように現在、宮内庁が指定している陵墓は実にデタラメなのだが、「万世一系」の虚構を守るために一向に修正しようとはしなかった。 専門家の調査を拒んできたのも、宮内庁のウソが大衆に知られることを恐れていたからにほかならない。 陵墓はあくまで文化財である。皇室の私的所有物ではない(現に国有財産である)。公費をもって維持している以上、主権者に公開するのが当然の責務である。 今回の限定的公開が、陵墓の全面公開の端緒となるよう切に願う次第である。
by mahounofuefuki
| 2007-09-20 16:29
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