光市母子殺害事件の被告の弁護士らが、彼らに対する懲戒請求をテレビで扇動したタレント弁護士の橋下徹氏を、弁護活動妨害のかどで提訴した。
殺人事件があまたある中で、この光市母子殺害事件は、異様な展開をたどった。 まず、事件そのものが口にするのもおぞましいものであったこと。 被害者女性の夫が極めて攻撃的で堂々と復讐を宣言したこと(記者会見で、被告を死刑にできなければ自分が殺す、とまで言っていた)。 マスコミが事件を興味本位で偏向した報道をしたこと。 その結果、多くの大衆が被害者の夫に過剰なほど共鳴し、被告の死刑を求める世論が高まったこと。 さらに、大衆の攻撃は被告にとどまらず、被告の弁護団や死刑反対論者にまで及び、ついには新聞社に弁護団への脅迫状が送られる事態になったこと。 このようにまさに「狂気」の連続である。 橋下氏の被告弁護団への中傷もこの文脈でとらえるべき事柄である。 実は私も事件当初は、なんてひどい事件だと憤りを感じていた1人であった。 しかし、マスメディアや大衆世論の過剰なまでの凶暴性に、犯人とされる被告の「狂気」とは別種の「狂気」を感じるようになり、今は被害者の夫にまったく共感できなくなった。 しかも、こともあろうに最高裁判所が、大衆の攻撃に恐れをなしてか、無期懲役の控訴審判決を差し戻してしまった。裁判が報道や世論に左右されることなど、あってはならないのに。 私は一連の群衆心理に、排外主義と同じものを感じる。 つまり、弱そうな「公認の敵」、いくら攻撃しても反撃されることはなく、権力も認めている「敵」を攻撃することで、絶対的優越感を得るという点で、両者は共通するのである。 もし、これが犯人が「少年」でなく、「暴力団員」だったら、ここまで世論は高まっただろうか? メディアは報道しただろうか? 否である。この国の大衆が「少年犯罪」となると、大人の犯罪以上に激昂するのは、自己より絶対的下位にあるべき「少年」が、自己の存在を脅かしていると感じるからだ。 これは、あえて断言してもよいが、「少年法はいらない」「少年を死刑」にと叫んでる人ほど、街中で未成年が不法行為をしていても注意のひとつもできず、内心で苦々しく思っているだけの臆病者だ。自分の弱さを誤魔化すために、「少年犯罪」をだしに使っているにすぎない。 ましてや弁護士を攻撃するなど、もってのほかだ。 もし、冤罪で逮捕・起訴された時、実際に助けてくれるのは誰か。橋下氏のような権力迎合的な男ではなく、今や大衆の憎悪を一身に浴びる「人権派」弁護士である。自分は逮捕されることがない、などといくら自信をもっていても、無実の罪で検挙される例はあとをたたない。最近、最高検察庁でさえ冤罪防止機能が不十分であると認めていたではないか。 はっきり言ってしまえば、光市事件の被告が死刑になろうと、そうでなかろうと、被害者ではない私たちの生活に影響はまったくない。厳罰にして見せしめにすれば、犯罪はなくなると本気で信じているとすれば、ずいぶんお目出度い話だ。この事件に直接関係のない人間が拘る理由は何もない。 今回の提訴で、橋下氏が何らかのペナルティを受けることを強く望みたい。 それでも、大半の人々の目が覚めることはないだろうが・・・。
by mahounofuefuki
| 2007-09-03 21:06
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