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中間管理職の逮捕で済む問題ではない

 グッドウィルの二重派遣問題で管理職が逮捕された件。
 昨年来、相次ぐ不正の発覚で現行の派遣労働の無法状態が誰の目にもわかるようになったが、違法行為に対して責任者が刑事上のペナルティを受けたことは大きなメルクマークである。特に二重派遣はいわば二重の「中間搾取」という点で、派遣労働の不正の中でも最もえげつない脱法行為の1つであり、必ず根絶しなければならない。今回の立件が派遣業界に対する圧力として機能することを期待する。

 一方で、今回の件を含め、派遣業界の不正は単に何人かの中間管理職を逮捕すれば済む問題ではない。こう言っては何だが、今回の逮捕者のようなマネージャークラスの社員もまた「会社のために不正を行った」という点である意味犠牲者である。経営サイドからはノルマを課せられ、とにかく業績を上げることを求められる。それをやりすごしたり、不正を拒否すれば管理職といえども(というよりむしろ管理職だからこそ)ただでは済まない。企業組織の中で不正な経営者に抵抗するのは、生命を賭けて生活を捨てない限り困難なのが現状である。
 報道によれば、警視庁はグッドウィル経営陣への訴追も準備しているようだが、トカゲの尻尾切りに終わらず、必ず経営者の責任をはっきりさせなければならない。すでにグッドウィルのオーナーだった折口雅博は経営者の座を退き、アメリカのグリーンカードを取得して事実上亡命しているようだが、「逃げ得」を許してはならない。

 問題は企業だけではない。「中間搾取」を公認する雇用政策を問わなければ、いつまでたっても労働者を食い物にするやり方はなくなることはない。派遣労働者を正規雇用にし、直接雇用・無期雇用の原則を再確立しなければならない。そのための第一歩が労働者派遣法改正である。派遣業界のロビー活動が強化されているのか、野党間の一致すら得られず、今国会の派遣法改正案提出は失敗したようだが、これは喫緊の課題である以上、できるだけ早くやり遂げなければならない。

【関連記事】
労働者派遣法改正問題リンク集
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by mahounofuefuki | 2008-06-03 19:50

マクドナルドの新報酬制度は手の込んだ賃下げ

 日本マクドナルドが昨日、管理職扱いで残業代を支払っていない直営店の店長などに8月から残業代を支払う新制度を発表したが、新聞の見出しがどこも「名ばかり管理職」への残業代支払いを強調していたので、てっきり「ただ働き」という違法状態の非を認めたのかと思いきや、今日報道の詳細を読んで驚愕した。
 店長などを管理職からはずし残業代を支払う一方で、職務給を廃止する(賃金総額はほぼ同じ)。過去の違法状態は認めず残業代の遡及支払いはなし。現職の直営店長が会社を提訴し、1月に東京地裁が残業代の支払いを命じたものの会社側が控訴した訴訟も継続。「残業ゼロ」を目指すとしながら実態に即した残業防止策はなし。
 これでは違法状態を解消して残業をなくすどころか、手の込んだ事実上の賃下げである。

 この問題は単に店長に残業代が支払われていないというだけでなく、定時内に仕事ができないと査定に響くために、多くの店長がタイムカードを改竄してまで時間外労働をせざるをえない状況に追い込まれている所に核心がある。
 マクドナルドの会長は記者会見で「業績を上げている店長ほど残業が少ない」(毎日新聞2008/05/21朝刊)とあたかも残業の原因が店長の無能であるかのように言い放ったそうだが、実際は表向き残業が少ないように見せかけている人が評価されているだけの話である。日本マクドナルドユニオンの書記長は次のように指摘している。「そのまま残業時間として報告すれば能力がないとされる。圧力の中で、正確な労働時間を申告できない人が多いのが実態だ」(毎日、同前)。
 今回の新制度がそのまま実施されれば、ますます表向きは定時で仕事を終えているようにみせかける「隠れ残業」が増える。「隠れ残業」には残業代が支払われない。そして職務給が廃止される分、賃金は下がる。「手の込んだ賃下げ」と言わざるをえない所以である。

 マクドナルドの今回の発表は、失墜した企業イメージを挽回することが目的で、何一つ反省していない。「改革」どころか「改悪」とすら言える。引き続き人間らしい働き方を求めてひたすら闘い続けるしかない。

【関連記事】
マクドナルド残業代不払い訴訟で勝訴判決
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by mahounofuefuki | 2008-05-21 20:47

雇用保険の国庫負担全廃へ~社会保障費削減路線を続ける福田内閣

 福田内閣は口先では「生活者重視」とうそぶいているが、実際は後期高齢者医療制度を予定通り実施したことに端的に現れているように、依然として小泉以来の「強きを助け、弱きを挫く」政策を継続している。社会保障費の自然増分を毎年2200億円削減する路線を中止する気配は全くなく、庶民の生活維持のための支出を減らす一方で、さらに消費税増税による貧窮者のジェノサイドを目論んでさえいる。

 額賀福志郎財務大臣が今日の記者会見で、雇用保険の国庫負担を来年度から廃止する意向を表明したが、これは今年の社会保障費削減分を捻出するためで、一昨年から予定されていたことである。2006年の行政改革推進法は第23条で雇用保険の国庫負担について「廃止を含めて検討する」と定め、政府は昨年国庫負担額を55%に引き下げ、1810億円削減した。
 政府は国庫負担を削減する一方で、昨年雇用保険法を改悪し、「自己都合」の離職者の失業給付の受給資格を勤続6か月から1年に伸ばすなど、支出の抑制を図ってきた。そしてついに満を持して2009年度に国庫負担を全廃するというのである。

 政府は失業率が低下したことを国庫負担廃止の理由に挙げているが、今後失業率が再び上昇した時はどうするのか。だいたい雇用保険制度からはじかれた非正規労働者が増大している中で、すべての失業者が給付を受けられるような制度改正が求められているのに、国庫負担の廃止は完全に逆行する。
 派遣会社が雇用保険の適用申請を行っていなかったために、失業給付を受けられない日雇派遣労働者が大勢いる。雇用保険を必要とする人を切り捨てておいて、黒字だの剰余金だのうそぶくのは欺瞞である。これは行政の責任放棄と言わざるをえない。

 政府・与党内からも社会保障費抑制路線に対する不満や批判が出ているにもかかわらず、福田内閣は依然として「小泉が課した宿題」を淡々とこなしている。今年の「骨太の方針」も「構造改革」路線を継続することは間違いない。福田のやっていることは「官製貧困」の拡大である。決して許してはならない。

【関連記事】
生活保護基準引き下げは小泉が与えた「宿題」

【関連リンク】
社会保障予算 ~歳出削減と制度構築の在り方~ 厚生労働委員会調査室 秋葉大輔*PDF
http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/kounyu/20070202/20070202046.pdf
簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律 - 法令データ提供システム
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO047.html
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by mahounofuefuki | 2008-05-09 21:03

厚生労働省の「日雇派遣指針」全文

 (この1カ月余り、当ブログに「日雇派遣指針」の検索で来る例が一定数あり、気になって調べてみたら、今年4月より施行された「日雇派遣指針」はいまだ厚生労働省のHPでもPDFファイルのままだった。不便なのでHTMLに起こして転載する。転載にあたっては一部改行した。)


日雇派遣労働者の雇用の安定等を図るために派遣元事業主及び派遣先が講ずべき措置に関する指針(平成20年厚生労働省告示第36号)

第一 趣旨

 この指針は、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号。以下「労働者派遣法」という。)第三章第一節から第三節までの規定により、派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針(平成十一年労働省告示第百三十七号。以下「派遣元指針」という。)及び派遣先が講ずべき措置に関する指針(平成十一年労働省告示第百三十八号。以下「派遣先指針」という。)に加えて、日々又は三十日以内の期間を定めて雇用される者(以下「日雇派遣労働者」という。)について労働者派遣を行う派遣元事業主及び当該派遣元事業主から労働者派遣の役務の提供を受ける派遣先が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な事項を定めたものである。


第二 日雇派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置

一 労働者派遣契約の締結に当たっての就業条件の確認
(一)派遣先は、労働者派遣契約の締結の申込みを行うに際しては、就業中の日雇派遣労働者を直接指揮命令することが見込まれる者から、業務の内容、当該業務を遂行するために必要とされる知識、技術又は経験の水準その他労働者派遣契約の締結に際し定めるべき就業条件の内容を十分に確認すること。
(二)派遣元事業主は、派遣先との間で労働者派遣契約を締結するに際しては、派遣先が求める業務の内容、当該業務を遂行するために必要とされる知識、技術又は経験の水準、労働者派遣の期間その他労働者派遣契約の締結に際し定めるべき就業条件を事前にきめ細かに把握すること。

二 労働者派遣契約の期間の長期化
 派遣元事業主及び派遣先は、労働者派遣契約の締結に際し、労働者派遣の期間を定めるに当たっては、相互に協力しつつ、当該派遣先が労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間を勘案して可能な限り長く定める等、日雇派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な配慮をすること。

三 雇用契約の期間の長期化
 派遣元事業主は、労働者を日雇派遣労働者として雇い入れようとするときは、当該労働者の希望及び労働者派遣契約における労働者派遣の期間を勘案して、雇用契約の期間について、できるだけ長期にする、当該期間を当該労働者派遣契約における労働者派遣の期間と合わせる等、日雇派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な配慮をすること。

四 労働者派遣契約の解除に当たって講ずべき措置
(一)派遣先は、専ら派遣先に起因する事由により、労働者派遣契約の契約期間が満了する前の解除を行おうとする場合には、派遣元事業主の合意を得ること。
(二)派遣元事業主及び派遣先は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に日雇派遣労働者の責に帰すべき事由以外の事由によって労働者派遣契約の解除が行われた場合には、互いに連携して、当該派遣先の関連会社での就業のあっせん等により、当該労働者派遣契約に係る日雇派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ること。
(三)派遣先は、派遣先の責に帰すべき事由により労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行おうとする場合には、日雇派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることとし、これができないときには、速やかに、損害の賠償を行わなければならないこと。その他派遣先は、派遣元事業主と十分に協議した上で適切な善後処理方策を講ずること。また、派遣元事業主及び派遣先の双方の責に帰すべき事由がある場合には、派遣元事業主及び派遣先のそれぞれの責に帰すべき部分の割合についても十分に考慮すること。
(四)派遣先は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行う場合であって、派遣元事業主から請求があったときは、労働者派遣契約の解除を行う理由を当該派遣元事業主に対し明らかにすること。


第三 労働者派遣契約に定める就業条件の確保

一 派遣元事業主は、派遣先を定期的に巡回すること等により、日雇派遣労働者の就業の状況が労働者派遣契約の定めに反していないことの確認等を行うとともに、日雇派遣労働者の適正な派遣就業の確保のためにきめ細かな情報提供を行う等により派遣先との連絡調整を的確に行うこと。また、派遣元事業主は、日雇派遣労働者からも就業の状況が労働者派遣契約の定めに反していなかったことを確認すること。

二 派遣先は、労働者派遣契約を円滑かつ的確に履行するため、次に掲げる措置その他派遣先の実態に即した適切な措置を講ずること。
(一)就業条件の周知徹底
 労働者派遣契約で定められた就業条件について、当該日雇派遣労働者の業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある者その他の関係者に当該就業条件を記載した書面を交付し、又は就業場所に掲示する等により、周知の徹底を図ること。
(二)就業場所の巡回
 一の労働者派遣契約について少なくとも一回以上の頻度で定期的に日雇派遣労働者の就業場所を巡回し、当該日雇派遣労働者の就業の状況が労働者派遣契約の定めに反していないことを確認すること。
(三)就業状況の報告
 日雇派遣労働者を直接指揮命令する者から、一の労働者派遣契約について少なくとも一回以上の頻度で定期的に当該日雇派遣労働者の就業の状況について報告を求めること。
(四)労働者派遣契約の内容の遵守に係る指導
 日雇派遣労働者を直接指揮命令する者に対し、労働者派遣契約の内容に違反することとなる業務上の指示を行わないようにすること等の指
導を徹底すること。


第四 労働・社会保険の適用の促進

一 日雇労働被保険者及び日雇特例被保険者に係る適切な手続
 派遣元事業主は、日雇派遣労働者が雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第四十三条第一項に規定する日雇労働被保険者又は健康保険法(大正十一年法律第七十号)第三条第二項に規定する日雇特例被保険者に該当し、日雇労働被保険者手帳又は日雇特例被保険者手帳の交付を受けている者(以下「手帳所持者」という。)である場合には、印紙の貼付等の手続(以下「日雇手続」という。)を適切に行うこと。

二 労働・社会保険に係る適切な手続
 派遣元事業主は、その雇用する日雇派遣労働者の就業の状況等を踏まえ、労働・社会保険に係る手続を適切に進め、被保険者である旨の行政機関への届出(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行規則(昭和六十一年労働省令第二十号)第二十七条の二第一項各号に掲げる書類の届出をいう。以下単に「届出」という。)が必要とされている場合には、当該届出を行ってから労働者派遣を行うこと。ただし、当該届出が必要となる日雇派遣労働者について労働者派遣を行う場合であって、当該労働者派遣の開始後速やかに当該届出を行うときは、この限りでないこと。

三 派遣先に対する通知
 派遣元事業主は、労働者派遣法第三十五条に基づき、派遣先に対し、日雇派遣労働者について届出を行っているか否かを通知すること。さらに、派遣元事業主は、日雇派遣労働者が手帳所持者である場合においては、派遣先に対し、日雇手続を行うか行えないかを通知すること。

四 届出又は日雇手続を行わない理由に関する派遣先及び日雇派遣労働者への通知
 派遣元事業主は、日雇派遣労働者について届出を行っていない場合には、その具体的な理由を派遣先及び当該日雇派遣労働者に対し、通知すること。さらに、派遣元事業主は、日雇派遣労働者が手帳所持者である場合であって、日雇手続を行えないときには、その具体的な理由を派遣先及び当該日雇派遣労働者に対し、通知すること。

五 派遣先による届出又は日雇手続の確認
 派遣先は、派遣元事業主が届出又は日雇手続を行う必要がある日雇派遣労働者については、当該届出を行った又は日雇手続を行う日雇派遣労働者(当該派遣先への労働者派遣の開始後速やかに当該届出が行われるものを含む。)を受け入れるべきであり、派遣元事業主から日雇派遣労働者について当該届出又は当該日雇手続を行わない理由の通知を受けた場合において、当該理由が適正でないと考えられる場合には、派遣元事業主に対し、当該日雇派遣労働者について当該届出を行ってから派遣するよう又は当該日雇手続を行うよう求めること。


第五 日雇派遣労働者に対する就業条件等の明示

一 派遣元事業主は、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第十五条に基づき、日雇派遣労働者との労働契約の締結に際し、労働契約の期間に関する事項、就業の場所及び従事すべき業務に関する事項、労働時間に関する事項、賃金に関する事項(労使協定に基づく賃金の一部控除の取扱いを含む。)及び退職に関する事項について、書面の交付による明示を確実に行うこと。また、その他の労働条件についても、書面の交付により明示を行うよう努めること。

二 派遣元事業主は、モデル就業条件明示書(日雇派遣・携帯メール用)の活用等により、日雇派遣労働者に対し労働者派遣法第三十四条に規定する就業条件等の明示を確実に行うこと。


第六 教育訓練の機会の確保等

一 派遣元事業主は、職業能力開発促進法(昭和四十四年法律第六十四号)及び労働者派遣法第三十条に基づき、日雇派遣労働者の職業能力の開発及び向上を図ること。

二 派遣元事業主は、日雇派遣労働者が従事する職務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練については、派遣就業前に実施しなければならないこと。

三 派遣元事業主は、日雇派遣労働者が従事する職務を効率的に遂行するために必要な能力を付与するための教育訓練を実施するよう努めること。

四 派遣元事業主は、二及び三に掲げる教育訓練以外の教育訓練については、日雇派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力及び経験等に応じ、実施することが望ましいこと。

五 派遣元事業主は、日雇派遣労働者又は日雇派遣労働者として雇用しようとする労働者について、当該労働者の適性、能力等を勘案して、最も適合した就業の機会の確保を図るとともに、就業する期間及び日、就業時間、就業場所、派遣先における就業環境等について当該労働者の希望と適合するような就業機会を確保するよう努めること。

六 派遣先は、派遣元事業主が行う教育訓練や日雇派遣労働者の自主的な能力開発等の日雇派遣労働者の教育訓練・能力開発について、可能な限り協力するほか、必要に応じた教育訓練に係る便宜を図るよう努めること。


第七 関係法令等の関係者への周知

一 派遣元事業主は、日雇派遣労働者を登録するためのホームページを設けている場合には、関係法令等に関するコーナーを設けるなど、日雇派遣労働者となろうとする者に対する関係法令等の周知を徹底すること。また、派遣元事業主は、登録説明会等を活用して、日雇派遣労働者となろうとする者に対する関係法令等の周知を徹底すること。

二 派遣元事業主は、労働者派遣法の規定による派遣元事業主及び派遣先が講ずべき措置の内容並びに労働者派遣法第三章第四節に規定する労働基準法等の適用に関する特例等関係法令について、派遣先、日雇派遣労働者等の関係者への周知の徹底を図るために、文書の配布等の措置を講ずること。

三 派遣先は、労働者派遣法の規定による派遣先が講ずべき措置の内容及び労働者派遣法第三章第四節に規定する労働基準法等の適用に関する特例等関係法令について、日雇派遣労働者を直接指揮命令する者、日雇派遣労働者等の関係者への周知の徹底を図るために、文書の配布等の措置を講ずること。

四 派遣先は、日雇派遣労働者の受入れに際し、日雇派遣労働者が利用できる派遣先の各種の福利厚生に関する措置の内容についての説明、日雇派遣労働者が円滑かつ的確に就業するために必要な、日雇派遣労働者を直接指揮命令する者以外の派遣先の労働者との業務上の関係についての説明及び職場生活上留意を要する事項についての助言等を行うこと。


第八 安全衛生に係る措置

一 派遣元事業主は、日雇派遣労働者に対して、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)第五十九条第一項に規定する雇入れ時の安全衛生教育を確実に行わなければならないこと。

二 派遣先は、派遣元事業主が日雇派遣労働者に対する雇入れ時の安全衛生教育を適切に行えるよう、日雇派遣労働者が従事する業務に係る情報を派遣元事業主に対し積極的に提供するとともに、派遣元事業主から雇入れ時の安全衛生教育の委託の申入れがあった場合には可能な限りこれに応じるよう努める等、日雇派遣労働者の安全衛生に係る措置を実施するために必要な協力や配慮を行うこと。

三 派遣先は、日雇派遣労働者の安全と健康の確保に責務を有することを十分に認識し、労働安全衛生法第五十九条第三項に規定する危険有害業務就業時の安全衛生教育の適切な実施等必要な措置を確実に行わなければならないこと。


第九 労働条件確保に係る措置

一 派遣元事業主は、日雇派遣労働者の労働条件の確保に当たっては、第五の一に掲げる労働条件の明示のほか、特に次に掲げる事項に留意すること。
(一) 賃金の一部控除
 派遣元事業主は、日雇派遣労働者の賃金について、その一部を控除する場合には、購買代金、福利厚生施設の費用等事理明白なものについて適正な労使協定を締結した場合に限り認められることに留意し、不適正な控除が行われないようにすること。
(二) 労働時間
 派遣元事業主は、集合場所から就業場所への移動時間等であっても、日雇派遣労働者がその指揮監督の下にあり、当該時間の自由利用が当該日雇派遣労働者に保障されていないため労働時間に該当する場合には、労働時間を適正に把握し、賃金を支払うこと。

二 一に掲げる事項のほか、派遣元事業主及び派遣先は、日雇派遣労働者に関して、労働基準法等関係法令を遵守すること。


第十 情報の公開
 派遣元事業主は、日雇派遣労働者及び派遣先が良質な派遣元事業主を適切に選択できるよう、労働者派遣の実績、派遣料金の額、派遣労働者の賃金の額、教育訓練その他事業運営の状況に関する情報を公開すること。


第十一 派遣元責任者及び派遣先責任者の連絡調整等

一 派遣元責任者は、日雇派遣労働者の就業に関し、労働者派遣法第三十六条に規定する派遣労働者に対する必要な助言及び指導等を十分に行うこと。

二 派遣元責任者及び派遣先責任者は、日雇派遣労働者の就業に関し、労働者派遣法第三十六条及び第四十一条に規定する派遣労働者から申出を受けた苦情の処理、派遣労働者の安全、衛生等に関する相互の連絡調整等を十分に行うこと。


第十二 派遣先への説明

 派遣元事業主は、派遣先が日雇派遣労働者についてこの指針に定める必要な措置を講ずることができるようにするため、派遣先に対し、労働者派遣契約の締結に際し、日雇派遣労働者を派遣することが予定されている場合には、その旨を説明すること。また、派遣元事業主は、派遣先に対し、労働者派遣をするに際し、日雇派遣労働者を派遣する場合には、その旨を説明すること。


第十三 その他

 日雇派遣労働者について労働者派遣を行う派遣元事業主及び当該派遣元事業主から労働者派遣の役務の提供を受ける派遣先に対しても、派遣元指針及び派遣先指針は当然に適用されるものであることに留意すること。

【関連リンク】
厚生労働省:「緊急違法派遣一掃プラン」の実施について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/02/h0228-1.html
日雇派遣指針 労働者派遣法施行規則改正について*PDF
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/dl/haken-shoukai01.pdf
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by mahounofuefuki | 2008-05-07 22:54

偽装請負内部告発による解雇は無効

 松下電器産業の子会社「松下プラズマディスプレイ」の請負労働者が、偽装請負を内部告発後に解雇され、解雇無効と賠償を求めていた訴訟の控訴審で、大阪高裁は就労先の雇用責任を認める判決を下した。以下、朝日新聞(2008/04/25)より。
(前略) 判決によると、吉岡さんは04年1月から、松下PDPの茨木工場で「請負会社の社員」という形で働いていたが、翌05年5月、「実際は松下側社員の指揮命令のもとで働いており、実態は直接雇用だ」と大阪労働局に偽装請負を内部告発した。同8月、松下PDPに期間工として直接雇用されたものの、06年1月末、期間満了を理由に職を失った。期間工だった間、吉岡さんは他の社員と接触できない単純作業に従事させられた。
 判決はまず、請負会社の社員だった吉岡さんらの労働実態について「松下側の従業員の指揮命令を受けていた」などと認定。吉岡さんを雇っていた請負会社と松下側が結んだ業務委託契約は「脱法的な労働者供給契約」であり、職業安定法や労働基準法に違反して無効だと判断した。
 そのうえで、労働契約は当事者間の「黙示の合意」でも成立すると指摘。吉岡さんの場合、04年1月以降、「期間2カ月」「更新あり」「時給1350円」などの条件で松下側に労働力を提供し、松下側と使用従属関係にあったとして、双方の間には「黙示の労働契約の成立が認められる」と認定した。この結果、吉岡さんはこの工場で働き始めた当初から直接雇用の関係にあったと結論づけた。
 松下側が06年2月以降の契約更新を拒否したことについても「解雇権の乱用」で無効と判断した。
 さらに、吉岡さんが期間工として直接雇用された05年8月以降、配置転換で単独の作業部屋に隔離されたことについて、「松下側が内部告発などへの報復という不当な動機や目的から命じた」と認定した。(後略)
 松下プラズマの偽装請負問題については専門のブログがあり、この訴訟の経過についても詳しい(文末の「関連リンク」参照)。

 今回の判決の画期性は、就労先と請負会社の業務委託契約を「偽装請負」として違法で無効であると断じたのみならず、労働契約が「黙示の合意」でも成立するとし、契約が無効であっても実際に働かせていた就労先の雇用責任を認めたことだろう。表向きは「請負」でも実態としては直接雇用であった事実を認め、就労先の責任を法的に認定したことは重要である。
 そして何よりも、不正を告発したばかりに不当な扱いを受けた人が勝利を得たというのが素晴らしい。この国では「正義が負ける」のが常態化しているため、よほど勇気がなければ職場で不当な扱いを受けても「我慢する」か「辞める」場合がほとんどで、「闘う」という選択肢をとる人は極めて少ない。会社側からの報復だけでなく、「闘う」勇気のない奴隷に甘んじている同僚たちからのバッシングもあっただろう。
 黙って泣き寝入りしていても事態は動かない。味方は内部にいなくても外部には必ずいる。今回の原告もキャノンの偽装請負の告発者らと「偽装請負を内部告発する非正規ネット」を立ち上げ、他の労働運動や政党の支援があればこそ闘いを継続できた。声を上げないことにはどうしようもないことを改めて学んだ。
 今回の判決が労働者派遣法改正の追い風となることを期待したい。

【関連リンク】
松下プラズマディスプレイ社 偽装請負事件
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by mahounofuefuki | 2008-04-26 21:11

労働者派遣法改正問題リンク集

1 関連法令・指針

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行令
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行規則
労働者派遣法とその施行令・施行規則。

派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針
派遣先が講ずべき措置に関する指針
派遣元と派遣先への指針。

日雇派遣労働者の雇用の安定等を図るために派遣元事業主及び派遣先が講ずべき指針*PDF
日雇派遣指針 労働者派遣法施行規則改正について*PDF
厚生労働省:「緊急違法派遣一掃プラン」の実施について
いわゆる「日雇派遣指針」。派遣法改正を見送った厚労省が代替措置として2008年4月1日より施行。

「派遣労働者」として働くためのチェックリスト
労働者派遣法の基本的知識。


2 厚生労働省「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」の記録

第1回資料 第1回議事録
第2回資料 第2回議事録
第3回資料 第3回議事録
第4回議事概要
第5回資料 第5回議事録
第6回資料 第6回議事録
第7回資料 第7回議事録
第8回資料 第8回議事録
第9回資料
第10回資料

厚生労働省:「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会報告書」について


3 労働政策審議会の労働力需給制度部会の記録

第116回資料 第116回議事録
第118回資料
第120回資料
第122回資料

厚生労働省:労働政策審議会建議―労働者派遣制度の改正について


4 労働者派遣法改正を目指す国会の動き

労働者派遣法を派遣労働者保護法へと抜本改正します/日本共産党の立法提案 - しんぶん赤旗
日本共産党による労働者派遣法改正案。

社民党OfficialWeb|政策|社民党・労働者派遣法改正案骨子
社民党による労働者派遣法改正案。

民主党: 【次の内閣】労働者派遣法改正案を了承、非正規雇用対策を確認
民主党による労働者派遣法改正案。

労働者派遣制度の見直しに関する提言 - 与党新雇用対策に関するプロジェクトチーム
自民・公明両党の労働者派遣法見直し提言。

議員は語る-3- 労働者派遣法改正 - ザ・選挙 JANJAN全国政治家データベース
労働者派遣法改正問題に対する各党議員の談話。

資料 2008年2月8日の衆議院予算委員会における、共産党の志位和夫委員長の質疑 - News for the People in Japan
YouTube - 2/8 派遣法改正し"労働者保護法"に 志位委員長が質問/衆院予算委員会(全編)
話題沸騰した共産党委員長の志位和夫氏による派遣労働に関する国会質疑の会議録と動画。

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案
政府が国会に提出した労働者派遣法改正案。


5 法曹の動き

これでいいのか?派遣法 なくそう!ワーキングプア*PDF
自由法曹団による労働者派遣法問題のまとめ。現在の問題が集約されていてわかりやすい。

ワーキングプアと非正規労働者の雇用と権利を考える*PDF
2008年3月1日に行われた自由法曹団主催のシンポジウムの記録。

労働者派遣法改正を求めるアピール - 日本労働弁護団
日弁連 - 労働者派遣法の抜本的見直し等を求める会長声明
日弁連 - 労働者派遣法「改正」案に反対し、真の抜本改正を求める会長声明
労働者派遣法を派遣労働者保護法へ抜本改正することを求める意見書 - 自由法曹団*PDF
政府の派遣法「改正」案に反対する声明 - 自由法曹団*PDF
労働者派遣法の規制強化を求める法曹団体の要求。


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7 労働法制解体を目指す財界及び政府の動き

規制改革推進のための第2次答申-規制改革会議*PDF
厚生労働省:規制改革会議「第二次答申」に対する厚生労働省の考え方
『規制改革会議「第2次答申」(労働分野の問題意識)に対する厚生労働省の考え方』に対する規制改革会議の見解*PDF
政府の規制改革会議による2007年末の答申と、それに対する厚労省の反論及び同会議の再反論。規制改革会議はさらなる労働者派遣法の規制緩和を要求。

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by mahounofuefuki | 2008-04-20 00:07

「嫌がらせ」もまた一種の抵抗だ

 派遣会社を解雇された男が、会社に約1万回の無言電話などをかけた偽計業務妨害容疑で逮捕された。
 毎日新聞(2008/04/09 13:07)によれば、容疑者は人材派遣会社スタッフクリエイティブの派遣社員で、引っ越しの荷物運びの仕事をしていたが、無断欠勤が多いことを理由に昨年解雇されたという。それを逆恨みして会社に嫌がらせの電話をかけていたと警察当局は考えているようだ。

 解雇理由が本当に無断欠勤なのか、そもそも本当に無言電話を1万回も行っていたのか、現時点では何とも言えないし、それが事実だとしたら誉められた行為ではないが、一方で「嫌がらせ」というのは弱い立場の労働者にとって1つの抵抗手段なのではないかと感じた。

 現在、労働者が不当労働行為に遭った場合、採り得るオプションは限られている。労働基準監督署に申し立てても、労基が行政指導を行う保証は何もなく、逆に職場で「いじめ」の対象となるのは確実である。労働組合があれば団体交渉やストライキなどが一応はありうるが、長期の神経戦を覚悟しなければならない。労組もなく同僚の理解もなく孤立した労働者は「我慢する」か「辞める」の二者択一なのが実情である。
 そんな中で経営者や管理職への「嫌がらせ」は、少なくとも泣き寝入りするよりは立派な抵抗なのではないか。今回の事件の場合、実害を蒙るのは経営者でも管理職でもなく、実際に電話に出る社員なので抵抗とは言えないし、何よりも電話代がかかる以上、費用対効果の面で問題があるが、もっと工夫すれば実用的な抵抗手段を生み出すこともできるだろう。
 最も効果的なのは、経営者に心理的ダメージを与え、それでいて違法の証拠を残さないことだが、そういう「悪知恵」が欲しいところだ。

 会社の前で集団でシュプレヒコールを上げたり、横断幕を張ったりするのも、企業イメージの悪化を誘っているという点で広義の「嫌がらせ」と言えなくもない。労働者が会社側に抵抗する上で、どうすれば最も会社側が嫌がるかという観点は重要だと思う。労使間の力関係は圧倒的に非対称である以上、弱い方がフェアプレイにこだわる必要などない

 《追記 2008/04/10》

 本文について読者の方から用語を誤用しているという指摘を受けた。
 本文中、労働者が不当に扱われている状態を「不当労働行為」と述べたが、法律が定める「不当労働行為」とは労働組合の活動に対する妨害を指し、私の用法は明白な誤りだった。基本的なミスで誠に面目ない。
 「不当労働行為」の部分を「不当な待遇」と訂正する
 心よりおわび申し上げます。
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by mahounofuefuki | 2008-04-09 17:33

OECD「対日経済審査報告書2008」について

 経済協力開発機構(OECD)が2008年の「対日経済審査報告書」を発表した。
 新聞報道では正規・非正規雇用差別の是正を促進したことが強調されていたので(たとえば東京新聞2008/04/07夕刊)、てっきり新自由主義路線の修正を促す内容なのかと思って原文の要旨を読んだらたまげた。まるで竹中平蔵氏と与謝野馨氏のそれぞれの議論をつまみ食いしたような内容だったからだ。

 全6章から成る報告書のうち、労働市場について述べているのは最後の第6章だけで、後は専ら規制緩和と財政再建の立場からの「庶民の痛み」を伴う提言ばかりである。
 その労働市場改革の提言も非正規雇用の増大が「公平と効率の面で深刻な懸念を惹起している」としつつ、「正規労働者の雇用弾力化」(正規雇用の保護規制の柔軟化)を主張しており、非正規雇用待遇の正規化=「引き上げ」による均等化ではなく、正規雇用待遇の非正規化=「引き下げ」による均等化を容認している。これでは雇用待遇差別の根本的解消につながらないことは言うまでもない。

 財政再建問題については依然として「均衡財政のドグマ」(東京大学大学院教授の神野直彦氏による)にはまった徹底した歳出削減を提唱している。
 公共投資や公務員人件費の削減を高く評価し、さらなる削減を求めている。公共投資の減少が地方経済を疲弊させ、公務員人件費の削減が非正規雇用の公務員を増やし、生活を不安定にさせると同時に行政サービスの低下を招いたことは、もはや常識の範疇に含まれるのにもかかわらず。
 また、公的医療支出を抑制するために、「民間部門の関与をこれまでより広く認めるといった規制改革」を要求している。現在の医師不足や国民健康保険の赤字財政の原因は公的医療支出の減少にあることを全く理解していない。これが「国民皆保険制度」の崩壊をより悪化させることも言うまでもない。

 税制については、所得税と消費税の増税を促す一方、法人税率の引き下げを提起している。
 消費税増税の問題性は当ブログでは何度も書いているのでここでは繰り返さない。OECDは法人税の課税ベースを拡大した上で税率の引き下げを提起しているが、これは実質的には中小企業の負担を増やし、大企業の負担を減らすことを意味する。現在、法人収入が史上最高とはいえ、大企業と中小企業の格差は拡大している。大企業からのコスト削減要求のために中小企業の経営はいっぱいいっぱいであり、その上税制でも不公正を拡大すれば、とても立ち行かない。
 OECDは財政再建路線と法人税引き下げの矛盾について「法人税率引き下げによる税の減収は、投資の伸びと企業部門の拡大といったサプライサイドからの効果によって一部は相殺できる」と、相殺効果が「一部」にすぎないことを認めている。

 サービス部門の競争強化を要求しているのも問題だ。大規模小売店舗の「参入障壁」の排除、電力やガスのような公共企業間の競争促進、空港の民営化、教育・医療における民間委託の推進などを求めている。郵政民営化のプロセスも計画通り進めるべきだと主張している。ここまで来ると、もはや経済財政諮問会議や規制改革会議の議論と変わらない。

 評価できるのは「死亡件数の4%しか課税されない相続税を強化する」という部分くらいである。少なくとも今回の報告書に関して新聞報道は当てにならない。OECD報告書を雇用待遇問題の資料として使うのは危険を伴うことを指摘しておきたい。

【関連リンク】
Economic survey of Japan 2008-OECD
OECD対日経済審査報告書2008年版*PDF
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by mahounofuefuki | 2008-04-08 13:10

「反貧困フェスタ2008」のweb記事のまとめ

 3月29日に東京で開催された「反貧困フェスタ2008」に関するリンクをまとめる。

 地方在住の私は行けなかったが、今年のフェスタはもしかすると後世日本の労働運動史の転換点として記録されるかもしれない。
 貧困の最大の原因である非正規雇用の拡大を長らく黙認し、正規労働者と非正規労働者の分断に図らずも与した連合が参加したことは大きな意味をもつ。連合は昨年秋に非正規労働センターを設立し、ようやく雇用形態の差別問題に本腰を上げる姿勢を見せるようになった。もう1つのナショナル・センターである共産党系の全労連も参加した。全労連も遅ればせながら今年に入ってから非正規雇用労働者全国センターの設立準備を始めている。
 反貧困運動をリードする各種のユニオンやNPOは熱意と行動力はあるが、いかんせん財政基盤やブレーンが弱く、人員が少ない。既成の労働運動の協力は必要不可欠である。職種や雇用形態や勤務企業の規模などの壁を超えて労働者が連帯するための結節点は「反貧困」をおいてほかにない。不公平な税制や社会保障、競争原理や成果主義による心身の疲弊などは、いずれも貧困の前提であり、これらは正規・非正規の枠を超えた問題である。貧困の存在が社会を蝕み、現在貧困でない人にも影響することを訴えていく必要がある。

 写真速報:反貧困フェスタに1600人集まる-レイバーネット
 ブルーシートをつくっていこう@反貧困フェスタ「貧困と労働」シンポジウム-UnionTube
 「貧困」の実態をきちんと伝えよう!-OhmyNews
 反貧困でつながろう:反貧困フェスタに1600人!
 *同ブログには報道記事のまとめもある。
 反貧困フェスタに1600人!反貧困たすけあいネットワーク
 自由と生存の花見-Spider's Nest::フリーター全般労働組合
 「反貧困フェスタ2008」開催~連合非正規労働センターも参加~-フェアワーク つながるネット
 非正規雇用労働者全国センター CWAC-net:”貧困フェスタ”に1600人、非正規センターで労働相談コーナー
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by mahounofuefuki | 2008-04-02 20:16

高まる「平等」「安定」志向~「勤労生活に関する調査」を読む

 労働政策研究・研修機構が「第5回勤労生活に関する調査」の結果を発表した。
 この調査は勤労生活に対する意識について、1999年から同一の調査法(訪問面接)と同一の質問項目で継続して行っていること、調査対象がすべての世代、就業形態(労働者だけでなく、経営者や自営業者なども含む)にわたっていることに特徴があり、ほぼ日本社会を構成する人々の縮図と言ってよい。今回の調査は2007年に行われた。
 詳細はweb上で公開された資料を参照していただきたいが(下記関連リンク参照)、私が注目するのは次の4点である。

「平等社会」への志向が高まった。
 今回の調査結果で何よりも注目すべきは、これからの日本が目指すべき社会についての問いで、初めて「貧富の差が少ない平等社会」がトップに躍り出て(43.2%)、「意欲や能力に応じ自由に競争できる社会」(31.1%)を抜いたことである。1999年から2004年までは一貫して「競争できる社会」がトップで4割を超えていただけに、この数年で人々が新自由主義イデオロギーに嫌気を持ち始めたことをはっきりと実証している。

「終身雇用」「年功賃金」への志向が高まった。
 日本型雇用慣行への問いでは、「終身雇用」への支持が初めて8割を超えた(86.1%)。「年功賃金」への支持も初めて7割を超え(71.7%)、旧来の年功序列賃金体系への郷愁が強いことを如実に示している。ここでも成果主義を重視するイデオロギーが完全否定されつつあることがわかる。
 また、キャリア形成に関する問いでも、1つの企業に長く勤めキャリアアップするルートへの支持が過去最高となり(49.0%)、「独立して仕事をするコース」への支持は過去最低となった(11.7%)。もはや誰もが起業できるという「夢」が単なる欺瞞にすぎないことに気づき始めていると言えよう。「夢追い」型から「安定・堅実」型への変化を読み取れる。

「自由になるカネ」と「自由になる時間」への欲求が高い。
 「終身雇用」「年功賃金」を志向する一方で、企業の福利厚生の充実よりも給与を増やして欲しいという見解は一貫して増え続けている(64.5%)。これはますます企業福祉への不信が高まっていることを示すが、おそらく国家の福祉への不信も高いだろう。「平等」「安定」を志向しつつも、公的な福祉給付への不信は依然として強く、それよりは給与を増やして欲しいと考える人々が多いようである。
 また、どのような時間を増やしたいかという問いでは、「趣味やレジャーなどの自由時間」「家庭生活に費やす時間」が多く、「ボランティアや町内会活動など社会活動」はかなり低い。ここでも「公的なもの」への忌避感は強く、自己の個人生活の充実を至上とする傾向が強いことが窺える。
 これらから導けるのは「自由になるカネ」「自由になる時間」への渇望である。北欧型福祉国家の大前提である「社会参加による高負担・高福祉」は現状では受け入れられる見込みが低いことがわかる。

職場の人間関係に苦労している。
 勤務先を選べるとしたら何を最も重視するかという問いでは、「職場の人間関係」がダントツで高く(31.7%)、「仕事と家庭生活の両立支援」(18.0%)、「賃金」(13.6%)よりも上位である。これは職場の人間関係に苦労している人々が多いことを示す。賃金や社会保障の問題とは異なり、職場の人間関係の悩みは正社員も非正社員も、あるいは管理職やもしかすると経営者も共通して抱えているとみられる以上、この問題はもっと社会問題として取り上げられてしかるべきである。

 今回の調査から改めて新自由主義による競争社会がもはや支持されていないことは明らかになった。人々の「安定」志向を簡単には止めることができないだろう。一方で、「公」への不信が強すぎて、福祉国家確立の前提条件も依然として存在しないことも読み取れる。大阪府知事選挙のように「公」への不信を前面に押し出した場合、実際の投票においては「安定」を志向しながら新自由主義を支持するという矛盾した行動をとる可能性が依然として強い。
 福祉国家を目指すにあたっては、いきなり「高負担・高福祉」を提示するのではなく、まず所得再分配により「自由になるカネ」へ、長時間労働の法的規制の強化により「自由になる時間」への欲求に応える必要があることを示唆している。消費税の社会保障目的税化などの議論では、新自由主義への対抗軸にならないことはここでも明らかだろう。

【関連リンク】
「第5回勤労生活に関する調査」結果*PDF
独立行政法人 労働政策研究・研修機構
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by mahounofuefuki | 2008-03-25 12:15