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「賃上げ」だけでなく「労働分配率引き上げ」と「時短」を前面に押し出さねばならない

 連合が2009年春闘で8年ぶりにベースアップを要求する方針を決めたという。

 連合、8年ぶりベア要求 物価上昇に見合う賃上げを – 47NEWS(2008/12/02 15:47)*web魚拓
 http://s01.megalodon.jp/2008-1202-2056-40/www.47news.jp/CN/200812/CN2008120201000625.html
「方針は、08年度の消費者物価上昇率の見通しを1%台半ばと想定。デフレによる物価下落が続いた昨年までと異なり、物価上昇で賃金が目減りする恐れが強いとしてベア要求を決めた」

 物価上昇率が上がった以上、その分賃金を引き上げねば実質的には賃下げになるので、賃上げ要求自体は正当である。昨日、麻生太郎首相が日本経団連など財界団体に対し、雇用の安定や内定取り消しの中止とともに賃上げも要請したことも追い風となろう。輸出産業主体の景気回復路線の下では国際競争力の強化を口実に労働者は我慢を強いられてきたが、現在はそうしたモデルが金融危機で破たんし、国際的にも内需拡大の必要性が説かれており、大義名分にも事欠かない。

 とは言え、単に賃上げだけを前面に押し出すのは、労働者間の分断を促進する危険性が濃厚であることも事実である。連合の中心を占める大企業の正規労働者が賃上げを要求するほど、政府の歳出削減政策と「無駄遣い」論者に扇動された大衆のバッシングのために賃上げを望めない公務員や、昇給など口にしようものならすぐに解雇されてしまう非正規労働者や、何よりも現実に賃上げをする体力のない中小企業の労働者はやるせない思いを抱くだろう。ある民主党系の有名ブロガーが麻生首相の賃上げ要請に対し解雇を促進すると非難したそうだが、首相は「雇用の安定」も要請している以上、その非難は言いがかりにすぎないことは別として、個別の賃上げに限らず、あくまで全労働者の賃金総額の(正確には労働分配率の)引き上げをはっきりと要求しなければ、不安定な労働者から同じような反発が出るのは間違いない。

 単に大企業の正規労働者の利害だけでなく、全労働者の利害を代表するためには、労働時間の短縮も強く押し出すべきである。2008年春闘の際も弊ブログは賃上げ以上に時短を重視せよと主張したが、日本の労組はなかなか時短について賃上げほど具体的な要求をしない。しかし、正社員層ほど長時間労働による過労や賃金不払い残業=「サービス残業」に苦しんでおり、これは本来喫緊の課題である。何より残業の削減は「雇用のイス」を創出する効果がある(本当の景気対策とは「労働法制遵守による雇用創出」と「消費税減税」ではないのか参照)。正規労働者の時短とその穴埋めとしての非正規労働者の正規化を要求することは、正規労働者と非正規労働者の溝を埋めるためにも必要なことである。実質的な手取りが減ることへの反発はあるだろうが、そもそも残業をはじめから想定した働き方や賃金体系自体に問題があることを認識するべきである。

 労働分配率が高止まりしている中小企業については、政府の介入がなければ立ち行かない。公的支出による賃金補助を求めるべきだろう。いずれにせよ1980年代以降、連合はその前身時代も含めて「小さな政府」路線や非正規労働拡大に手を貸した前歴があり、現在も個別の加盟労組レベルでは依然として経営側の御用労組に堕している例が多い。そうした体質から脱皮して、大企業の正規労働者だけでない雇用待遇を越えた労働者の代弁者に生まれ変わらない限り未来はないと断言しよう。その点で「個別の賃上げ」だけが独り歩きしないよう注意しなければならない。
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by mahounofuefuki | 2008-12-02 21:11

本当の景気対策とは「労働法制遵守による雇用創出」と「消費税減税」ではないのか

 金融危機以降、連日製造業を中心に有期雇用の派遣社員や期間社員の雇い止めが報じられ、11月22日時点で「ガテン系連帯」ブログがまとめたところでは約1万8000人余り(*)、報道されていない事例も含めると数万人単位が職を失っているとみられる。減益だ何だと騒いでいても依然として大きな内部留保を抱え、儲けを出しているにもかかわらず、容易に労働者を切り捨てる大企業のやり口は閉口させられるが、他方で恐慌となれば弱いところから打撃を受けるのは市場経済の必然的帰結でもあり、このままでは今後もますます雇用情勢は悪化の一途をたどるだろう。

 *「派遣・期間工切り」1万8千人 ガテン系連帯☆ブログ
  http://gatenkei2006.blog81.fc2.com/blog-entry-213.html

 その点で場当たりでない国家的な雇用対策はもはや待ったなしなのだが、政治の世界では金融機関への予防的資金注入には熱心なのに、肝心の雇用対策・生活支援政策は全くと言っていいほど行われていない。はっきり言って今何より必要なのは、国内の雇用を増やすことと消費を増やすことであり、先の金融サミットでも内需の拡大を各国に求めていた以上、最優先で取り組まねばならない。

 雇用を増やす案はすでに出ている。全労連系の労働運動総合研究所が先月末に、総務省資料を元に雇用増加と経済効果の試算を公表している。

 《試算》非正規雇用の正規化と働くルールの厳守による雇用増で日本経済の体質改善を*PDF
 http://www.yuiyuidori.net/soken/ape/2008/data/081104-01.pdf
① 「正規雇用を希望する派遣労働者」と「正規雇用と同等の労働をする契約労働者」の正規化による360万人。
② 「サービス残業」根絶で118.8万人。
③ 完全週休2日、有給休暇などの完全取得で153.5万人。

 このうち、少なくとも②の「サービス残業」根絶による118万人あまりの正規雇用創出については、経済誌『週刊東洋経済』が「日本経済の足腰の強化につながる一過性ではない有望な景気対策といえる」と評しており(『週刊東洋経済』2008年11月22日号、p.26)、特段突拍子もない提案ではないという目安になるだろう。試算ではこれらにより国内生産24.3兆円、GDP2.52%の増加を見込んでいる。必要な原資は21.3兆円で、企業の内部留保5.28%を吐き出させれば難なく調達できる。

 安定雇用が増えれば消費も増えるが、消費振興策としては消費税の減税も考慮されるべきだろう。イギリス政府が最近、1年間の暫定措置ではあるが、消費税率の引き下げを表明した。代替財源として国債増発のほか「年収15万ポンド超の富裕層に新たな税収枠を設定し、12億ポンドを徴収する」という(毎日新聞2008/11/24 22:40)。本当に実行するのかどうか不透明とは言え、アメリカのオバマ次期大統領も富裕層への課税強化を公約していたことを考えると、自民党はもちろん民主党も一向に大企業・富裕層への課税強化と庶民の税負担の軽減を課題としないのは、もはや怠慢を通り越して悪質である。

 本当に必要な景気対策は、労働法制遵守による雇用創出と消費税減税であると強調したい。


《追記 2008/11/28》

 「数万人単位が職を失っているとみられる」と書いたが、奇しくも厚生労働省が今日、今年度下半期で3万人以上の非正規労働者が、雇用契約の中途解除や更新停止などに遭っているという調査結果を公表した(*)。本格的な雇用対策はもう一刻の猶予もない。企業任せではなく、国が積極的に関与しない限り、問題は悪化するばかりであり、「無駄遣い厨」や「小さな政府」論を断固として排除しなければならない。

 *東京新聞:『非正規切り』3万人 景気後退でしわ寄せ 厚労省調査(2008/11/28夕刊)*web魚拓
  http://s01.megalodon.jp/2008-1128-2106-49/www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2008112802000222.html
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by mahounofuefuki | 2008-11-27 22:49

失業保険漏れ1000万人でも国庫負担廃止とはこれいかに?

 読売新聞電子版の「ジョブサーチ」に、奇しくも同じ日付で雇用保険に関するニュースが並んでいた。ある意味、日本の社会保障崩壊の実情を戯画化しているようである。

 失業給付国庫負担ゼロに(読売新聞2008/11/14)*web魚拓
 http://s04.megalodon.jp/2008-1115-2051-18/job.yomiuri.co.jp/news/jo_ne_08111401.cfm
 「2009年度予算案で、雇用保険の失業給付金に対する国庫負担を初めてゼロとする方向」

 雇用保険漏れ1006万人の恐れ(読売新聞2008/11/14)*web魚拓
 http://s02.megalodon.jp/2008-1115-2050-26/job.yomiuri.co.jp/news/jo_ne_08111402.cfm
 「雇用保険の適用対象者にもかかわらず、申請していない恐れのある労働者が最大1006万人に上る」

 前者によれば「景気の回復局面で給付額が減った」ことで、失業給付の積立金に余裕ができたため、国庫負担を止めるということになっているが、実際はそうではないだろう。小泉政権以来、政府の「骨太の方針」は毎年の社会保障費自然増分を2200億円ずつ削減することを義務づけているが、2009年度予算では雇用保険の国庫負担廃止をもって削減枠に充てることはあらかじめ決まっていた雇用保険の国庫負担全廃へ~社会保障費削減路線を続ける福田内閣参照)。そもそも雇用保険の国庫負担廃止方針は、すでに2006年の行政改革推進法で予告されていたことであり、「景気の回復」云々というのは後付けにすぎない。

 しかも、その失業給付額の減少も、後者の記事が伝えるように、非正規労働者を中心に1000万人以上が雇用保険から排除されている可能性があるとすると、失業しても捕捉されずに給付を受けることができていない人々が相当いることになる。給付を受けるべき失業者を排除しておいて、保険財政に余裕があるというのは全くの欺瞞である。こうやってまたしても政府の社会保障支出は減らされ、「貧困と格差」は拡大していくのである。

 社会保障費の「2200億円」削減枠をめぐっては、自民党の中からさえも「厚生族」を中心に廃止を訴える声があるが、何だかんだ言って政府は依然として継続している。ある意味「2200億円」枠は「小さな政府」の象徴であり、この改廃が政策転換の目安の1つとなろう。
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by mahounofuefuki | 2008-11-15 21:03

「仲間とつながる安心感」さえあれば非正規雇用でもよいのか

 東京学芸大学教授の山田昌弘氏が「格差社会」の現状について語っているインタヴューが出ていた。「氷河期世代」の非正規労働者、いわゆる「年長フリーター」が抱える社会的孤立の現況とその打開の方向性について述べているのだが、その中で気になる指摘があった。

 格差問題の第一人者が憂う“格差の拡大”「下流から一歩進んで下層へ!」|『週刊ダイヤモンド』特別レポート|ダイヤモンド・オンライン
 http://diamond.jp/series/dw_special/10035/
(前略)
――非正規雇用を正規雇用に変えようという企業も登場し、国には日雇い労働などを法律で規制しようという動きがある。

 非正規雇用を正規雇用に変えたり、法律で日雇い労働を規制しても根本的な問題は解決しない。

 突き詰めれば、「単純労働を誰が担うのか」ということになるからだ。「仲間もなく単純労働を延々とこなす」という仕事が日本社会からなくならない以上、雇用形態や表現が変わっても、それを担う者は世の中に存在し続けるのだ。そういう若者が不安を感じ、希望を持てないことが問題の元凶なのだ。

 そもそも、皆が安くていいものを求め続ける限り、その種の労働はなくならない。「非正規雇用はかわいそう」「なくすべきだ」と言っている人に、「ハンバーガーが1000円になってもいいですか?」と聞けば、「ノー」と答えるだろう。

 非正規雇用のような労働はなくならない。ならば、そういう労働を担う人たちの心理的な不安を解消する仕組みが早急に必要となる。

――具体的にはどのようなことか。

 組織化や連帯だ。それは組合でもいい。欧米は組合で連帯を感じ、日本は正社員であることで連帯を感じ、安心してきた。そこからはじかれた労働者が今、連帯や仲間意識を持てないで不安や孤独を感じている。形はどうであれ、仲間とつながることで安心できる仕組みが求められる。

 かつて、不安感を歪んだかたちで組織化し、利用したのがヒットラーだった。このまま今の状況が放置されたら危険だろう。(後略)

 山田氏の立論は、現行の経済システムでは「非正規雇用のような労働はなくならない」ということを前提に、たとえ雇用形態を正規化しても、それが孤独な単純労働である限り労働者の不安と絶望はなくならないというものである。その上でこうした労働者の不安を解消するために「組織化と連帯」を勧めている。

 雇用待遇差別解消の基本的方向性として非正規雇用の正規化による均等待遇の実現を求める側としては、2つの問題を提起せざるをえない。1つは、本当に「非正規雇用のような労働はなくならない」のかという点。もう1つは、労働者の不安の根本的要因は「雇用の待遇」ではなく「帰属意識の欠如」なのかという点である。

 第1の点は、製造業を中心に末端の単純労動が完全にシステム化されていて、これを廃して産業が成り立つのは困難であるという事実を指す。この場合、仮に雇用待遇が「正社員」であっても「孤独な単純労働」自体は変わらない。私などはいつも非正規雇用の正規化を主張する際、仕事内容や「やりがい」といった問題は棚上げし、給与や保険や休暇といった条件面の引き上げに問題を集約して、極論すれば生活できるだけの所得さえ保障されれば仕事内容を問わないという線さえ否定していないが、労働「条件」だけでなく労働「内容」が差別と疎外感をもたらしているのならば、この問題は無視しえないのは確かである。

 とはいえ「非正規雇用のような仕事はなくならない」「正規雇用にしても問題は解決しない」という部分だけが一人歩きするのは危険である。インタヴューを行った「ダイヤモンド」の社論が「正規雇用の労働条件引き下げ」であることを考えれば、山田氏の発言自体が「非正規雇用をなくすことは不可能だから、正規雇用の引き下げによる均等待遇にしよう」というミスリードを誘う性質を持つ。それでは「貧困と格差」の解決にはならない。「非正規雇用のような仕事」と「非正規雇用」の違いをはっきりと認識しなければならない。

 第2の点はいわゆる「関係の貧困」にかかわる問題である。「氷河期世代」の非典型労働者が等しく感じるのは、社会から取り残された、正確には社会のスタンダードなライフサイクルから排除されたという疎外感である。年を重ねるにつれて典型労働者との落差が顕著となる。片や結婚して子どももいて社会から存在を認知されているのに、片や自立した生活を送れず社会からはいつまでたっても侮蔑的視線を受ける。つまり、収入の少なさもさることながら、社会から人間として認知されていないことに悩まされるのである。

 その点で山田氏が提起した「組織化と連帯」という結論自体は、「認知してくれる」視線、ひいては社会への帰属意識を獲得する方法として間違っていないし、実際コミュニティユニオンのような確かな実例もあるが、問題は第1の点(「非正規雇用のような仕事はなくならない」)を前提として第2の点(不安を取り除く帰属意識が必要)を論じているために、第1の点のミスリードと併せて「不安さえ解消すれば非正規雇用を維持してもよい」という論法に容易に転じてしまう危険性がある。

 非典型労働者の不安の原因を労働条件の低さに求めている限りは、「組織化と連帯」は労働条件引き上げの手段となる。しかし、労働条件と切り離して単に「仲間意識」がないことを労働者の不安の主因と捉えると、「組織化と連帯」で「仲間とつながる安心感」ができたのだから、それで不安は解消された、労働条件は別に上げる必要はないということになりかねない。「正社員」の肩書き=帰属意識を維持する引き換えに、際限のない労働条件の引き下げを受け入れさせられている「名ばかり正社員」と同根の問題がここでは露呈している。

 今回言及した問題、特に「氷河期世代」の非典型層の尊厳をめぐる議論は、私の中でいまだ詰め切れておらず確たることは言えないが、とりあえず注意したいのは、一見「格差」や「差別」を批判する言説も状況やロジックによっては、逆の立場に転化しうるということである。自戒したいところである。
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by mahounofuefuki | 2008-11-10 01:38

政府提出の労働者派遣法改正案に対する声明

 「派遣ユニオン」のブログから、政府が今国会に提出した労働者派遣法改正案に対する声明のTBをいただいた。記録を兼ねて改めて紹介したい。

 派遣ユニオン ブログ 派遣法改正法案閣議決定に関する声明
 http://hakenunion.blog105.fc2.com/blog-entry-13.html
 「名目こそ『日雇い派遣禁止』と謳っているが、その内容は『30日以内の雇用契約の派遣を禁止する』というだけのものであり、『日雇い派遣』が生み出した低賃金・不安定雇用・労災の多発などの問題を全く解決しない、みせかけだけの改正法案だ」

 「閣議決定された『30日以内の派遣禁止』法案は、『30日+1日』を繰り返す『細切れ契約』の派遣を容認しており、『契約満了』の一言で雇用を失う『派遣切り』を防止することはできない」

 また、雨宮処凛、宇都宮健児、鎌田慧、小島周一、斎藤貴男、堤未果、本田由紀、森ます美、湯浅誠各氏が連名で、やはり派遣法改正案に対する声明を出している。

 閣議決定された派遣法改正案に対する声明 ガテン系連帯☆ブログ
 http://gatenkei2006.blog81.fc2.com/blog-entry-209.html
 「第1に、日雇い派遣禁止をうたいながら30日以内の雇用契約を禁止するにすぎず、『日々派遣の契約』を禁止するものにはなっていない。逆に18業務で日雇い派遣を公認し、今後拡大する可能性さえはらんでいる」

 「第2に、細切れでいつ切られるかわからない不安定な雇用が大きな問題となっている登録型派遣の見直しは先送りされ、常用型派遣への転換も努力義務ばかりの実効性のないものとなっている」

 「第3に、市場競争の影響をもろに受けて賃金切り下げにさらされてきた派遣労働者の労働条件改善についても、派遣先労働者との均等待遇や派遣会社のマージン率規制とは程遠い内容となっている」

 「第4に、派遣拡大の最大の要因になってきた『違法派遣を受け入れても責任が問われない派遣先』に対する『みなし雇用責任制』の導入を回避して、相変わらず行政勧告制度にとどめている」

 「第5に、『期間の定めのない』派遣労働者に対しては事前面接という実質的な派遣先の労働者選抜を容認するなど、労働者派遣制度の変質につながる規制緩和さえ行おうとしている」

 弊ブログでは、今回の労働者派遣法改正案のたたき台になった労働政策審議会の報告書が出た時に、これは規制緩和との「抱き合わせ」改正であると指摘したが、実際の法案でもその性格は変わっていない。上記の声明が指摘しているように、今回の改正案の看板である「日雇派遣」の規制強化ですら限りなく「ザル法」の気配が濃厚である。国会審議では同案の問題点を洗い出し、真に雇用待遇差別と不安定雇用を解消しうる方向性での改正を目指す必要があることは言うまでもない。

【関連記事】
労働者派遣法改正問題リンク集

【関連リンク】
厚生労働省:「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律案の一部を改正する法律案」について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/11/h1104-1.html
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by mahounofuefuki | 2008-11-06 20:38

「全国青年大集会2008」のまとめ

 今月5日に東京・新宿の明治公園で行われた「全国青年大集会2008」(全労連主催)については、すでに「大脇道場」さんや「村野瀬玲奈の秘書課広報室」さんらが秀逸なエントリを上げておられるので遅きに失した感はあるが、同集会では雇用待遇差別問題を考える上で重要な発言がいくつも為されているので、弊ブログでも報道と記録に関するリンクを整理する。

《報道と写真・動画》

 全国青年大集会 不安定雇用の現状を若者がアピール – JanJanニュース
 http://www.news.janjan.jp/living/0810/0810068839/1.php

 希望集め 青年4600人/人間らしい労働ルール 団結の力で/東京・明治公園 – しんぶん赤旗
 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-10-06/2008100601_01_0.html

 写真速報:全国青年大集会に4600人~「反貧困労働運動」にはずみ - レイバーネット
 http://www.labornetjp.org/news/2008/1005shasin/

 YouTube – 10/5 10・5全国青年大集会2008
 http://jp.youtube.com/watch?v=00yiezXbbAE

 YouTube – 10/5 10・5青年大集会 志位委員長があいさつ
 http://jp.youtube.com/watch?v=n5GW_aat8uk&feature=user

 松下プラズマ偽装請負訴訟の報告中の「労働者派遣は人身売買と同等とみなされ、禁止されている労働者供給事業の例外としてのみ認められている雇用形態」という指摘、現役の日雇派遣労働者の「私達はモノではない。不当な扱いを望んでいない。まだ、大丈夫という言葉は、自分をがんばらせるために言っている。今のままでは希望がもてないという悩みは、正規、非正規、学生でも同じ」という切実な訴えなどは非常に重い。

 「貧困は自己責任ではない」が、憲法や労働基準法や生活保護法を守らせる責任、社会保障を充実させ、労働の崩壊に歯止めをかける責任を我々は負っているという、自立生活サポートセンター事務局長の湯浅誠氏の発言も深く考えさせられた。共産党委員長の志位和夫氏の「どんな形であれ、『首切り自由の使い捨て労働』はなくせ。正社員にしろ」という言葉には、正社員の労働条件引き下げによる偽りの雇用待遇差別是正論が幅を利かすなかで、非常に勇気づけられた。


《集会のアピールと決議》

 青年大集会アピール – まともに生活できる仕事を!人間らしく働きたい!
 http://blogs.yahoo.co.jp/seinen_koyou_syukai/25949409.html
◆政府と大企業は、派遣、請負など不安定な雇用を増やし続けることをやめ、安定した雇用を抜本的に増やしてください。
◆「サービス残業」「偽装請負」「名ばかり管理職」など企業の違法行為をただし、働く若者の命とくらし、安全を守るために、実効力のある措置をとってください。違法を告発した若者が仕事を失うことがないようにしてください。
◆若者が技術や能力を十分に発揮し、よりよい仕事ができるよう、長時間・過密労働をなくしてください。医療・介護・福祉・教育・保育など、生活に必要な雇用を増やしてください。
◆だれでもどこでも、最低賃金を時給1,000円以上にしてください。
◆「ワーキングプア」「ネットカフェ難民」など、若者の貧困を解決するために、「使い捨て」労働をなくし、生活保障つきの職業訓練を拡充するなど、国と自治体が真剣にとりくんでください。
◆燃料・資材の高騰で苦しめられている中小業者を営む若者の生活を支えてください。
◆世界一高い学費を引きさげ、学費免除制度や奨学金を充実させてください。学業との両立と公正な採用のための就職活動のルールをつくってください。

 「全国青年大集会2008」 特別決議 – まともに生活できる仕事を!人間らしく働きたい!
 http://blogs.yahoo.co.jp/seinen_koyou_syukai/25949431.html
① 労働者派遣は、臨時的・一時的業務に限定するとともに、派遣元に常時雇用される常用型を基本とし、登録型は例外として厳しく制限すること。
② 日雇い派遣・スポット派遣はただちに禁止すること。
③ 派遣期間の上限を1年とし、1年の雇用期間を超えた場合や違法行為があった場合は、派遣先が直接雇用したものとみなすこと。
④ 派遣労働者への差別を禁止し、正社員との均等待遇を保障すること。
⑤ 派遣元のマージン率(派遣手数料)の開示を義務化し、上限を規制すること。

《集会で報告された「日雇派遣」実態調査》

 全国青年大集会実行委員会「日雇い派遣調査の特徴とまとめ」*PDF
 http://www.seinen-u.org/081003%20hiyatoi-matome%201.pdf
 同前「『日雇い派遣』実態調査の集計結果」*PDF
 http://www.seinen-u.org/081003%20hiyatoi-matome%202.pdf

 日雇労働者のナマの声。人間扱いされていない実態と、一方で諦念と自己責任の内面化が深刻であることが読み取れる。


 集会自体は共産党-全労連-民青というラインの恒例の行事なので、党派性がどうのとか、「連帯の可能性」を過大評価しているといった批判もありうるだろう。ただどのような立場にあるにせよ、「人間らしい働き方」の確立を目指す上で、今回の集会はいろいろ示唆するものがあると思う。

【関連リンク】
全国青年大集会に行ってきました|労働組合ってなにするところ?
http://ameblo.jp/sai-mido/entry-10147804054.html
*動画では窺い知ることのできない分野別交流会のお話は貴重。
大脇道場NO.630 「たたかう、かっこいい人」希望と連帯・・・全国青年集会に4600人。
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-699.html
大脇道場NO.631 「朝日」が青年大集会をスルーした訳がわかった。
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-700.html
大脇道場NO.632 現代「女工哀史」・・・日雇い派遣前田さんの訴え。
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-701.html
大脇道場NO.634 「貧困は自己責任ではない。では私たちに責任はないのか?」
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-702.html
村野瀬玲奈の秘書課広報室|4600人が集まった全国青年大集会の重要さ
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-915.html
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by mahounofuefuki | 2008-10-10 23:26

消費税増税と労働者派遣法改正の各リンク集を更新しました

 サイドバーにリンクしているのにしばらく放置したままだった、消費税増税問題リンク集労働者派遣法改正問題リンク集を更新した。一部不要になったリンクを削除し、新たにいくつか追加した。

 消費税問題では、最近公表された経済産業省の研究会の中間報告と日本経団連の意見書が、いずれも法人税の引き下げと消費税の引き上げを要求していることが注目される。ここまで堂々と大企業のエゴを丸出しにされると潔ささえ感じてしまう。

 経済社会の持続的発展のための企業税制改革に関する研究会「中間論点整理」の公表について - 経済産業省
 http://www.meti.go.jp/press/20080916010/20080916010.html

 日本経団連:税・財政社会保障制度の一体改革に関する提言~安心で活力ある経済社会の実現に向けて~
 http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2008/068/honbun.html


 労働者派遣法問題では、労働政策審議会に提出した「格差是正と派遣法改正を実現する連絡会」の意見書が重要である。

 厚労省労政審に対する意見書 ガテン系連帯☆ブログ
 http://gatenkei2006.blog81.fc2.com/blog-entry-193.html

 結局、労政審ではこの意見は受け入れられず、「日雇派遣」の表面的禁止の陰で規制緩和を盛り込んだ建議が出された。

 厚生労働省:労働政策審議会建議―労働者派遣制度の改正について
 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/09/h0924-3.html

 衆院解散先送りが濃厚になり、さらに民主党が早期解散を優先するために与党への妥協を重ねている中で、この建議を元にした労働者派遣法改正案が今国会で成立する危険性が強まっていることに注意するべきである。
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by mahounofuefuki | 2008-10-09 00:04

「1人の市民を減らして3人の奴隷を増やす」のではなく「3人とも市民にしろ」

 数日前の弊ブログで非正規公務員の「ワーキングプア」化~貧困対策としての正規公務員増員政策の必要性というエントリを挙げて、行政の人件費削減により臨時採用などの非正規公務員が増加している現状を批判し、正規公務員を増やせと主張したが、これに対し「はてなブックマーク」で、やはり以前弊ブログの清掃職員が年収1100万円で悪いか!でも取り上げた、奈良市の清掃職員の「高給」問題を前提に「これって、年収300万円で3人正規採用すればいいよなぁ?ブサヨは公務員の高給を擁護しているが、そのせいではじき出される人間はどうでもいいんだよなぁ?」という誹謗コメントがついていた。

 雇用待遇差別問題で非正規雇用を正規雇用に引き上げよと唱えると、必ず正規雇用の方の待遇を引き下げよとか、正規雇用の解雇を自由化しないと非正規雇用は正規雇用にはなれないといった批判が起きるが、これもそれらと同じ「引き下げ」論法である。全民間労働者の平均収入よりも低い年収300万円に引き下げろ、と平気で主張できるのは「格差」は問題にするが「貧困」を問題にしない典型例で、労働者全体の総取り分を勝手に固定しない限り成立しない議論である。

 奈良市の件は「年収1100万円」というといかにも「高給」だし、これが規定の労働条件の下で為されていたら私でも「高すぎる」と言うだろうが、以前も強調したように、この例は「給与が高い」のではなく「労働時間が異常に長い」のであって、時間外手当を除く給料500万円、賞与200万円余りというのは、問題の職員が定年の60歳であることを考慮すれば、安くはないが高いとは言えず妥当なところだろう(それでも時間給で区切られる「ワーキングプア」層から見れば夢のような話ではあるが、資本の論理に合わせて「あるべき給与水準」を引き下げる必要は全くない)。

 弊ブログは先のエントリで、「ワーキングプア」を優先的に正規公務員に採用しろと唱えているのだから、そもそも「はじき出される人間はどうでもいい」という非難は全くあたらないが、そういう非難が出てくるのは、要は人件費の総額を固定して考えているからで、私が税収を増やして人件費も増やせと言っているのを見落としているからである。民間の場合も、資本の取り分には手をつけずに、正規雇用の所得を減らして非正規雇用に回せという論法がまかり通っているが、これも労働分配率の引き上げを全く考慮していない。

 誹謗コメントに沿ってわかりやすく例示すれば、「1人の正規労働者を解雇して、その分で3人の非正規労働者を雇う」あるいは「1人の労働者の給与を3分の1に引き下げて、その分で労働者を3人に増やす」のではなく、あくまで「正規労働者として給与を引き下げずに3人雇え」ということである。それは現実的でないという批判が当然あろうが、現在の「貧困と格差」の本質は、要は「貴族」の取り分が増大した分、「市民」の中から「奴隷」に落とされる人々が大幅に増えた点にあり、「奴隷」という状態自体に問題がある以上、これは「貴族」の取り分を減らして「奴隷」を「市民」にしない限り解決することはない。1人の「市民」を減らして3人の「奴隷」が増えても意味はない。

 「引き下げ」論法は、残りの「市民」もすべて「奴隷」にしろということであり、「奴隷」状態が人間として許容できるかどうかは問わず、非「貴族」間の「平等」を夢見ているが、「市民」と「奴隷」の分断は「貴族」にとっての統治戦術でもあり、実際は「市民」が「奴隷」に引き下がっても「平等」は訪れず、「奴隷」ももっと引き下がり、今度は「新奴隷」と「旧奴隷」の差別が生じるだろう。そして「市民」の残りの取り分も「貴族」に吸収される。「引き下げ」競争は「貴族」の欲望が続く限り際限なく拡大する。「市民」にとっても「奴隷」にとっても「敵」は「貴族」=巨大資本・富裕層なのである(ただし「市民」による「奴隷」への差別・蔑視を免罪するつもりはない)。

 話がいささか抽象的になってしまったが、現実問題として、中小企業に限っては労働分配率の高止まりが続いており、これ以上正規雇用を増やすことは難しい。だからこそ余裕のある大企業に正規雇用化を義務付けると同時に、特に民間企業での正規採用が難しい年長の未熟練非正規労働者を公務員に優先採用しろ、福祉国家路線で行政の仕事を増やし公務員を増員しろ、というのが弊ブログのこれまでの主旨である。具体的に実現するための方法論は全くないので、いわば理想論にすぎないことは認めるが、少なくとも政策としての方向性くらい提示する権利はあるだろう。減税や歳出削減がその方向性に逆行するのは言うまでもない。私が「歳出削減でも消費税増税でもなく金持ち増税」を一貫して主張する所以である。
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by mahounofuefuki | 2008-10-04 23:32

非正規公務員の「ワーキングプア」化~貧困対策としての正規公務員増員政策の必要性

 弊ブログでは再三再四にわたり、「官の無駄遣い」というプロパガンダが行政機構の民営化・市場化を促進させ、結果として公的な社会維持機能を弱め、「貧困と格差」の拡大に加担していることを厳しく批判してきた。残念ながら肝心の左翼系の人々ですら「小さな政府」信仰が強く、私のような主張はほとんど軽視されているが、改めて行政のコストカットが何をもたらしたかを明示するニュースがある。

 共同通信(2008/09/29 21:00)より。
 自治労が29日発表した地方自治体職員の勤務実態調査で、臨時雇いや非常勤などの非正規職員が全体の27・8%を占めることが分かった。非正規職員の少なくとも67%は「年収200万円以下の官製ワーキングプア(働く貧困層)に該当する」とみられる。
 (中略)
 調査は、全自治体に6月1日現在の非正規職員数や待遇などについて質問。全体の53・1%に当たる23都府県と963市区町村から回答を得た。
 その結果、回答を得た自治体の職員107万1496人のうち、29万7571人が非正規職員だった。自治労は未回答の自治体を含めれば、「非正規職員は全自治体で50万人を超える」と推定している。
 非正規職員の収入に関しては「賃金の約65%は日給・時給型で、その70%超は時給(換算で)1000円未満。残りの月給型も約58%は16万円に届かない」といい、自治労は全体の67%が年収200万円以下と分析している。

 たとえば学校教員で臨時採用の比率が増大したり、職業紹介を担うハローワークで社労士資格を持った専門家でも短期契約の非正規職員だったり、従来は正規雇用が当たり前だった領域で非正規雇用への置き換えが進んでいるという話はよく聞くが、約28%というのは驚きである(国家公務員も同じようなものだろう)。民間の非正規比率はすでに3割を超えているが、多くの人々の思い込みとは裏腹に確実に「官民格差」は縮小(それも悪い方に)しているのである。

 雇用待遇差別問題に関しては、弊ブログは非正規雇用を正規雇用に転換させるよう方向付けることが必要だと指摘し続けているが、そう言いつつも企業が本質的に市場原理に基づく存在である以上、たとえ法的に義務づけても簡単には進まないという現実も認識している。それ故に民間企業の正規雇用が減少した分を、行政が正規雇用を増やすことでフォローするような政策が必要だと考えている。私がいつも公務員バッシングに反発し、行政コストの削減に抵抗し、過剰な「官」批判を強く非難するのも、ひとえに「ワーキングプア」問題、なかんずく「年長フリーター」問題は「未熟練労働者を公務員として優先採用する」くらいの行政の強力な支援なしには決して解決しないからである。

 最近、月刊誌『世界』で労働問題の専門家らが「若年雇用促進法」を提案し、特に「氷河期世代」の既卒求職者の採用を一定の割合で企業に義務付けるというアイデアを提示しているが、これは企業のみならず、むしろ政府や自治体にこそ率先して行わせるべき施策である。現実問題として再び景気が後退し、企業がまたしても雇用コストの削減に向かう中で、行政が公務員を増やすことで労働市場を広げることが必要である。「貧困と格差」に本当に向き合うのならば、増税してでも正規の公務員を増加させなければならない

 公務員の非正規化・貧困化の現況はそうした方向に完全に逆行する。しかも、非正規化が進んでいるのは、教育や福祉や医療といった領域が中心で、その点でも昨今の社会保障弱体化の流れと軌を一にしている。逆に言えば福祉国家路線に転換するには、まさに教育や福祉や医療といった分野で人員を増やさねばならない。この国では一方で福祉国家を訴えながら、同じ口で公務員の削減を唱える矛盾した行動を採る人が後を絶たないが、行政サービスを充実させたかったら、それに見合った人員が必要なのは本来子どもでもわかることだ。

 今回の調査対象はあくまでも法的な身分上の公務員に限られているが、最近の行政は公務員の非正規化とともに、民間企業やNPOなど外部への業務委託も増えており、身分上は公務員ではなくても実際には公的業務を担っている例も少なくない。こうした問題も含めて、改めて公務員の地位問題を思い込みや感情論を排除して冷静に検討する必要があるだろう。

【関連記事】
ハローワークさらに削減へ~公務員減らしは行政サービスを悪化させるだけ
「やりがい」さえあれば労働条件が劣悪でもよいのか?

【関連リンク】
地方公務員法 - 法庫
http://www.houko.com/00/01/S25/261.HTM
巻頭特集 増える非正規労働者 [座談会] 公立保育職場の臨時・非常勤職員の現状 - 自治労通信2008年9・10月号
http://www.jichiro.gr.jp/tsuushin/732/732_01.html
*地方公務員法第22条が労働者派遣法と同じ問題を抱えていることがわかる。
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by mahounofuefuki | 2008-09-30 21:47

清掃職員が年収1100万円で悪いか!

 奈良市環境清美部の清掃職員の最高年収が1100万円に上っていたことを、今日のJ-CASTがやり玉に挙げている。

 J-CASTニュース:清掃職員が年収1100万円の「高給」 「給与体系に問題あり」と奈良市見直しへ
 http://www.j-cast.com/2008/09/19027292.html

 「この清掃職員の年収の内訳は、500万円の給料に加え、残業手当が234万円、特殊勤務手当て68万円、賞与223万円、通勤手当などもろもろの諸手当となっている」「この職員は工場勤務をしており、夜勤勤務や祝祭日でも出勤していた。給与体系という意味では、年功序列の加算体系に加え、管理職ではないため、時間外勤務手当て、365日祝祭日も働いていたものだから割り増しになった」

 ・・・ということが事実ならば、問題は「年収が高すぎる」ことではなく、「労働時間が異常に長い」ことにある。この報道はそもそもの問題の立て方が間違っていると言わざるをえない。公務員となるとすぐに「厚遇」がどうのと攻撃する輩が多いが、残業手当をはじめとする各種手当は労働者の当然の権利であって、公務員が「厚遇」なのではなく、民間の労働待遇がひどすぎると理解しなければならないことは、過去にも弊ブログで指摘してきた。

 以前、トヨタの取締役の平均報酬1億2200万円にもっと怒るべきというエントリで、公務員よりも民間の巨大企業の経営者の方がずっと不公平だと、やや挑発的に論じた時、「トヨタの役員は別世界なので庶民にはどうでもよい」「自分ができないような凄いことで稼ぐのは構わないが、自分でもできるようなことで稼いでいるのが許せん」というような批判コメントをしていたブログがあったが、今回のJ-CASTの場合も結局のところ「清掃職員のくせにもらいすぎだ」という認識が前提にある。

 私に言わせれば、多くの労働者や下請け企業を苦しめ、排気ガスを撒き散らすクルマを製造しているメーカーの経営者なんかより、清掃職員の方がずっと社会的に有用で立派な仕事をしていると思うのだが、そうは考えない人の方が多いらしい。今回の件は、恒例の公務員への嫉みと同時に、清掃業に対するあからさまな差別と侮蔑が背景にある。

 そこでこの記事のもう一つの狙いが問題となる。別件の「不適切な勤務が最初に発覚した男性職員は部落解放同盟奈良市支部協議会の副議長を務め、市側と何度も交渉していた」「清掃職場での就業には特殊な職場環境がある」。一方で「高給」職員は「給与システム以外の背景はない」と述べていながら、明らかに奈良市環境清美部が部落解放同盟の強い影響下にあることを示唆しているのである。ここから「部落特権」だとか何とか扇動しようという意図を読み取るのは容易だが、むしろ解同との関係で問題としなければならないのは、「なぜ清掃行政と解同の関係が深いのか」ということではないのか。

 その答えも、ある程度地域差別や職業差別の歴史を知っていれば容易に導ける。つまり清掃業務が長らく「ヨゴレ」仕事とみなされ、あたかも「ケガレ」の領域を担わされたかつての被差別身分と重なり、そこに差別と清掃行政が結びつく余地を残しているのである。最近はゴミ収集が機械化され、下水道整備が進んだのでそうでもないが、かつてはごみ処理や屎尿汲み取りはとかく人々の「ケガレ」観をかき立てた。解同のやり方に問題があるのは確かだが、同時に差別を前提として特定の業務を特定の集団に請け負わせるかのようなやり方で、事実上差別の温存に手を貸す行政や、大衆の差別意識も俎上にのせなければ公平性を欠くだろう。

 単に奴隷根性に支配された人々の嫉みを煽るだけのニュースでも、読みようによっては社会構造の歪みについて考えさせられるという好例であった。
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by mahounofuefuki | 2008-09-19 22:55