タグ:貧困 ( 72 ) タグの人気記事

メキシコシティ空港に住む日本人ホームレスへのまなざし

 今日の日本テレビ系列のテレビニュースが、メキシコシティ国際空港内で3か月寝泊まりしている日本人男性について報じているのをたまたま観た。ホームレスに対する「まなざし」や貧困者の社会関係について考えさせられたので、紹介したい。

 空港で3か月生活する日本人男性、メキシコ – 日テレNEWS24(2008/11/25 15:21)*web魚拓
 http://s04.megalodon.jp/2008-1125-2059-19/www.news24.jp/123794.html
(前略) 東京都出身のフリーター・野原弘司さん(41)は、観光目的でメキシコを訪れた。最初はホテル暮らしをしていたが、所持金が少なくなってきたため、空港で寝泊まりしているうちに3か月が経過した。

 珍しい日本人がいるということで、地元メディアがこぞって取り上げ、記念撮影やサインを求める人がひっきりなしに訪れている。野原さんは「(有名になって)びっくりしました。目的はね、外国で大成したいと。大物になりたいってのが目的ですね」と話す。

 空港にいた人たちは、「クールだね!」「何をやっているのかなって思ったんです。日本人ってこんなことやるとは思わないでしょ」などと話す。ファストフード店が無料で食事を毎日差し入れし、空港警察も見てみぬふりをするなど、野原さんを温かく見守っているようだ。

 野原さんはメキシコ人に優しくしてもらった恩に感謝し、「今後はブラジルなど南米に行ってみたい」などと話している。(後略)

 空港で生活している男というとスティーブン・スピルバーグの映画「ターミナル」みたいだが(といっても私は映画をあまり観ないので詳細はよく知らない)、日本の排除型社会に慣れてしまった眼で見るとメキシコの人々の「温かさ」が新鮮である。事実上、空港を根城にするホームレスを「クール」と形容し、食事を差し入れる人がいて、警察も黙認する。引用記事では言及されていないが、私が観た地上波のニュースによれば、空港の利用客らの間で彼は「友達」と呼ばれているという。空港での長期滞在を禁止する規則はないのでそのままにしているという空港当局者の談話も伝えていた。

 当然次のようなことを考える。日本の成田空港で、髭が伸び放題、髪もボサボサの外国人が同じように生活できるだろうか、と。あいにく日本の空港の法制について全く知らないので、法的にどうなのかはわからないが、間違いなく何らかの方法で逮捕→強制送還となるだろう。仮に空港内での長期滞在が可能になったとしても、日本人は「友達」とは決して思わず、「よそ者」「不審者」とみなして近づくことすらしないだろう。日本では「外国人」で「ホームレス」というのは二重の排除対象となる。

 事実、前記引用記事には続きがある。「日本大使館は『ビザも持っており、不法滞在ではないが、健康も心配だ。今後も空港暮らしをやめるよう説得を続ける』とコメントしている」。現地の当局も住民も利用客も容認しているのに(人気ぶりからするとむしろ「歓迎」している?)、我が「祖国」は空港から出ていくよう勧告しているのである。「健康も心配だ」なんて言っているが、ふだん保険料滞納で国民健康保険証を取り上げている国家がよく言えたものだ。旅行中に武装勢力に拉致された日本人を「自己責任」と称して見殺しにしたのはどこの国だったか?  今回も「自己責任」を貫かないのか? 日本政府が心配しているのは「当人の健康」ではなく、自意識上の「国家の体面」であろう。

 地上波のニュースではこの件について、コメンテーターやキャスターが「勤勉で実直な日本人のイメージが崩れる」「早く出て行って欲しい」などなど口々に批判していた。全くげんなりである。空港の彼は現地で人気者なのだから「日本人のイメージ」はむしろ良くなっているのではないか。よく排除を正当化する際に「迷惑だから」という理由づけが使われるが、今回の例は異邦の地のことで日本の住民の誰の「迷惑」にもなっていなければ、現地でも当局すら「迷惑」とは考えていない以上、日本にいる者が「出て行って欲しい」などと言う権利はない。伝えられる現地の温かさと、伝える側の冷たさの対比は、そのまま彼我の「貧困者へのまなざし」の落差である。

 さて彼は現地で人気者とは言え、もともとは「観光目的」での入国だそうだから、観光ビザの期限が来れば出ていかなければならない。本人の希望通り南米に行ければそれに越したことはないが、寒風の吹く日本へ帰国することになるかもしれない。日本ではまともな雇用のイスを減らしておいて、イスからあぶれた者を徹底的に差別し排撃する。「41歳フリーター」を「友達」として受け入れる素地はこの国にあるだろうか。・・・・やるせない。
[PR]
by mahounofuefuki | 2008-11-25 21:18

「仲間とつながる安心感」さえあれば非正規雇用でもよいのか

 東京学芸大学教授の山田昌弘氏が「格差社会」の現状について語っているインタヴューが出ていた。「氷河期世代」の非正規労働者、いわゆる「年長フリーター」が抱える社会的孤立の現況とその打開の方向性について述べているのだが、その中で気になる指摘があった。

 格差問題の第一人者が憂う“格差の拡大”「下流から一歩進んで下層へ!」|『週刊ダイヤモンド』特別レポート|ダイヤモンド・オンライン
 http://diamond.jp/series/dw_special/10035/
(前略)
――非正規雇用を正規雇用に変えようという企業も登場し、国には日雇い労働などを法律で規制しようという動きがある。

 非正規雇用を正規雇用に変えたり、法律で日雇い労働を規制しても根本的な問題は解決しない。

 突き詰めれば、「単純労働を誰が担うのか」ということになるからだ。「仲間もなく単純労働を延々とこなす」という仕事が日本社会からなくならない以上、雇用形態や表現が変わっても、それを担う者は世の中に存在し続けるのだ。そういう若者が不安を感じ、希望を持てないことが問題の元凶なのだ。

 そもそも、皆が安くていいものを求め続ける限り、その種の労働はなくならない。「非正規雇用はかわいそう」「なくすべきだ」と言っている人に、「ハンバーガーが1000円になってもいいですか?」と聞けば、「ノー」と答えるだろう。

 非正規雇用のような労働はなくならない。ならば、そういう労働を担う人たちの心理的な不安を解消する仕組みが早急に必要となる。

――具体的にはどのようなことか。

 組織化や連帯だ。それは組合でもいい。欧米は組合で連帯を感じ、日本は正社員であることで連帯を感じ、安心してきた。そこからはじかれた労働者が今、連帯や仲間意識を持てないで不安や孤独を感じている。形はどうであれ、仲間とつながることで安心できる仕組みが求められる。

 かつて、不安感を歪んだかたちで組織化し、利用したのがヒットラーだった。このまま今の状況が放置されたら危険だろう。(後略)

 山田氏の立論は、現行の経済システムでは「非正規雇用のような労働はなくならない」ということを前提に、たとえ雇用形態を正規化しても、それが孤独な単純労働である限り労働者の不安と絶望はなくならないというものである。その上でこうした労働者の不安を解消するために「組織化と連帯」を勧めている。

 雇用待遇差別解消の基本的方向性として非正規雇用の正規化による均等待遇の実現を求める側としては、2つの問題を提起せざるをえない。1つは、本当に「非正規雇用のような労働はなくならない」のかという点。もう1つは、労働者の不安の根本的要因は「雇用の待遇」ではなく「帰属意識の欠如」なのかという点である。

 第1の点は、製造業を中心に末端の単純労動が完全にシステム化されていて、これを廃して産業が成り立つのは困難であるという事実を指す。この場合、仮に雇用待遇が「正社員」であっても「孤独な単純労働」自体は変わらない。私などはいつも非正規雇用の正規化を主張する際、仕事内容や「やりがい」といった問題は棚上げし、給与や保険や休暇といった条件面の引き上げに問題を集約して、極論すれば生活できるだけの所得さえ保障されれば仕事内容を問わないという線さえ否定していないが、労働「条件」だけでなく労働「内容」が差別と疎外感をもたらしているのならば、この問題は無視しえないのは確かである。

 とはいえ「非正規雇用のような仕事はなくならない」「正規雇用にしても問題は解決しない」という部分だけが一人歩きするのは危険である。インタヴューを行った「ダイヤモンド」の社論が「正規雇用の労働条件引き下げ」であることを考えれば、山田氏の発言自体が「非正規雇用をなくすことは不可能だから、正規雇用の引き下げによる均等待遇にしよう」というミスリードを誘う性質を持つ。それでは「貧困と格差」の解決にはならない。「非正規雇用のような仕事」と「非正規雇用」の違いをはっきりと認識しなければならない。

 第2の点はいわゆる「関係の貧困」にかかわる問題である。「氷河期世代」の非典型労働者が等しく感じるのは、社会から取り残された、正確には社会のスタンダードなライフサイクルから排除されたという疎外感である。年を重ねるにつれて典型労働者との落差が顕著となる。片や結婚して子どももいて社会から存在を認知されているのに、片や自立した生活を送れず社会からはいつまでたっても侮蔑的視線を受ける。つまり、収入の少なさもさることながら、社会から人間として認知されていないことに悩まされるのである。

 その点で山田氏が提起した「組織化と連帯」という結論自体は、「認知してくれる」視線、ひいては社会への帰属意識を獲得する方法として間違っていないし、実際コミュニティユニオンのような確かな実例もあるが、問題は第1の点(「非正規雇用のような仕事はなくならない」)を前提として第2の点(不安を取り除く帰属意識が必要)を論じているために、第1の点のミスリードと併せて「不安さえ解消すれば非正規雇用を維持してもよい」という論法に容易に転じてしまう危険性がある。

 非典型労働者の不安の原因を労働条件の低さに求めている限りは、「組織化と連帯」は労働条件引き上げの手段となる。しかし、労働条件と切り離して単に「仲間意識」がないことを労働者の不安の主因と捉えると、「組織化と連帯」で「仲間とつながる安心感」ができたのだから、それで不安は解消された、労働条件は別に上げる必要はないということになりかねない。「正社員」の肩書き=帰属意識を維持する引き換えに、際限のない労働条件の引き下げを受け入れさせられている「名ばかり正社員」と同根の問題がここでは露呈している。

 今回言及した問題、特に「氷河期世代」の非典型層の尊厳をめぐる議論は、私の中でいまだ詰め切れておらず確たることは言えないが、とりあえず注意したいのは、一見「格差」や「差別」を批判する言説も状況やロジックによっては、逆の立場に転化しうるということである。自戒したいところである。
[PR]
by mahounofuefuki | 2008-11-10 01:38

少なくともあなたの方は「小さな政府」論者です

 面倒なので前置きなし。

 Easy Resistance:植草さんは「小さな政府」論者ではありませんよ
 http://easyresistance.blog.ocn.ne.jp/blog/2008/11/post_7868.html

それはただ天下りを禁止するだけでは、公庫に資金を取り戻すことができないからです。独立行政法人など政府系企業は天下り人件費を捻出するために、業務遂行とは関係のない経費(人件費)を計上できるようにできています。通常の利益を稼ぐ法人とは全くの別物で、そこに配分される国費は彼らにとって利権で、天下りが来なければこれ幸いと、その分も何らかの形で自分達のために利用することでしょう。

 その論法だったら、独立行政法人どころか政府のあらゆる機関が必要ないということになる。「業務遂行と関係ない経費」を計上して予算を獲得する手は行政ならどこでも使う手。しかし、例えば地方自治体がそういう手を使っているからと言って、「自治体を廃止しろ」とはならない。必要なのはあくまで会計検査の強化であって、政府の業務を減らして、行政サービスを落とすことではない。ちなみにこの人は「人件費=悪」という典型的な新自由主義的思考にとらわれているが、貧困対策のために公務員を倍増して「ワーキングプア」を優先採用しろと要求している私からすれば、その人件費で雇用が増えるという条件ならば、人件費は多い方がよい。


おっしゃる通り有益な事業も数多く存在します。しかしそれを残しながら天下りの受け皿である政府系企業を廃止する方法は色々あります。民間企業に運営させ保障だけを与えるとか、地方自治体へ移管する(もちろん一般会計で運営していただく)証券化して市場へ任せる(2次市場形成は問題ありそうですねw)一般会計で予算を組む、利益の見込める事業は民間へ払い下げる等

 民間委託と地方丸投げと証券化! あなたは橋下徹ですか!? 竹中平蔵ですか!? 「天下り利権」にはうるさいくせに、特定企業への委託=利権はいいと! ただでさえ財政の厳しい地方自治体に移管してどうやって運営するのか。地方間格差も広がる。民営化すれば収益を上げなければならない。市場原理にそぐわないものは排除されてしまう。また外部委託は公務員の非正規化を招いている(「官製ワーキングプア」で調べよ)。

 たとえば公団住宅をご指摘通り民営化するとしよう。家賃が引き上げられ、貧乏人は追い出される。奨学金を民営化するとしよう。利息は上がり、信用保証のない貧乏人は借りることもできなくなる。国立病院を民営化するとしよう。採算のとれない田舎の病院は廃止されるだろう。ちょっとシミュレーションすればわかること。それでも「天下りの廃止のためには仕方がない」と言うようなら「さよなら」だ。必要なのはいつ民営化されるかわからない独立行政法人という形態を完全に国の直轄機関にすることである。


政府系企業はその規模の分だけ民業を圧迫しています、その圧力を取り除けば日本の企業は活力を再生させるはずです。その伸びに雇用を求めるのが正攻法ではないかと考えます、同時にそれが追いつくまでの間、何らかの保障は必要になると思われますが。

 公営事業とぶつかる民業の多くはいわゆる「貧困ビジネス」である。公営住宅がもっとたくさんあれば、ネットカフェや個室ビデオに寝泊まりする人は減る。職業訓練事業がもっと充実すれば、派遣会社は減る。しかし、そうした「民業の圧迫」はむしろ歓迎されるべきではないのか。政府が正規雇用を減らして、その分民間の非正規雇用が増えても、単に貧困を拡大するだけにすぎない。現実は金融危機以降、どんどん民間での特に非正規雇用の「首切り」が進んでいる。今必要なのは、政府が公務員を増やすなり、社会保障の充実と連動した公営事業を増やして雇用のイスを増やすことではないのか? 


その通りですね、それが改革の名を借りた利権の保全に他ならないからです。まさしく天下りは温存され、国民の権利が削られる悪しき改革の典型です。この政府系金融も解体すべきだと私は思っています。

 何が「その通りですね」だ! 曲解も甚だしい! 私が問題にしているのは「利権の保全」でも「天下りの温存」でもない。奨学金の補完的役割を果たしている「教育ローン」の貸出資格が、政府系金融の経営統合によって従来よりも狭められたことを問題にしているのだ。政府系金融解体? 民間金融機関へ業務委託? ますます貧乏人は排除されるではないか。「改革」など不要。元に戻してくれ。

 財政民主主義上、特別会計の廃止が望ましいということは私も同意見だが、廃止した場合の社会的ダメージをフォローするする必要があることは注意しておきたい。公共事業をちょっと減らしただけで、地方は本当に悲惨な状況にある。私の周囲でも会社ぐるみで出稼ぎに出ているなんて話もある。正義漢ぶって「不正」を排除したはいいが、何ら手当てがなければ結局弱い所にしわ寄せが来るということを自覚して欲しい。

 「共に新自由主義と戦いましょう!」と結ばれているが、私にはこのブログ主こそ新自由主義者としか思えない。植草氏を「小さな政府」論者と言ったのは言い過ぎだったかもしれないが、少なくとも「Easy Resistance」氏は「小さな政府」論者である。「官僚主犯説」どころか、半ば陰謀論めいた「官僚単独犯説」のようで、「財界主犯説」を採る私とは全く相容れない。「無自覚な新自由主義者」。この国の「民=善、官=悪」信仰の深刻さを改めて実感した次第である。


《追記 2008/11/08》

 予想通り再々反論が来たが、「共通の土台」がないことが明確になった。私は社会主義を否定していないので、噛み合うはずもない。まあ確かに当方の言が漠然としすぎていたのは問題であったが・・・。もういくらやっても徒労に終わりそうなので、これで打ち止めにする。


《追記 2008/11/11》

 「Easy Resistance」に対しトラックバック禁止措置をとった。理由は以下のエントリを参照のこと。
 某ブログに対するTB禁止措置について

【関連記事】
非正規公務員の「ワーキングプア」化~貧困対策としての正規公務員増員政策の必要性
「官僚主犯説」が財界の政治介入を促進する
「小さな政府」を堅持する民主党と「植草一秀現象」
植草一秀氏に答える
[PR]
by mahounofuefuki | 2008-11-07 22:00

政府提出の労働者派遣法改正案に対する声明

 「派遣ユニオン」のブログから、政府が今国会に提出した労働者派遣法改正案に対する声明のTBをいただいた。記録を兼ねて改めて紹介したい。

 派遣ユニオン ブログ 派遣法改正法案閣議決定に関する声明
 http://hakenunion.blog105.fc2.com/blog-entry-13.html
 「名目こそ『日雇い派遣禁止』と謳っているが、その内容は『30日以内の雇用契約の派遣を禁止する』というだけのものであり、『日雇い派遣』が生み出した低賃金・不安定雇用・労災の多発などの問題を全く解決しない、みせかけだけの改正法案だ」

 「閣議決定された『30日以内の派遣禁止』法案は、『30日+1日』を繰り返す『細切れ契約』の派遣を容認しており、『契約満了』の一言で雇用を失う『派遣切り』を防止することはできない」

 また、雨宮処凛、宇都宮健児、鎌田慧、小島周一、斎藤貴男、堤未果、本田由紀、森ます美、湯浅誠各氏が連名で、やはり派遣法改正案に対する声明を出している。

 閣議決定された派遣法改正案に対する声明 ガテン系連帯☆ブログ
 http://gatenkei2006.blog81.fc2.com/blog-entry-209.html
 「第1に、日雇い派遣禁止をうたいながら30日以内の雇用契約を禁止するにすぎず、『日々派遣の契約』を禁止するものにはなっていない。逆に18業務で日雇い派遣を公認し、今後拡大する可能性さえはらんでいる」

 「第2に、細切れでいつ切られるかわからない不安定な雇用が大きな問題となっている登録型派遣の見直しは先送りされ、常用型派遣への転換も努力義務ばかりの実効性のないものとなっている」

 「第3に、市場競争の影響をもろに受けて賃金切り下げにさらされてきた派遣労働者の労働条件改善についても、派遣先労働者との均等待遇や派遣会社のマージン率規制とは程遠い内容となっている」

 「第4に、派遣拡大の最大の要因になってきた『違法派遣を受け入れても責任が問われない派遣先』に対する『みなし雇用責任制』の導入を回避して、相変わらず行政勧告制度にとどめている」

 「第5に、『期間の定めのない』派遣労働者に対しては事前面接という実質的な派遣先の労働者選抜を容認するなど、労働者派遣制度の変質につながる規制緩和さえ行おうとしている」

 弊ブログでは、今回の労働者派遣法改正案のたたき台になった労働政策審議会の報告書が出た時に、これは規制緩和との「抱き合わせ」改正であると指摘したが、実際の法案でもその性格は変わっていない。上記の声明が指摘しているように、今回の改正案の看板である「日雇派遣」の規制強化ですら限りなく「ザル法」の気配が濃厚である。国会審議では同案の問題点を洗い出し、真に雇用待遇差別と不安定雇用を解消しうる方向性での改正を目指す必要があることは言うまでもない。

【関連記事】
労働者派遣法改正問題リンク集

【関連リンク】
厚生労働省:「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律案の一部を改正する法律案」について
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/11/h1104-1.html
[PR]
by mahounofuefuki | 2008-11-06 20:38

「貧困と格差」言説が内包する性差別を自覚できるか

 貧困の現状と今後の反貧困運動の方向性について、野宿者支援で知られる生田武志氏のインタビュー記事が出ていた。貧困の解消を目指すにあたっては「ジェンダー問題を中心にした『家族問題』に踏み込まないといけない」という内容である。

 人民新聞 [反貧困] これからの反貧困運動を提言
 http://www.jimmin.com/doc/1007.htm

 私自身もそうだが、現在貧困に直面している人々が語る最もポピュラーなストーリーは、「新卒→終身雇用ルート」から外されたせいで貧困を余儀なくされている、その原因は企業や行政が正規雇用を非正規雇用に置き換えたからだというものである。もちろんそれは事実なのだが、問題なのはそもそも「新卒→終身雇用ルート」なるものが普遍的であったのはあくまで男性だけで、女性の場合は「終身雇用」時代でも大半がそのルートから排除されていたという点である。

 生田氏は女性の貧困の根源を「男性正規労働者と専業主婦というモデル家族」を基準にした労働形態に求めているが、その労働形態は同時に男性の非典型労働者をも排除していて、いわば現在の男性非典型労働者は社会的に「女性」の立場に置かれているとも言える。そして「男性正規労働者と専業主婦というモデル」を規範化している男ほど、「女だったらこんなに苦労しないのに」「女だったら非正規労働者でも侮蔑的な視線を浴びないのに」「男なのに何でこんな目にあっているんだ」という性差別を内包した怒りを持ちがちである。

 やっかいなのは、例えば「正規雇用にしろ」という要求自体が「男性正規労働者と専業主婦というモデル」を付与してくれという意味を含んでいる可能性があることで、実際に税制や社会保障制度が依然として既成の家族モデルを前提とした制度設計を続けている以上、「まず」男性には生活できるだけの所得を保障しろという要求の方が社会的合意を調達しやすいのは間違いない。それでは女性の貧困が根本的に解決しないのは言うまでもない。

 さらにもっとやっかいなのは、それでは「男性正規労働者と専業主婦というモデル」を解体しろという方向性が良いのかというと、結局は正規雇用の待遇引き下げや労働法制・社会保障制度の解体を促す動きに利用される可能性があることだ。最近、「近代家族」への批判、ひいては近代国家の「国民」化装置への批判が、結果としてグローバリズムを促進して社会保障を破壊したという知識人の言説をよく見かけるが、主客と因果が転倒している議論ではないか?という疑問はあるものの、現実に最近の上野千鶴子氏が公益は「官」でも「民」でもない非営利の事業体が担うべきだと提唱し、事実上「行政の外部委託」=「官製ワーキングプア」を促進する役割を演じていることを考えると、少なくとも過去はともかく今後は「近代家族」解体論が「小さな政府」の政治的潮流と連結する危険性があるのは確かである。

 生田氏のインタビューでも言及されている湯浅誠氏の貧困理論に従うならば、貧困の是正には「溜め」の回復が必要であり、そうなると公的福祉や企業福祉や公教育の回復と同時に「家族」の復活も俎上に載ることとなる。もちろん生田氏は家族制度を「元に戻せばいい」わけでもなく、「新たなモデル」を作る必要性を指摘しているが、果たして本当に可能なのか、どのようなモデルにもかかわらず「家族」の排他的機能自体が「関係の貧困」を生んでいる側面もあり、難しい問題である。

 私は当面こうした問題を棚上げし、とにかく公的福祉を最大限充実し、「経済の貧困」を是正することが最優先であるというある意味「逃げた」立場をとっているが、少なくとも「反貧困」言説に内包される差別意識には自覚的でありたい。
[PR]
by mahounofuefuki | 2008-11-01 11:50

貧乏人による追加経済対策寸評

総額2兆円の定額給付
 貧乏人に必要なのは何よりも現金なので、減税よりは給付の方がましだが、一回限りでは「景気対策」としては無意味。富裕層にとってははした金で、これでカネが回るわけではない。中間層は貯蓄に回して金融資本を援助するだけ。貧困層にとっては借金の返済の足しには少なすぎ。カネをばらまいた所で解散・総選挙という魂胆も見え透いている。

雇用保険料の引き下げ
 前々から「骨太の方針」で予告されている雇用保険の国庫負担廃止の露払い。今回は「埋蔵金」で引き下げ分を穴埋めするとしても、その後は失業保険給付が削減されるのは必定。必要なのは保険料引き下げではなく、国庫負担の増額なのに。これから失業者がますます増えるのは確実な情勢だが、またひとつセーフティネットが滅ぶようです。

非正規労働者を正規化する企業への奨励金
 そんなはした金で正規雇用のイスを増やす企業なんてあるのか? こうしている間にも派遣社員の解雇が続出しているが、そういう現在進行形の問題への対策はない。企業に丸投げしないで、政府が公務員を増やして「氷河期世代」の貧乏人を優先採用すべし。

住宅ローン減税
 住宅を買える幸せな人々より、今日寝床のない人のためにカネを出してほしい。とりあえず保証人がいない人や敷金を払えない人のための信用保証を政府が責任をもって行うべし。公営住宅の拡充も必要。

金融機能強化法の復活
 健康保険料を滞納すると保険証を取り上げられ、年金保険料を滞納すると将来の年金給付はなくなる。それに引き換え銀行への予防的公的資金注入は、いわば保険料を支払っていないのに給付がもらえるようなもの。貧乏人にはさんざん「自己責任」=「自力救済」を強要しながら、銀行にはこのサービスぶり! せめて「注入」ではなく返済期限のある「貸出」にするのが本来の市場のあり方なのでは?

証券優遇税制の延長
 この期に及んで金持ち優遇策! 前に歳出削減路線の帰結としての「タンス預金」30兆円で言及したように、いくら優遇しても「将来の不安」が大きいほど投資には回らないのは実証済み。もう金持ちたちのギャンブルのツケを貧乏人が支払うのはたくさんだ。

高速道路料金引き下げ
 土日に限り1000円という発想の貧しさ。流通経済における輸送コストの軽減なら平日の方こそ重点的にやらないと駄目でしょう。いずれにせよ高速で遠出できるような身分ではない私にはどうでもよい施策だが。

3年後の消費税引き上げ
 これで「景気対策」のすべてを台無しにしてしまった自爆政策。引き上げ時期を明言した首相は麻生氏が初めてだが、ついにこの問題で不退転の決意を表明したというわけだ。弊ブログでは昨年来何度もしつこく指摘したが、消費税増税は貧困拡大の愚策であり、必要なのは富の再分配を強化するための直接税(所得税・法人税・相続税)の増税である。


 麻生内閣の追加経済対策を端的に評するならば「貧困対策には程遠く、景気対策ですらない、どさくさまぎれの金持ち救済政策」というところだろう。これでは貧困は拡大こそすれ、是正することはないし、そもそも麻生政権の視野には富裕層と巨大企業しか入っていないことが明示されたとも言える。政治における貧乏人の発言力を高めない限り(貧乏人の代弁者たりうる政党・議員を増やさない限り)、いつまでもこんな状態が繰り返されるだろう。

【関連記事】
消費税増税問題リンク集
非正規公務員の「ワーキングプア」化~貧困対策としての正規公務員増員政策の必要性


《追記 2008/10/30》

 「はてなブックマーク」で「税金の半分はトップ5%の富裕層が賄っていて、それを使って金持ちを救うのだから、そもそも貧乏人が俺たちにもっと寄越せと言うのは筋違い」というアホみたいなコメントがついていたが、その主張は「富裕層しか税を支払っていない」か、今回の対策の財源が「富裕層の支払った税だけ」でないと成立しないので全く論外である。そもそも貧困は自然発生ではなく、金持ちの経済活動自体が貧困を生んでいる以上、「被害者」たる貧乏人は「加害者」から補償を得る権利がある。「嫌なら金持ちに頭使ってのしあがれ」というに至っては、経済対策の話とは全く関係がなく(仮に私個人が金持ちになったところで景気が良くなるのか?貧困は是正されるのか?)、「頭使った」くらいで貧乏人の子弟が金持ちになれる社会だと本気で信じているとすれば、よほどおめでたいやつだ。お前こそそんなセリフはせめて本当に金持ちになってから吐けよ。
[PR]
by mahounofuefuki | 2008-10-30 21:11

福祉国家の「あり方」と「道筋」をめぐる問題

 サブプライム問題に端を発した金融危機により、世界的に新自由主義の凋落が決定的になっているが、問題は世界恐慌以来とも言われる大型不況のために、結局はまたしても貧困層ほどダメージを受けそうなことで、それを最小限に抑えるためには早急な富の再分配と社会保障の再構築が必要である。

 貧困を解決するために、以前から私は福祉国家路線への転換を求めてきたが、新自由主義が終焉を迎えつつある以上、今後の焦点は福祉国家の「あり方」と「道筋」をめぐる問題に移らねばなるまい。その場合、忘れてはならないのは、過去の欧州の福祉国家路線がなぜ破綻し市場原理主義に敗れたのかという点で、福祉国家そのものに内在する構造的弱点を克服しない限り、ポスト新自由主義時代に福祉国家を蘇らせることは難しく、同じ失敗を繰り返すことになりかねない。

 福祉国家の構造的弱点と破綻の経過については、西川潤氏の次の指摘が非常にわかりやすい。
(前略) 従来、福祉は国家が担当していた。つまり、国内の貧富の格差、破産、失業など不平等が増大し、社会不安や社会紛争が起こるのを避けるために、政府が公共政策を通じて福祉政策をとってきたのである。しかし、グローバリゼーション時代になって、政府のこの役割が破綻することになる。「福祉国家の破産」である。これには二重の要因がある。
 一つは1973年の石油ショックに始まる南北関係の修正である。
 福祉国家はもともと南北の国際分業体制の上に利益を獲得してきた先進国が、その利益に基づいて構築したのだが、石油ショックに始まる原燃料価格の修正、一次産品国の分配要求の高まりによって、南から北への余剰移転を用いて先進国の福祉をまかなうことが難しくなった。
 第二は、福祉国家の高齢化である。所得が高まり、人びとが長命化すると子どもをせっせとつくって子孫を維持する必要も少なくなる。高齢化と少子化はセットなのだが、少なくなる子どもが増大する高齢者を支えることはだんだん難しくなる。これに福祉国家を支える官僚機構が肥大して行政コストもかかる一方となってきた。
 こうして1980年代に「小さい政府」の必要性が叫ばれるようになり、福祉サービスも民営化されてきた。だが民家企業は営利目当てで運営しているので、福祉サービスはお金のある人でなければ受けられない事態になる。(後略) (西川潤『データブック貧困』岩波書店、2008年、p.43)

 第二の点の方は公民権の取得を前提とした移民の増加で人口減には対応できるし、高齢人口はピークを過ぎれば減っていくので何とかなる問題だが、第一の指摘は決定的な弱点を突いている。つまり、20世紀の西欧・北欧型福祉国家は国際的な南北格差の存在を前提とし、「南」から「北」への富の転移(「南」からすれば収奪と言うべきだろうが)があってはじめて成立したということである。現在も国際的な分業体制自体は継続し、むしろ強化されている面もあるが、かつての「南」側から新興工業国が次々と出現している中で、従来のままの構造の福祉国家がそのまま復活することは難しいし、するべきでない。この点をどうするのか。

 もう一つ。福祉国家へのプロセスの問題がある。以前も消費税のエントリで言及したことがあるはずだが、福祉国家の「高負担・高福祉」は理論上は国家のすべての構成員が負担に耐えられるだけの所得を有していることが必要となる。そのためにはまず徹底した所得再分配を通して平等状態を形成することが必要だが、一方で富を手放したくない既得の支配層にとっては、負担に耐えられない弱者を切り捨てて、国家内で「高負担・高福祉」層と「低負担・低福祉」層を分断した方が手っ取り早いことになる。

 かつて北欧諸国で福祉国家草創期に障害者や少数民族などマイノリティに断種を施し、人為的に「均質な国民」を形成しようとしたことがあるが、同様に現状の貧乏人を排除して「現時点で税を負担できる人々」だけで「福祉国家」を形成する可能性なきにしもあらずである。今後は単に福祉国家の可否ではなく、福祉国家への道筋を巡る階級間対立が顕在化し、雇用待遇差別問題のように、中間層と貧困層の対立が煽られて、結局富裕層が漁夫の利を得るような危険もありえよう。

 もはや福祉国家に転換すべきかどうかという議論の段階は終わり、今後はどうすれば福祉国家を実現し維持しうるのかという問題が重要となろう。私は「素人」の分をわきまえずに「対案」を出さないと無責任だと言うような恥知らずではないので、ここでは批判と問題提起にとどめ、後は専門家の議論を待ちたいところである。

【関連記事】
社会保障の財源が消費税でなければならない理由はあるのか
福祉国家派の消費税増税論と「北欧モデル」についての私見
広がる「結婚・出産格差」~「21世紀成年者縦断調査」を読む
[PR]
by mahounofuefuki | 2008-10-26 16:56

よみがえる「世直し一揆」

 19日に東京・新宿の明治公園で「反貧困ネットワーク」主催の「反貧困 世直しイッキ!大集会」が行われた。以前、弊ブログでweb記事をまとめた「青年大集会」もそうだったが、地方在住の私はこの手の催しには参加できず、しかも今回はまだ動画も観ていないので、集会の内容については言及しようがない。ただ「氷河期世代」で先の見えない貧乏人の1人として、とにかく貧困の解消に社会を上げて取り組んで欲しいという思いは共有しているだけに、こうした動きをどんどん広げなければと思っている。

 ところで、私が注目したいのは「世直しイッキ」という名称である。ついに現代の貧困は、その撲滅のための運動に前近代の言葉を用いざるをえないところまで来てしまったことを深刻に捉えざるをえない。「世直し」とは主に江戸時代に「救済」「解放」を求める民衆意識を表現する言葉として登場した。「イッキ」=「一揆」とは中世・近世における人的結合や団結行動を指す。そして「世直し一揆」とは幕末期、開国に伴う経済危機に際して百姓らが生存を賭けて闘った幕藩権力との闘争である。いずれも近代社会では「過去の言葉」であり、特に第二次大戦後は限りなく「死語」に近かったとさえ言えよう(小田実の「世直し」論とかはあったが)。

 そんな「世直し一揆」が現代に蘇ったのは、現代の貧困状況に際して「我々の苦境をリアルに表現している文学は何か」と探した時、『蟹工船』まで遡らねばならなかったのと同様に、「我々の貧困に対する怒りと変革への要求を表現する運動形態は何か」と考えた時、近代的な市民運動や政治運動ではいまいちマッチせず、江戸時代の「世直し」まで遡らなければならなかったということを意味する。

 「反貧困ネットワーク」代表の宇都宮健児氏は「税金の軽減などを求め農民が決起した秩父困民党を模し、たすきにはちまき姿」で「むしろ旗にペンキで『反貧困』と書いてアピール」していたという(しんぶん赤旗2008/10/20)。秩父困民党は、通説では自由民権運動の最もラディカルな形態と評されているが、実際は近代化を前提とした国民国家形成を目指した自由民権運動とは一線を画しており、むしろ近世の百姓一揆の終末形態であったとする学説の方を私は支持している。「反貧困」のプロトタイプを「前近代最後の闘争」たる秩父困民党に求めたのは、逆説的に自由民権以降、特に「戦後民主主義」の言説や身体表現では「反貧困」を社会に訴えるのに十分ではないことを象徴しているのではないか。

 今回の「世直しイッキ」には「垣根を越えて、つながろう」というサブタイトルが付いていた。なるほど近代的な労働争議や市民運動が常に党派間対立や裏切りや妥協を孕み、何よりも時代が進み経済的に豊かになるにつれて民衆のナマの生活要求から、より洗練された政治行動へと昇華することで「プロ市民」化したことと比べると、地域の貧農や日雇い層や雑業層など社会の周縁に押し込められた人々が広範に結集した前近代末期の一揆こそ、まさしく「垣根を越えて、つながった」闘争と言えるだろう。幕末・維新期の一揆には博徒とかヤクザのようなアウトサイダーが参加した例も少なくないほどカオスな状況だった(秩父困民党の代表者も博徒だった)。そしてその要求は「悪税をやめろ」「借金を帳消しにしろ」「「米よこせ」というような生活に即した具体的なものだった。

 もちろん「反貧困」運動自体は客観的には戦後の社会運動の系譜上に位置するし、当時と現代とではその背負っている歴史が異なる以上、そのまま「世直し一揆」を移植することなどできない(何より勝利例は信達一揆などわずかである)。とはいえ少なくとも言説において蘇生した「世直し一揆」は、既成の各種の社会運動が必ずしも現代の貧困に対応できていない状況を照射するとともに、今後貧困解消を目指すための方法論と方向性を指し示しているのではないかと思う。歴史に学ぶとはそういうことである。

【関連リンク】
写真速報:反貧困イッキ!大集会に2000人 - レイバーネット
http://www.labornetjp.org/news/2008/1019shasin/
[PR]
by mahounofuefuki | 2008-10-21 00:14

「世界恐慌だから我慢しろ」論法に注意

 アメリカ発の金融危機はもはや底が見えないほどに拡大し、単なる不況というより「世界恐慌」であるという見方さえ出ている。新自由主義がこれで終焉するという期待は別として、現実問題として恐慌となれば、またしても貧しいもの、弱いものほどダメージを受けるのは歴史が示す通りで、これまでただでさえ痛めつけられてきたのに、ますます生存権を脅かされると思うと、本当に憂鬱である。

 今からあらかじめ指摘しておくと、今後「世界同時不況だから」とか「世界恐慌だから」という口実で、庶民の負担増や景気対策に名を借りた金持ち優遇策が顕在化するだろうし、労働条件の引き下げや労働者の首切りもどんどん正当化される恐れがある。「世界恐慌でみんなが苦しいのだから君も我慢しろ」という論法である。「経済危機なので挙国一致内閣に」なんてことも浮上するかもしれない(1930年代の欧州諸国や日本のように)。

 「世界恐慌だから我慢しろ」論法に注意すべし。あくまでも国家には「生きさせろ」と生存権の保障を要求し、巨大企業には資本家こそ血を流せと反撃することが肝要である。
[PR]
by mahounofuefuki | 2008-10-11 20:20

「全国青年大集会2008」のまとめ

 今月5日に東京・新宿の明治公園で行われた「全国青年大集会2008」(全労連主催)については、すでに「大脇道場」さんや「村野瀬玲奈の秘書課広報室」さんらが秀逸なエントリを上げておられるので遅きに失した感はあるが、同集会では雇用待遇差別問題を考える上で重要な発言がいくつも為されているので、弊ブログでも報道と記録に関するリンクを整理する。

《報道と写真・動画》

 全国青年大集会 不安定雇用の現状を若者がアピール – JanJanニュース
 http://www.news.janjan.jp/living/0810/0810068839/1.php

 希望集め 青年4600人/人間らしい労働ルール 団結の力で/東京・明治公園 – しんぶん赤旗
 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-10-06/2008100601_01_0.html

 写真速報:全国青年大集会に4600人~「反貧困労働運動」にはずみ - レイバーネット
 http://www.labornetjp.org/news/2008/1005shasin/

 YouTube – 10/5 10・5全国青年大集会2008
 http://jp.youtube.com/watch?v=00yiezXbbAE

 YouTube – 10/5 10・5青年大集会 志位委員長があいさつ
 http://jp.youtube.com/watch?v=n5GW_aat8uk&feature=user

 松下プラズマ偽装請負訴訟の報告中の「労働者派遣は人身売買と同等とみなされ、禁止されている労働者供給事業の例外としてのみ認められている雇用形態」という指摘、現役の日雇派遣労働者の「私達はモノではない。不当な扱いを望んでいない。まだ、大丈夫という言葉は、自分をがんばらせるために言っている。今のままでは希望がもてないという悩みは、正規、非正規、学生でも同じ」という切実な訴えなどは非常に重い。

 「貧困は自己責任ではない」が、憲法や労働基準法や生活保護法を守らせる責任、社会保障を充実させ、労働の崩壊に歯止めをかける責任を我々は負っているという、自立生活サポートセンター事務局長の湯浅誠氏の発言も深く考えさせられた。共産党委員長の志位和夫氏の「どんな形であれ、『首切り自由の使い捨て労働』はなくせ。正社員にしろ」という言葉には、正社員の労働条件引き下げによる偽りの雇用待遇差別是正論が幅を利かすなかで、非常に勇気づけられた。


《集会のアピールと決議》

 青年大集会アピール – まともに生活できる仕事を!人間らしく働きたい!
 http://blogs.yahoo.co.jp/seinen_koyou_syukai/25949409.html
◆政府と大企業は、派遣、請負など不安定な雇用を増やし続けることをやめ、安定した雇用を抜本的に増やしてください。
◆「サービス残業」「偽装請負」「名ばかり管理職」など企業の違法行為をただし、働く若者の命とくらし、安全を守るために、実効力のある措置をとってください。違法を告発した若者が仕事を失うことがないようにしてください。
◆若者が技術や能力を十分に発揮し、よりよい仕事ができるよう、長時間・過密労働をなくしてください。医療・介護・福祉・教育・保育など、生活に必要な雇用を増やしてください。
◆だれでもどこでも、最低賃金を時給1,000円以上にしてください。
◆「ワーキングプア」「ネットカフェ難民」など、若者の貧困を解決するために、「使い捨て」労働をなくし、生活保障つきの職業訓練を拡充するなど、国と自治体が真剣にとりくんでください。
◆燃料・資材の高騰で苦しめられている中小業者を営む若者の生活を支えてください。
◆世界一高い学費を引きさげ、学費免除制度や奨学金を充実させてください。学業との両立と公正な採用のための就職活動のルールをつくってください。

 「全国青年大集会2008」 特別決議 – まともに生活できる仕事を!人間らしく働きたい!
 http://blogs.yahoo.co.jp/seinen_koyou_syukai/25949431.html
① 労働者派遣は、臨時的・一時的業務に限定するとともに、派遣元に常時雇用される常用型を基本とし、登録型は例外として厳しく制限すること。
② 日雇い派遣・スポット派遣はただちに禁止すること。
③ 派遣期間の上限を1年とし、1年の雇用期間を超えた場合や違法行為があった場合は、派遣先が直接雇用したものとみなすこと。
④ 派遣労働者への差別を禁止し、正社員との均等待遇を保障すること。
⑤ 派遣元のマージン率(派遣手数料)の開示を義務化し、上限を規制すること。

《集会で報告された「日雇派遣」実態調査》

 全国青年大集会実行委員会「日雇い派遣調査の特徴とまとめ」*PDF
 http://www.seinen-u.org/081003%20hiyatoi-matome%201.pdf
 同前「『日雇い派遣』実態調査の集計結果」*PDF
 http://www.seinen-u.org/081003%20hiyatoi-matome%202.pdf

 日雇労働者のナマの声。人間扱いされていない実態と、一方で諦念と自己責任の内面化が深刻であることが読み取れる。


 集会自体は共産党-全労連-民青というラインの恒例の行事なので、党派性がどうのとか、「連帯の可能性」を過大評価しているといった批判もありうるだろう。ただどのような立場にあるにせよ、「人間らしい働き方」の確立を目指す上で、今回の集会はいろいろ示唆するものがあると思う。

【関連リンク】
全国青年大集会に行ってきました|労働組合ってなにするところ?
http://ameblo.jp/sai-mido/entry-10147804054.html
*動画では窺い知ることのできない分野別交流会のお話は貴重。
大脇道場NO.630 「たたかう、かっこいい人」希望と連帯・・・全国青年集会に4600人。
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-699.html
大脇道場NO.631 「朝日」が青年大集会をスルーした訳がわかった。
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-700.html
大脇道場NO.632 現代「女工哀史」・・・日雇い派遣前田さんの訴え。
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-701.html
大脇道場NO.634 「貧困は自己責任ではない。では私たちに責任はないのか?」
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-702.html
村野瀬玲奈の秘書課広報室|4600人が集まった全国青年大集会の重要さ
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-915.html
[PR]
by mahounofuefuki | 2008-10-10 23:26