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独立行政法人には必要な業務がたくさんある

 独立行政法人(独法)の整理・合理化の動きが重大な局面を迎えている。
 12月下旬に予定している「独立行政法人整理合理化計画」の策定は、閣僚折衝の不調により、来年にずれ込む可能性も報道されている。マスメディアの多くは相変わらず「改革」を進める渡辺喜美行政改革担当大臣をヒーローに仕立て、独法の統廃合や民営化に反対する各省庁を「抵抗勢力」として描いているが、これはかの郵政民営化の構図と同じである。独法=「税金の無駄」「高級官僚の天下りの受け皿」という一方的なプロパガンダを繰り返し、多くの大衆は例のごとく公務員への嫉妬からそれに同調し、「独法なんか全部廃止してしまえ!」という暴論を支持する始末である。
 始末に負えないのは、郵政民営化に反対し、日頃から小泉流「構造改革」を批判している人々も独法の統廃合や民営化にはなぜか黙殺していることで、なかには高級官僚への憎しみからむしろ民営化論に同調している人々も少なくない。一体、郵政民営化で何を学んだのか? 民営化すれば天下りが無くなると思い込んでいるとしたら、あまりにもおめでたすぎるし、独法にどんな機関があるか、どんな仕事をしているかまったく調べもせず、ただ何となく「無駄だ」と考えているとすれば単なる不勉強である。

 現在、独法は公務員型の特定独立行政法人が8、非公務員型の非特定独立行政法人が94もある。こんなに独法が増大したのは小泉内閣が「小さな政府」を唱え、国が所管していた様々な機関をまとめて独法にしてしまったからである。その目的は歳出削減であり、独法の多くは職員の身分が安定性を欠く非公務員型組織になった。さらに国の機関から法的には一法人となったことで納税義務も生じ、「業績」によって予算配分を左右される「成果主義」が導入された。
 注意しなければならないのは、小泉政権は独法をあくまでも「廃止・民営化」の一里塚と考えていたことで、行政改革推進法は第15条で、2006年度以降「国の歳出の縮減を図る見地から」独法を見直すようわざわざ法律で義務付けているのである。
 政府が策定を急いでいる「独立行政法人整理合理化計画」は、今年6月に経済財政諮問会議が定めた「経済財政改革の基本方針2007」(いわゆる「骨太の方針2007」、例の「美しい国」へのシナリオと銘打った噴飯物の文書)に従ったものである。「骨太の方針」は、独法「改革」の3大原則として「官から民へ」「競争原則」「(他の構造改革との)整合性原則」を提示し、存続する場合もすべての事業に「市場化テスト」を導入することを示唆、その上ですべての独法について「民営化や民間委託の是非を検討」するよう命じ、12月下旬までの「計画」策定を政府に求めている。
 独法整理・合理化の主張が、郵政民営化と同じく、「小さな政府」論を前提にする市場原理主義路線を踏襲しているのが明白だろう。

 一般に独法というと、安倍内閣の松岡利勝農水大臣の汚職で有名になった緑資源機構のような「胡散臭い」イメージがあるが、実際は造幣局、国立印刷局、国立文化財機構など明らかに市場原理にそぐわず、国が責任をもって業務を行うべき機関も多い。以前、当ブログでも紹介した国民生活センター(消費者相談、商品テストなどを行う)や労働政策研究・研修機構(労働問題、労働環境の実態調査など行う)も、民営化すれば公平な立場を維持することは難しい。
 最近、問題になっているのは都市再生機構である。同機構は全国に公団住宅を保有しており、これらは主に低所得者向けの賃貸住宅として機能している。12月6日には東京で公団住宅の入居者らが都市再生機構民営化に反対する集会を開くなど、不安が広がっている(毎日新聞 2007/12/06 21:11)。そして、実際に今日になって公団住宅を5万戸削減するという報道が出ている(朝日新聞 2007/12/11 09:14)。民営化されれば老朽化した住宅を売却したり(住民は追い出される)、家賃を引き上げたりする可能性が高い。民営化論は公団住宅の土地を狙う企業の要求であり、「弱者つぶし」以外の何者でもない。
 また、男女平等政策の拠点である国立女性教育会館も統廃合の危機にある。この件では各地の女性議員らが反対の署名運動を行っている。
 みどりの一期一会 「国立女性教育会館の単独存続を求める申し入れ書」の呼びかけ
 以前も当ブログで紹介した労働政策研究・研修機構の統廃合に反対する研究者らの署名活動も続いており、あわせて参照していただきたい。
 JILPT廃止反対要望書への賛同署名及び転送のお願い-玄田ラヂオ


 ほかにも奨学金事業を行う日本学生支援機構(旧「日本育英会」)が、返済の滞納の増加により、奨学金の貸出を減らすという報道もある。今回は同機構の民営化が俎上に上がってはいないが、いつ奨学金事業の民営化論が出るかわからない。言うまでもなく教育機会の均衡化のために国営の奨学金は絶対に必要である。おそらく他にもまだまだ国が行うべき業務を担う独法があることだろう。
 必要なのは、独法の廃止や民営化ではなく、公共性を有する事業は国が責任をもって行うことであり、そのためには必要な独法を再び国の直轄機関に戻すことだ。現に国立公文書館は、文書管理制度の確立を国会議員としてのライフワークとする福田康夫首相の「鶴の一声」で、独法から国の機関に戻りそうである(毎日新聞2007/12/08朝刊)。採算性だけを基準にした不毛な民営化論議をやめて「骨太の方針」を廃棄し、改めて独法の中から公共性を基準として、国の機関に戻すことを検討して欲しい。

【関連記事】
独立行政法人=「悪」ではない!

【関連リンク】
総務省行政評価局 独立行政法人一覧
行政改革推進本部事務局ホームページ
経済財政改革の基本方針2007 について*PDF
独立行政法人整理合理化計画の策定に係る基本方針について[要旨]*PDF
国民生活センター
国立公文書館
国立女性教育会館
都市再生機構
日本学生支援機構
労働政策研究・研修機構
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by mahounofuefuki | 2007-12-11 22:41

独立行政法人=「悪」ではない!

この国では長らく官僚制の支配が続いているためか、「官」を憎むあまり「民」を過剰に高く評価する傾向がある。
中曽根政権による国鉄民営化や小泉政権による郵政民営化は、そんな大衆の「官」への不信と「民営化」信仰を背景に強行された。最近も社会保険庁がやり玉に挙がり、「ねんきん事業機構」に衣替えさせられることになった(これもいつ民営化の話が出てもおかしくない)。
「行政のムダをなくす」=「民営化」という公式は依然としてこの国の世論を支配している。

現在「行政のムダ」としてやり玉に挙がっているのは、何といっても独立行政法人(独法)である。
もともと橋本政権が「行政改革」の一環として作ったものだが、小泉政権は特にこれを利用し、国の機関の一部や特殊法人や大学などを次々に独法とした。民間企業と同様、納税義務があり、実績により予算が左右されるなど、一種の市場原理が導入された。
しかし、これまでの特殊法人などと同じく、官僚の天下りが多く、厳しい批判にさらされている。最近も次のようなニュースがあった。
共同通信(2007/11/22 17:38)より。
 2006年度の独立行政法人(独法)の常勤役員のうち、中央省庁の官僚出身者は200人で、全体に占める割合は39・2%だったことが22日、総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会のまとめで分かった。前年度と比べると27人少なく、割合は4・5ポイントの低下。
 官僚出身者を半数以下にする政府目標は達成しているが、依然として独法が天下りの受け皿となっているのが実態だ。
 104ある独法を対象に集計、常勤役員数は510人で、うち中央省庁の課長・企画官相当職以上を務めた官僚出身者は200人だった。非常勤を含めた役員数は655人、うち官僚出身者は34・5%の226人で、割合は前年度比2・9ポイント低下した。
独立行政法人は、天下りポストを確保するための組織で、税金のムダであるという意識から、容易に独法の民営化論や廃止論が導かれる。たとえば、次のコラムはその典型例であろう。
末期的症状を呈する自民、その9 独立行政法人は廃止すべし 青山貞一
官僚の天下り、高額な役員報酬、国からの補助金の増大、等々の理由を挙げて「私見では大部分の独立行政法人は、主たる存続理由があるとは思えない。それらはすぐにでも廃止すべきである」と結論づけている。
青山氏は小泉流の「構造改革」には批判的なはずだが、独法廃止論はまさに「小さな政府」論そのものである。

独法を十把ひとかけらにして、「ムダ」と決めつけるのは本当に正しいのだろうか。
やはり最近、次のようなニュースがある。
以下、朝日新聞(2007/11/21 15:13)より。
 政府が独立行政法人の見直しの一環として、国民生活センター、製品評価技術基盤機構、農林水産消費安全技術センターの3者の統合を検討していることがわかった。政府は国民生活センターについて、(1)消費者から直接相談を受ける窓口の廃止(2)商品の安全性テストの大幅外部化、などを検討していたが、「消費者軽視」との批判を浴びていた。このため、消費者重視を打ち出した福田首相の下で、機能を拡充する方向で再編を目指すことになった。
 統合案は、政府の行政減量・効率化有識者会議が月内に打ち出す独法見直し原案に盛り込まれる方向。渡辺行革担当相も20日、消費行政を担当する岸田国民生活担当相に統合案を説明した。
 経産省所管の製品評価技術基盤機構と、農水省所管の農林水産消費安全技術センターは、工業製品や飲食品の品質検査、分析などを実施し、消費者への情報提供や相談受け付けなども行う。渡辺氏側は「統合で機能は拡充され、消費者重視を掲げる首相の意向にも沿う。独法の数も減らせる」と説明している。(後略)
国民生活センターは、消費者からの相談受付や悪質商法の情報伝達や製品・商品テストなど、消費生活上重要な業務を行っている。それが独法の数を削減するために、ほとんど関係のない法人と統合され、機能を弱体化させられそうなのである。

国民生活センターばかりではない。労働政策研究・研修機構も存続が危うくなっているという。
東京大学社会科学研究所教授の玄田有史氏がブログでその危機を訴えている。
JILPT廃止反対要望書への賛同署名及び転送のお願い-玄田ラヂオ
玄田氏ら「独立行政法人労働政策研究・研修機構の存続を求める研究者の会」は、11月13日に厚生労働大臣へ次のような要望書を提出したという。
厚生労働大臣 舛添要一殿
要望文
 独立行政法人労働政策研究・研修機構(以下「機構」)の廃止を検討していることが、いくつかのマスコミで報道されています。 労働をめぐる問題が重要度を増し、社会的関心を集めている現在、我が国で唯一の労働政策を専門とした調査研究機関である機構を廃止することは、日本の労働問題を正確に把握し、政策面で適切に対応する上で多大な不利益をもたらすと考えます。
 機構の廃止は、労働政策の立案や評価に欠かせない、公的かつ中立的な立場からの内外労働情勢の把握を困難にすることにつながります。さらに機構の廃止は、学術研究の成果を踏まえた上で労働政策を論じる学問的観点の重要性を蔑ろにする傾向を生むことが懸念されます。
 機構は、民間シンクタンクと異なる基礎的かつ継続的な調査機関であり、また大学等とも異なる実践的な政策の立案と評価を主眼とした研究機関です。その特有な機能は、労働政策の当面の課題についてのみならず中長期的課題に取り組むために必要なものです。
 機構が、我が国の労働政策の立案及びその効果的かつ効率的な推進に寄与し、もって労働者の福祉の増進と経済の発展に資することを目的とした独立の調査研究機関として、その機能をいっそう向上させつつ、存続することを強く求めます。

2007年11月13日

独立行政法人労働政策研究・研修機構の存続を求める研究者の会
(呼びかけ人略)
労働政策研究・研修機構は、主に雇用環境や労働条件などの労働問題を研究し、格差や貧困についても一般で問題になる前から実証的に明らかにし、社会政策・労働政策への提言を行ってきた。こうした研究は公営の研究機関であるからこそ可能だったのであって、その廃止は労働問題の実証的研究をないがしろにし、貧困や格差を隠蔽する行為である。
独法を「税金のムダ」と主張する人々は、独法の中に私たちの生活にとって重要な活動を行っている機関が少なくないことを知っているのだろうか。

マイナス面が目立つからつぶしてしまえ、というのは暴論である。
私も独法が現状のままでよいとは思っていないが、安易に統廃合を主張することは、結局のところ公共性の高い、国にしかできない(民間にはできない)業務を担う機関を消してしまいかねないことを認識して欲しい。

【関連リンク】
総務省行政評価局-独立行政法人評価-独立行政法人総覧・独立行政法人評価年報
独立行政法人 国民生活センター
独立行政法人 労働政策研究・研修機構
行政改革推進本部事務局ホームページ
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by mahounofuefuki | 2007-11-23 17:42