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原告団は最大限の譲歩をしたのに政府は官僚の面子に固執した

 薬害肝炎訴訟の和解協議で、政府側は原告団が求める「全員一律救済」を受け入れず、協議は決裂の見通しとなった。
 すでに多くのメディアが報じており、私からは改めて説明することはない。というより昨日から放心状態で、この問題について書く気力がないというのが正直なところだ。

 原告団は1人あたりの和解金の減額や、血液製剤投与を実証できる患者に限定した救済を提示するなど、最大限の譲歩を行った。しかし、政府は司法判断を口実に、肝炎ウィルスに汚染された血液製剤の投与時期によって患者を区分し、一部の患者だけに和解金を支払い、残りの患者には「基金」をもって「活動支援金」を支払うという、原告を馬鹿にした案を突き付けた。
 舛添厚生労働大臣は、昨日の記者会見で「基金」は「原告の皆様の裁量」に任せると発言した。カネだけ出して、後は丸投げ。「賠償金」でも「和解金」でもない根拠のないカネを受け取れるはずもない。

 要するに福田首相は、「国民」の生命を守る「国家の責務」よりも、「国家の無謬性」に固執する「官僚の論理」を優先したということだ。製薬会社と国家官僚と御用学者の合作によって引き起こされた薬害である以上、その最も重要な一角を占める国が責任を担うのは当然のことだが、首相にはそれが理解できないらしい。
 ハンセン病訴訟の時の小泉純一郎や中国残留孤児訴訟の時の安倍晋三は、曲がりなりにも「政治決断」によって行政の長としての最低限の仕事をした。しかし、福田にはそれすらなかった。

 今後も薬害肝炎をめぐる闘いは続く。なお、原告弁護団は、首相官邸のホームページの「ご意見募集」に一律救済を求めるメッセージを送るよう呼びかけている。ぜひとも対応してほしい。
 ご意見募集-首相官邸

【関連リンク】
Yahoo!ニュース-薬害問題
薬害C型肝炎訴訟「命の線引きが残った」-JANJAN
薬害肝炎訴訟リレーブログ B型・C型肝炎患者の早期全面救済を!:政府、全員一律救済を受け入れず
薬害肝炎訴訟リレーブログ B型・C型肝炎患者の早期全面救済を!:国の提案の問題点
薬害肝炎訴訟全国弁護団ホームページ
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by mahounofuefuki | 2007-12-21 12:49

「小沢一郎」をめぐる言説

自民・民主両党首会談以降の「大連立」をめぐる騒動は、日増しに情報戦の様相を呈している。
参院選直後の安倍続投劇や今国会冒頭の安倍退陣劇の時もそうだったが、政局が流動化している時のマスコミの報道ほどあてにならないものはなく、虚実不明の情報(というより噂)が飛び交っており、よほどの注意が必要だ。
ましてや今回の連立工作は、読売新聞の渡邉恒雄氏が「首謀者」とも「仲介者」とも言われており、メディアにおける言説はいつも以上にバイアスがかかっていると看做さなければならない(その「ナベツネ黒幕説」自体が何らかの意図をもって流されている可能性が高い)。

一連の騒動について、私の乏しいアンテナで見る限りではあるが、世論の評価はおおよそ2つに分かれている。簡単にいえば、
① 小沢一郎ははめられた。
② 小沢一郎は裏切った。
に大別できる。いずれも小沢氏が「主語」であり、彼の「真意」をどう見るかが評価の分かれ道なのである。

そもそも今回の連立工作を福田首相側が考えたのか、小沢氏側が考えたのか本当のところはわからず(というより両方の要素があるのだろうが)、小沢氏は(彼は昔からそうだが)一切説明をしていないので、誰もが戸惑っているように思われる。そうなると結局、小沢氏個人を信用するか、しないかというレベルの話になる。
その結果、小沢氏(民主党)への政権交代を望む人々は、願望も込めて「与党が野党を分断し、民主党を混乱させるために連立をもちかけた」と考えたがるし、小沢氏に「胡散臭さ」を感じている人々は、「やっぱり小沢は肝心なところで妥協する」と考える。

これは一般の人々だけではなく、識者も同様で、たとえば五十嵐仁の転成仁語は、「福田首相の仕掛けた『罠』に、小沢さんがはまってしまったようです」「この問題の勝者は、大連立構想を断った小沢さんではありません。この問題を持ち出して小沢さんの動揺を誘った福田さんです」と①の立場であり、世に倦む日日は、「小沢一郎の問題は、政治を単なる権力争奪のゲームだと考えているところであり、命を賭けて実現しようとする理念がないことである」「今度の小沢一郎の大連立協議の行動は、明らかに国民に嘘を言って有権者を騙していたことになる」と②の立場である。

ただ①にも②にも共通するのは、今回の騒動が自民党よりも民主党にダメージを与えたという1点である。
小沢氏の代表辞任説や前原誠司氏の「一本釣り」説までが流れ、焦点は民主党の動向に絞られている。客観的に見れば、政権安定のための連立を断られた福田首相に相当なダメージがあるはずだが、さにあらず現状はメディアの情報操作もあって、民主党の方が混乱に陥っているようである。

今後、政局がどうなるか、にわかブロガーの私には何とも言えないが(福田訪米までには何らかの決着があるだろう)、ただ1つ言えるのは、すみやかに衆議院を解散し、総選挙を実施するのが正道である、ということである。

【関連記事】
「新体制」の不気味

【関連リンク】
五十嵐仁の転成仁語 無事、手術が終わり、退院しました
世に倦む日日 小沢一郎の欺瞞と裏切り - オポチュニズムの政治と大連立協議
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by mahounofuefuki | 2007-11-04 13:06

「新体制」の不気味

福田康夫、小沢一郎両氏による自民・民主両党党首会談で、福田側が自民・民主・公明各党の「大連立」を打診した。
10月30日の1回目の会談前後から、さまざまな憶測が飛び交っていたが、自民党としては政局の安定を望む財界やアメリカ政府に配慮したのだろう。
民主党は2日夜の役員会で連立協議を受け入れない方針を決定したが(朝日新聞 2007/11/02 21:47)、もちろん自民党も拒否されるのは織り込み済みだろう。当面の目的は、野党間(特に民主党と国民新党)を疑心暗鬼にさせて分断し、民主党内を動揺させて小沢氏への不信をあおることにあり、さらに今後の政局で常に「大連立」論を意識させることにある。

現時点では詳細は不明なので、これ以上コメントできないが、1点だけ注意したいのは福田首相の会談後の発言である。
福田氏は記者団のインタビューに対して、民主党との連立について「大連立」という言葉を避け、「新体制」と述べていた(私はテレビで観た)。
彼が意識的に「新体制」という言葉を使ったかどうかわからないが、非常に不吉である。

もともと政界で「新体制」と言えば、1940年に近衛文麿を擁立した政界再編構想を指す。当時、軍部の台頭で発言力を失っていた既成政党の中から、名門華族で宮中や軍部にもパイプがある近衛を立てて新党を作ろうとする動きがあり、これが紆余曲折を経て「新体制」運動となった。この運動は日中戦争に行き詰っていた陸軍の政治工作に利用され、結局「バスに乗り遅れるな」と次々に政党は解散して「新体制」へ加わり、全既成政党を吸収して大政翼賛会が成立したのである。
要するに「新体制」とは、翼賛体制(オール与党体制)が作られる前提状況を意味するのである。

もし福田氏が無意識に言ったのならば、歴史への無知による不見識であるし、逆に意図的に言ったのならば、将来の翼賛体制を予告する非常に危険な発言である。
いずれにせよ、今後「大連立」による安定政権を作れという内外の圧力は強まるだろう。
連携の材料としては、すでに報道されている自衛隊海外派遣の恒久法や、あるいは年金不安を利用した消費税増税などが考えられるが、危険なことには変わりない。
民主党を妥協させないためには、「翼賛許すまじ」という世論を形成できるかどうかが勝負の分かれ目だろう。
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by mahounofuefuki | 2007-11-02 22:10

議会政治再生の試金石

安倍前首相の政権投げ出し以来、休会状態だった臨時国会は今日再開し、福田康夫新首相の所信表明演説が行われた。
第168回国会における福田内閣総理大臣所信表明演説 (首相官邸)
新内閣は前内閣の残務処理政権という性格をもつ以上、目新しい政策があるわけもなく、それを期待するのは無理というものであろう。
相変わらず「改革と安定した成長」を掲げ、格差問題についても「改革の方向性は変えずに、生じた問題には一つ一つきちんと処方箋を講じていく」とまるでわかっていない。先の参院選で主権者はその「改革」にノーを突きつけたのであり、「改革の方向性」を変えることを望んでいる。「改革」をやめない限り、格差問題の解決などありえないことを全く理解していない。

唯一、前内閣と決定的に違うのは日朝関係に対する姿勢である。
前首相が先月の所信表明で「すべての拉致被害者が帰国を果たすまで、鉄の意志で取り組」むと述べていたのに対し、福田首相は「すべての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現し、『不幸な過去』を清算して日朝国交正常化を図るべく、最大限の努力を行」うと、日朝国交正常化への取り組みを明言した。この点は強硬一点張りで無為無策だった前政権より、はるかに評価できる。

安倍政権は国会で強行採決を繰り返し、議会政治を破壊しつくした。衆参逆転状態の今、すみやかに衆議院を解散し総選挙を行うのが憲政の筋であるが、福田内閣にその意思はない。それならば、今国会では破壊された議会のルールを回復し、議論に時間をかけて、議会政治を再生してほしい。間違っても与野党が談合することなどあってはならない。
今国会は日本の議会政治が再生できるかどうかの試金石になるだろう。
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by mahounofuefuki | 2007-10-01 20:59

福田内閣発足

幕末の1860年、日米修好通商条約批准のため、徳川幕府はアメリカへ使節を送った。
いわゆる「万延元年遣米使節」である。
使節団の面々はアメリカの軍艦に乗艦して渡米したが、幕府はこれにオランダから購入した軍艦「咸臨丸」を随行させ、勝海舟ら日本人に操船させた。史上初の日本人の手による太平洋横断であった。
この咸臨丸に、若き日の福澤諭吉がいた。福澤はアメリカで、まず市民の大歓迎に驚き、次いで初めて見る馬車に驚き、そしてレディファーストの習慣に驚き、まるで「勝手のわからぬ家に」上がったばかりの新婚の「花嫁」のような心境を味わった。
そんな「驚き」の1つに、次のような出来事があった。

ところで私がふと胸に浮かんである人に聞いてみたのは外でない、今ワシントンの子孫はどうなっているかと尋ねたところが、その人の言うに、ワシントンの子孫には女があるはずだ、今どうしているか知らないが、何でも誰かの内室になっている様子だといかにも冷淡な答で、何とも思っておらぬ。これは不思議だ。もちろん私もアメリカは共和国、大統領は4年交代ということは百も承知のことながら、ワシントンの子孫といえば大変な者に違いないと思うたのは、こっちの脳中には、源頼朝、徳川家康というような考えがあって、ソレから割出して聞いたところが、今の通りの答に驚いて、これは不思議と思うたことは今でもよく覚えている。 (福澤諭吉『福翁自伝』岩波文庫、p.117より、一部漢字を仮名に改めた)

初代大統領ワシントンの子孫といえども、特別な社会的地位にいるわけではないという事実は、家柄を重視する封建社会への不満をもっていた福澤にはよほど新鮮に映ったようだ。
周知の通り、福澤は維新後、実力主義・能力主義による「立身出世」を奨励していく。欧米=世襲の否定という捉え方は、その後も長く日本人を縛っていくことになる。

実は、当時の福澤は知るよしもなかったが、第2代大統領ジョン・アダムズの息子ジョン・クインシー・アダムズは第6代大統領になっている。アメリカは独立後の早い時期に父子で大統領という例があったのである。
ちなみに、さらにその息子のチャールズ・アダムズは外交官、そのまた息子のヘンリー・ブルックス・アダムズは高名な歴史学者でハーバード大学の教師になっている。アダムズ家はアメリカ屈指の名門となっていた。
アメリカでは現代でもケネディ家やブッシュ家の例を挙げるまでもなく、家柄が大きくものを言う。
福澤の思いはまったくの「幻想」だったのである。

むしろ近代の日本の方こそ世襲が力をもたなかった。
伊藤博文から寺内正毅までの歴代首相はすべて爵位持ちの華族であったが、いずれも本人の「功績」による受爵で、「親の七光」は1人もいない(西園寺公望は旧公卿の出だが、彼の親は維新後むしろ失脚していた)。
明治憲法下の首相のうち、親も高官であったのは、皇族の東久邇宮稔彦を別とすれば、近衛文麿(父は貴族院議長の近衛篤麿)と東條英機(父は陸軍大将の東條英教)くらいである。
日本国憲法下では、鳩山一郎(父は衆議院議長の鳩山和夫)が例外で、1980年代までは、「家柄」よりも学歴や官歴の方が重要だった。

ところが1990年代になると様相が変わってくる。
その始まりは1991年に首相となった宮澤喜一(父は衆議院議員の宮澤裕)である。
宮澤退陣後、政権は自民党単独から連立へ変貌したが、以後の歴代首相は社会党出身の村山富市を除いて、すべて親も政治家だった「2世」や「3世」の議員である。
そして安倍晋三(祖父は岸信介)に至り、ついに「首相の孫」が首相となった。
さらにその安倍後継を争ったのは、やはり「首相の孫」の麻生太郎(祖父は吉田茂)と「首相の子」の福田康夫(父は福田赳夫)であった。

今日、福田康夫氏が第91代内閣総理大臣に指名された。憲政史上初の父子2代の首相就任である。
以上の経過からすれば、このことが近代日本の「美点」を失わせ、もはや特定の血縁グループからしか首相になれない時代へ向かわせる異常事態であることがわかるだろう。
現代日本は身分社会へと逆戻りしているように思える。

福田氏に対する疑念はそんな出自だけではない。
福田氏は小泉内閣の内閣官房長官在任中、アメリカのベーカー駐日大使(当時)と異常なほど頻繁に会い、アメリカ政府の小泉政権へのメッセンジャー役であった。小泉政権がアメリカ追従であったことは言うまでもない。さらに福田政権ではアメリカ共和党の傀儡政権になる危険性すらあるだろう。

一方、新内閣の陣容は、前政権の教育改悪を主導した山谷えり子氏や、拉致被害者支援にかこつけた右翼グループ言いなりの中山恭子氏ら首相補佐官を留任させ、防衛大臣には「軍事オタク」の石破茂氏を起用するなど、安倍政権と変わらないタカ派ぶりを示している。
また、竹中平蔵氏を継いで市場原理主義政策を推し進める太田弘子経済財政相も再任された。自民党3役には大蔵省出身の均衡財政論者の伊吹文明氏や消費税増税論者の谷垣禎一氏が起用されている。
これでは、歳出削減による社会福祉の切り捨てを続ける一方、消費税増税で庶民の負担を増やし、巨大企業に対する減税は拡大するという、今以上に最悪の財政政策を目指す可能性すらある。

福田政権は今後、年金不安を利用して、年金の財源にするという口実で、消費税増税を打ち出してくるだろう。基礎年金の税負担方式を公約にする民主党との連携の材料となるかもしれない。決して年金不安を煽る情報操作に惑わされないよう、注意しなければならない。
あくまでも、福田内閣は衆院解散までの「選挙管理内閣」でなければならない。
野党はどこまでも解散・総選挙の要求を貫いてほしい。
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by mahounofuefuki | 2007-09-25 22:10