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薬害C型肝炎被害者救済法の成立

 薬害C型肝炎被害者救済のための特措法が成立した。
 薬害C型肝炎をめぐる5つの訴訟の1審判決が出そろい、最も審理が先行していた大阪高裁での和解交渉が始まって以降の動きは、周知の通り急展開の連続であった。国の責任認定と被害者の一律救済を行うよう政治決断を迫る原告団に対し、福田内閣はこれを一度は足蹴にした。しかし、世論の反発を受けて与党が議員立法での解決を打ち出し、結局与野党共同提案で特措法が提出され、衆参両院での異例のスピード審議を経て、全会一致で成立した。

 法律は前文で「政府は、感染被害者の方々に甚大な被害が生じ、その被害の拡大を防止し得なかったことについての責任を認め、感染被害者及びその遺族の方々に心からおわびすべきである。さらに、今回の事件の反省を踏まえ、命の尊さを再認識し、医薬品による健康被害の再発防止に最善かつ最大の努力をしなければならない」と、薬害放置に対する政府の責任と被害者に対する謝罪、今後の薬害防止を明記した。
 これにより国は医薬品医療機器総合機構を通して被害者への給付金を拠出する。1人当たりの給付金は、肝炎に起因する肝硬変・肝臓がんの患者に4000万円、慢性肝炎患者に2000万円、肝炎ウィルスに感染するも未発症の患者に1200万円である。給付金の請求期限は法の施行から5年間と定められた。
 原告団・原告弁護団と政府は15日に和解合意書に調印するが、製薬会社との和解交渉は未だ進んでおらず、ましてや今回はC型肝炎のみの話であり、薬害肝炎問題そのものの終わりではなく、あくまでも一里塚にすぎない。

 今回の法律の正式名称は「特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法」とあるように、今次の訴訟の案件である「フィブリノゲン」と「第9因子製剤」に起因するC型肝炎のみが対象であって、他の医原性のC型肝炎やB型肝炎は含まれていない。また、給付金の請求期限が5年間で、それまでに薬害による肝炎感染を証明し、裁判所が被害者と認定しなければ補償を受けることができない。
 これらの件をもって原告団や弁護団に対する批判があるが、今回の訴訟そのものがこの2つの血液製剤による薬害を巡るものであるので、他の症例の解決についてまで原告団に負わせるのは酷だろう。むしろ今回の行動を機に、来年度末までの肝炎ウィルス検査の無料化と、来年度からのインターフェロン治療への公費助成制度を勝ち取った(朝日新聞2008/01/11 10:39など)ことを評価するべきだろう。
 今回の特措法を突破口にして、すべての薬害肝炎・医原肝炎の実態解明と責任追及、公的医療体制確立を目指す必要があるのは言うまでもない。今国会では与党と民主党がそれぞれ提出していた包括的な肝炎対策のための法律案は継続審議となるが、すぐに召集される通常国会で肝炎被害者・患者の声が届くよう強く望む。

 一連の薬害肝炎問題から私は次の点を学んだ。
 第1に、厚生労働省や製薬会社の無能・無反省ぶりはもはや「不治の病」である。彼らの患者軽視、安全性軽視、隠蔽体質は薬害HIVの時から何も変わっていない。今回の薬害肝炎では本来、汚染された血液製剤を認可・放置した当時の厚生官僚は刑事訴追に値する。個々の官僚の責任を問うことが必要だ。製薬会社に対しては外部からの監視を導入するべきだ。
 第2に、新聞やテレビのようなマスメディアの威力である。訴訟当初こそ大きく報道されることもあったが、次第にニュースに占める比重は低下し、原告団が請願や抗議行動を行っても報道の扱いは小さかった。それが大阪高裁の和解骨子案が出た前後から、俄然新聞やテレビのニュースのトップを飾るようになり、連日原告の女性たちが映し出されたことが世論の喚起につながった。マスメディアが大きく取り上げなければ、今回の和解は決してなかっただろう。
 一方で、報道が相変わらず感情的で、原告が泣き叫ぶ所ばかり映したことで、市井では原告に対する誹謗中傷や薬害肝炎そのものへの不正確な理解と偏見が少なからずあった。バッシングが不発だったのは同情論が圧倒したからだが、それも若くて美貌の原告が「悲劇のヒロイン」の役割を担わされた側面は否めず、気まぐれな大衆の「空気」の方向性によってはイラク人質事件のような事態もありえた。マスメディアの功罪は改めて検証しなければなるまい。

 以上のようにさまざまな問題が山積してはいるが、先月には一度は和解交渉の決裂寸前までいったことを考えれば、今日の薬害C型肝炎被害者救済法の成立をひとまずは喜びたい。

【関連リンク】
Yahoo!ニュース-薬害問題
衆法 第168回国会 23 特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法案(厚生労働委員長)
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
薬害肝炎訴訟 リレーブログ B型・C型肝炎患者の早期全面救済を!
薬害肝炎訴訟全国弁護団ホームページ
投与記録のある1000人以外の、「349万9000人」の思い-OhmyNews
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by mahounofuefuki | 2008-01-11 17:00

最低賃金法改正案・労働契約法案成立へ~民主党に贈る書

参議院厚生労働委員会は昨日(11月27日)、最低賃金法改正案労働契約法案を与党と民主党などの賛成多数で可決した。
両案は衆議院で与党と民主党が協議した修正案であり、参議院では参考人質疑こそ行ったものの十分な審議時間を得られぬまま議決となった。

昨日の労働契約法案の審議では、共産党の小池晃議員が、就業規則による労働条件変更の要件である「労働組合との協議」に「少数組合など」も含むとの答弁を厚労大臣から引き出したり(しんぶん赤旗 2007/11/28)、社民党の福島瑞穂議員が、就業規則の労働条件変更の権利は請求権であるとの答弁を労働基準局長から引き出すなどの成果もあったが(社会法の広場:就業規則による変更権は請求権!?を参照)、出来レースとなってしまった国会審議の大勢に影響はなく、マスメディアの多くも黙殺している。

一方、最低賃金法改正案の方では、共産党が全国最低賃金の創設(現行は地域別最低賃金のみ)や生計費による最低賃金算定などを盛り込んだ修正案を提出したが、共産・社民両党以外は反対し否決された。この共産党案の大半はもともと民主党が提出した対案の内容と共通するものだが、民主党は一顧だにせず、「裏切り」が改めて浮き彫りとなった。

貧困と格差、そして労働環境という現在の日本の「下流」がかかえる最も切実な課題において、民主党が「下流」の側に立たなかったことは非常に重要である。
メディアはイラク特措法廃止案の可決のニュースは大々的に報じているが、生活に密接な法案はほとんど報じない。そのために何も知らず民主党の「生活第一」という口先だけのスローガンを信じている人々は多いが、民主党のこのていたらくにもかかわらず「政権交代」に過剰な希望を付与するのは、「政権交代」があくまでも政策実現の「手段」であることを忘却していることを如実に示している。
信者が「自民党よりマシ」と勝手に思い込んでいても、「自民党と同じ」なのが実態なのである。

ついでに言えば、新テロ特措法も今月中に参院で審議入りしたことで、時間的にはますます衆院再議決による成立の公算が強くなった。民主党はまたしても防衛利権問題で利権構造の深部に切り込むことなく、守屋武昌の証言に依存した額賀財務大臣攻撃も与党側に容易に切り返されている始末である。
検察当局が一連の疑惑を守屋逮捕で幕引きする可能性は高く、そんな時こそ国会がしっかりと追及しなければならないのだが、野党第1党としての責務を果たしているとは言い難い。
自党の議員も関係しているからといって手を緩めては、それこそ「自民党と同じ」で自浄能力がないことになる。

権力と闘うには強い意思と権力側の狡猾さを凌駕する知恵がなくてはならないのだが、現在の民主党にはそれがない。
「現状維持」を望む中間層に「自民党と同じ」であるという「安心感」を与えるつもりだとしても、それでは本末転倒である。野党時代に「自民党と同じ」政党がいざ政権について「自民党と違う」政党になることなどありえない。「自民党よりひどい」可能性はあるが。

民主党には今一度、政局ゲームではなく、政治から疎外された人々の声を真摯に聞く原点に帰ってほしい。
「政権交代」至上主義者の人々も「不都合な真実」から目をそらさないでほしい。

【関連記事】
最低賃金法改正案・労働契約法案における民主党の妥協
労働契約法に関するリンク
最低賃金と生活保護-北海道新聞の記事より
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by mahounofuefuki | 2007-11-28 12:15

「改革」よりも「新法」よりも「悪法廃止」が先だ

数日前に元外務官僚の天木直人氏が、ブログで「廃止すべき法律は山ほどある」というエントリーを挙げておられた。
廃止すべき法律は山ほどある-[公式]天木直人のブログ
天木氏は、ほとんどの法律が「ろくな審議もされず、そしてマスコミに報道される事もなく、つぎつぎと成立する」現状を批判し、与党の議員は選挙活動ばかりで勉強せず、ただ官僚の作った法案に自動的に賛成するだけであること、野党の議員は多すぎる法案に対応できず、悪法でも知らずに通してしまうことを嘆いていた。

氏は改正建築基準法を例示していたが、改正派遣労働法や改正独占禁止法や国旗国歌法なども、事の重大性に気付かぬまま国会で十分な審議が行われずに成立してしまった法律だろう。現在、参議院で審議中の労働契約法案もまさに「ろくな審議もされず」に衆議院を通過し、成立の阻止は非常に厳しい情勢である。

マスメディアはすべての法案を報道することなどできないし、そんなことを誰も望んではいまい。主権者たる私たちも国会ごとに全部の法案をチェックするのは、よほどのヒマ人でもない限り無理である。
新テロ特措法案のように条文も少なく、問題がわかりやすいと報道も世論も注目するが、一見何も問題がないないように読める法案はスルーしがちである。
官僚は重大な事を何でもないように記述する技術に長けているため、地味で目立たない法律の中にとんでもない「悪法」が潜んでいることも珍しくない。

この国では、一度決まってしまうと、それを所与の条件として受け入れてしまい、戻すことをあきらめてしまいがちである。
与党も野党も次々と新しい「改革」を打ち出すが、現在存在する「悪法」の廃止を訴えることをしない。
先の参院選で、私は共産党や社民党が教育基本法の「復旧」を前面に出して訴えると思っていたのだが、党のビラやパンフレットにはほとんど触れられていなかった。
国民新党は郵政民営化の中止を訴え、今国会では郵政民営化凍結法案を民主・社民両党とともに参院に提出したが、民主党が参院の議事運営を握っているのもかかわらず、未だ議事に付託されていない。つまり民主党は本気で郵政民営化の凍結を考えていないのである。
その民主党は、「法案の嵐」と称して、新法案を次々と繰りだしているが、現行法の全面的な廃止案は「イラク特措法廃止案」くらいである。

しかし、現在の日本では新しく何かやるよりも、まず「今そこにある悪法」を廃止することの方が先ではないか。
特に小泉・安倍政権が強行した法律、前記の改悪教育基本法や国民投票法や個人情報保護法や金持ち優遇税制に関する税法や規制緩和された労働法制などなど、「元に戻す」べき法律が山ほどある。
「改革」よりも「新法」よりも「悪法廃止」による「復旧」こそが必要なのではないか。

「復旧」というと保守主義的であるが、この数年に自公政権が強行した「改悪」をとりあえず中止しない限り、新たな「改革」など無意味である。
多くの人々は最近10年間で所得を減らし、資産を減らし、社会保障を削られ、労働時間は長くなり、過酷な競争を強いられ、身も心もボロボロにされている。「昔の方がよかった」と思っている。
「構造改革」のせいで生活が悪くなる一方なのだから、それを「復旧」することは決して後退ではない

野党は次期総選挙で「真の改革」などと言わず、「今ある悪法の撤廃」を前面に押し出すべきではないか。
そうすることが「一度決まったことは覆らない」という大衆意識を変える契機となり、「一度決まってもあきらめない」主権者を形成する前提となるように私は思う。
保守派を切り崩す方法論としても好都合だろう。
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by mahounofuefuki | 2007-11-24 14:30

新テロ特措法案のタイムスケジュール及び自衛官の自殺増加について

新テロ特措法案が衆議院テロ対策特別委員会で可決された。
明日(13日)の衆議院本会議でも与党の賛成多数により可決され、審議の舞台は参議院へ移る。
各種報道によれば、参院第1党の民主党は、参院ではイラク特措法廃止案の審議を優先し、新テロ特措法案の審議を遅らせて「時間切れ」を目指すという。

実は衆議院を通過したことで、政府・与党があくまで新テロ特措法案の成立に固執するのならば、タイムスケジュール上は十分可能になってしまった。
なぜか。今国会の会期は先に12月15日まで延長になったが、もしそれまでに参議院で法案が議決されなければ、審議未了で廃案となる。政府・与党がここで断念すればそれでよしだが、その可能性は限りなく低い。国会法第12条2項により、臨時国会は2度まで延長が認められており、今国会の会期はあと1度延長が可能だからだ。

憲法第59条2項により、参議院で否決された法案は、衆議院で3分の2以上の賛成で再可決すれば成立する。
現在、与党は衆議院で3分の2以上の議席を占めており、再議決に持ち込めば新テロ特措法案は成立する。再議決のためには「参議院の否決」が必要で、参議院が採決しない限り可決も否決もないから、参議院がねばって採決を延ばせば衆議院での再議決は防げるかというと、さにあらず。憲法第59条4項の「60日規定」があるからだ。

憲法第59条4項は「参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて60日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる」と定めている。つまり、明日(11月13日)衆議院を通過した場合、60日後の1月12日以降は、たとえ参議院が法案を採決せずとも「否決」とみなして衆議院で再議決が可能なのである。
報道では再議決の場合、野党は参院で内閣問責決議を行うとしているが、衆院の内閣不信任決議とは異なり、首相の衆院解散権を拘束するものではない。そして厚顔無恥な福田首相は開き直って問責を無視し、そのまま臨時国会は終了するだろう。

国会法は第2条で、1月中の通常国会招集を定めている。つまり今国会は最長でも1月中旬までしか延長できない(当たり前だが通常国会の前に臨時国会が終わっていなければならない)。そこから逆算すれば11月中旬までに衆院通過することが、政府・与党にとって是が非でも必要だったのである。
与党が今日の委員会採決、明日の本会議採決に踏み切ったのは、何も首相のアメリカ訪問に合わせただけではないのだ(その辺も込みで訪米日程が決まったのだろう)。

こうなると返す返すも「小沢騒動」がいかに民主党にとって失点であったかがわかる。
もし「小沢騒動」がなければ、世人の目は一斉に防衛省汚職へ向いていたはずだ。この問題は攻めるに事欠かない。守屋武昌へのあの手この手の接待攻勢など、大衆好みの話題もたくさんある。世論は激高し、政府・与党はテロ特措法どころではなかったかもしれない。
しかし、小沢一郎をめぐる一連の「騒動」のインパクトがあまりに強く、山田洋行の元専務が逮捕されたというニュースも霞んでしまった。「騒動」の間に国会の会期延長もすんなり決まり(国会法第13条により、会期延長は衆議院の議決が優先される)、野党は十分に抵抗できなかった。

しかも、最低賃金法改正案と労働契約法案で、与党と民主党の修正協議という前例もできてしまった
福田政権は今後、通常国会でも予算案では憲法第60条2項の「30日規定」を用いて乗り切り、他の法案は個別に民主党と修正協議を行い、衆院解散を先延ばしするだろう。綱渡りの議会運営が可能なのは「衆院の3分の2」という「小泉の遺産」のためであり、どうやっても次の選挙では自民党は現有議席を減らすからだ。
衆院解散に追い込むには野党が結束して、政策協議やら修正協議など断固拒絶し、一切与党とは妥協せず、与党がもうだめだと政権を投げ出すくらいまで追い詰めなければならないのだが、果たして小沢一郎氏にその意思があるのかまったく疑問だ。

以上のように先行きは暗いが、参議院で野党がテロ特措法やイラク特措法の問題性を浮き彫りにし、さらに防衛省の汚職を攻めることができれば、まだ逆転勝利はあるとも言える。
今日発表されたNHKの世論調査では、特措法にについて「賛成」よりも「反対」よりも「どちらともいえない」が最も多く、総じて関心が薄いことが明らかになっている。この無関心状況から「テロ特措法はおかしいんじゃないか?」という「空気」を作り出せるかが、勝負の分かれ目だろう。

ところで、そのテロ特措法の基盤を揺るがすようなニュースがある。北海道新聞(2007/11/12 07:22)より。
*漢数字をアラビア数字に変換した。
2004-06年度で、自殺した自衛官が毎年度100人に達していることが11日、防衛省の調べで分かった。05、06の両年度は共に101人と過去最多で、07年度も半年間(4-9月)で53人とこれらを上回るペース。ストレスや部隊内でのいじめを背景に挙げる声もあるが、同省は原因は不明とする一方で「自殺者増は深刻。カウンセリングの充実を図りたい」としている。
 
 同省人事教育局によると、06年度の自殺自衛官は陸自65人(前年度比1人増)、海自19人(同4人増)、空自9人(同5人減)、事務官8人(増減なし)。過去10年間では、01年度の64人が最少で、04年度に初めて100人となり、3けたに突入した。10万人当たりの自殺者は06年度で38.3人。人事院がまとめた国家公務員の17.7人(05年度)の2倍強に当たる。

 原因をみると、同省の06年度調査で「その他・不明」が63人、「借財」23人、「家庭の悩み」11人と続く。

 自衛隊に詳しいジャーナリスト三宅勝久さんは、自殺の背景として「いじめや借金苦も後を絶たず、組織の閉鎖性も要因。海外派遣、テロ関連の警備強化もストレス増を後押ししている」と指摘。04年-06年7月にイラクへ派遣された陸空両自衛官のうち、帰国後の自殺者は7人を超す。(後略)
私は以前ある元自衛隊員から、海外派遣が増え、「テロ対策」の強化や日米軍事一体化が進んだこの数年、自衛隊の訓練が厳しくなり、隊内のいじめが激しくなって、自殺者が増加していると聞いたことがある。
また、2003年7月に衆院厚生労働委員会で、共産党の小沢和秋議員が、自衛官の自殺者が1993~2003年の10年間で601人に達していることを取り上げている(衆議院会議録 厚生労働委員会 第156回第25号)。

この記事はその後も自殺者が増加し続けていることを示しており、防衛省が何ら実効的な対策を取って来なかったことも証明している。
自衛隊に限らず、一般に自殺は「事故死」として処理することも多いので、もっと多い可能性もある。参議院の審議では、是非とも自衛官の自殺問題を取り上げ、自衛隊がとうてい海外派遣に耐えられる状況にないことを明らかにして欲しい。


《追記 2007/11/13》

社民党の照屋寛徳衆院議員の質問主意書に対する政府の答弁書によると、インド洋とイラクに派遣した自衛隊の自殺者は16人で、派遣全隊員の0.08%に相当するそうだ(毎日新聞 2007/11/13 16:39)。
防衛省は派遣と自殺の因果関係を認めていないようだが、内地よりも過酷な環境が自殺者を多くしているのは間違いない。
この問題を取り上げた照屋氏に敬意を表す。


《追記 2007/11/15》

昨日、「再議決可能になるのは1月11日」と「修正」追記したが、専門家に問い合わせたところ、本文で述べたとおり、「1月12日以降」で間違いないそうだ。二転三転して混乱したことをお詫び申し上げます。


【関連リンク】
日本国憲法-法庫
国会法-法庫
NHK調査 内閣支持率54%-NHKニュース
衆議院-会議録
自衛官が3年連続、年間100人超の自殺者-オーマイニュース
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by mahounofuefuki | 2007-11-12 22:54

最低賃金法改正案・労働契約法案における民主党の妥協

重大なことに限って、私たちの知らないところでいつのまにか決まってしまうものである。
昨日(11月8日)、最低賃金法改正案と労働契約法案が衆議院本会議で、与党と民主党などの賛成により可決され、参議院へ送付された。
もともとこの2法案と労働基準法改正案の3点セットは、前々回の国会で安倍内閣が提出して以来審議が継続していたが、「大連立」をめぐる騒動の陰で政府と民主党が修正協議を行い、労基法こそ妥結しなかったが、残りの2法案は妥協が成立した。
2法案とも民主党は対案を議員立法で提出していたが、修正により撤回した。

実のところ私は衆参の「ねじれ」のために、労働関係3案のうち少なくとも最低賃金法以外の2案は今国会でも継続審議となり、先送りされるものと思っていた。前にブログで労働契約法案に関するリンクを作成したが、本格審議はまだ先と考え、少しずつ材料を揃えて準備してからブログで書くつもりだった。
ところが、対案まで出していた民主党が衆院の段階であっさり妥協し、今国会の会期延長も決まったため、成立が確実になってしまった。私の見通しは完全に甘かったのである。
そんなわけで後追いになってしまったが、成立前に触れておかないと悔いが残るので、今日ブログでこの問題を書くことにした。

まず、最低賃金法改正案であるが、これは現行の最低賃金が生活保護給付よりも低額である「逆転現象」を是正するために出されたものである。
私の手元には2002年のデータしかないのだが、たとえば東京23区の場合、1か月あたりの最低賃金額は12万3,520円(月間総労働時間が平均場合)なのに対し、標準世帯の生活保護給付額は16万3,970円で、最低賃金より生活保護給付の方が約4万円も高い(橘木俊詔 『格差社会 何が問題なのか』 岩波書店、2006年)。しかも、実際は法定最低賃金がまったく守られておらず、最低賃金以下の賃金で働いている人々が大勢いる。

そこで政府案では第9条に「労働者の生計費を考慮するに当たっては、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする」という規定が追加されたが、これは読みようによっては最低賃金を生活保護に合わせて引き上げるのではなく、逆に生活保護給付を引き下げることで「整合性」を保つ可能性があることを意味する。

一方、民主党の当初案では、現行の地域別最低賃金に加えて、全国最低賃金を定め、それら最低賃金の決定にあたっては「労働者の生計費および賃金並びに通常の事業の賃金支払能力」を算定基準とする現行法を改め、「労働者及びその家族の生計費を基本としてさだめられなければならない」と、生計に必要なだけの金額を最低賃金とすることを義務付けていた。
もともと民主党は先の参院選で最低賃金を時間額1,000円に引き上げることを主張しており、当初案はその公約に一応沿った形であった。

ところが、民主党は、政府案の「生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする」という条文に「労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう」という文言を加えるだけで、政府に妥協してしまい、全国最低賃金も生計費による算定も撤回してしまった
政府が来年予定している生活保護給付の切り下げを考えると、これでは最低賃金の実質的な引き上げは望めない。

それでも最低賃金法の方は、罰則が強化されただけでも現状よりましになったが、より問題なのは労働契約法案である。
これについては以下の記事が問題を端的に伝えている。
「会社やりたい放題」の労働契約法案 働く女性の全国センターが廃案訴え-JanJan
*太字は引用者による。

(前略)労働契約法案は、「就業規則による労働条件の不利益変更がいつでも可能」という制度が導入され、企業が一方的に定めることを慣行としてきた就業規則を「労働契約」と位置付け、法的な規範を与えられる。

 就業規則は労基法89条により、就業時間、賃金、退職事項、服務規程、出向、配転、懲戒など広範な労働者の権利義務全般について規定するものである。この就業規則は、「労働組合または労働者の過半数を代表する者の意見を聞く」必要はあるが、あくまで意見を聞けばよく、仮に反対意見があったとしても、企業側が一方的に作成したものを労基署に届け出るだけでよい。

 政府案は、第9条で労働条件の不利益変更を禁止しつつも、第10条の但し書きで、(1)労働者の受ける不利益の程度、(2)労働条件の変更の必要性、(3)変更後の就業規則の内容の相当性、(4)労働組合等との交渉の状況、(5)その他の就業規則の変更に係る事情に照らして「合理的」であれば変更できるとされている。

 民主党の対案においても、第5条では「合理的な労働条件の定めがあり、労働者に明示すれば使用者との合意を推定する」、第23条では、「使用者の権利の必要性と、労働契約の内容が合理的であれば変更可能」と謳っている。この場合の「合理的」が、労働者の意志や労働実態に沿ったものになるとは考えにくく、使用者にとっての解釈で安易に使われる可能性が高い。ACW2では労働契約法は「会社やりたい放題法案」ではないかと訴えている。(後略)
*注 ACW2=働く女性の全国センター
要するに政府案も民主党案も、就業規則の変更で会社側が一方的に労働条件を変えることができるのである。最も重要な要素で当初から与野党に違いはないのだから、当然妥協しやすい。結局労働契約を「就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結する」という規定を加えただけで(共同通信 2007/11/07 18:10)、衆院を通過してしまった。

私が注目したいのは次の2点である。
第1に、この2法案を参院ではなく衆院で修正し、妥協したことである。
衆院は現在与党が圧倒的多数を占めており、当然政府案が可決される。しかし、参院では与党は過半数に届かず、修正なしには通らない。つまり民主党は仮に与党との協議に応じて修正を図るにしても、野党が主導権を握る参院に送付されてからでも遅くはないのである。その方が政府・与党に対して優位に立てる。
ところが民主党は衆院で妥協して政府と修正案を作り、採決では与党とともに賛成した(共産党は2法案とも反対し、社民党は最低賃金法改正案のみ賛成した)。これは民主党による与党への「サービス」と言わざるをえない。野党を分断するものであり、民主党は自ら国会での野党共闘の枠組みを壊しているのである。
(ちなみに今日成立した被災者支援法の場合は、与野党共同の議員立法でまず参院に提出され、共産党や社民党も修正に加わって全会一致を得ており、野党共闘を壊して政府立法に妥協しただけの労働2法案とはまったく異なる。)

第2に、労働基準法改正案だけは与党側と妥協しなかったことである。
政府が提出した労基法改正案では、時間外労働が1か月80時間超の場合、50%以上の割増賃金の支払いを定めているが、残業80時間超というのは過労死認定基準であり、民主党の支持母体である連合は、労働時間にかかわらず残業の割増賃金を50%以上に引き上げるよう求めている。
民主党は連合に配慮して労基法では政府に妥協しなかったのだが、逆に言えば、契約社員や派遣社員やパートタイマーにとって死活問題である最低賃金法や労働契約法では政府に妥協したのに、大企業の正社員の要求には配慮したことになる。
残業代の割増率がどうのと言えるのは、きちんと残業代を支払っている企業(たいていは大企業)だけの話であって、そもそも「サービス残業」を強いられている人々にとっては割増率の増減どころではない。連合は公務員と大企業の正社員を中心とする労組であり、現在全労働者の3分の1を占める非正社員の声はほとんど反映していない。
こんな状況で非正社員層が民主党を支持するだろうか。

「小沢騒動」は民主党が「大連立」を拒否して終息したことになっているが、実際はすでに自公政権と民主党の政策協調が始まっているのである。
「小沢のいる民主党」の実態はこんなものである。民主党に野党共闘の維持と政権交代を求めるなら、小沢氏の代表留任にこだわる必要などなかったことがこれで明らかだろう。

【関連記事】
労働契約法に関するリンク
「小沢一郎のいない民主党」は不安ですか?

【関連リンク】
衆議院-議案
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by mahounofuefuki | 2007-11-09 18:01

「小沢一郎のいない民主党」は不安ですか?

民主党の小沢一郎代表が辞意を撤回し、代表留任を表明した。
正直、この茶番についてブログに書く気力があまりない。あきれてものも言えないからだ。
(状況はまったく違うがなんとなく「加藤の乱」を思い出した。)

私は2回目の党首会談が行われた11月2日のブログに、福田側が連立協議をもちかけたのは「野党間を疑心暗鬼にさせて分断し、民主党内を動揺させて小沢氏への不信をあおる」ためだと推測した。その推測は正しく、民主党は動揺し、他の野党からは非難の声が上がった。
その後、11月4日昼過ぎに書いたブログで私は、一連の騒動に対する世論が「小沢ははめられた」と「小沢は裏切った」に二分されていると分析した。その時点では私はどちらが正しいか判断せず、ただいずれにせよ民主党は相当なダメージを受けたとだけ指摘した。

ところが、その日の午後、小沢氏は突然辞意を表明し、一連の経過について自らの口から説明した。そこで彼ははっきりと「あえて民主党が政権の一翼を担」うつもりだったと連立の意図をもっていたことを認めたのである(朝日新聞 2007/11/04 18:48による)。
これは参院選前からの「政権交代」「与党との対決」という公約を破棄したも同然の発言であり、私はその夜のブログで「主権者を裏切ったと言われても仕方ない」と批判した。

私は誰もが小沢氏の「裏切り」に怒るだろうと思っていた。
ところが市井でもネットでも、特に「政権交代」とか「野党共闘」とか言っている人ほど、小沢氏に寛容で、民主党の幹部たちと同様、辞めないで欲しいと追いすがっていたのである。
なぜ主権者を欺いた彼を許せるのか? 「小沢のいない民主党」がそんなに不安なのか? 
実際は小沢などいなくても政権交代は可能だと私は思うのだが、そう思わない人々のほうが多いらしい。私には理解できなかった。
そして小沢氏は一部の声の大きい人々に応えて、おざなりの謝罪だけで復帰した。
会談の「仲介者」の名をわざとぼかすという、陰謀説を好む人々へのサービスまで加えて。

これでもう今後、民主党内で小沢氏に意見できる者がいなくなってしまった。それぞれの議員の選挙事情がからむ「大連立」にはさすがに党を挙げて反対したが、個別の政策で小沢氏が与党に妥協しても「辞任カード」を出されたら何も言えまい。
(ちなみに大きく報道されていないが、民主党は昨日、最低賃金法改正案と労働契約法案について与党と妥協した。)

小沢政権のもとで消費税増税や自衛隊海外派遣の恒久化が行われ、今日のことを後悔する日が来ないことを祈るばかりである。

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by mahounofuefuki | 2007-11-07 22:41

小沢一郎は自爆した

民主党の小沢一郎代表が辞意を表明した。
政界では一寸先は闇である。私が前の記事を書きあげたころ、すでに小沢氏は辞表を出し、党役員が慰留していたのである。これだから政局問題はブログで描きにくい(苦笑)。福田訪米までには何らかの決着があるだろう、なんて書いたが、こんなに早く小沢氏が投げ出すとは正直予想外である。

しかし、小沢氏の記者会見での発言は笑えない内容である。
曰く、福田首相が連立と引き換えに新テロ特措法案の断念を決断した。曰く、自民党が圧倒的多数を占める衆院で民主党案を通すためには政策協議が必要だ。曰く、民主党はいまだ力量不足で次期衆院選の勝利は厳しい。

これでは主権者を裏切ったと言われても仕方ない
今まで散々「政権交代」を訴え、今国会では参院で内閣問責決議を行ってでも衆院解散に追い込むという話はどこへ行ったのか。
守屋問題や給油転用問題などで与党を追い込めば、取引などせずともテロ特措法は通らない。民主党に投票した人々の多くは、まず自公政権の打倒を望んでいるのであって、自民党と組んで中途半端に妥協した「政策の実現」など望んではいない。次期衆院選はどうやっても自民党は議席を減らす(コイズミの郵政選挙のような「奇術」はそうそう出来るものではない)。
つまり、客観的情勢は圧倒的に民主党有利なのである。
それにもかかわらず福田の口車に乗って、連立工作に乗っかってしまうとは、よほどの個人的な「弱み」でも握られたのではないか?と邪推せざるをえない。

民主党は「にせメール」問題以上の大打撃を受けた。これで前回民主党に投票した浮動票は離れていくだろう。参院選で自民党が大敗した喜びより、共産党の議席が減少した危機感の方が強かった私は、さほどショックを受けていないが、「政権交代」に夢を賭けている人々は困っていることだろう。
民主党が傷口を最小限に抑えたかったら、自民党に切り崩される前に、すみやかに小沢氏1人を反党行為の罪で追放し、「衆院解散、政権奪取」を全党で再確認して結束を固めるしかないのだが、この期に及んでも執行部が慰留を続けている現状では無理だろう。そもそも小沢氏のほかに寄り合い所帯を仕切れるような人はいないのだから。

一連の茶番は小沢の「自爆」としか言いようがない。
安倍辞任に匹敵する無責任と言わざるを得ない。

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「小沢一郎」をめぐる言説
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by mahounofuefuki | 2007-11-04 20:59

「小沢一郎」をめぐる言説

自民・民主両党首会談以降の「大連立」をめぐる騒動は、日増しに情報戦の様相を呈している。
参院選直後の安倍続投劇や今国会冒頭の安倍退陣劇の時もそうだったが、政局が流動化している時のマスコミの報道ほどあてにならないものはなく、虚実不明の情報(というより噂)が飛び交っており、よほどの注意が必要だ。
ましてや今回の連立工作は、読売新聞の渡邉恒雄氏が「首謀者」とも「仲介者」とも言われており、メディアにおける言説はいつも以上にバイアスがかかっていると看做さなければならない(その「ナベツネ黒幕説」自体が何らかの意図をもって流されている可能性が高い)。

一連の騒動について、私の乏しいアンテナで見る限りではあるが、世論の評価はおおよそ2つに分かれている。簡単にいえば、
① 小沢一郎ははめられた。
② 小沢一郎は裏切った。
に大別できる。いずれも小沢氏が「主語」であり、彼の「真意」をどう見るかが評価の分かれ道なのである。

そもそも今回の連立工作を福田首相側が考えたのか、小沢氏側が考えたのか本当のところはわからず(というより両方の要素があるのだろうが)、小沢氏は(彼は昔からそうだが)一切説明をしていないので、誰もが戸惑っているように思われる。そうなると結局、小沢氏個人を信用するか、しないかというレベルの話になる。
その結果、小沢氏(民主党)への政権交代を望む人々は、願望も込めて「与党が野党を分断し、民主党を混乱させるために連立をもちかけた」と考えたがるし、小沢氏に「胡散臭さ」を感じている人々は、「やっぱり小沢は肝心なところで妥協する」と考える。

これは一般の人々だけではなく、識者も同様で、たとえば五十嵐仁の転成仁語は、「福田首相の仕掛けた『罠』に、小沢さんがはまってしまったようです」「この問題の勝者は、大連立構想を断った小沢さんではありません。この問題を持ち出して小沢さんの動揺を誘った福田さんです」と①の立場であり、世に倦む日日は、「小沢一郎の問題は、政治を単なる権力争奪のゲームだと考えているところであり、命を賭けて実現しようとする理念がないことである」「今度の小沢一郎の大連立協議の行動は、明らかに国民に嘘を言って有権者を騙していたことになる」と②の立場である。

ただ①にも②にも共通するのは、今回の騒動が自民党よりも民主党にダメージを与えたという1点である。
小沢氏の代表辞任説や前原誠司氏の「一本釣り」説までが流れ、焦点は民主党の動向に絞られている。客観的に見れば、政権安定のための連立を断られた福田首相に相当なダメージがあるはずだが、さにあらず現状はメディアの情報操作もあって、民主党の方が混乱に陥っているようである。

今後、政局がどうなるか、にわかブロガーの私には何とも言えないが(福田訪米までには何らかの決着があるだろう)、ただ1つ言えるのは、すみやかに衆議院を解散し、総選挙を実施するのが正道である、ということである。

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五十嵐仁の転成仁語 無事、手術が終わり、退院しました
世に倦む日日 小沢一郎の欺瞞と裏切り - オポチュニズムの政治と大連立協議
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by mahounofuefuki | 2007-11-04 13:06

「新体制」の不気味

福田康夫、小沢一郎両氏による自民・民主両党党首会談で、福田側が自民・民主・公明各党の「大連立」を打診した。
10月30日の1回目の会談前後から、さまざまな憶測が飛び交っていたが、自民党としては政局の安定を望む財界やアメリカ政府に配慮したのだろう。
民主党は2日夜の役員会で連立協議を受け入れない方針を決定したが(朝日新聞 2007/11/02 21:47)、もちろん自民党も拒否されるのは織り込み済みだろう。当面の目的は、野党間(特に民主党と国民新党)を疑心暗鬼にさせて分断し、民主党内を動揺させて小沢氏への不信をあおることにあり、さらに今後の政局で常に「大連立」論を意識させることにある。

現時点では詳細は不明なので、これ以上コメントできないが、1点だけ注意したいのは福田首相の会談後の発言である。
福田氏は記者団のインタビューに対して、民主党との連立について「大連立」という言葉を避け、「新体制」と述べていた(私はテレビで観た)。
彼が意識的に「新体制」という言葉を使ったかどうかわからないが、非常に不吉である。

もともと政界で「新体制」と言えば、1940年に近衛文麿を擁立した政界再編構想を指す。当時、軍部の台頭で発言力を失っていた既成政党の中から、名門華族で宮中や軍部にもパイプがある近衛を立てて新党を作ろうとする動きがあり、これが紆余曲折を経て「新体制」運動となった。この運動は日中戦争に行き詰っていた陸軍の政治工作に利用され、結局「バスに乗り遅れるな」と次々に政党は解散して「新体制」へ加わり、全既成政党を吸収して大政翼賛会が成立したのである。
要するに「新体制」とは、翼賛体制(オール与党体制)が作られる前提状況を意味するのである。

もし福田氏が無意識に言ったのならば、歴史への無知による不見識であるし、逆に意図的に言ったのならば、将来の翼賛体制を予告する非常に危険な発言である。
いずれにせよ、今後「大連立」による安定政権を作れという内外の圧力は強まるだろう。
連携の材料としては、すでに報道されている自衛隊海外派遣の恒久法や、あるいは年金不安を利用した消費税増税などが考えられるが、危険なことには変わりない。
民主党を妥協させないためには、「翼賛許すまじ」という世論を形成できるかどうかが勝負の分かれ目だろう。
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by mahounofuefuki | 2007-11-02 22:10

新テロ特措法案

政府は17日、新テロ特措法案(正式名称「テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法案」)を閣議決定し、衆議院に提出した。
衆議院のホームページにはまだ議案本文は掲載されていないので、正確なところは不明だが、各新聞報道によれば、現行のテロ特措法との主な相違点は次の通り。

①現行法の自衛隊の活動内容から「協力支援活動」「捜索救助活動」「被災者救援活動」を削除し、新法案ではインド洋での「海上阻止活動」に参加する各国の艦船への給油・給水活動のみを活動内容としている。
②現行法では活動開始から20日以内に国会の事後承認を必要とする規定があるが、新法案では削除された。
③新法案では特措法の有効期間は施行後1年である。

給油・給水を何よりも優先しているところに、現在の自衛隊の活動の本質が表れている。
要するにアメリカなどから捜索や救援といった人的支援はさして期待されておらず、気前よくタダで燃料と水をもらえることしか期待されていないのである。こんなものに多額の税金を投入するメリットなど一般の人々にはない。
しかも国会の事後承認規定を削除したのは、野党が参議院を握る状況に対応した露骨な国会軽視であり、とうてい容認できない。

政府が新テロ特措法案を用意する一方で、現行法が11月1日で期限切れになるため、インド洋の海上自衛隊は撤退準備に入るようだ。以下、読売新聞(2007/10/18 03:01)より。

 政府は17日、テロ対策特別措置法に基づき、インド洋で給油活動をしている海上自衛隊の艦船を同法が期限切れとなる11月1日の翌2日から撤収させる方針を決めた。
 現在、インド洋で活動に従事している補給艦「ときわ」と護衛艦「きりさめ」は、10月27日に最後の給油を行い、約3週間かけて帰国する。
 政府は当初、撤収後も、早期に活動を再開させる観点から、他国艦船との交流や演習などの名目で海自艦船を周辺海域にとどめることも検討した。だが、17日に閣議決定した新テロ対策特別措置法案の成立のメドが立っていないことから、撤収と帰国はやむを得ないと判断した。
 政府は撤収方針を決めたことを受け、これまで燃料を提供した実績のある米、英、パキスタンなど11か国に対し、各国駐在大使など外交ルートを通じて、一時撤収と早期の新法案成立を目指す方針について説明する。
この撤退を「一時撤収」にしてはならない。あくまでも全面撤退でなければならない。


(追記 2007/10/30)

議案が衆議院のHPにアップされていたので、リンクを張っておく。
第一六八回 閣第六号 テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法案
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by mahounofuefuki | 2007-10-18 11:23