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黒字だった公立病院が民間委託で赤字になった上に公費負担も激増

 「世間」一般のイメージとして「官」=非効率、「民」=効率というイメージが流布し、行政の「無駄遣い」削減には民営化や民間資本の活用が必要であるという言説が後を絶たないが、そうした一般的なイメージの再考を迫るニュースを東京新聞が報じている。

 東京新聞:民活病院 青息 コスト減のはずが・・・赤字(2008/11/12朝刊)*web魚拓
 http://s03.megalodon.jp/2008-1112-1017-44/www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2008111202000079.html
 民間資本を活用して公共施設を建設、運営する「PFI方式」を導入した公共病院が、経営難や赤字に陥っている。(中略)

 医療センターは、黒字だった旧市民病院を移転新築する形で、大手ゼネコン・大林組が全額出資するSPCが建設し、2006年10月にオープンした。30年分の金利99億円などを含めた総整備費は244億円。

 市が医療業務を担い、SPCが保守管理や清掃、警備、病院給食などを受託している。30後に市が施設の無償譲渡を受ける契約で、市は直接経営と比べ68億円の節約になると試算していた。

 だが、「新築となって上がる」と見込んでいた病床利用率が横ばいにとどまったため、増えた減価償却費を収入で補えず、07年度に27億円の赤字を計上。一方、SPCに委託し、市が税金から支払う保守管理や清掃などの年間費用は、旧病院時代の6億6千万円から、15億4千万円に膨らんだ。(後略)

 要するに、黒字だった公立病院が、医療業務を除く施設管理等を民間委託したところ、かえって赤字になってしまい、さらに委託した業務への投入税金も倍以上になってしまったということである。この事例の場合、赤字そのものは病床利用率の見通しのミスに起因するようなので、民間委託のせいとは必ずしも言えないが、委託業務に投入する税金が完全公営時代の倍以上に膨れ上がったのは、間違いなく民間委託に起因する。事実は小説より奇なり。「官」よりも「民」にやらせた方がコスト増になったのである。

 記事を読む限り、今回の場合は病院施設の建設自体が大手ゼネコンへの利益誘導であり、受託した特別目的会社も当該ゼネコンの丸抱え、整備費は30年という長期の割賦払い、もちろん金利も税金で支払われる。これでは地方債を使った方がましじゃないのかとさえ思うのだが、民間委託がかえって自治体財政を圧迫しているという事例の存在は重い。大企業への利益誘導のために医療が食い物にされたと言っても過言ではないだろう。まさに「民による無駄遣い」である。

 同記事には同様の方式の他病院についても言及されているが、どこもうまくいってはいないようである。PFI=Private Finance Initiativeは、日本では「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」に基づいて実施され、特に小泉政権以降、さまざまな公共施設に用いられ、特に最近ではこの方式による半官半民の刑務所が話題になった。全部の例を調べていないので、もしかすると「成功例」があるのかもしれないが、少なくとも医療分野では完全に失敗しているのではないか。かえって官民癒着を招く危険性も増すだろう。

 市場原理をどこまでも信奉し、民営化を至上とみなす人々ならば、失敗したのは全部民営化しないからだとか、民間へのリスク転移が足りないからだとか言いそうだが、そんなことではあるまい。根本的に市場原理にそわない医療をビジネスとして捉える視点自体が、問題を引き起こしていると見るべきだ。誰もが安心して医療を受けられるようにするためには、きちんと税金ですべてを賄い、利権狙いの企業を排除することが必要だと思われる。

【関連リンク】
民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律 - 法令データ提供システム
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H11/H11HO117.html
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by mahounofuefuki | 2008-11-14 21:29

後期高齢者医療制度「見直し」をネタに厚労大臣留任を狙う舛添要一

 舛添要一厚生労働大臣が後期高齢者医療制度の見直しを表明しているという。
 朝日新聞(2008/09/20 12:20)より(太字強調は引用者による、以下同じ)。
(前略) 見直しにあたっては(1)75歳以上という年齢で分けない(2)保険料の天引きを強制しない(3)負担について世代間の反目を助長する仕組みにしない、との原則を掲げた。最低1年議論し、それまでは現行制度を維持する。舛添氏は「(現制度の)廃止とは一言も言っていない」とも語った。
(中略)
 番組で舛添氏は自民党総裁選での勝利が確実視される麻生幹事長と事前に相談していたことも明らかにし、「こういう形で見直すことについて麻生幹事長もまったく同じ考え方。首相になれば、所信表明演説でこれをおっしゃると思う」と述べた。ただ、番組に同席した公明党幹部からも「聞いてない」との発言が出るなど、与党内での調整はこれからで、不透明な側面は残っている。

 舛添氏の狙いは明らかだ。「麻生幹事長と事前に相談」「麻生幹事長もまったく同じ考え方」「所信表明演説で」。要するに次期首班が確実な麻生太郎氏に「後期高齢者医療制度の抜本的見直し」を手土産にすり寄り、新内閣でも厚労大臣の椅子に居座るつもりなのである。麻生氏としては新内閣発足にあたっての「目玉」として、不人気の後期高齢者医療制度の見直しを前面に押し出す。それを提案した舛添氏は厚労大臣に再任される。自分の大臣の椅子が目的で、医療制度の見直しはそのための手段にすぎない。

 だいたい多くの有権者が求めているのは、小手先の「見直し」ではなく「廃止」である。それを「廃止とは一言も言っていない」とわざわざ断っているあたり、本気で後期高齢者医療制度を改める気などないことは明らかだ。読売新聞(2008/09/20 03:08)によれば、舛添氏は昨夜記者団に「長期的には、医療と介護保険制度を一元化し、財源には消費税を充てる」と述べたという。年金も消費税、医療も消費税、介護も消費税! 消費税は打ち出の小づちか!? ここでも舛添氏の発言はいつものように思いつきの域を出ていないことがわかる。

 これは総選挙までの目くらましにすぎない。次期総選挙でははっきりと後期高齢者医療制度の改廃自体を争点にしなければならない。
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by mahounofuefuki | 2008-09-20 17:53

「無保険の子どもが大阪府だけで約2000人」という衝撃

 大阪社会保障推進協議会がこのほど大阪府内で国民健康保険証を取り上げられた世帯の子どもの数を調査した。以下、毎日新聞2008/06/28大阪夕刊より(太字強調は引用者による)。
 国民健康保険(国保)の保険料を滞納したため、保険給付を差し止められ、医療費の全額自己負担が必要になった世帯の子ども(中学生以下)が、大阪府内17市町で3月末現在、628人に上ることが民間団体の調べで分かった。大阪市、堺市など6市は「データがない」としている。給付が差し止められている世帯数は府全体で約3万世帯あり、この団体は、大阪市などを含む府全体では子ども約2000人が「無保険」に陥っていると推計する。
(中略)
 民間団体の大阪社会保障推進協議会(大阪社保協)が府内43市町村に質問状を送り、回答を集計した。17市町が「いる」とし、20市町村が「いない」と回答した。大阪、堺、寝屋川、守口、茨木、柏原の6市は「データがない」などとして回答しなかったが、大阪市も、差し止め対象に子どものいる世帯があることは認めており、大阪社保協は府全体で約2000人と推計した。(後略)
 現行の国民健康保険では保険料を1年以上滞納すると、市町村は保険証を回収し、代わりに「被保険者資格証明書」を交付することができる。この資格証明書で受診すると医療費の窓口支払は全額自己負担になってしまう。昨年、厚生労働省が公表した調査によれば、2006年6月現在でこの資格証明書の発行を受けた世帯は、全国で35万1270世帯にものぼる。彼らはいわば「国民皆保険制度」の枠組みから排除された存在であるが、当然その中には子どももいるわけで、今回の調査はその実数を(地域限定ではあるが)初めて推計したものである。

 全額自己負担では風邪の受診でも莫大なカネが必要になる。当然、医療の受診を控えようとする。全国保険医団体連合会の調査では、2006年の資格証明書被交付者の受診率は一般の被保険者に比べて51分の1だという。ただでさえ低所得で保険料を払えないのが、さらに保険証を取り上げられ、高額な医療費を請求されるというのは、理不尽以外のなにものでもないが、特に子どもの医療を受ける権利が侵害されているのは非常に問題である。大阪府だけで約2000人ということは、全国では数万人にのぼるのは間違いない。

 国保については支払能力がない場合、分割納付や支払猶予の制度があるが、国保財政の悪化によりなかなか認められない。毎日新聞の前記記事によれば、昨年度の東大阪市の場合、40代夫婦と子ども2人の年間所得200万円の世帯で年間の保険料は約45万円だという。これはもはや「超重税」というレベルである。国保はもともと会社員や公務員などの給与所得者ではない、いわば収入の不安定な人々の保険であるが、それにもかかわらず1980年代以降、国庫負担率の削減が続いている。この国の社会保障制度がいかに強者に手厚く、弱者に冷たいかを最もよく示していると言えよう

 仮に親の怠慢で無保険になったとしても、子どもは親を選択できない以上、子どもには罪はない。自己が決定していないことに自己責任は決して及ぶべきではない。一方、憲法や児童福祉法に従うならば、行政は子どもが健やかに育つための施策を行う責任を有する。まず厚労省は全国で無保険の子どもがどれだけいるか正確な調査を行い、すべての子どもが医療を受けられるようにしなければならない。

【関連リンク】
大阪社会保障推進協議会
http://www2.ocn.ne.jp/~syahokyo/index.html
08年2月19日 国保資格証者の受診率低下-全国保険医団体連合会
http://hodanren.doc-net.or.jp/news/tyousa/080219kokuho/080219kokuho.html
国保証取り上げ35万世帯/「滞納」480万世帯に/貧困・格差拡大で最多更新/厚労省調査-しんぶん赤旗
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-02-23/2007022301_01_0.html


《追記 2008/08/19》

 しんぶん赤旗(2008/08/18)によれば、大阪府内で無保険状態にある子ども(乳幼児と小中学生)の数は1728人と判明したという。
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by mahounofuefuki | 2008-06-29 12:47

「ハンセン病問題基本法」の請願

 ハンセン病療養所の入所者・退所者の権利擁護のための「ハンセン病問題基本法」の制定を求める国会請願が行われているという。以下、共同通信(2008/04/08 21:57)より。
(前略) 全国ハンセン病療養所入所者協議会(全療協)、国賠訴訟全国原告団協議会(全原協)のメンバーや支援者らが手分けし、衆参両院の議員会館で療養所の所在県から選出された議員や各党の厚生労働関係議員などに要請書を手渡した。
 基本法をめぐっては、超党派で構成する2つの議員連盟がそれぞれ、先月までに関係者からの聴取などを実施。会期中の成立を目指し、成案を得るための調整が続けられている。
 2つの議員連盟とは、「ハンセン病対策議員懇談会」と「ハンセン病問題の最終解決を進める国会議員懇談会」である。

 ハンセン病については、日本国家は1907年に法律「癩予防ニ関スル件」を制定して以降、患者の強制隔離断種・堕胎虐待・監禁を基軸とする非人道的な差別政策を後継法の「らい予防法」を廃止する1996年まで続けた。
 完治が難しかった時代にあっても感染力が微弱で衛生・栄養状態に影響されると考えられた病気だった以上、隔離政策に正当性はなく、ましてや特効薬プロミンにより病気の完全治癒が可能になった戦後も継続したのは言語道断である。断種・堕胎に至っては、遺伝病ではないのだからいかなる思想的立場であっても非人間的政策と言わなければならない。

 療養所入所者らによる国家賠償訴訟は和解したものの、日本社会における差別と偏見は根強く、入所者の社会復帰は必ずしも進んでいない。ハンセン病療養所は依然として社会に開かれたとは言えず、入所者の高齢化が進む一方、医療・福祉体制の遅れが問題となっている。
 「ハンセン病問題基本法」の内容について、全療協などが参加する「ハンセン病療養所の将来構想をすすめる会」は、入所者の社会復帰と差別解消に国が責任を持つこと療養所の医療・介護の充実療養所の一般開放などを求めている。この請願を元に速やかに法を制定する必要があるだろう。

 偶然にも私は今、藤野豊『ハンセン病と戦後民主主義 なぜ隔離は強化されたのか』(岩波書店、2006年)を読んでいる最中で、改めてハンセン病問題に関心を抱いていた時だったので、このニュースが目についた。学習のためにもブログで関連リンクを紹介する。署名活動も行われているので、参照したい。

【関連リンク】
知って!ハンセン病国賠訴訟-ハンセン病国賠弁護団
ハンセン病基本法の制定を求める署名運動
ハンセン病ニュース
ハンセン病のリンク集
ハンセン病に関する情報ページ-厚生労働省
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by mahounofuefuki | 2008-04-10 00:43

私が禁煙派なのにたばこ増税に反対する理由

 日本学術会議がたばこ税の大幅引き上げを厚生労働省に提言した。以下、毎日新聞(2008/03/05朝刊)より。
(前略) 学術会議は、たばこの規制に関する分科会(大野竜三委員長)で、06年6月から検討してきた。提言では自動販売機の設置禁止、喫煙率削減の数値目標設定のほか、たばこ税(1箱当たり189円)を現在の2倍程度にすることの検討を求めた。この場合、年間消費量は現在の約2700億本から4分の1減少、喫煙者数は少なくとも200万人減少すると試算した。一方、税収は年間約2兆3000億円から約1兆2000億円増えるという。(後略)
 私はたばこを吸わないだけでなく、日頃の実生活で嫌煙権を主張しているくらいなので、日本学術会議が主張する「脱タバコ社会」という目標そのものには全く異論がない。たばこ自動販売機の設置禁止も未成年の喫煙を防止する上で必要だと考えている。

 しかし、たばこ税の増税はいただけない。禁煙派は一般にたばこ増税には無条件で賛成する人が多いが、私は一貫して反対している
 「税が無駄遣いされるから」ではもちろんない。私が基本的に「大きな政府」論者であることは、当ブログの税制や社会保障関係の記事にいつも書いている通りである。私がたばこ税の増税に否定的なのは全く別の理由からである。

 それは喫煙の本質が「依存症」である以上、いくらたばこの価格が上がっても重度の喫煙者がたばこをやめることはないからである。本当のヘビースモーカーはたとえ価格が倍になったところで喫煙をやめることなどできない。ニコチン依存症とはそれほど重い「病気」だからだ。
 たばこ増税論はあくまでも喫煙者=ニコチン依存症患者がたばこをやめないことを前提に、税収を増やそうとする方策である。いわば病人の弱みにつけ込んだ懲罰的な徴税である。税は年貢ではない。税を負担する以上は、当然見返りがなければならない。現在のたばこ税では納税者たる喫煙者に何も恩恵はない。

 むしろ財政に求めるべきは、ニコチン依存症治療促進のための歳出増大である。現在、禁煙は専ら個人の「自助努力」に委ねられている。しかし、本当に「脱タバコ社会」を目指すならば、いつまでも喫煙者任せにはできない。喫煙者が積極的に依存症を治せるよう、財政支出を増やさなければならない。具体的には禁煙治療への医療費助成や保険適用範囲の拡大である。
 ちなみにたばこ税をその財源に使うことはできない。それでは喫煙減少のための財源を増やすために、喫煙を増やすという二律背反になってしまうからだ。たばこ税の税収が大きくなるほど、喫煙者を減らす財政上の必然性がなくなってしまう。故に真の禁煙派はたばこ増税に反対しなければならない。

 禁煙派はたばこに対する憎悪のあまり、つい喫煙者への差別と懲罰に傾きがちだが、喫煙者はあくまでも治療が必要な病人であることを考慮してほしい。私は本気で喫煙習慣を撲滅したいからこそ、たばこ税の増税に反対し、喫煙者の禁煙治療に対する財政出動の強化を求める。

【関連リンク】
要望 脱タバコ社会の実現に向けて-日本学術会議*PDF
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by mahounofuefuki | 2008-03-05 17:22

江原啓之を客員教授に迎える旭川大学学長の言い分

 当ブログの1月22日付のエントリで「スピリチュアルカウンセラー」江原啓之氏が旭川大学の教員に迎えられるという情報をお伝えしたが、この問題について2月15日発売の北海道向けの月刊経済誌『財界さっぽろ』3月号が詳細を報じている。
 結論から言えば、やはり江原氏は2008年度より旭川大学に新設される保健福祉学部の客員教授に迎えられる。講義科目は「生命倫理」や「コミュニティ福祉への招待」で、年2、3回程度教壇に立つという。講義回数こそ少ないものの、恐れていた通り、「スピリチュアルカウンセラー」の経験を生かした内容になりそうな気配が濃厚な科目名である。

 『財界さっぽろ』の記事によれば、大学側から声をかけたのではなく、昨年7月中旬に江原氏の方からアプローチがあったのがきっかけだったという。旭川大学に看護系学部が新設されるという情報をキャッチした江原氏が、「友人を介して」旭川大学の山内亮史学長に会見を申し入れたという。その「友人」が何者なのか気になるところだが、それはさておき山内学長の話を『財界さっぽろ』より引用しよう(太字強調は引用者による)。
 江原さんは、2つの理由で看護師や介護士からよく相談を受けてると話していました。一つは、看護師が忙しさに追われ、自分が思うような看護ができず燃え尽き症候になり、仕事辞めたいという相談です。もう一つが、余命いくばくもない患者さんに、どう声をかけて接すればいいかわからないというものです。
 江原さんの緩和ケアに対する熱い思いを聞いて、わたしが目指す学部像と共通する部分があると感じました。そこで『もし機会があれば一度講演をお願いしたい』と頼むと、江原さんが『旭川には友人が大変お世話になった。わたしでよければ何でも協力させていただきます』という答えが返ってきました。
 この「友人」かどうか明示されていないが、記事には江原氏が20年来懇意にしている歌手のイルカさん(「なごり雪」の人)の夫(昨年3月に死去)が晩年を旭川で療養していて、江原氏は何度も見舞いに訪れていたという話も紹介されている。
 再び山内学長の話に戻ろう。
 道北地方は過疎と高齢化が進み、自治体病院も経営的にもたなくなってきている。特に医師、看護師不足が深刻です。これからの医療は、病気を治すだけでなく、心の痛みをどのように緩和するかなどの精神的なケアが求められます。学校は単に知識や技術を教えるだけではダメなんです。『生命倫理』や『終末期看護論』なども取り入れ、地域社会に貢献できる人材を養成していきたい。(引用注:「道北地方」=北海道北部の地元での通称)
 そのご説はもっともだが、それがなぜ元神職でバリトン歌手の江原氏なのか? 江原氏と看護論にどんな関係が?
 大学で、テレビ番組『オーラの泉』のようなスピリチュアルカウンセリングをやるわけではないんです。亡くなった先祖を呼ぶこともありません。講義では、江原さんが考える『緩和ケア』や『スピリチュアルペイン(心の痛み)』、『人間の生と死』を語ってもらうだけです。その点はどうか誤解しないでほしい。わたしが江原さんの事務所を訪れてお願いしたわけではない。『客寄せパンダ』のように、有名タレントを大学の宣伝に使う考えはありません。江原さんが客員教授に就任した経緯を振り返ってもらえば、理解していただけると思います
 「スピリチュアルペイン」や「人間の生と死」はテレビでも語っているではないか。それがほかでもない「スピリチュアルカウンセリング」のなのでは? 「客員教授に就任した経緯」からわかるのは、江原氏がテレビを追われた時に備えて「確かな身分」を欲していて、そのために山内氏を丸めこんだことだけだ。
 ちなみに山内学長は大学で「スピリチュアルカウンセリング」をやることは否定しているが、「スピリチュアルカウンセリング」そのものは否定していないことに注目すべきだろう。それは教育社会学者としてどうなのか。

 ちなみにこの件が表面化してから、旭川大学には「普通の人も聞けるのか」「入場料はいくらですか」「カウンセリングしてほしい」などの問い合わせが殺到したという。学長は否定しているが、江原氏は確実に「客寄せパンダ」の役割を果たしているようだ。

【関連記事】
江原啓之を教員に迎える旭川大学の「見識」

【関連リンク】
旭川大学
財界さっぽろ
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by mahounofuefuki | 2008-02-15 23:24

現行の社会保障制度は弱者を排除している~「社会保障国民会議」発足を前に

 昨年末に福田康夫首相が公約していた政府の「社会保障国民会議」の設置が閣議決定された。
 朝日新聞(2008/01/25 13:27)、毎日新聞(2008/01/25 11:59)によれば、メンバーは次の通り(敬称略)。
吉川洋(東京大学大学院教授)=座長/大森弥(東京大学名誉教授)/奥田碩(トヨタ自動車相談役)/小田与之彦(日本青年会議所会頭)/唐沢祥人(日本医師会長)/神田敏子(全国消費者団体連絡会事務局長)/権丈善一(慶応大学商学部教授)/塩川正十郎(元財務大臣)/清家篤(慶応大学商学部教授)/高木剛(連合会長)/竹中ナミ(社会福祉法人プロップ・ステーション理事長)/中田清(全国老人福祉施設協議会副会長)/樋口恵子(NPO法人高齢社会をよくする女性の会理事長)/南砂(読売新聞編集委員)/山田啓二(京都府知事)
 自立生活サポートセンター「もやい」の湯浅誠氏を起用するようなサプライズはなく、予想通り既成の圧力団体の関係者と御用文化人ばかりで、官僚がコントロールできる人選である。ワーキングプアやホームレスの代弁者は1人もいない。「国民会議」と称していながら政府・与党にとって壁となるような人物もいない(ただし分科会の方で呼ばれる可能性は残っているが)。
 また消費税増税派が多数を占めており、政府・与党の既定路線である消費税の社会保障目的税化と引き上げに「お墨付き」を与えるだけの機関になりそうだ。

 現在の日本の社会保障は、こんな人々に任せることができないほど疲弊し、崩壊が進行している。社会保障とは本来、その名の通り社会生活を保障するもので、困っている人や弱っている人が自立できるようになるためのセーフティネットである。しかし、少なくとも日本の社会保障制度は、豊かな人や恵まれた人ほど有利で、本当に困窮している人々を制度の外側に排除するような仕組みになっている。

 たとえば年金。
 周知の通り、現在すべての「国民」が国民年金への加入を義務づけられているが、公務員や教職員の場合は共済年金、会社員の場合は厚生年金があり、それぞれ国民年金に上乗せされる2階部分がある。使用者(国・企業)負担があり、報酬に比例するこの「2階部分」があるのとないのとでは、世帯当たりの年金給付額に相当大きな開きがあることは従来からよく言われていた。
 「2階部分」がある場合と国民年金だけの場合との格差に加え、国民年金は保険料が所得にかかわらず定額(現在は月額14,100円)で低所得者ほど負担が大きいという問題がある。しかも、国民年金の給付は現役時代の年金納入期間によって左右される。未納期間が長ければ長いほど自身の給付額は減る。そもそも国民年金の担い手は自営業者や厚生年金に加入できないパート・アルバイトなどで、ただでさえ所得が不安定なのに、この逆進的な制度のためにますます苦境に追いやられている。
 現在、国民年金保険料の未納率は4割に達する。保険料納入の時効はわずか2年。長期未納者は年金給付の権利を喪失する。現在の年金制度は安定した終身雇用を前提にしているため、そうでない不安定雇用の人々を制度の外側に追い出しているのである。

 あるいは、医療保険。
 これも年金と同様、公務員は共済組合、会社員は組合健保ないし政府管掌健保で、それ以外は国民健康保険というように雇用形態により違いがあるのは言うまでもない。問題は使用者負担のある健保に比べ、自治体が運営する国保はいずれも財政赤字で年々保険料が増加しているため、保険料の未納・滞納者が続出していることである。
 国保はこれまた雇用や所得が不安定な人々が主たる担い手になっている。ただでさえ弱い立場にあるのに高額の保険料を負担させられ、滞納が続くと保険証を取り上げられる。厚生労働省の最近の発表によると、国保料の滞納世帯は約474万6000世帯で、国保加入世帯の18.6%にものぼる。そのうち約34万世帯が保険証を取り上げられ、資格証明書の発行を受けている。資格証明書での受診は全額自己負担である。病気になってもカネがなくて治療を受けられない人々が増加している。
 その結果、弱者が保険制度の外側にはじかれる→制度の内側に辛うじて残っている人々の負担が増える→負担に耐えられず外側にはじかれる、という悪循環を引き起こしており、ここでも困っている人、弱っている人が社会保障の枠組みから排除されているのである。

 年金と医療を例示したが、雇用保険や介護保険や障害年金や生活保護など他の分野でも似たような事態が進行している。あえて言ってしまうが、現在の日本の社会保障制度は、安定した雇用と所得を得られる人々だけの「特権」になっている。本当に保障を必要とする困窮者ほど社会保障制度から排除され、恩恵に与れないのは矛盾以外の何者でもない。
 「特権」をすべての主権者が享受できる「当り前の権利」にすることが必要なのは言うまでもない。特に年金と医療については雇用形態による差別をなくしていく方向性が欲しい。

 前述の通り、政府と財界は社会保障国民会議で、消費税の社会保障目的税化と引き上げの既定路線化を進めるのは間違いない。
 しかし、究極の逆進税である消費税の引き上げは、この国の社会保障の崩壊にとどめを刺す暴挙である。政府は消費税を引き上げようとする一方で、国民年金保険料も国民健康保険料も引き上げを続けている(それでいて給付の方は引き上げられず「現状維持」もしくは「引き下げ」である)。消費税を消費支出を通して強制的に負担させられる分、保険料を負担できなくなり、低所得者はますます社会保障制度の外側へ追いやられる。
 そして最後のセーフティネットである生活保護も、政府は今年再び引き下げを図っている。これ以上、政府と財界と自民・公明両党(もしかすると民主党も)による社会保障つぶしが続けば、この国の生活困窮者は増大し続け、結局は消費市場を縮小させ、労働力を失い、社会保障のみならず経済も崩壊するだろう。

 社会保障国民会議には全く期待できないが、これを機に在野においても社会保障制度のあるべき姿について提起していくべきであろう。
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by mahounofuefuki | 2008-01-25 17:07

ドクターズユニオン結成へ~立ち上がった勤務医と医師不足問題

 花・髪切と思考の浮遊空間の記事で知ったのだが、勤務医を中心としたグループが医師の労働環境改善を目指して新たな医師団体の結成を計画しているという。
 共同通信(2008/01/13 19:39)や朝日新聞(2008/01/14朝刊)などによれば、「全国医師連盟設立準備委員会」というグループで、勤務医や研究医など現在約420人が会員となっているという。1月13日には東京ビッグサイトで総決起集会が行われた。今年5~7月に「全国医師連盟」の設立を目指す。既成の代表的な医師団体である日本医師会が開業医中心であるため、それとは異なる立場から問題提起を図るという。特に勤務医の過労や医師不足の解消を訴えており、医師の労働組合の結成も準備しているようだ。

 実のところ医療問題はあまりよく知らない分野で(今まで幸いにも入院や大きな手術をしたことがないため)、故にこれまでブログできちんと取り上げたことはなかったが、社会保障の再建や長時間労働の是正は私が最も重視する問題であり、少しは勉強しなければならないようだ。ちょうどタイミングを合わせるように今月発売の『世界』2月号が医療崩壊問題を特集しており、メモを兼ねて情報をまとめておこう。

 全国医師連盟設立準備委員会のホームページによれば、「新組織は、いかなる政党、宗派とも独立した組織です。大学や学会や病院などの既存の権威に依存しない、あくまでも現場の医師達の組織です」と自己規定している。
 また、同HPには「檄文」が掲載されている。そのうち「当面の行動」と題する文書を引用する(太字は引用者による)。
全国医師連盟は、
1 医療労働環境改善のために、個人加盟制の医師職労働組合ドクターズユニオンを創設すると共に、厚労省、公共団体、病院管理者に労働基準法遵守の指導を徹底させます。
2 医療報道の是正と世論への啓発のために、記者向けの医療事案解説サービスを設置し、迅速なプレスリリースや医療記事の誤報訂正などを働きかけ、より公正な報道を導きます。
3 医療過誤冤罪を防止し、同時に医師の自浄作用を発揮させるため医師関連団体に働きかけ、また法曹関係者等と協同してこれらの活動を行います。
4 適正な医療費の公的扶助を実現するため、国の医療費抑制政策を転換させ、公共の福祉の向上と共に、診療経営を防衛します。

我々は、医師と医療の真の社会貢献をめざします。
患者と医師が協同して、病気の治療にとりくむ、最善の医療環境をめざします。
 医療過誤問題については、事実さまざまな事件が起きており、「自浄作用」による「冤罪防止」という立場については保留したいが、政府が続けている医療費抑制政策は全面的に廃止するべきだと私も考えており、医師の労働条件改善も理解・支持できる。
 「ドクターズユニオン」構想は、まさに各地の個人加盟型労組である地域ユニオンの医師版であり、ここでも政治団体化した既成の圧力団体(労組の場合は連合など、医師の場合は日本医師会)とは異なる、本当に加盟者の権利を守る組織への希求が読み取れる。
*ただしOhmyNewsによれば、同会の代表世話人である黒川衛氏は「医師会と対立する見解も部分的にはあるが、全面対立するものではない」と注意しており、いわゆる「医師会への反乱」と位置づけることはできないだろう。企業内で御用組合と闘う少数組合とは異なるようだ。

 現在日本の医療における最大の問題は医師不足であろう。勤務医の労働条件悪化の第一の要因もここにある。日野秀逸「医療費抑制政策からの転換を」(『世界』2008年2月号)が日本の医師数について国際比較を行っている。以下、同論文による。
 日本国内の医師総数は約26万人。WHO「ワールド・ヘルス・リポート2006」付録「加盟国における保健労働者の国際比較」によれば、人口10万人あたりの医師数は198人、加盟192カ国の第67位である。ちなみにヨーロッパで最も低水準のイギリスで230人、他の西欧・北欧諸国は軒並み300人台で、イタリアは420人、ロシアは425人である(以上、2002年当時)。
 また、OECDの調査によれば、2003年現在のOECD加盟国における人口10万人あたりの臨床医師数の平均は約300人、日本(2002年、04年)は約200人となっている。日本の人口に当てはめると、臨床医師がOECD平均より12万7000人以上も不足しているという。
 統計によって数字に開きがあるようだが、「先進国」で日本の医師数が最低水準なのは間違いないところだろう。

 医療は教育や福祉とともに「構造改革」によるダメージを最も受けた分野である。今回勤務医たちが声を上げたのを機に、医療のあるべき姿について真剣に考えなければならないだろう。

【関連リンク】
「医療崩壊阻止し、医師の新時代を」-OhmyNews
全国医師連盟設立準備委員会
日経メディカルオンラインブログ 本田宏の「勤務医よ、闘え!」
勤務医の「反乱」をどうみる。-花・髪切と思考の浮遊空間
社会保障と「分断」-勤務医の「反乱」再論-花・髪切と思考の浮遊空間
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by mahounofuefuki | 2008-01-15 23:14

堺市の入院患者置き去り問題について

堺市のある総合病院の職員らが、糖尿病で入院中だった60代の全盲の患者を連れ出し、大阪市内の公園に放置していた問題が明るみになった。

東京新聞(2007/11/14 朝刊)より。
(前略) 調べや病院などによると、職員と医事課員三人は九月二十一日午後一時ごろ、男性を車に乗せ、大阪市住吉区の男性宅に連れて行ったが、住んでいた前妻(63)が引き取りを拒否。午後二時二十分ごろ、病院から約十キロ離れた西成区の公園に連れて行ってベンチに座らせ、下着類などの荷物とともに置き去りにした。
 四人のうち一人は直後に匿名で「目の見えない男性が倒れている」と一一九番し、サイレンの音を確認して立ち去った。男性は別の病院に運ばれ、現在も入院中。搬送時、救急隊に「熱がある」と訴えていた。
 渉外係の職員は「前妻から『持病があり、困る』と拒否され、どうにもならず、救急隊に任せれば大丈夫と思った」と話しているという。
 男性は糖尿病で約七年前から入院。当初は生活保護を受けていたが、約二年前に打ち切られたという。病院側は「治療は必要だが通院で対応できる」として退院を勧めていた。入院費約百八十五万円が未払いだったほか、待遇などをめぐりトラブルになっていた。(後略)
毎日新聞(2007/11/13 21:00)より。
(前略) 同病院や堺市保健所によると、男性は約2年前から入院費用など治療費を滞納。約3年前から退院可能な病状だった上、自宅が判明したため、職員4人が9月21日午後1時ごろ、男性を車に乗せて大阪市住吉区内にある男性の自宅を訪れた。しかし、同居する前妻が本人の持病を理由に引き取りを拒否したことから、同2時20分ごろ、西成区内の公園で男性を降ろして放置した。(中略)
 男性は約7年前に入院。生活保護が打ち切られて治療費が滞納状況となり、備品を壊したり看護師に暴言を吐くなどトラブルもあったという。(後略)
既に大阪府警が保護責任者遺棄容疑で病院を捜索し、堺市保健所が医療法違反にあたるとして病院へ行政指導したという。

前記東京新聞には院長のコメントが出ている。
 医療人として非常に恥ずかしい。この一言に尽きる。職員が独断でやったことだが、反省しきりだ。ただ、病室でのトラブルが続き、入院費も未納で、福祉事務所や保健所に何度も相談に行ったが対応してもらえなかった。私たちが(患者と行政側の)谷間だった。治療は必要だが通院で対応できる状況で「通院してください」とお願いしていた。
病院が問題の患者を持て余していたこと、事件が起きるまで行政が何ら対応していなかったことがわかる。

この問題について、弁護士の津久井進さんが論じており、一部引用する。
津久井進の弁護士ノート 本当に保護責任者遺棄をしたのは誰か?~現代姥捨山
(前略) まだ立件されているわけではないけれども,私は,この病院を弁護したい。

 もちろん,この職員の行為は,医療関係者としてあるまじき行為であるであって,当然,責任はあるだろう。
 しかし,本当に悪いのは,別のところにあるのではないか。
 真の原因は,違うところにあるのではないか。

 第1に,最初にこの患者を見捨てたのは,大阪市の生活保護課ではないのか。
 詳しい事情はよく分からないけれども,2年前に生活保護が打ち切られたとのこと。
 生活保護の受給を受けていたら,医療扶助があるので,医療費滞納などという事態は起こりえない。
 生活保護の打ち切りで,現実の不利益を受けるのは,病院ではないのか。

 第2に,病院を追い詰めたのは,厚生労働省の政策にほかならない。
 厚生労働省は,「療養病床」の削減計画を打ち出している。
 「療養病床」というのは,治療目的の一般病床ではなく,長期入院のお年寄りの受け皿の病床だ。
 医療費圧縮のために,現在,全国に約35万床あるのを,5年後までに約15万床に減らそうという締め付け政策だ。
 病院は,この患者の追い出し行為につき国から褒められこそすれ,保護すれば責められるのだ。

 家族に見捨てられ,生活保護からも放逐された社会的入院患者の行き場は,どこにあるのだろうか。(後略)
津久井さんの見解に全面的に賛同したい。
生活保護の切り捨てと療養病床の削減という政府の施策が、医療従事者を極限にまで追い込んだのである。
最近は入院費のみならず、通院患者の医療費滞納や、保険料未納による保険証取り上げなども問題になっている。
いずれも貧困と格差の拡大に起因する。

誰もが病気になりうるし、誰もが必ず老いる。
誰もがある日突然、介護する側にも介護される側にもなりうる。
故に今回の問題は決して他人事ではない。
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by mahounofuefuki | 2007-11-14 12:21