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パキスタンは「アジアの火薬庫」か~ブット暗殺

 パキスタンのブット元首相が暗殺された。暗殺犯はブット氏を銃撃後、自らも自爆、多数の人々が死傷した。
 パキスタンの不穏な情勢はずいぶん伝えられてはいたが、白昼堂々と有力政治家の暗殺が敢行されたことは衝撃である。
 パキスタンについては、2004年に参議院憲法調査会で参考人として招致された関西学院大学教授の豊下楢彦氏の発言がずっと頭を離れないでいる。
 第159回国会 参議院憲法調査会 第2号より(太字は引用者による)。

《引用開始》
(前略) 短時間ですので端的な例を挙げますと、私は、イラク問題が深刻化する前から主張していたんですけれども、今世界で大量破壊兵器とテロリズムが結合する最も危険な地域はどこかといいますと、それは北朝鮮でもイラクでもイランでもリビアでもなくて、パキスタンなわけですねパキスタンは間違いなく核保有国であり、強力なミサイルを持っており、しかも他の国に核技術を輸出しており、しかも国内ではアルカイダの残党がばっこしておると。仮に今大統領が暗殺されるということになればどんな事態が起こるかと。予想を超えるわけです。
 実は、九八年にパキスタンが核実験をやったときに、日本は非常任理事国として決議案のために奔走いたしまして、全会一致で非難決議を上げて、そして制裁に踏み切ったわけです。ところが、九月十一日が起こりますと、ブッシュ大統領は、アルカイダと闘うということの理由があったんでしょう、パキスタンに対する制裁を解除して、そして訪米した小泉首相に対しても、日本も制裁を解除してほしい、そして核保有国の政情を安定していなければならないから緊急の経済援助をやってくれという要請をした。それで、小泉政権はそれにこたえて、〇一年十月に制裁解除しました。パキスタンはNPT体制に入るとも何も言っておりませんが、制裁解除いたしました。そういうことで、論理的に考えますと、テロリストと闘うために核拡散を認めると、これは正に倒錯した論理であります。
 アメリカにはアメリカの様々な軍事戦略があるでしょうけれども、日本はやはり被爆国としてNPT体制をきっちりと守っていく、あるいはそれを再構築していくという視点からしますと、パキスタンに対する制裁を解除したことは、私は根本的に誤りだと思うんですね。だから、今、日本がやるべきことは、パキスタンなりインドなりにもう一度核を放棄してもらって、もちろんイスラエルに対してもそれを要求する。もうちょっとよろしいですか。
 イスラエルの場合は、私は、日本は非常にある種優位な立場に立っておると思いますのは、ユダヤ人問題としての過去を持っていないわけですね。ヨーロッパ諸国と違って、日本はナチと同盟しましたけれども、日本はユダヤ人に対して差別や迫害をした歴史を持っていない。だから、正面からイスラエルに対して核の問題も、それから今日の占領の問題も、何十年にわたって安保理決議を違反してきたことについて日本は堂々と言う権利を持っている。そのことによってまたアラブ社会の支持を得ることもできるだろう。
 ただ、もちろん諸外国からしますと、日本はアメリカの核の傘の下にのうのうといるじゃないかという批判があります。だから、今の北朝鮮問題とかかわって、日本と朝鮮半島全域を非核地帯にする、そして周辺のアメリカとロシアと中国はそれに対して攻撃を加えないという、そういった協定を北東アジアで結ぶという、そういった言わばNPT体制を根本的に再構築していくようなそういう方針があれば、先ほど言いましたように、簡単にパキスタンに対する制裁を解除しなかったというふうに思うんですね。(後略)
《引用終了》

 要するにアメリカが「テロとの戦い」と称して戦争を続けているアフガニスタンやイラク、あるいは核開発疑惑を突き付けている朝鮮やイランなどよりも、現在アメリカが対アフガン戦争で同盟関係を持っているパキスタンこそ、本当の「火薬庫」であるということだ。3年以上前の発言だが、今も基本的な情勢は変化しておらず、依然有効であろう。
 ムシャラフ大統領は最近、アメリカの圧力で文民となったが、実態は依然として軍事政権である。選挙前に野党の指導者が暗殺されるような国をアメリカは「同盟国」として扱い、日本も追随しているのである。日本はテロ特措法によるインド洋の給油活動でパキスタンを支援していた。そして今も福田政権は給油活動を再開しようともくろんでいる。
 そもそもパキスタンの治安がこれほど悪化した要因の1つは一連のアメリカの軍事行動にあり、アフガンの戦争がパキスタンに波及しているからにほかならない。しかもパキスタンの政府や軍とテロリストとの関係が切れていないという疑念は強い。アメリカがパキスタンを支援すればするほど、かえってテロが拡散しているのではないか。アメリカの戦争がテロの予防になっていないことは明らかだ。

 なぜかどの報道もさしたる根拠もなく「イスラム過激派」の犯行としているが(「アルカイダ」という話もでているが、今や何でもかんでもそのせいにできる便利な存在になってしまった)、当然ブット氏の支持者からは政権側の関与を疑う声が出るだろう。混乱状態は今後拡大するのは間違いない。核保有国であるパキスタンの不安定化はアジア全体を危機に陥れるものだ。
 テロ特措法は衆院での再議決による成立の公算が大きいが(民主党が問責決議を見送るという報道あり)、アメリカの戦争がアフガンやパキスタンを不安定化させている以上、日本は完全に手を引くべきである。
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by mahounofuefuki | 2007-12-28 12:28