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米軍の年間性犯罪2700件から見えるもの

 沖縄の在日米軍軍人による中学生暴行事件は、被害者に対する中傷の嵐と日米両政府のおざなりの「防止策」で幕引きされ、過去の類似の事件と同様、多くの人々の記憶から消えつつあるが、我々が忘却しても被害者が負った傷は癒えるわけでもないし、何より中途半端な幕引きにより今後も同様の事件が引き起こされるのは確実である。
 そんな中、アメリカ国防総省がアメリカ軍の軍人による性暴力事件が1年間で2700件近くに上るという報告書を議会に提出したという。以下、時事通信(2008/03/15 14:41)より(太字強調は引用者による)。
 米国防総省は14日、2006年10月から07年9月までの1年間で、米軍兵士によるレイプなど性暴力事件が2688件に上ったとの報告書をまとめ、議会に提出した。米軍当局は将兵の性暴力防止対策を強化しているが、発生件数はほぼ前年並みだった。
 国防総省は性暴力事件の扱いについて、プライバシーに配慮して被害者の身元を所属司令部にも報告しない「匿名事案」と「非匿名事案」の2つに分類。非匿名事案は2085件に上り、そのうち6割の1259件がレイプ事件だった。その被害者は米兵が868人、米兵以外の被害者は391人となっている。
 また、性暴力事件全体の加害者のうち、181人が軍法会議に掛けられたほか、201人が司法手続きを伴わない軍紀による罰則を科せられるなどした。
 こういう問題ではたいてい表面化するのは「氷山の一角」なので、実際はもっと多いだろう。しかも事件数に比べて処罰対象者数がかなり少なく、「未解決」の事件が相当多いことやそもそも軍による処分が甘いことが窺える。また、アメリカ兵の被害者も多く、軍の外だけでなく軍の中でも性暴力が後を絶たないこともわかる。
 年間少なくとも2700件の性暴力という事実からは、在日米軍に限らずアメリカ軍全体が風紀に問題を抱えていることが見えてくる。記事では事件発生地域の詳細が不明だが、アメリカ軍は全世界に展開しているので、アメリカ軍による性暴力も世界各地に拡散していると考えなければならない。

 現在、日本の米軍基地問題は、専ら基地を抱える個々の地域の「特殊な問題」として扱われ、全国的な問題になりにくい。沖縄で何かあればそれは「沖縄の問題」とされ、岩国で何かあればそれは「岩国の問題」とされる。佐世保でも横須賀でも横田でも座間でも米軍基地・演習地などを抱える地域はすべてそうである。
 そしてこの状況は日本だけではなく、アメリカ国内も含む米軍基地を抱える各国でも同様なのではないか。私も含め一般に在日米軍に問題が起きると、それを日米安保体制に起因すると考える人々が多いし、それは事実ではあるが、同時に在日米軍に限らずアメリカ軍が世界各地で問題を引き起こしていることを常に念頭に置く必要があるだろう。

 日本国内でさえ基地を抱える諸地域が分断されて、問題を共有するのが難しい中では非常に困難だが、世界各地に散らばる米軍基地を抱える諸地域の連帯が必要だと思う。少なくとも情報交換ができる状況を作ることは決して不可能ではないと考える。
 市民運動レベルではそういう動きがわずかながら存在するようだが、これを地方行政レベルで行えるのが望ましい。単に「米軍は母国へ帰れ」では仮に米軍が帰国しても米軍による性暴力はアメリカ国内では続く。アメリカを含む全世界の「基地の街」で何が起きているか情報を共有し、そこから共通する問題で共闘することもできるのではないか。

 基地問題を根本的に解決するには、日本の基地の実態をアメリカを含む国際社会へ訴えていくことで、問題を「国際化」する必要があると思っている。それは同時に外国の基地問題を日本の市民が共有する必要があることを意味する。
 あまりに抽象的で、私には具体的な手立ては全くないが、グローバルな情報伝達が可能になった現在だからこそ「基地の街のネットワーク」の形成は可能なのではないか。こうした試みが本当の意味で戦争抑止につながるとも考えている。
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by mahounofuefuki | 2008-03-17 17:47

アメリカ兵のためにも日米安保体制解消への道筋が必要だ

 沖縄での女子中学生暴行事件を機に、在日米軍は2月20日から沖縄在留の軍人・軍属及びその家族の外出禁止措置をとっていたが、その間も米兵の犯罪は後を絶たなかった。2月26日には海軍の将校が乗用車事故を起こし、3月1日には軍属が覚醒剤使用容疑で逮捕、さらに3月2日には空軍の兵士が沖縄県建設業協会の事務所に窓を割って侵入するという事件を起こした。
 これだけ不祥事が続いたということは、外出禁止措置なるものが米兵の犯罪防止に全く実効性がなかったことを証明したようなものだが、沖縄駐留米軍は3日、軍人の夜間外出を除き禁止措置を解除し、「反省の期間」の終結を着々と進めている。一連の展開は小手先の犯罪防止策ではなく、在日米軍の駐留の可否そのものを俎上に上げない限り、米兵犯罪の根絶にはつながらないことをはっきりと示していると言えよう。

  一方で、なぜこんなに在日米軍の犯罪が多発するのか、米軍側の構造的要因も真剣に考えねばなるまい。
 最近発表された外務省・防衛省の資料によると、沖縄駐留米軍だけでも軍人が22,772人、軍属が2,308人で、計2万5000人以上に上る。同じ2万5000人規模の企業で果たして10日余りで3人も逮捕者が出ることがあろうか。米兵の犯罪率は一般社会に比べてあまりにも高い。
 結局のところ米軍の構造に犯罪を誘発するような問題があると結論づけるほかないだろう。よく知られているように、現在アメリカでは徴兵制が停止されていて事実上の志願兵制が採用されている。その結果、兵士の多くは移民系住民をはじめとする貧困層で、軍のリクルート活動も専ら貧困層をターゲットにしている。そうやって集められた兵たちが、日本という見知らぬ地で「公認された殺人者」となるべく訓練を受けている。
 兵たちのストレスや不安は相当なものだろう。それでいて軍隊特有の暴力性と嗜虐性と特権意識、本国ではできないようなことも「占領地」ではできるという気の緩みと日本人への侮蔑意識などがないまぜとなって、酒や薬物や性的暴力に「逃避」しているのではないか。

 ある意味で米兵たちもまた犠牲者であろう。軍隊という檻に囲い込まれ人間性を剥奪されているという点で。もちろんだからと言って彼らの行いを免罪することはできないが、むしろあわれな米軍兵士のためにも日米安保体制は解消しなければならないのではないか。
 在日米軍の問題は現在、基地を抱える地域だけの問題になってしまっていて、全国の人々が問題を共有できていないが、兵を送り出しているアメリカの人々にはそれ以上に在日米軍の実態がほとんど伝わってはいまい。日米安保体制の問題を「地域の問題」から「日本全国の問題」へ、さらに「日米両国の問題」へと市民レベルで広げることが何としても必要だろう。

【関連リンク】
在日米軍の施設・区域内外居住(人数・基準)-外務省・防衛省*PDF
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by mahounofuefuki | 2008-03-04 21:59

米兵の暴行事件、イージス艦事件、「ロス疑惑」再燃の共通項

 『週刊文春』の「疑惑の銃弾」と題する記事をきっかけに、いわゆる「ロス疑惑」がマスメディアを騒がした当時、私は小学校に上がったか上がらないかという年齢であり、事件そのものについては全く理解できなかったが、「三浦和義」という名前とテレビに何度も映された彼のサングラス姿だけは鮮明に記憶に焼きつけられた。
 今にして思えば、あの事件こそ刑事事件を大衆の「娯楽」にするワイドショー型事件報道のはしりだったわけで、幼児の脳裏に残るほどテレビの影響力は絶大だったことを改めて認識しなければならない。

 周知の通り「ロス疑惑」の核心である三浦和義氏の当時の妻が銃撃された事件について、日本の最高裁では三浦氏の無罪判決が確定している。今になって突然アメリカの警察当局がサイパンに滞在していた三浦氏の身柄を拘束したことに疑念が出るのも当然である。
 特に在日アメリカ軍の軍人による暴行事件をはじめとする一連の不祥事や海上自衛隊のイージス艦「あたご」が漁船に衝突した事件から、マスメディアの矛先を変えさせるための「陰謀」を疑う声が出ている。たとえば日頃「陰謀論」を批判しているきまぐれな日々でさえ、「日本国民の目をそらさせたいであろうアメリカによる「陰謀」を疑いたくなってしまう」と述べるほどだ。

 私には「陰謀」説を肯定することも否定することもできない。ただ、私が思ったのは米兵の暴行事件、「あたご」事件、そして今回の三浦氏の逮捕の3つに共通するのは、「アメリカの横暴」が背景にあるということである。
 暴行事件については言うまでもない。日米安保体制と在日米軍の存在が「公認された殺人者」たるアメリカ兵を野放しにし、市民生活を脅かした。「あたご」事件は日本の自衛隊の問題だが、そもそもイージス艦は日米軍事一体化の過程で、特にアメリカ主導のミサイル防衛システムの構築と関わって建造されたことを考えると、結局はアメリカの軍事戦略が事件の遠因とも言える。いずれも日本に従属的軍事パートナーの役割を押し付けるアメリカの対日政策が通奏低音となっていることは疑いない。

 そして、今回の「ロス疑惑」の件。確かに事件そのものはアメリカ領内で発生したので、今もアメリカには裁判権があるし、ロスアンゼルスを含むカリフォルニア州の州法では殺人罪に公訴時効がない。逮捕や起訴の手続きは合法だろう。
 しかし、日本ではすでに無罪が確定し、時効も過ぎている。日本国憲法第39条は「同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われない」と、国際人権規約もB規約第14条で「何人もそれぞれの国の法律及び刑事手続に従って既に確定的に有罪又は無罪の判決を受けた行為について再び裁判され又は処罰されることはない」と定めている。いわゆる一時不再理の原則で、条文上は別の国での裁判や処罰を妨げないが、本来刑事訴訟については慣習上、国際間でも適用されるべきである。
 さらに日米間には犯罪人引き渡し条約が存在する。条約第4条は「引渡しを求められている者が被請求国において引渡しの請求に係る犯罪について訴追されている場合又は確定判決を受けた場合」は引き渡しを行わないと定めている。この規定故にアメリカ側はたとえ「新証拠」があっても、日本側に「確定判決を受けた」三浦氏の身柄引き渡しを要求することができない。条約上身柄引き渡しができない者を、たまたま自国領内にいたからという理由で逮捕勾留するのは人道上疑問が残る。

 「ロス疑惑」の再燃で在日米軍や自衛隊の不祥事が霞むのを心配するのならば、むしろこれらをつなぐ共通項である「アメリカの無法と横暴」を強調する必要があるだろう。

《追記》

 本文中「一時不再理」は誤字で、正しくは「一事不再理」でした。おわびして訂正します。

【関連リンク】
きまぐれな日々 突然の三浦和義氏再逮捕と「9.11」の因縁
日本国憲法-法庫
市民的及び政治的権利に関する国際条約(B規約)第三部-外務省
日本国とアメリカ合衆国との間の犯罪人引き渡し条約-国際法研究室
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by mahounofuefuki | 2008-02-25 12:31

もはや日米地位協定すら守られていない現実

 在日米軍の軍人による相次ぐ刑事事件(フィリピン人女性への暴行事件まで!)により、改めて日米地位協定の問題性が浮き彫りになっているが、この植民地的な日米地位協定すらもはや守られていない現実を突きつけられるニュースがあった。
 以下、毎日新聞(2008/02/20 12:40)より(太字強調は引用者による)。
 在日米軍海兵隊の輸送船「ウエストパック・エクスプレス」(2025トン)が20日午前、北海道釧路市の釧路港に接岸した。29日に矢臼別演習場(別海町など)で始まる日米共同訓練に向けた装備を陸揚げし、数十人の兵員も上陸した。日米地位協定に基づき同市へ事前通告した寄港期限を既に過ぎている上、上陸予定者も通告の「7人」を大幅に上回る「約束違反」の入港となった。

 釧路市港湾空港課によると、米軍は8日、海上保安庁を通じて15~18日と22~25日の間に同港へ2回寄港したいと通告。市は受け入れた。ところが、米軍は15日になって1回目の寄港を18日正午~19日午後4時と変更したが、19日は入港せず、同課は情報収集に追われた。

 20日朝、同課に非公式に同日午前入港と情報が入り、同港西港区第3ふ頭西側岸壁に職員7人を配置した。輸送船は同午前10時半ごろ、入港し、同11時過ぎに接岸した。陸上自衛隊のトラックやバスが待つ中、ジープ型の車やトラックなどの車両十数台が上陸。兵員も徒歩で上陸した。(後略)
 日米地位協定第5条は、アメリカが公の目的で運航する船舶について「日本国の港に入る場合には、通常の状態においては、日本国の当局に適当な通告をしなければならない」と定めており、いつ入港し、何人上陸するか港湾管理者である自治体に事前通告しなければならない。
 ところが、今回海兵隊は釧路入港に際して、事前に通告した19日に入港せず、結局正式通告のないまま翌20日に入港したのである。しかも上陸人員は当初通告では7人のはずが、蓋を開けたら数十人。自治体に対し平然とウソをついていたのである。アメリカ軍がいかに地位協定を軽視しているか、まざまざと見せつけられた事件だ。

 北海道新聞2008/02/21朝刊によれば、釧路港の当該埠頭は当面商船の使用予定がないということだが、もし商船の入港とかち合っていたらどうなっていたか。以前、当ブログでも小樽港で商船の入港予定を変更させてまで、アメリカ海軍の艦船を入港させるよう外務省が小樽市に圧力をかけていたことを伝えたが、地位協定の遵守をアメリカ側に毅然と要求すべき政府がまったく責任を放棄しているために、地方自治体がそのツケを支払わされているのである。

 こうしたことは各地で日常茶飯事であり、特に米軍再編と日米軍事一体化が進むほど、ますます多発するだろう。日本列島そのものがアメリカ軍やりたい放題の「占領地」である実態を直視する必要があるだろう。

【関連記事】
商船を追い払ってまでアメリカ軍艦を寄港させる外務省
ナショナリストが在日米軍に期待するもの

【関連リンク】
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(日米地位協定)-外務省
ウエストパック.エクスプレスから下船のアメリカ国海兵隊.矢臼別演習場へ|動画投稿・動画共有 FlipClip
釧路港第3埠頭から公道を走るアメリカ海兵隊の車列|動画投稿・動画共有 FlipClip
*2月20日に釧路に上陸した海兵隊の様子を撮影した映像。
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by mahounofuefuki | 2008-02-21 12:35

ナショナリストが在日米軍に期待するもの

 日米安全保障条約をサンフランシスコ講和条約と抱き合わせで締結した当時、日本の政治家や官僚や資本家たちは、本心ではアメリカ軍が日本領土内に一方的に駐留を続けることを屈辱と感じ、日米安保体制をあくまでも将来の大日本帝国復活のための「臥薪嘗胆」と考えていたはずだ。
 なにしろ日本では敗戦を挟んで指導者が交代したわけではなく、「大東亜共栄圏」を唱え、「鬼畜米英」と呼号した連中が戦後すぐに国家中枢に復帰した。自己と国家を同一化し、自己肥大幻想を国家の膨張主義に「昇華」させる彼らが、在日米軍という「異物」を自らの体内に抱えることは矛盾以外のなにものでもない。

 そんな彼らがどうやって日米安保体制を自分自身に納得させたかというと、「共産主義」の「脅威」から日本を「守る」ためにはアメリカの力が必要だという論理を受け入れることであった。
 ソ連が消滅し、中国が今や新自由主義顔負けの競争社会になってしまった現在では想像しにくいが、1960年ごろまで「共産革命」は現実に「明日にもありうる」事態であり、明治・大正生まれの人々にはロシア革命の記憶はいまだ鮮明だっただけに、そうした論理は受容されやすかった。実際は講和交渉の過程を見れば、無期限・無制限に日本列島のどこにでも軍事基地を設置できる特権を離したくないアメリカに強引に押し切られたというのが真相だが、条文上ではあくまでも日本側が米軍の駐留を「希望」したという体裁で隠された。

 西園寺公望や牧野伸顕ら戦前の親英米路線を引き継ぐ吉田茂とその一党のように、日米安保体制を国際安全保障体制の延長ないしは代替のシステムとして理解した人々も多かったが(そして今もそれが主流)、一方で在日米軍を撤退させて完全な「自主防衛」の実現を目標とする人々も少なくなかったはずだ。
 たとえば日本がアメリカのために再軍備を進め、集団的自衛権を行使する代わりに、在日米軍に撤退してもらうという構想は、鳩山一郎内閣の外務大臣だった重光葵が1955年にアメリカ側へ提起したことがある。この時、ほかでもない昭和天皇が在日米軍の撤退に反対した。重光の日記に記された「日米協力反共の必要、駐屯軍の撤退は不可なり」という昭和天皇の言葉を読んだ時、背筋が凍った記憶がある(象徴天皇制のもとでも戦前同様国政への介入を続けていたことにも驚かされた)。昭和天皇は確かに「革命」を恐れていたのだ。彼は日本の「国民」を微塵も信用していなかった。だから在日米軍に「国体」を守ってもらおうとしていたのだ。重光と昭和天皇、どちらの路線が生き残ったかは言うまでもない。

 その後、1960年の安保改定(この時はじめてアメリカの日本防衛義務が盛り込まれた。それまでは名実ともにアメリカは「義務なき特権」をもっていた)を経て、日本外交は「とりあえずアメリカに従っておけば間違いはない」という思考停止が常態化した。1950年代には集団的自衛権を行使する代わりに在日米軍を撤退させるという思考がパワーエリートにあったが、21世紀の今日では何の国家的な「見返り」もなく集団的自衛権の行使を推し進め、自衛隊とアメリカ軍の一体化を平然と容認する。
 それはこの50年ほどの間に米軍が日本駐留を続けることでの受益層が形成されたことを意味するが(昨年発覚した防衛省汚職でその一端は明らかになった)、「愛国」を自任する右翼ナショナリストの主流はなぜかそんな層を「売国奴」と攻撃しない。右翼ナショナリストは逆に日本社会では今やマイノリティである左翼を攻撃し、かつてのソ連の「爪の垢」ほどの力しかもたない「北朝鮮」に怯え、米軍基地に反対する動きを誹謗中傷する。アメリカに対峙する勇気のないとんだチキンぶりだ。米軍基地の存在を許容している者のどこが「愛国者」なのだ?

 今回の沖縄での忌まわしい事件に対する右翼メディアやその追随者たちの反応を見ると、ある意味で日本の近代ナショナリズムは終焉したのだという感慨をもたざるをえない。事件に心から怒っているのは、どう見てもナショナリストとは呼べない人々ばかりだ。元来ナショナリズムは「異人」に「邦人」が傷つけられた時にこそ噴出するノルマントン号事件以来それは一貫していた。まかり間違っても「暴行事件は基地反対派のハニートラップ」などという被害妄想的な発想は出て来なかった。
 沖縄という不当にも「内国植民地」として扱われた地域の事件だから、というわけではあるまい。「本土」で同様の事件があっても同じ反応だろう。自称「愛国者」たちは昭和天皇と同様、自国の民衆を「同胞」とは考えず、自らの妄想で過大評価している「狡猾な左翼」という仮想敵からアメリカ軍に守ってもらうことを期待しているのだ。そうでなければ、航空自衛隊の航空総隊司令部が横田の米軍基地に移転するという前代未聞の主権放棄行動をも支持するのは説明がつかない。

 人類に「異人」と「邦人」という線引きをするのがナショナリズムならば、現在のナショナリストにとってアメリカ軍人こそが「邦人」で、もはや日本の一般庶民は「異人」でしかないのだろう。一見矛盾するグローバリズムとナショナリズムの親和性を解くカギはこの点にあるのかもしれない。
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by mahounofuefuki | 2008-02-17 11:13

「国民」を守れなかった日本政府の責任に口を閉ざす不思議

 沖縄のアメリカ海兵隊所属の下士官が女子中学生を暴行した事件。
 どんな事件であっても警察発表を鵜呑みにせず、初発の報道を疑うのが私の習わしなので、事件の内容について語ることはない。特に強姦罪が適用されている事件ということを考えると、メディアが大々的に報道したり、不特定多数の人々が政治的思惑や好奇心から事件に触れること自体が、被害者へのセカンドレイプなのではないかという思いが私にはあり、口が重くならざるをえない(またしても右翼メディアやシニシズム的大衆による誹謗中傷が始まっているようだし)。

 今回の件で私が気になるのは、日本政府の対応である。
 事件翌日の2月11日、まず外務省北米局長がアメリカ大使館次席公使に電話で抗議を行っている。ドノバン次席公使は「米側としても事態を深刻にとらえており、日本側の捜査に全面的に協力していく」と述べたという。また外務省の沖縄担当大使も海兵隊司令官にやはり電話で再発防止と綱紀粛正を要請し、ジルマー司令官は「綱紀粛正を徹底させたい」と述べたという(時事通信2008/02/11 16:44、朝日新聞2008/02/11 15:12)。さらに防衛省地方協力局長も、在日米軍司令官に同様の申し入れを行ったという(毎日新聞2008/02/12 12:15)。

 閣僚も相次いで今回の事件について「遺憾」の意を発言する。まず11日には岸田文雄沖縄担当大臣が「強い憤りを感じている」「(日米地位協定の見直しについて)まずは綱紀粛正、再発防止の議論をした上で、対応が必要なのかどうか考えなければいけない」と記者団に述べた(朝日2008/02/11 18:06)。岸田氏は翌日も記者会見で、地位協定について「地元の意見をしっかり聞いた上で、運用改善の問題についても考えていきたい」と語った(時事2008/02/12 11:46)。
 翌12日になると次々と閣僚が発言をする。閣議後の閣僚懇談会では福田康夫首相が「過去にも同種の事案があった。大変大きな問題で、しっかりと対応しなければいけない」と閣僚らに指示したという。首相はその後の衆院予算委員会でも「政府としても米側としっかりと交渉していく。事実関係の究明、再発防止のために、できるだけのことをしていく」と述べた(朝日2008/02/12 11:49)。

 閣議後の記者会見では、町村信孝内閣官房長官が「極めて遺憾な事案と言わざるを得ない。法と証拠に基づき適切に処理する」(時事2008/02/12 11:13)、泉信也国家公安委員長が、「沖縄県警で米側の協力を得ながら、法と証拠に基づき捜査を進めている。類似事案は過去にも起きており、外務省などで米軍側に外交上の申し入れをしているが、厳重な対応をしてほしい」(時事2008/02/12 10:19)、石破茂防衛大臣が「日米同盟の根幹にかかわる」(時事2008/02/12 11:46)、渡辺喜美金融・行革担当大臣が「沖縄の皆さんの心を逆なでするような事件で許しがたい」、冬柴鉄三国土交通大臣が「こういう事件は日米関係に大きな影響がある。関係者は肝に銘じてほしい」などと述べた(毎日、前掲)。

 日米関係を所管する高村正彦外務大臣は、日米関係への影響について「県民感情の問題。影響がないことはあり得ない」「綱紀粛正や再発防止により、日米関係への悪い影響を少なく収められるかどうかだ」(毎日、前掲)と述べる一方、地位協定の見直しについては「今回のことと地位協定は直接の関係はない」と否定した(時事 2008/02/12 11:46)。
 一方、外務省の薮中三十二事務次官は、アメリカの臨時代理大使を呼び、「綱紀粛正を再三求めてきたのにも米兵が逮捕されたことは極めて遺憾だ」と強く抗議した。アメリカ側は捜査の全面協力を約束、在日米軍副司令官は「米軍は性的暴力を一切許容しない」と述べたという(共同通信2008/02/12 19:52)。

 こうして並べてみると、何となく日本政府の方向性が見えてくる。
 まず、事件への「怒り」を沖縄と共有しているという姿勢をアピールしていること。これは1995年に、女子小学生暴行事件を機に沖縄で空前の反基地運動が起こったことを念頭に置いて、「反米」が「反政府」に転化するのを防ごうとする意図がある。福田首相らが「過去の類似の事案」に言及したのも、「過去」の苦い記憶を気にしている証である。昨年の教科書検定問題で改めて沖縄の人々の連帯と行動力を思い知ったことも考慮しただろう。沖縄担当大臣に地位協定の見直しに言及させるリップサービスまでやらせている(しかし外務大臣が否定するのも忘れない)。

 次に、事件をあくまでも日米同盟の強化にとって「水を差すものだ」という考え方を前提にしていること。実際は「日米安保体制のせいで事件は起きた」のに、日本政府は「事件が日米安保体制を損なう」という倒錯した論理を用い、アメリカ軍が駐留する体制そのものへの批判が生じるのを避けようとしている。特に米軍再編への影響を恐れているのは、高村外務大臣の発言に顕著で、何とかうまく収まって欲しいという意図が丸見えである。

 そして何よりも問題なのは、事件を起こしたアメリカ軍を批判はするが、「自国民を守れなかった国家責任」については全く触れていないことである。国家が「国民を守る責務」を負っているのならば、駐留軍隊の獰猛な軍人からいたいけな少女を守れなかったのは、国家の名誉にかかわる問題である。それにもかかわらず誰もそのことを問題にしないのは、現行の国家側には「国民」を守る意思などさらさらないことを図らずも示したといえよう。
 首相や防衛大臣の口から、たとえでまかせでも「政府が国民の安全を維持できなかったことは誠に遺憾である」くらいの発言もできないのは、日米安保体制が「日本を守る」という建前とは裏腹に、実際は日本の住民の安全を脅かしていることを認めたくないからである。

 岩国の艦載機移転問題もそうだったが、現在の日米間の安全保障問題の矛盾は、実際に在日米軍が駐留する地域で噴出している。問題はそれらがいずれも個々の地域の特殊な問題として扱われ、全国的な問題に発展しないことである。「地域問題」を「全国の問題」に変えられるかどうかが、日米安保体制の矛盾を是正するための鍵となるだろう。
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by mahounofuefuki | 2008-02-12 22:37

商船を追い払ってまでアメリカ軍艦を寄港させる外務省

 日米安保体制とはそもそも日本がアメリカに軍事基地を提供する代わりに、アメリカが日本の安全を保障するというシステムで(アメリカに守ってもらう代わりに、便宜を提供するとも言えるが)、パワーポリティックス的観点に立っても、あくまでも双方にとってメリットがなければならない関係である。
 しかし、沖縄をはじめ米軍基地のある地域の現状は、アメリカの「加護」の代償としてはあまりにも大きく、平穏な住民生活の妨げになっている。安保体制の実情は単にアメリカが都合よく日本列島を軍事拠点として利用できる制度であって、現状では日本側にはほとんどメリットがないのではないかと言わざるをえない。岩国市長選挙の争点も、アメリカだけにメリットがある状態の是非が問われていると言えよう。

 そんな一方的な日米関係を象徴するような出来事が北海道小樽市で起きた。経過は次の通りである。

 今年1月16日、アメリカ海軍第7艦隊の旗艦「ブルーリッジ」が2月7~11日に小樽港に寄港したいという要請が小樽市にあった。ブルーリッジはこれまで何度も小樽に寄港しているが、今回は指定期間中にパナマ船籍などの大型商船が岸壁(バース)を利用する予定があったため、小樽市長は1月28日に入港を断る決定をし、小樽海上保安部を通してアメリカ側へ伝えた。小樽市は2000年にもアメリカ軍艦の入港を断った事例があり、何も問題はないはずだった(北海道新聞2008/01/28 13:43)。

 ところが、その直後から小樽市側に対し、外務省北米局の課長補佐クラスから電話が10回近くあり、さらに2月1日には同省日米地位協定室長が市役所を直接訪問して、ブルーリッジを寄港させるよう圧力をかけたという。外務省側は軍艦よりも商船を優先した小樽市の判断を「港湾管理者としての能力に欠ける」とまで言い放ったという。
 外務省が港湾管理者である地方自治体の権限に介入する法的根拠はない。山田勝麿市長は「商船を追い払ってまで入れるとしたら、まるで軍港だ」と話し、商船優先の方針を改めて回答した(同前2008/02/01 07:12)。

 事態はその1日に急転する。当初2月8~13日に入港を予定していたパナマ商船の代理店が、入港予定が10日ほど遅延すると連絡してきたのである。バースが空いた以上、ブルーリッジの寄港を拒否する理由がなくなった小樽市は、アメリカ側へ入港可能を通知した。
 商船の予定変更について小樽市港湾部では「理由はわからない」としているが(同前2008/02/02 07:31)、北海道新聞2008/02/06朝刊社説は「商船の日程変更を国が働きかけたのでは、と勘繰りたくなる」(太字は引用者による)と指摘している。
 結局、アメリカ側の当初の要求通り、ブルーリッジは2月7日に小樽港へ寄港する見込みである。

 要するに、自治体が商船を優先してアメリカ軍艦の寄港を断ったところ、外務省が法的権限もないのに軍艦を寄港させるよう圧力をかけ、自治体がそれでも姿勢を変えないと、不透明な方法で商船の方の予定を変更させてまで、アメリカ軍艦の寄港をごり押ししたのである。

 山田市長は「まるで軍港」と言ったそうだが、これでは「植民地の軍港」である。この事件が示すのは外務省がもはやアメリカ政府・軍の代理人であって、独立国の外交当局ではないという実態であろう。
 さらに問題はこんな地方自治と外交の独立性を破壊するニュースを地元のメディアしか報じていないことだ。近年、日米安保体制の矛盾を示す問題はすべて「地域の問題」に還元され、「全国の問題」や「国家の問題」にならなくなっている。日米の軍事一体化がどんどん進むなかで、こうしたことは日本のどこでも起こり得る。単なる一地域の問題と捉えてはならない。
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by mahounofuefuki | 2008-02-06 22:25

中堅官僚のアメリカ派遣制度!?

読売新聞(2007/12/02 09:56)によると、人事院は来年度、中堅官僚がアメリカ政府の省庁に派遣され、省庁の一員として働く研修制度を新設するという。
人事院は今後派遣先をEU諸国などにも拡大するとしているが、まずアメリカを優先するあたり、現在の日本政府の指向性がはっきりしていよう。

まだ詳細は不明だが、この制度はますます高級官僚の対米従属傾向を強める結果になるような気がする。
1970~80年代にアメリカの大学や研究機関に留学した経済学者や財政官僚が、アメリカ流の新自由主義を身につけ、日本で「構造改革」を主導したことを思い起こす。
アメリカの官庁で働き、アメリカの行政のやり方を「スタンダード」と思い込まされ、日本に帰国後、日本でもアメリカと同じ政策を実行する、という未来が容易に想像できる。
あるいは、アメリカに派遣中にアメリカ側の意のままにコントロールされるような人格にされ(たとえば弱みを握られ、情報提供者にさせられる)、アメリカ政府はこうした官僚を通して日本政府に対し、政策立案段階で介入することも可能になるのではないか。

小さなニュースだが、歪んだ日米関係の永続化を図るための謀略になりかねない危険性をもっているという点で、決して見逃すことはできない。

【関連リンク】
人事院
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by mahounofuefuki | 2007-12-03 12:12

アメリカ大使館が賃貸料を滞納していた

今日の朝日新聞の電子版(2007/10/29 10:01)を読んで、びっくり仰天した。
なんと在日アメリカ大使館が、日本の国有地の賃貸料を1998年以降未納だというのである。

記事によれば、アメリカ大使館が日本の国有地を借用する契約は、明治期の1890年に結ばれ、1974年と1983年に賃貸料が引き上げられた。1997年までの賃貸料は年額250万円だったが、1998年以降、賃貸料の段階的値上げを提示したところ、アメリカ政府は反発し、支払いを拒否しているという。今年12月に債権の時効を迎えるというから、それまでに解決しなければ民事訴訟に打って出るしかなくなる。

調べてみると、この問題は2005年に国会で社民党の照屋寛徳衆院議員が質問している。
朝日の記事に書かれた内容は、2年前に既に表に出ていたのである。
照屋寛徳「在日米国大使館敷地等の賃貸料に関する質問主意書」
小泉純一郎「衆議院議員照屋寛徳君提出在日米国大使館敷地等の賃貸料に関する質問に対する答弁書」
照屋寛徳「在日米国大使館敷地等の賃貸料に関する再質問主意書」
小泉純一郎「衆議院議員照屋寛徳君提出在日米国大使館敷地等の賃貸料に関する再質問に対する答弁書」

国会で取り上げられていたにもかかわらず、恥かしながら今日まで、全く知らなかった。
日米関係は周知の通り非常に不均衡だが、今回の事例はその最たるものだろう。赤坂の一等地をわずか年額250万円で長らく貸し出していたのも異常だが、いざ賃貸料を値上げすると、支払いを拒否するという傲慢さ。アメリカ政府は日本でやりたい放題である。

こんなことがまかり通るのは、日米安全保障条約の歪みに起因している。
日米安全保障条約は本来、日本がアメリカに基地を提供する代わりに、アメリカは日本を防衛するという関係なのだが、いつのまにか基地の存在は忘却され、アメリカに「守ってもらう」代わりに、日本はアメリカに過大な便宜を提供する関係になってしまった。
現実には、アメリカにとって日本に基地を確保できるかどうかは戦略上死活問題なので、基地をエサに日本側はアメリカに強く出ることも可能なのだが、冷戦時代以来、日本の支配層は中国やロシアを敵視し恐怖しているために、たとえブラフでも「米軍はいなくてもいいよ」という姿勢をとれず、「米軍にいてもらわないと困る」と弱みを曝け出している。

今後、日本政府内で、特に外務省あたりがアメリカへの妥協を模索するだろうだが、この際妥協することなく、当初の方針を貫いてほしい。

【関連リンク】
地代を滞納し続ける米国大使館。それを許し続ける日本政府 (天木直人のブログ)
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by mahounofuefuki | 2007-10-29 16:28

アメリカに切り捨てられた「拉致家族」

外交とは非情だ。改めてそう感じざるをえないニュースが入った。
25日に在日アメリカ大使館のジョーダン一等書記官が、「拉致被害者家族会」と「拉致被害者を救う会」の代表者を招き、アメリカの朝鮮に対するテロ国家指定解除問題について面談したという。
毎日新聞 (2007/10/26 03:06)によれば、次のようなやりとりがあったという。
家族会 「米国側が指定解除の条件とする『核の無能力』とは具体的に何か」
書記官 (明確な回答をせず。)
家族会 「解除に拉致問題は無関係なのか」
書記官 「拉致は2国間の問題。その視点で議論しよう」
要するに、アメリカ政府は拉致問題に関知しないと言ったようなものである。
朝鮮に対する「封じ込め」政策を採っていた間は厚遇してきたが、政策転換で用済みになった途端、まるで三行半を突き付けたようなものである。
使える時は使うが、邪魔になれば切り捨てる。この点、アメリカ政府は徹底している。

バカの一つ覚えのように「経済制裁」を提唱し、日本外交の取りうるオプションをさんざん狭め、自分たちの首を絞めてきた「家族会」「救う会」だが、頼みの安倍晋三はいなくなり、アメリカにも無残に切り捨てられた。昔日の「拉致ヒステリー」時の勢いはもうどこかへ飛んでしまった。
日本の植民地支配の「清算」に不誠実な右翼ナショナリストに丸めこまれ、余計「拉致問題」の解決を遠のかせたのは、「家族会」の責任である。
ことここまでこじれれば、もう日朝間の関係改善は非常に困難である。
中国との国交回復の時と同様、またしてもアメリカにハシゴをはずされ、日本はアメリカの後追いをするだけだろう。

ただようやくこれで、拉致被害者支援にかこつけて増長していた右翼グループが外交に介入することもなくなるだろう。それが、アメリカの力によるところが気に入らないが、この際、仕方がない。
開戦前夜のようなヒステリックな排外主義世論が跋扈した2002年のような事態は、もう2度と起こしたくない。

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by mahounofuefuki | 2007-10-26 20:55