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「金融サミット」はそんなにダメだったのか?

 G20による「金融サミット」は16日に首脳宣言を採択したが、今朝の新聞各紙やweb上の専門家筋の議論を読むとあまり評価されていないようで、「具体策なし」「成果なし」「問題先送り」という批判も多い。しかし私は、はて今回の宣言がそれほど期待外れだったか? むしろ世界的な市場放任路線の終焉を完全に決定づけたこと自体に意味があるのではないか? と考えるのだがどうだろう。

 そもそもずいぶん前から首脳レベルの国際会議では具体策は話し合われないのが通例で、実務レベルで合意した内容を追認することで何よりも国際協調を優先してきたのは、今回に限ったことではない。突然首脳会議の場で「想定外」の提案が出てきても場を混乱させるだけだろう。その点で「具体策なし」というマスコミの評価は厳しすぎるし、その批判はあらゆる首脳会議に向けられるのではなければ公平性を欠く。

 今回の宣言は、「即効的な内需刺激の財政政策」を各国に求め、「すべての金融市場、商品、参加者が適切に規制」されることを原則として明らかにした。特に国際的な金融権力の最も重要な要素と目される格付け会社へ「強力な監督を実施」すると明記したのは、非常に意味のあることだ。国際社会が市場万能と緊縮財政を至上とするこれまでの政策基調から、市場への規制・監視強化と財政出動を容認する方向へはっきりと舵を切ったのである。それだけでも歴史的な転換ではないのか。

 会議では、ドル基軸通貨体制の変革すら射程に入れる欧州勢や、もはやその存在を軽視できなくなった「新興国」の発言力が高まる一方、アメリカ政府の威信低下は覆うべくもなかった。日本政府は依然としてアメリカの主導権を前提として行動したために、会議では全くと言っていいほど存在感はなかった。IMFへ10兆円もの資金を提供したのも、国際的には例の如く「便利な財布」扱いされている疑念なきにしもあらずである。麻生首相は自画自賛しているが、むしろ今回のサミットの結果は日本政府の対米追従路線に対し、完全な政策転換を迫ったとさえ言えよう。少なくとも今後の日本の経済政策を制約するのは間違いない。

 元経済企画庁長官の宮崎勇氏は最近次のように述べている。
 私は財政政策も金融政策も、過去10年以上、日本では機能してこなかったと思うのです。財政というのは、本来、景気調整の役割もあるし、社会資本の充実という役割もあるし、最も重要な役割として所得の再分配機能があります。この3つがほとんど機能しなかった。それに引っ張られて、金融政策のほうもまったく動けずに、低金利政策をずっと続けていたわけでしょう。 (宮崎勇「必要なのは内需拡大とセーフティネット」『世界』2008年12月号、p.89)

 今回の首脳宣言は、そのような政府が何もしない、財政政策や金融政策が機能しない状況を否定したと言える。今後は反対に景気調整や社会資本の充実や所得再分配を強化するための政策が必要だということになる。「内需拡大」には国内市場の立て直しが急務であり、その点でも雇用待遇差別や低賃金は抜本的に是正されなければならない。

【関連リンク】
金融サミット首脳宣言の要旨 – 47NEWS(共同通信2008/11/16 15:50)
http://www.47news.jp/CN/200811/CN2008111601000240.html
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by mahounofuefuki | 2008-11-17 20:59

期待が大きいほど裏切られた時の反動が怖い

 アメリカ大統領選挙は民主党のバラク・オバマ候補の当選で終わったが、これほど全世界からその勝利を歓迎されたアメリカ大統領は今まで例がないだろう。その原因は何と言ってもジョージ・ブッシュ現大統領のあまりのひどさにあるが、単に「ブッシュよりまし」というだけでなく、1人の人間として余人をもって代えがたい「魅力」があることも確かで、民族的マイノリティであるという属性や卓越した演説能力といった表層だけではない、言葉では言い表せない「何か」を感じる。

 とはいえ選挙運動におけるポピュリズム的な動員手法は、かつてのファシズムを彷彿とさせるものであったし、分断されたアメリカの国民統合の回復を強調する姿勢は、一歩間違えれば排他的なナショナリズムに通じる。金融危機に際しても「ウォール街よりも市民を救済せよ」という声に反して、金融資本救済の政治的合意形成に動いた。伝えられるところでは共和党からも入閣があるようで、いわば「挙国一致」政権を指向しているとも考えられる。危惧すべき点も少なくないのである。

 私が何よりも不安なのは、アメリカ内外のオバマ氏への「期待」があまりにも過剰なことにある。貧困の解決、景気の回復、泥沼化したイラク戦争やアフガニスタン戦争の処理、現政権が消極的な温暖化対策などなど、人々はオバマ政権に、というよりオバマその人に多くのものを期待している。しかし、アメリカに限らないが、複雑化した現代の政治構造の下では単にトップや政権が交代したところで、根本的な変革は容易なことではない。ましてや新政権が「挙国一致」を志向するならば、既存の利害関係に気を配らねばならない。保守二大政党制のため議会に「左翼」が存在しないアメリカでは、真に民衆の利害を政治に媒介する回路がない以上、オバマ政権も従来の政治の枠から出ることはないのではないか。

 人は初めから期待していないものには見返りを求めない。逆に期待が大きいほど見返りへの要求も高くなる。オバマ氏がこれらの期待に応えられなかった時、期待が大きい分「裏切られた」という思いは人一倍強くなる。その反動が不安である。オバマ氏の演説を聴きながら涙まで流している人を観るたびに、私の不安はますます募る。裏切られた時の反動がどのような形で噴出するか。それが世界を危険な道に誘うものである可能性は考慮しなければならない。

 日米関係に関しては、すでに一方的にオバマ氏へ期待(あるいは反発)していた向きの思いとは裏腹に、先の麻生首相との電話会談で「日米同盟」の堅持・強化を約束した。オバマ政権が公約通りアフガニスタンでの「テロとの戦い」を増強する場合、日本の自衛隊派遣への圧力が強まることもあろう。そもそも共和党も民主党も一貫して日米安保体制を強化する方向性を持続してきた。安保条約の実質的な改定だった「周辺事態」に対する新ガイドラインの制定はクリントン民主党政権下で行われた。軍事的にも経済的にも新政権が「内向き」志向を強めれば、「同盟国」に対する負担を強く求めていくこともありえよう。

 現代アメリカの宿命的な病とも言える「戦争と貧困」について言えば、一度の政権交代程度で是正できるほど甘くはないと思っている。故に私はオバマ政権に対し特に期待はない。一方的に自らの願望をオバマという一人格に投影するようなことは慎まねばならない。
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by mahounofuefuki | 2008-11-08 15:29

インド洋の給油支援と朝鮮への重油支援~ちぐはぐな日本外交

 インド洋での海上自衛隊の給油支援活動を延長するテロ特措法改正案が衆議院を通過した。報道によれば、参議院では2日間の委員会審議で採決し、今月30日にも衆院再議決により成立するという。河村建夫内閣官房長官が「今回は民主党の理解、戦術もあった」と指摘したように(共同通信2008/10/21 17:25)、民主党が昨年とは打って変わって事実上抵抗を放棄したことで、給油延長は確実になってしまった。

 言うまでもなく海自の給油活動はアフガニスタンにおけるアメリカ軍などの軍事行動の兵站支援であるが、現行の憲法解釈との整合性や日本の外交・安全保障上の必要性において重大な疑念があり、本来国会で徹底的に審議しなければならない問題である。インド洋派遣以来、海自の不祥事が多発していることとの関係も追及しなければならない。しかし、今国会では自民・公明・民主各党の「阿吽の呼吸」により極めて不十分な結果になりそうである。

 早期解散のためには仕方ない、民主党政権になればすぐに活動は中止になるだろう、などという考えは甘すぎる。小沢一郎氏はまるで所信表明のようだった今国会の代表質問でも「日米同盟」の堅持を声高に強調しており、今回の措置も「民主党政権」が日米軍事一体化路線を変更する意思がないことを内外に示して、財界やアメリカ側に「安心」を与える目的があったと見るのが自然である。万に一つ給油を中止しても、今度はアフガン本土への自衛隊派遣や恒久的な自衛隊派遣を可能にする新法制定という代替政策を採るだろう(*)。民主党への政権交代を期待する人々には日米安保体制の強化に批判的な人も少なくないはずだが、本当にそれでよいのだろうか?

 *ちなみに20日の衆院テロ対策特別委員会で民主党政調会長の直嶋正行氏は、国連憲章第42条の場合であれば海外での武力行使は可能とする見解を示し、「そういう方針にもとづいて政権を担当させていただければ、作業に着手するということになる」「状況によって憲法解釈を変えることはある」と明言した(しんぶん赤旗2008/10/21)。いよいよ馬脚を現したと言えよう。

 安全保障問題ではもう1つ注意を要するニュースがある。日本政府は朝鮮に対するエネルギー支援をオーストラリア、ニュージーランドなどに肩代わりしてもらう方向で外交調整しているという。「これまでにオーストラリア、ニュージーランドが1000万ドル(約10億円)ずつ、合わせて重油3万トン余りに相当する資金提供を伝えてきた。英国などとも調整中で、それでも足りなければ米国と韓国も拠出を検討する」(共同通信2008/10/21 18:35)という。

 もともとこの重油支援はアメリカ政府が要請していたもので、これを蹴ったのは皮肉にもアメリカ追従が「宿命」ではなく、日本政府にやる気さえあれば独自の外交政策を行いうることを証明しているが、それはさておき、一方で日本の安全保障上喫緊の脅威とはとても言えないアフガンでの「テロとの戦い」には、「米国の、米国の油による、米国のための無料ガソリンスタンド」というまるで封建時代に家来が殿様に提供した「軍役」のようなサービスを行い、他方で目の前の脅威である朝鮮の「核」を廃棄させるためのプロセスに必要なエネルギー支援では、諸外国に「肩代わり」させるというのは発想が逆転している。

 単純にパワーポリティクスの観点に立っても、6カ国協議に参加していない国々が重油支援に加わることで、朝鮮問題に対する発言権を強めることになり、しかも日本がこれら諸国に「借り」を作ることは決して得策ではないはずだ。日本政府は相変わらず拉致問題を理由に「圧力」という名の「何もしない」路線を続けているが、アメリカ政府の「テロ支援国家」指定解除の件を持ち出すまでもなく、とっくに拉致問題は現実の国際政治においては日朝2カ国間限定の問題であり、もはや拉致問題を核問題に連動させても無力である。しかも「肩代わり」によって朝鮮は結局予定通りの重油を受け取る。キム・ジョンイル政権は重油を受けるにあたって日本に「借り」を作らずにすみ、拉致問題でカードを切る必要が減退するのである。

 インド洋での給油支援と朝鮮への重油支援という2つの「油」に関する日本政府のちぐはぐなリアクションが示しているのは、外交のリアリズムの欠如である。この体質は政権交代程度ではとても治らないだろう。

【関連記事】
最近の日朝関係について~拉致問題解決の糸口
進む自公民談合・協力体制~インド洋給油活動延長を黙認する民主党
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by mahounofuefuki | 2008-10-22 00:30

マイケル・ムーア「ウォール街の危機を救う方法」を全面支持します

 もうあちこちで転載されているようなので、いまさらかもしれないが、映画監督のマイケル・ムーア氏が「ウォール街の危機を救う方法」という書簡を公表している。

 ウォール街の危機を救う方法 ― マイケル・ムーアの手紙 - 薔薇、または陽だまりの猫
 http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/62766010f2311eff6f9a760fbd325eba

 先にアメリカ議会で一度は金融安定化法案が否決された時、議員の選挙事情のエゴだとか、公的資金投入しか方法はないとか、恐慌になったらどうするんだとか、いろいろ批判があったわけだが、「金持ちのマネーゲームのツケを何で社会全体で負担しなければならないんだ!」というアメリカ民衆の怒りはもっともだと私は思っていた。

 ムーア氏の主張はラディカルで非現実的に見えるかもしれないが、これを「ラディカル」「非現実的」という「ものさし」自体、グローバリズムに毒されて思考停止に陥っているとあえて言おう。累進課税と公的給付による再分配効果が極限まで低下した社会の歪みがここにある。金持ち増税、規制強化、犯罪的資本家の刑事訴追、役員報酬の制限、公的金融の回復・・・すべて今の日本社会でも必要なものばかりだ。ムーア提案に全幅の共感を表したい。
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by mahounofuefuki | 2008-10-07 00:00

米兵裁判権放棄に関する法務省文書の閲覧禁止について

 日本政府が1953年に、在日米軍の将兵による刑事事件に対する裁判権を放棄する密約をアメリカ政府と結んでいた、という報道を覚えているだろうか。
 同年締結の日米行政協定第17条は、米兵の「公務中」の犯罪はアメリカ側が、「公務外」の犯罪は日本側が1次裁判権を有すると定めていたが、実際の運用にあたっては「公務外」の場合でも衆目の集まる「重要」な事件を除き、日本政府は裁判権を行使していなかったことがアメリカの公文書公開で明らかになった件である(なお安保改定に際し、日米行政協定は日米地位協定に変わったが、裁判権条項は同じ17条に残っている)。
 今年5月に共同通信(2008/05/17 19:15)は次のように報じていた(太字引用は引用者による、以下同じ)。
 日本に駐留する米兵らの事件をめぐり、日米両国政府が1953年に「重要な案件以外、日本側は裁判権を放棄する」との密約に合意し、日本側がその後約5年間に起きた事件の97%の第1次裁判権を放棄していたことが、17日までに機密解除された複数の米側公文書で分かった。
 一連の米側公文書は58年から66年にかけて作成され、米国立公文書館で見つかった。
 このうち58年10月2日のダレス国務長官の在日米大使館あて秘密公電などによると、「日米安全保障条約改定に応じるに際し、日本側から裁判権放棄について意思表示を取り付けるべきだ」と秘密合意を公的にするよう提案した。
 これを受け、2日後にマッカーサー大使が岸首相と会談。大使は「53年の秘密議事録を明らかにせずに慣行として日本は裁判権を放棄してきたし将来も同様だと表明してほしい」と要請したが首相は応じなかった。
 また57年6月に国務省が作成した文書によると、53年以降、日本が1次裁判権を持つ約1万3000件の事件のうち97%の裁判権を放棄。実際に裁判が行われたのは約400件だけだった。
 安保改定に際してアメリカ側は「密約」を公にするよう要求したが、当時の岸信介首相は拒否、つまりあくまで内外に秘密にし続ける意思を示したという内容で、ここからその後も「密約」は効力を持ち続けていたことが容易に推定できよう。

 この件は他の「密約」と同様、アメリカの情報公開で明らかになったもので、文書管理と情報公開の遅れる日本側の関係文書はこの時点では一般には明らかにはなっていなかったが、先日、この裁判権放棄の「密約」の存在証明を補強する法務省の内部資料が明らかになった。
 以下、共同通信(2008/08/04 13:43)より。
 日本に駐留する米兵の事件をめぐり、1953年に法務省刑事局が「実質的に重要と認められる事件のみ裁判権を行使する」との通達を全国の地検など関係当局に送付、事実上、裁判権を放棄するよう指示していたことが、同省などが作成した複数の内部資料で分かった。
 法務省は地検に「慎重な配慮」を要請し、事件の処分を決める際は批判を受ける恐れのある裁判権不行使ではなく、起訴猶予とするよう命じていたことも判明。地検の問い合わせには日米地位協定に基づき、日本が第1次裁判権を行使できない「公務中の事件」の定義を広く解釈するよう回答していた。
 日本側の裁判権放棄については日米両政府による53年の秘密合意が明らかになっているが、合意を受けた具体的対応が分かったのは初。現在も米兵の交通事故など多くの事件が起訴されておらず、通達の効力は維持されているとみられる。
 内部資料は、法務省刑事局と警察庁刑事局が54年から72年にかけて作成した「外国軍隊等に対する刑事裁判権関係」などの実務資料。日米関係研究者の新原昭治氏や共同通信が入手した。
 しんぶん赤旗(2008/08/05)によれば、問題の通達は法務省刑事局長が1953年10月7日付で全国の検事長・検事正に宛てたもので、1972年3月に同局が作成した「合衆国軍隊構成員等に対する刑事裁判権関係実務資料」(マル秘指定)に収録されていたという。つまり、少なくとも1972年の時点でも「密約」は有効だったことがわかる。

 ところが、今日になって次のようなニュースが明らかになった。
 以下、しんぶん赤旗(2008/08/11)より(引用にあたり漢数字をアラビア数字に変換した)。
 日本に駐留する米兵の犯罪に関する日米間の密約を裏付ける法務省資料が、これまで国立国会図書館で閲覧可能でしたが、政府の圧力で6月下旬から閲覧禁止になったことが10日までに明らかになりました。
 利用禁止になったのは、1972年3月に法務省刑事局が作成した「合衆国軍隊構成員等に対する刑事裁判権関係実務資料」です。
 今年5月下旬、国会図書館に政府から、「(同資料を)非公開とする旨の発行者の公的な決定」が通知されました。同図書館は6月5日に関係部局長で構成される委員会で対応を協議し、「現時点では発行者の公的な決定と異なる判断を下す理由を見いだせなかった」として、同月23日に閲覧禁止を決定。同図書館のインターネット資料検索システム(NDL―OPAC)からも削除しました。
(中略)
 法務省資料には、米兵の犯罪に対して、第1次裁判権(日本側が優先的に裁判を行う権利)の大部分を放棄するよう指示した1953年の通達など、政府が存在を公に認めていない米兵に対する特権的事項が収録されています。同資料は「マル秘」指定になっていますが、古書店で販売されていたものを国会図書館が入手し、1990年3月に蔵書として登録しました。
 法務省資料の「発行元」である同省刑事局は本紙に対して、「本件についてコメントできない」としています。(後略)
 まず、5月の報道では不明だったマル秘資料の入手経路が明らかになった。1990年3月より以前に法務省(あるいは警察庁)もしくはその関係者から問題の資料が古書店に流出し、それを国立国会図書館が入手し、蔵書として登録したことがわかる。新原昭治氏らは国会図書館で正規の手続きを踏んで当該資料の複写を入手したのは間違いない。

 一方、新たな謎もある。アメリカ側文書の存在が報じられたのは5月17日。政府が国会図書館に非公開通知を行ったのは「5月下旬」。閲覧禁止が6月23日。政府の動きがいかにも早い。18年間も放置されていたのだから、政府が法務省資料の流出を知ったのは5月17日以降だろうが、どうやって国会図書館の資料の存在に気づいたのか。新原氏と共同通信の動きを知った上で、すぐさま隠匿工作を指示したと考えられるが、その具体的経過がよくわからない。

 一連の流れから、私が注意するのは次の2点である。

 第1に、政府がすぐさま閲覧禁止措置にしたように、この日米地位協定違反の「密約」は政府にとって何としても日本の主権者の目から隠したいもので、そして現在も効力を持っているということである。実際、現在も米兵の事件は相当数が不起訴となっている。問題の刑事局長通達が指示しているように、不起訴によって事実上裁判権を放棄する方法が一般的に行われているのは間違いのないところだろう。

 第2に、「廃棄された公文書」の扱いである。今回の場合、文書を所持していた関係者から流れたか(たとえば関係者本人の死後、遺族が保有文書を売りに出すことは多い)、法務省(あるいは警察庁)自体が現用でなくなって廃棄したのが古書市場に出たのかのどちらかだろうが、いったん廃棄ないし売却された文書を、いかに発行者とはいえ「閲覧禁止」を要求することが果たして正当なのかどうか。以前、ある歴史研究者が防衛省防衛研究所の所蔵資料で論文を書いたら、それが旧軍にとって不都合な内容だったために、その資料が閲覧停止になったという話を聞いたことがあるが、今回の場合、すでに法務省の手を離れた文書なのだから、より悪質である。

 現在公文書問題については、この問題をライフワークとする福田康夫首相の肝いりで、担当の国務大臣が置かれ、「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」が設置され、現行では事実上各省庁の恣意に任されている文書管理と情報公開の改革が検討されている。ここで想定されている中心課題は公文書の管理と公開の一元化で、省庁から文書館への移管を確実にする方策が重視されているが、今回の法務省の場合のようなケースはどうなのか。福田首相は今回の件を黙って見過ごすようでは、言行不一致の誹りを免れない。
 日米関係の「闇」の深さに戦慄を覚えると同時に、日本国家の文書管理の不透明さに改めて驚きを禁じ得ない「事件」である。

【関連リンク】
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定 – 外務省*PDF
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/pdfs/fulltext.pdf
国立国会図書館
http://www.ndl.go.jp/
公文書管理の在り方等に関する有識者会議 - 内閣官房
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/koubun/index.html


《追記》

 本稿執筆後、「情報流通促進計画」が別のソースを用いて、法務省文書閲覧禁止の件についてのエントリを上げておられるのを確認した。

 てえへんだ、てえへんだ・・・国会図書館が裁判権放棄を裏付ける文書を急きょ閲覧禁止に! - 情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)
 http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/39e42e5f941390a2fe28e0ca6fb7a1dd

 なお、ヤメ蚊氏の記事では、国立国会図書館の資料制限措置の内規が問題になっているが、そもそも国立国会図書館法が第21条で「両議院、委員会及び議員並びに行政及び司法の各部門からの要求を妨げない限り」とその活動に制限が加えられており、法律自体に問題があると言うべきだろう。

 国立国会図書館法 - 法令データ提供システム
 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO005.html
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by mahounofuefuki | 2008-08-11 21:42

米兵の婦女暴行の賠償金を肩代わりさせられる日本政府

 日米安保体制の歪みについては、最近もアメリカ兵の公務外の犯罪に対する一次裁判権(日米地位協定第14条及び第17条による)を放棄する密約を1953年に締結していたことが明らかになったように(東京新聞2008/05/18朝刊など)、もはや何でもありの無法状態であることが「常識」となっている。日米安全保障条約や日米地位協定の内容自体が不均衡で不正であるのに、それすらも厳密に守られていない事実を前にすると暗澹たる気分に襲われる。
 そんないびつな戦後日米関係史に新たな1ページを刻むニュースがある。朝日新聞(2008/05/19 20:13)より。
 防衛省は19日、02年に神奈川県横須賀市で米海軍兵から性的暴行を受けたオーストラリア人女性に対し、見舞金300万円を支払った。民事訴訟で賠償金を支払うよう命じられた米兵はすでに帰国。米側も支払いを拒んだため、日本政府が肩代わりをする異例の決着となった。

 同省によると、女性は02年4月に米兵から暴行されたとして、同年8月に東京地裁に民事訴訟を起こした。同地裁は04年11月、300万円の賠償を命じたが、被告米兵は裁判途中に除隊・帰国してしまった。

 日米地位協定では、米兵が公務外に起こした事件事故で賠償金が支払えない場合は米側が補償する仕組みだが、今回のケースは発生から2年以内とする米国法の請求期限を過ぎているとして、米側が支払いを拒否。このため防衛省は、日米地位協定で救済されない米軍被害の救済を定めた64年の閣議決定を適用し、見舞金の支給を決めたという。
 この事件が示すところは、アメリカ軍人は日本で婦女暴行をしても、事件から2年以上裁判を引き伸ばせば、日本政府が賠償金を肩代わりしてくれるということである。朝日の記事中にあるように、日米地位協定第18条により、駐留軍人の公務外の賠償案件についてはアメリカ政府に慰謝料支払義務があるが、これが全く遵守されていないことが今回改めて明らかになったのである。これを「逃げ得」と言わずして何と言えようか。
 あいにく私は1964年の閣議決定について知らないので、2004年の判決から3年半以上たった現在までにどういう経過で日本側が肩代わりするのに至ったのか、なぜ外務省ではなく防衛省が支払ったのか、判決の「賠償金」を「見舞金」で代償する法的根拠が何なのか、わからないことだらけだが、少なくともアメリカ政府が自国の国内法を盾に請求権を認めないのは著しく不当である。

 婦女暴行は親告罪で刑事上の捜査や訴訟そのものが被害者を鞭打つため、ただでさえ刑事事件になりにくい。しかも前述のように日本政府は一次裁判権を事実上放棄してしまっている。その上、民事訴訟でも賠償責任を問えないとあってはあまりにもやるせない。
 被害者が日本人ではないためか、あまり話題になっていないようだが、日本のアメリカへの従属ぶりがもはや極限にまで達している実例として見過ごすことはできない。

【関連記事】
ナショナリストが在日米軍に期待するもの
米軍の年間性犯罪2700件から見えるもの

【関連リンク】
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定 – 外務省*PDF
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/pdfs/fulltext.pdf
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by mahounofuefuki | 2008-05-20 17:47

オバマの「失言」は本当に「失言」か

 アメリカ民主党の大統領候補バラク・オバマ氏の「失言」が波紋を呼んでいるという。
 オバマ氏がペンシルベニア州予備選を前に「ペンシルベニアの田舎町の人々は、失業に苦しんだ結果、社会に怒りを持つようになり、(その反動で)銃や宗教に執着するようになった」と発言していたことが明らかになり(朝日新聞2008/04/14 20:03、太字強調は引用者による)、共和党やヒラリー・クリントン候補陣営が労働者を差別していると攻撃しているという。

 私は別にオバマ氏の支持者ではなく、そのポピュリストぶりを警戒しているくらいだが、くだんの発言は事実を指摘しただけで、どこが「失言」なのかさっぱりわからない。
 オバマ氏の発言は、貧しい労働者がマッチョなミリタリズムやファンダメンタリズムへ同調するのは、社会構造に起因することを示唆している。労働者が「銃や宗教」に「執着」するのは、彼らが愚かだからだとか、本質的に暴力的だからだなどと言ったのならば、あからさまな侮蔑と差別だが、彼らがそうならざるをえない要因を不安定な雇用に求めているのは、全くもって正しい。
 エリート意識丸出しどころか、冷静な社会認識で、オバマ氏を見直したくらいである。

 オバマ発言はそのまま日本社会の排外主義風潮にも当てはまる。
 経済のグローバル化で、現実に人件費の低い中国企業との競争を強いられたり、低賃金の外国人労働者との「賃下げ競争」を強いられたりしていることが、特にアジア諸国の人々への差別意識の温床になっている。また、雇用や福祉の不安定化が「強い力」に対する潜在的な被保護要求を呼び起こし、ナショナリズムへの同調要因になっている。
 そして何より、生活のさまざまな場で理不尽な扱いを受けることで痛めつけられた自尊心を、最も簡単に回復する方法が、自分より「弱い者」「劣る者」を「発見」して彼らに理不尽な攻撃を浴びせることである。ナショナリズムは「非国民」や外国人を「劣る者」とみなし、ただ「自国人」であるというだけで何も努力せずとも自尊心を高めることができる「魔法」である。「嫌韓」「嫌中」に走るのは、それくらいしか自己の生を確認する術がないからである。

 搾取と収奪はカネやモノのみならず人間性をも喪失させる。劣悪な環境にいれば思考も劣化する。逆に劣悪な雇用環境を変えることは、「銃や宗教」から人々を切り離すことにつながる。オバマ発言は、安定雇用の確立が狂信的なファンダメンタリズムを弱めるためにも急務であることを示唆している。


《追記 2008/04/17》

 本稿に対する「はてなブックマーク」で、「グローバリズムは『自国民』や愛国主義者を『劣る者』とみなし、ただ「反差別主義者」であるというだけで何も努力せずとも自尊心を高めることができる『魔法』である。ブーメラン(笑)」というツッコミ(?)があったが、全く本稿の趣旨を理解していないと言わざるをえない。

 まず、このコメントは「グローバリズム」=「反差別主義」とみなし、なおかつ「ナショナリズム」と対立関係にあると捉えているが、実際のグローバリズムは本質的に「弱肉強食」で差別があり、しかも現在のナショナリズムはグローバルな競争を勝ち抜くために国民統合を図る「手段」でもあるので、両者は必ずしも対抗関係にはない。
 さらに、仮に「グローバリズム」を「反ナショナリズム」と置き換えてもこのコメントはおかしい。反ナショナリストはナショナリストを「自国民」だからという理由で批判しているわけではない。また「日本人」は「日本人」として生まれれば何もしなくても「日本人」でいられるが、「反差別主義者」は「反差別主義者」になろうと努力しないとなれない。故にこの点では決して「ブーメラン」にはなりえないのである。

 こんなつまらないコメントについ反応して貴重な時間を無駄にしてしまった・・・(泣)。
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by mahounofuefuki | 2008-04-15 21:29

グリーンカード兵士から見える軍隊の変容~「国民軍」から「グローバル軍隊」へ

 フランス革命前夜のヴェルサイユ宮廷を舞台とする池田理代子さんの漫画『ベルサイユのばら』で、フランス王妃マリー・アントワネットの愛人として登場するハンス・アクセル・フォン・フェルゼンは「スウェーデン軽騎兵大佐」という肩書で、スウェーデンの軍事貴族だった。
 ヨーロッパの封建王権において軍隊の主力は外国人傭兵であり、それ故に市民革命は「封建体制VS近代民主主義」という対立軸と同時に「世界宗教(キリスト教)的・国際的王権VSナショナリズム」という構図を兼ねていた。『ベルばら』でもフランス人の部隊は王権から離反しバスティーユ蜂起に参加する一方、王権に最も忠実だったのは外国人傭兵だった様子が描かれている。

 この挿話は前近代から近代への軍隊の変容を示している。外国人傭兵が王権を守る封建軍隊から、自国民が国家を防衛する近代軍隊への変容である。そして近代軍隊の「理念型」は「国民皆兵」であり、兵役は「国民の権利」を保障する代償としての「国民の義務」と捉えられていた。
 もちろんあくまでも「理念」なので、実際はフランスでは「外人部隊」が現在に至るまで存在するし、イギリスは最も早く市民革命を経験したのに長らく均質な徴兵軍隊を実現できなかったように、現実とのギャップはあるのだが、近代国家の軍隊は「国民軍」であるというのが少なくとも建前上の大原則であった。
 *ちなみに日本でも普通選挙導入後に兵役と選挙権を交換関係とする考え方が出てくる。アジア・太平洋戦争末期まで植民地で徴兵を実施しなかった理由の1つに選挙権問題がある。

 近代国家を構成する最も重要な要素であった「国民軍」は現在新たな段階へ移行しつつある。特に唯一の超大国アメリカでそれは顕著である。
 アメリカは現在徴兵制を停止し、志願兵制を採っている。問題は志願兵に占める移民系住民の割合が急増していることだ。アメリカ軍にはアメリカ国籍や市民権がなくともグリーンカードと呼ばれる永住権があれば志願できる。しかも、ブッシュ政権がグリーンカード兵士の市民権取得を優遇する措置を実施した結果、市民権の欲しい移民による軍への志願が増大した。
 軍隊勤務と「国民の権利」が交換関係にあるという点で「国民軍」の基本構造は変わっていないが、その交換関係が移民と貧困層だけに課せられているという点が徴兵制時代と決定的に異なる。いわば黙っていても「アメリカ国民」になれる「一流国民」と、軍隊を志願しないと「アメリカ国民」になれない「二流国民」の厳然たる差別が存在するのである。これがヴェトナム戦争における兵役忌避を軸とした反戦運動の帰結と考えると皮肉な話である。

 横須賀で起きたタクシー運転手殺人事件で、神奈川県警に逮捕されたアメリカ海軍の兵士はナイジェリア国籍のグリーンカード兵士だった。現在海軍の兵員の3分の1近くが彼らのようなアメリカ国籍を持たない人々だと言われている。今やアメリカ軍は「国民軍」ではなく、多国籍の兵員から成る「グローバル軍隊」と言っても過言ではない。
 この「グローバル軍隊」はアメリカの支配層にとって非常に「おいしい」システムである。巨大資本は搾取と収奪によって世界的に貧困を作り出し、貧者を軍隊に送り込む。その貧者の軍隊を巨大資本の利権拡大のための戦争に動員する。兵士がいくら死のうが痛くも痒くもない。しかも貧者は「自発的」に「喜んで」軍を志願してくれる。まさに新自由主義時代の軍隊の姿である。
 逮捕されたナイジェリア人兵士が本当に事件の犯人なのか、彼が脱走した原因は何なのか現時点では何とも言えないが、少なくとも彼もまたグローバリズムの犠牲者であることは確かだ。市民権目当てで軍に入隊したはいいが、厳しい仕事と暴力的な環境に苦痛を感じていたかもしれない。

 「傭兵軍」→「国民軍」→「グローバル軍隊」と変遷してはいるが、軍隊が「公認された殺人集団」であるという1点は不変である。またそこには「戦争のプロ」と「一般民衆」、「国民」と「非国民」、「貧しい人」と「豊かな人」という差別が必ず存在する。アメリカのグリーンカード兵士問題から見えてくるのは、どのような形態であっても軍隊は非人間的な存在であるという厳然たる事実である。
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by mahounofuefuki | 2008-04-04 19:57

在日米軍駐留経費負担特別協定の「空白」~「思いやり予算」を再考する好機

 日本では4月1日は新年度がスタートする日である。エイプリルフールということでブログに何か仕掛けようかとも思ったが、ユーモアセンスのない私には何も思いつかないので、平常通り記事を書く。
 今日のマスメディアの関心は専らガソリン税の暫定措置の期限切れに集中しているようだが、今日はもう1つ期限切れになった「暫定措置」がある。在日米軍駐留経費負担特別協定である。

 日米地位協定は第24条で、日本側がアメリカ軍に基地や港湾や飛行場などを無償提供する一方で、「合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費」について「日本国に負担をかけないで合衆国が負担する」と定めている。
 ところが周知の通り、1978年以降日本側が「思いやり予算」と称して駐留経費の一部を負担するようになり、当初は在日米軍が雇用する日本人労働者の労務費などに限定されていたが、年を重ねるごとに負担額と負担用途は増大し、ピーク時には労務費・光熱費・訓練移転費合わせて歳出ベースで2700億円を超えた。近年は微減を続けているが、それでも今年度予算では2083億円(特別協定相当分は1416億円)と依然として2000億円規模を維持している。

 地位協定との矛盾が拡大しているのを糊塗するために、1987年以降は数年ごとに駐留経費負担のための特別協定を結ぶようになり、日米両政府は今年も1月に3年期限の特別協定を締結した。この新協定が現行協定の期限が切れる3月31日までに国会承認が得られなかったために、「思いやり予算」史上初めて「空白」が生じることになったのである。国会の与野党逆転による思わぬ「効果」である。
 新協定の承認案件は衆院外務委員会が明日採決し、その後本会議の採決も近日中に行われる見通しで、憲法の規定により外国との条約類は衆院可決後30日で自然成立となるので、「空白」は長くても1か月強の短期間にすぎないが、それでも「思いやり予算」という地位協定にも違反する行為が一時的でも掣肘を受けるのは歴史的快挙である。

 「思いやり予算」の使途については、従来から米軍将兵の高級住宅や娯楽施設への使用が問題になっていたが、最近も共産党の赤嶺政賢衆院議員の要求で防衛省が提示した資料から、警備員やコックに加えてバーテンダー、観光ガイド、さらには宴会のマネージャーの労務費に至るまで使われていたことが明らかになっている(しんぶん赤旗2008/03/17)。もはや「思いやり予算」は在日米軍にとって格好の「金づる」でしかないのである。
 アメリカの軍事プレゼンスを得るためには「思いやり予算」も仕方ないという思考が、あたかもリアリズムであるかのように錯覚しがちだが、あくまでも日本が基地を提供する代わりに米軍が日本を防衛するという関係が日米安保体制の本筋である。すでに基地を提供している以上「思いやり予算」は余計な隷属行為以外の何ものでもない。労務費と光熱費については日本人労働者を雇用したり、日本企業に事業を委託している見返りであるという見方もあるが、その見方は日本側が直接雇用ないし直接委託していない限り成立しない。米軍が雇用し、米軍が委託している以上、アメリカ政府が財政負担するのが当然である。

 今回の駐留経費負担協定の「空白」を機に「思いやり予算」には果たして正当性があるのか再考するべきだろう。最近、米軍軍人による相次ぐ刑事事件により日米地位協定の改正を求める声が高まっているが、「思いやり予算」と地位協定の矛盾についても政治課題とする必要があるだろう。

【関連記事】
商船を追い払ってまでアメリカ軍艦を寄港させる外務省
ナショナリストが在日米軍に期待するもの
もはや日米地位協定すら守られていない現実
米軍の年間性犯罪2700件から見えるもの

【関連リンク】
日米地位協定全文(日・英文対照)-外務省*PDF
在日米軍駐留経費負担特別協定の署名について-外務省
防衛省・自衛隊:在日米軍駐留経費負担について
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by mahounofuefuki | 2008-04-01 12:32

炭疽菌事件と「テロとの戦い」の虚実

 2001年の9・11同時多発テロ以降、アメリカは「テロとの戦い」を最も重要な国家目標とし、アフガニスタンやイラクへの侵攻もその一環として行ったわけだが、いずれも「外のテロリスト」を「内」に入れないためという論理でもって戦争を正当化した。つまりアメリカにおいて「テロ」は国外から侵入するものであるという前提に立っていたのである。
 実は9・11以後、アメリカ国内を最も震撼させたテロは、何と言っても炭疽菌事件である。炭疽菌入りの郵便物が政府機関や報道機関に送り付けられ、実際に死者も出た。このテロの怖さは、たとえば小包や封筒に実際には炭疽菌が入っていなくても、表面に「炭疽菌」と書かれているだけで対象を脅迫することが出来ることで、まさに「恐怖を与える」という本来の意味での「テロ」であった。
 この事件は結局真相がわからないままウヤムヤとなる一方、アメリカ政府は対外戦争に邁進するのだが、今日になって次のようなニュースが伝えられた。共同通信(2008/03/29 10:10)より(太字強調は引用者による)。
 米FOXテレビは28日、2001年の米中枢同時テロ後に米国で起きた炭疽菌事件で、米連邦捜査局(FBI)がメリーランド州フォートデトリックの陸軍感染症医学研究所で炭疽菌研究にかかわった科学者ら4人を容疑者と特定、捜査を進めていると報じた。
(中略)
 同テレビによると、FBIが捜査対象としているのは、炭疽菌研究ではトップレベルとされる研究者、微生物学者ら科学者3人を含む4人。現在、郵便物に残された筆跡を4人と照合する作業中で、事件でどのような役割を果たしたかについては明らかにされていない。容疑者は4人からさらに絞り込まれる可能性がある。
 現時点では詳細は不明だが、当時からアメリカ国内の炭疽菌を扱う公的機関から漏洩したのではないかという疑惑を指摘されていた。常識的に考えれば、外国のテロリストの仕業とするより、よほど説得的であり、今回の容疑はかなり濃厚だと言えよう。
 炭疽菌事件が如実に示すように、テロとはあくまでも犯罪であり、「テロとの戦い」とは犯罪予防の範疇に含まれる。「外」からのテロの侵入のリスクよりも、「内」からのテロの発生のリスクの方がはるかに高いのである。報道の通り炭疽菌事件に軍の機関が関与していたとなれば、まさに足元を掬われたと言わざるをえず、テロと戦っているはずの組織の中に「テロリスト」がいたということになる。アメリカ政府の「テロとの戦い」の内実は非常に杜撰であるとしか言いようがない。

 炭疽菌事件の行方はアメリカがこれまで行ってきた「テロとの戦い」の正当性に疑問を投げかけている。アメリカに追随を続ける日本にとってもこの問題は他人事ではない。

【関連リンク】
NBCテロ
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by mahounofuefuki | 2008-03-29 21:33