2008年 11月 11日 ( 2 )

田母神問題で明かされた自衛隊の歴史修正主義教育

 今日の参議院外交防衛委員会で、前航空幕僚長の田母神俊雄氏に対する参考人質疑が行われた。テレビ中継がなかったため、国会のインターネット中継にアクセスが殺到し視聴しにくい状況になったほど、人々の関心は高かったようである。「懸賞論文」問題の表面化以来、事実上田母神氏の作文を擁護する報道を繰り返してきた産経新聞が早速速記録を出しているが、同社の電子版はページ分割が多くて読みにくいうえ、いつ消えるともしれないので、同内容が転載された別サイトをリンクする。

 15年戦争資料@wiki - 産経【田母神氏招致・詳報】(1)(2)
 http://www16.atwiki.jp/pipopipo555jp/pages/1578.html
 15年戦争資料@wiki - 産経【田母神氏招致・詳報】(3)(4)
 http://www16.atwiki.jp/pipopipo555jp/pages/1583.html
 15年戦争資料@wiki - 産経【田母神氏招致・詳報】(5)(6)
 http://www16.atwiki.jp/pipopipo555jp/pages/1584.html
 15年戦争資料@wiki - 産経【田母神氏招致・詳報】(7)(8)
 http://www16.atwiki.jp/pipopipo555jp/pages/1585.html
 15年戦争資料@wiki - 産経【田母神氏招致・詳報】(9)(10)(11)
 http://www16.atwiki.jp/pipopipo555jp/pages/1586.html

 改めて整理すると、田母神「論文」の一次的な問題は、①空幕長という要職にある者が、通常の歴史学では全く顧みられることのない根拠薄弱な妄説を盲信し、内容・形式ともに「論文」というには稚拙で粗末な作文を応募したこと、②憲法遵守義務があり、文民統制に服さねばならない自衛官でありながら、「論文」を通して憲法を否定する言動を行うという政治活動を行ったこと、③田母神氏の肝いりで航空自衛隊が組織的に特定の懸賞論文に応募したこと、の3点に集約される。さらに「論文」の重要な背景として、田母神氏と懸賞論文の主催者「アパ・グループ」との度を超えた癒着や、田母神氏の主導により自衛隊内で歴史修正主義・陰謀論に基づいた歴史教育を行っていることも問題である。

 現在、政府やマスメディアが問題としているのは、田母神作文の提示した歴史認識が「政府見解」「村山談話」に反するというもので、今回の質疑でもその線で追及が行われたが、はっきり言ってあの作文は政府見解がどうのというレベルですらなく、むしろその基礎学力の低さを強調するべきだろう。大学の卒業論文どころかレポート課題でもあの内容では不可である。田母神氏は「最優秀賞」の受賞が発表されると、自ら問題の作文を防衛省内や担当記者たちに配っていたというから重症である。欲を言えば、国会質疑では田母神氏が空自の制服トップに値する「能力」がなかったことをもっと厳しく追及して欲しかったところである。

 今回の質疑で私が最も注目したのは、共産党の井上哲士議員が取り上げた、田母神氏が統合幕僚学校校長在任中に陸海空すべての幹部教育の体系を改定して、歴史修正主義に基づく「歴史観・国家観」の講義を行わせたという件である(井上氏の当該質疑は前記「詳報」の9・10)。講師は防衛大学校でも防衛研究所でもなく「主として外部から」呼ぶことになっており、その講師は大正大学教授の福地惇氏だという。福地氏の講義案はweb上に出ているが、認識において田母神作文とも共通するところが多い(さすがにもっと巧妙で「論拠」もはるかに多いが)。

 15年戦争@wiki - 統合幕僚学校・高級幹部課程講義案
 http://www16.atwiki.jp/pipopipo555jp/pages/1541.html

 福地氏と言えば東京大学国史学科の出身で、昨年沖縄戦の「集団自決」に関する教科書検定問題時に弊ブログでも問題にした、保守的歴史学者で東京大学名誉教授の伊藤隆氏の門下である。伊藤門下でも政治的に最右翼として知られ、1998年に伊藤氏の推薦で文部省主任教科書調査官に任官するも、雑誌上で当時の教科書検定基準を批判したために、わずか半年余りで更迭された。伊藤氏と同様「新しい歴史教科書をつくる会」に加わり、内紛により師の伊藤氏が脱会した後もとどまり、現在は副会長を務めている。明治政治史で業績のある人だが、それだけに専攻外の日中戦争で通説に反する根拠薄弱な「コミンテルン陰謀論」や「南京大虐殺否定論」といった妄説を唱えているのは、専攻の業績も吹っ飛んでしまうほど歴史学者としての知性と品性を疑わせしめる。もはや歴史学者と言うべきではないだろう。

 このようなふざけた講義が統合幕僚学校で行われていたということは、「田母神流」が空自にとどまらず、全自衛隊の幹部教育に貫徹していた可能性があり、問題はもはや田母神氏個人の域を超えて、自衛隊が一体どんな歴史教育を行っているのか、今後も徹底的に洗い出して正常化する必要があるだろう。田母神問題が大きくなることで、日本社会に潜在する歴史修正主義への「渇望」を呼び覚まし、かえってそうした言説が力をもつリスクはあるが、むしろ田母神氏が「自爆」を続けるこの機に膿を出してしまうべきである。

【関連記事】
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by mahounofuefuki | 2008-11-11 22:58

某ブログに対するTB禁止措置について

 先週、エコノミストの植草一秀氏が民主党の小沢一郎代表の提唱した特別行政法人、特殊法人等の全面廃止による財源捻出を支持していたこと、及び消費税増税を容認していたことを弊ブログで批判したが、これに対し植草氏は民主党の全面廃止論に与しているわけではないこと、当面の消費税増税を支持していないことを明言し、私は依然として見解の相違はあるものの、謝意を表して一件落着した。

 この議論に関連して「Easy Resistance」という植草氏の応援を標榜するブログから弊エントリに対する反論があり、弊ブログはこれに対して再反論を行った。「Easy~」の姿勢は、基本的には北海道大学大学院教授の山口二郎、宮本太郎両氏が指摘するところの「行政不信に満ちた福祉国家志向」を前提とした「無駄遣いを廃して社会保障充実」という線上にあり、「大企業・富裕層への増税による所得再分配機能を強化した福祉国家」を志向する私とは一線を画していた。特に「Easy~」の過剰なまでの官僚批判や公営事業の民営化・外部委託を容認する姿勢は、行革による財政再建を主張する財界と軌を一にし、貧困問題に対しても「官」の需要増強を求める私と明らかに対立するものであった。

 弊ブログの再反論の内容はいささか頭に血の上った状態で書いたものだったので(それは私の未熟ゆえでこの点は反省している)、「Easy Resistance」の文意を誤読した面もあったが(たとえば「Easy~」が所得税の累進強化を支持していることを知らなかった)、現下の情勢ではたとえ「天下り利権」の廃絶という積極的目的であろうとも、特に独立行政法人の統廃合や民営化は「小さな政府」を推進するものでしかなく、そうした言説自体が「行革」と「地方分権」を最後の砦とする新自由主義を伸長させるという見方は今も変わらない。極論すれば「天下り先の保持」という「不純な」動機であっても、官僚が民営化や統廃合に「抵抗」するなら、私は官僚の方を応援する。その点で「Easy~」が私を指して行政の代弁者であるとか、社会主義者であるというのは、「天下り利権」の廃止を至上命題とする限りにおいては一応理解できるところである(そもそも私は社会主義を否定していない)。

 弊ブログの再反論に対し、「Easy Resistance」は再々反論を行ったが、私は過去の類似の経験から判断して、これ以上やっても水かけ論に終始し徒労に終わるだろうと考え(これにばかり拘泥できるほど暇でもない)、再反論の追記でこちらから議論を打ち切ることを明記した。弊ブログは何らかの政治的目標の実現を目指す「政治ブログ」ではなく、日々のニュースを読んで私が考えていることを書いているだけなので、読み手がそれをどう受け取ろうと一切構わず、いわゆる「論破」や「折伏」などを目指していない。見解の相違は相違として明らかになればそれで十分であると考えている。

 ところがこれで落着と思いきや、「Easy Resistance」が不可解な行動をとった。「Easy~」の再々反論エントリのトラックバックは2008/11/08 03:33付で着信し、エキサイトブログは承認制がないためすぐに反映され、同日当エントリに追記もしたのだが、2日後の2008/11/10 01:53付で、なぜか「トラックバックが通っていなかったようです、ごめんなさい」というコメントを付して、同一のエントリを前回と同じ当エントリにトラックバックしてきたのである。当該エントリには他にトラックバックはなく、いくら何でも見落とすというのは考えにくく、この時点でスパム行為を疑ったが、単なるミスかもしれないので一応そのままにした。

 さらに「Easy Resistance」は今日になって新たなエントリを上げ、弊ブログに対する挑発的批判を行った。「Easy~」は最初の批判の時から妙になれなれしい文体で、それが私の癇に障ったのだが、今回も「この人調子に乗り過ぎる傾向が否めません、かわいいね~」(何様のつもりなんだろう)、「嘘だらけ、特定企業って私言ってませんよね=利権てあんた、捏造かい」(特定だろうと特定でなかろうと企業への委託は利権なのに)、「sekakataさん、あんた行政?」(財界か行政かと問われれば行政を選ぶが)といった不真面目な誹謗中傷言説が並び、「民間企業に運営、政府は保障」という彼の持論を私が「保証」と誤読しているというような詭弁を駆使し(言うまでもないが私は「保証」だろうと「保障」だろうと民間にやらせること自体に反対しているのだから全く無意味な反論)、大企業・富裕層への減税が貧困拡大と社会的不平等と財政の不健全化を招いているという事実を認識できず、相変わらず官僚利権一元説を繰り返していた。「地方財政が厳しいのは官が予算を独占しているからだ」と言うに至っては、地方財政の悪化の直接原因は国からの交付金や補助金の削減と大企業への利益誘導にあることを無視した暴論で、その「民間」への楽観性にあきれる(猪瀬直樹氏あたりが読んだら大喜びだろう)。私はそもそも「健全な市場」なるものを信用していない。

 いずれにせよスパム行為と疑わざるをえない不可解な行動、当方がもう批判をやめたのに挑発を繰り返す姿勢、当方の信用失墜を目的としていることを疑わざるをえない誹謗等に鑑み、「Easy Resistance」に対し当エントリ公開時をもってトラックバック禁止措置をとった(過去のトラックバックはそのままにする)。今回の措置に対し読者には批判もあろうが、私の個人ブログである以上、利用規約で認められた管理人としての当然の権利であることをご理解いただきたい。
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by mahounofuefuki | 2008-11-11 12:38