2008年 09月 30日 ( 1 )

非正規公務員の「ワーキングプア」化~貧困対策としての正規公務員増員政策の必要性

 弊ブログでは再三再四にわたり、「官の無駄遣い」というプロパガンダが行政機構の民営化・市場化を促進させ、結果として公的な社会維持機能を弱め、「貧困と格差」の拡大に加担していることを厳しく批判してきた。残念ながら肝心の左翼系の人々ですら「小さな政府」信仰が強く、私のような主張はほとんど軽視されているが、改めて行政のコストカットが何をもたらしたかを明示するニュースがある。

 共同通信(2008/09/29 21:00)より。
 自治労が29日発表した地方自治体職員の勤務実態調査で、臨時雇いや非常勤などの非正規職員が全体の27・8%を占めることが分かった。非正規職員の少なくとも67%は「年収200万円以下の官製ワーキングプア(働く貧困層)に該当する」とみられる。
 (中略)
 調査は、全自治体に6月1日現在の非正規職員数や待遇などについて質問。全体の53・1%に当たる23都府県と963市区町村から回答を得た。
 その結果、回答を得た自治体の職員107万1496人のうち、29万7571人が非正規職員だった。自治労は未回答の自治体を含めれば、「非正規職員は全自治体で50万人を超える」と推定している。
 非正規職員の収入に関しては「賃金の約65%は日給・時給型で、その70%超は時給(換算で)1000円未満。残りの月給型も約58%は16万円に届かない」といい、自治労は全体の67%が年収200万円以下と分析している。

 たとえば学校教員で臨時採用の比率が増大したり、職業紹介を担うハローワークで社労士資格を持った専門家でも短期契約の非正規職員だったり、従来は正規雇用が当たり前だった領域で非正規雇用への置き換えが進んでいるという話はよく聞くが、約28%というのは驚きである(国家公務員も同じようなものだろう)。民間の非正規比率はすでに3割を超えているが、多くの人々の思い込みとは裏腹に確実に「官民格差」は縮小(それも悪い方に)しているのである。

 雇用待遇差別問題に関しては、弊ブログは非正規雇用を正規雇用に転換させるよう方向付けることが必要だと指摘し続けているが、そう言いつつも企業が本質的に市場原理に基づく存在である以上、たとえ法的に義務づけても簡単には進まないという現実も認識している。それ故に民間企業の正規雇用が減少した分を、行政が正規雇用を増やすことでフォローするような政策が必要だと考えている。私がいつも公務員バッシングに反発し、行政コストの削減に抵抗し、過剰な「官」批判を強く非難するのも、ひとえに「ワーキングプア」問題、なかんずく「年長フリーター」問題は「未熟練労働者を公務員として優先採用する」くらいの行政の強力な支援なしには決して解決しないからである。

 最近、月刊誌『世界』で労働問題の専門家らが「若年雇用促進法」を提案し、特に「氷河期世代」の既卒求職者の採用を一定の割合で企業に義務付けるというアイデアを提示しているが、これは企業のみならず、むしろ政府や自治体にこそ率先して行わせるべき施策である。現実問題として再び景気が後退し、企業がまたしても雇用コストの削減に向かう中で、行政が公務員を増やすことで労働市場を広げることが必要である。「貧困と格差」に本当に向き合うのならば、増税してでも正規の公務員を増加させなければならない

 公務員の非正規化・貧困化の現況はそうした方向に完全に逆行する。しかも、非正規化が進んでいるのは、教育や福祉や医療といった領域が中心で、その点でも昨今の社会保障弱体化の流れと軌を一にしている。逆に言えば福祉国家路線に転換するには、まさに教育や福祉や医療といった分野で人員を増やさねばならない。この国では一方で福祉国家を訴えながら、同じ口で公務員の削減を唱える矛盾した行動を採る人が後を絶たないが、行政サービスを充実させたかったら、それに見合った人員が必要なのは本来子どもでもわかることだ。

 今回の調査対象はあくまでも法的な身分上の公務員に限られているが、最近の行政は公務員の非正規化とともに、民間企業やNPOなど外部への業務委託も増えており、身分上は公務員ではなくても実際には公的業務を担っている例も少なくない。こうした問題も含めて、改めて公務員の地位問題を思い込みや感情論を排除して冷静に検討する必要があるだろう。

【関連記事】
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【関連リンク】
地方公務員法 - 法庫
http://www.houko.com/00/01/S25/261.HTM
巻頭特集 増える非正規労働者 [座談会] 公立保育職場の臨時・非常勤職員の現状 - 自治労通信2008年9・10月号
http://www.jichiro.gr.jp/tsuushin/732/732_01.html
*地方公務員法第22条が労働者派遣法と同じ問題を抱えていることがわかる。
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by mahounofuefuki | 2008-09-30 21:47