黒字だった公立病院が民間委託で赤字になった上に公費負担も激増

 「世間」一般のイメージとして「官」=非効率、「民」=効率というイメージが流布し、行政の「無駄遣い」削減には民営化や民間資本の活用が必要であるという言説が後を絶たないが、そうした一般的なイメージの再考を迫るニュースを東京新聞が報じている。

 東京新聞:民活病院 青息 コスト減のはずが・・・赤字(2008/11/12朝刊)*web魚拓
 http://s03.megalodon.jp/2008-1112-1017-44/www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2008111202000079.html
 民間資本を活用して公共施設を建設、運営する「PFI方式」を導入した公共病院が、経営難や赤字に陥っている。(中略)

 医療センターは、黒字だった旧市民病院を移転新築する形で、大手ゼネコン・大林組が全額出資するSPCが建設し、2006年10月にオープンした。30年分の金利99億円などを含めた総整備費は244億円。

 市が医療業務を担い、SPCが保守管理や清掃、警備、病院給食などを受託している。30後に市が施設の無償譲渡を受ける契約で、市は直接経営と比べ68億円の節約になると試算していた。

 だが、「新築となって上がる」と見込んでいた病床利用率が横ばいにとどまったため、増えた減価償却費を収入で補えず、07年度に27億円の赤字を計上。一方、SPCに委託し、市が税金から支払う保守管理や清掃などの年間費用は、旧病院時代の6億6千万円から、15億4千万円に膨らんだ。(後略)

 要するに、黒字だった公立病院が、医療業務を除く施設管理等を民間委託したところ、かえって赤字になってしまい、さらに委託した業務への投入税金も倍以上になってしまったということである。この事例の場合、赤字そのものは病床利用率の見通しのミスに起因するようなので、民間委託のせいとは必ずしも言えないが、委託業務に投入する税金が完全公営時代の倍以上に膨れ上がったのは、間違いなく民間委託に起因する。事実は小説より奇なり。「官」よりも「民」にやらせた方がコスト増になったのである。

 記事を読む限り、今回の場合は病院施設の建設自体が大手ゼネコンへの利益誘導であり、受託した特別目的会社も当該ゼネコンの丸抱え、整備費は30年という長期の割賦払い、もちろん金利も税金で支払われる。これでは地方債を使った方がましじゃないのかとさえ思うのだが、民間委託がかえって自治体財政を圧迫しているという事例の存在は重い。大企業への利益誘導のために医療が食い物にされたと言っても過言ではないだろう。まさに「民による無駄遣い」である。

 同記事には同様の方式の他病院についても言及されているが、どこもうまくいってはいないようである。PFI=Private Finance Initiativeは、日本では「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」に基づいて実施され、特に小泉政権以降、さまざまな公共施設に用いられ、特に最近ではこの方式による半官半民の刑務所が話題になった。全部の例を調べていないので、もしかすると「成功例」があるのかもしれないが、少なくとも医療分野では完全に失敗しているのではないか。かえって官民癒着を招く危険性も増すだろう。

 市場原理をどこまでも信奉し、民営化を至上とみなす人々ならば、失敗したのは全部民営化しないからだとか、民間へのリスク転移が足りないからだとか言いそうだが、そんなことではあるまい。根本的に市場原理にそわない医療をビジネスとして捉える視点自体が、問題を引き起こしていると見るべきだ。誰もが安心して医療を受けられるようにするためには、きちんと税金ですべてを賄い、利権狙いの企業を排除することが必要だと思われる。

【関連リンク】
民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律 - 法令データ提供システム
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H11/H11HO117.html
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by mahounofuefuki | 2008-11-14 21:29


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