麻生内閣が経済対策として打ち出した定額給付金をめぐる右往左往が話題である。すでに多くの人々が指摘しているように、一時的な給付では景気刺激策としても救貧策としても効果に乏しく、消費税増税への地ならしを兼ねた選挙向けパフォーマンスであることはもはや疑いない。今日の報道では、給付にあたって立法措置を採らず、所得制限を含め市町村に委ねるということだが、そもそも給付の具体的方法(銀行振込?窓口申請?)や交付形式(市町村ごとに補正予算を組むのか?)がいまだはっきりしておらず、本当にやれるのかさえ不透明である。
今回の給付金に対しては、当初よりかつて小渕内閣が実施した「地域振興券」になぞらえる見方があったが、市町村「丸投げ」となると、むしろ竹下内閣の「ふるさと創生」の1億円バラマキを思い出す。これはもはや経済政策ではない。いずれにせよ、このような混乱ぶりでは実際の給付時期は延びるかもしれない。選挙対策である以上、給付時期が延びれば、それだけ総選挙も先送りされることになる。 どうも最近の麻生首相を見ていると、総選挙をどうにかして先送りすることを何よりも優先し、すべてそれに合わせて行動しているような気がしてならない。今国会冒頭の解散に失敗して以降、常に政治的スケジュールを埋め、あえて選挙に不利な消費税増税をことあるごとに強調し、あたかも選挙で自民党に不利な状況を作ることで、与党内の早期解散要求を封じているかのようである。もともと「選挙の顔」を期待されて首班に擁立された以上、麻生氏が政権の延命を図るためにはその選挙を先送りするほかない。 わざと混乱させているということはないだろうが、経済対策の実施方法をめぐるゴタゴタが長引けば長引くほど、政権に対する世論の信用が低下するリスクを負う一方で、選挙先送りの「口実」ができて、結果として政権そのものは延命する。麻生氏にとっては総選挙後も首相のイスに座れるという成算がない限り(自公で衆院「3分の2」を維持するか、議席数で「自公」>「民公」となり自民党主導で民主党を連立に加える状況になるか、のどちらか)、解散には踏み切れない。そしてその成算はいまだない。となれば少しでも長く首相でいたかったら、ひたすら選挙を先送りするしかないのである。失政が政権を生きながらえさせるというのは皮肉である。 失政のツケを払わされることを考えれば、主権者にとってはハタ迷惑でしかないが、残念ながらこれが現実である。与党が衆院で3分の2以上ではなく単なる過半数だったら、昨年の参院選直後の時点でとっくに解散になっていたことを考えると、いかにあの「郵政選挙」が呪うべきものだったか、今こそ痛感させられる。
by mahounofuefuki
| 2008-11-12 21:45
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