「ほっ」と。キャンペーン

田母神問題で明かされた自衛隊の歴史修正主義教育

 今日の参議院外交防衛委員会で、前航空幕僚長の田母神俊雄氏に対する参考人質疑が行われた。テレビ中継がなかったため、国会のインターネット中継にアクセスが殺到し視聴しにくい状況になったほど、人々の関心は高かったようである。「懸賞論文」問題の表面化以来、事実上田母神氏の作文を擁護する報道を繰り返してきた産経新聞が早速速記録を出しているが、同社の電子版はページ分割が多くて読みにくいうえ、いつ消えるともしれないので、同内容が転載された別サイトをリンクする。

 15年戦争資料@wiki - 産経【田母神氏招致・詳報】(1)(2)
 http://www16.atwiki.jp/pipopipo555jp/pages/1578.html
 15年戦争資料@wiki - 産経【田母神氏招致・詳報】(3)(4)
 http://www16.atwiki.jp/pipopipo555jp/pages/1583.html
 15年戦争資料@wiki - 産経【田母神氏招致・詳報】(5)(6)
 http://www16.atwiki.jp/pipopipo555jp/pages/1584.html
 15年戦争資料@wiki - 産経【田母神氏招致・詳報】(7)(8)
 http://www16.atwiki.jp/pipopipo555jp/pages/1585.html
 15年戦争資料@wiki - 産経【田母神氏招致・詳報】(9)(10)(11)
 http://www16.atwiki.jp/pipopipo555jp/pages/1586.html

 改めて整理すると、田母神「論文」の一次的な問題は、①空幕長という要職にある者が、通常の歴史学では全く顧みられることのない根拠薄弱な妄説を盲信し、内容・形式ともに「論文」というには稚拙で粗末な作文を応募したこと、②憲法遵守義務があり、文民統制に服さねばならない自衛官でありながら、「論文」を通して憲法を否定する言動を行うという政治活動を行ったこと、③田母神氏の肝いりで航空自衛隊が組織的に特定の懸賞論文に応募したこと、の3点に集約される。さらに「論文」の重要な背景として、田母神氏と懸賞論文の主催者「アパ・グループ」との度を超えた癒着や、田母神氏の主導により自衛隊内で歴史修正主義・陰謀論に基づいた歴史教育を行っていることも問題である。

 現在、政府やマスメディアが問題としているのは、田母神作文の提示した歴史認識が「政府見解」「村山談話」に反するというもので、今回の質疑でもその線で追及が行われたが、はっきり言ってあの作文は政府見解がどうのというレベルですらなく、むしろその基礎学力の低さを強調するべきだろう。大学の卒業論文どころかレポート課題でもあの内容では不可である。田母神氏は「最優秀賞」の受賞が発表されると、自ら問題の作文を防衛省内や担当記者たちに配っていたというから重症である。欲を言えば、国会質疑では田母神氏が空自の制服トップに値する「能力」がなかったことをもっと厳しく追及して欲しかったところである。

 今回の質疑で私が最も注目したのは、共産党の井上哲士議員が取り上げた、田母神氏が統合幕僚学校校長在任中に陸海空すべての幹部教育の体系を改定して、歴史修正主義に基づく「歴史観・国家観」の講義を行わせたという件である(井上氏の当該質疑は前記「詳報」の9・10)。講師は防衛大学校でも防衛研究所でもなく「主として外部から」呼ぶことになっており、その講師は大正大学教授の福地惇氏だという。福地氏の講義案はweb上に出ているが、認識において田母神作文とも共通するところが多い(さすがにもっと巧妙で「論拠」もはるかに多いが)。

 15年戦争@wiki - 統合幕僚学校・高級幹部課程講義案
 http://www16.atwiki.jp/pipopipo555jp/pages/1541.html

 福地氏と言えば東京大学国史学科の出身で、昨年沖縄戦の「集団自決」に関する教科書検定問題時に弊ブログでも問題にした、保守的歴史学者で東京大学名誉教授の伊藤隆氏の門下である。伊藤門下でも政治的に最右翼として知られ、1998年に伊藤氏の推薦で文部省主任教科書調査官に任官するも、雑誌上で当時の教科書検定基準を批判したために、わずか半年余りで更迭された。伊藤氏と同様「新しい歴史教科書をつくる会」に加わり、内紛により師の伊藤氏が脱会した後もとどまり、現在は副会長を務めている。明治政治史で業績のある人だが、それだけに専攻外の日中戦争で通説に反する根拠薄弱な「コミンテルン陰謀論」や「南京大虐殺否定論」といった妄説を唱えているのは、専攻の業績も吹っ飛んでしまうほど歴史学者としての知性と品性を疑わせしめる。もはや歴史学者と言うべきではないだろう。

 このようなふざけた講義が統合幕僚学校で行われていたということは、「田母神流」が空自にとどまらず、全自衛隊の幹部教育に貫徹していた可能性があり、問題はもはや田母神氏個人の域を超えて、自衛隊が一体どんな歴史教育を行っているのか、今後も徹底的に洗い出して正常化する必要があるだろう。田母神問題が大きくなることで、日本社会に潜在する歴史修正主義への「渇望」を呼び覚まし、かえってそうした言説が力をもつリスクはあるが、むしろ田母神氏が「自爆」を続けるこの機に膿を出してしまうべきである。

【関連記事】
教科書改竄の「黒幕」
教科書調査官の系譜~「さるのつぶやき」より
「トンデモ空幕長」爆発!
[PR]
by mahounofuefuki | 2008-11-11 22:58


<< 失政が続くほど政権が延命すると... 某ブログに対するTB禁止措置について >>