インド洋の給油支援と朝鮮への重油支援~ちぐはぐな日本外交

 インド洋での海上自衛隊の給油支援活動を延長するテロ特措法改正案が衆議院を通過した。報道によれば、参議院では2日間の委員会審議で採決し、今月30日にも衆院再議決により成立するという。河村建夫内閣官房長官が「今回は民主党の理解、戦術もあった」と指摘したように(共同通信2008/10/21 17:25)、民主党が昨年とは打って変わって事実上抵抗を放棄したことで、給油延長は確実になってしまった。

 言うまでもなく海自の給油活動はアフガニスタンにおけるアメリカ軍などの軍事行動の兵站支援であるが、現行の憲法解釈との整合性や日本の外交・安全保障上の必要性において重大な疑念があり、本来国会で徹底的に審議しなければならない問題である。インド洋派遣以来、海自の不祥事が多発していることとの関係も追及しなければならない。しかし、今国会では自民・公明・民主各党の「阿吽の呼吸」により極めて不十分な結果になりそうである。

 早期解散のためには仕方ない、民主党政権になればすぐに活動は中止になるだろう、などという考えは甘すぎる。小沢一郎氏はまるで所信表明のようだった今国会の代表質問でも「日米同盟」の堅持を声高に強調しており、今回の措置も「民主党政権」が日米軍事一体化路線を変更する意思がないことを内外に示して、財界やアメリカ側に「安心」を与える目的があったと見るのが自然である。万に一つ給油を中止しても、今度はアフガン本土への自衛隊派遣や恒久的な自衛隊派遣を可能にする新法制定という代替政策を採るだろう(*)。民主党への政権交代を期待する人々には日米安保体制の強化に批判的な人も少なくないはずだが、本当にそれでよいのだろうか?

 *ちなみに20日の衆院テロ対策特別委員会で民主党政調会長の直嶋正行氏は、国連憲章第42条の場合であれば海外での武力行使は可能とする見解を示し、「そういう方針にもとづいて政権を担当させていただければ、作業に着手するということになる」「状況によって憲法解釈を変えることはある」と明言した(しんぶん赤旗2008/10/21)。いよいよ馬脚を現したと言えよう。

 安全保障問題ではもう1つ注意を要するニュースがある。日本政府は朝鮮に対するエネルギー支援をオーストラリア、ニュージーランドなどに肩代わりしてもらう方向で外交調整しているという。「これまでにオーストラリア、ニュージーランドが1000万ドル(約10億円)ずつ、合わせて重油3万トン余りに相当する資金提供を伝えてきた。英国などとも調整中で、それでも足りなければ米国と韓国も拠出を検討する」(共同通信2008/10/21 18:35)という。

 もともとこの重油支援はアメリカ政府が要請していたもので、これを蹴ったのは皮肉にもアメリカ追従が「宿命」ではなく、日本政府にやる気さえあれば独自の外交政策を行いうることを証明しているが、それはさておき、一方で日本の安全保障上喫緊の脅威とはとても言えないアフガンでの「テロとの戦い」には、「米国の、米国の油による、米国のための無料ガソリンスタンド」というまるで封建時代に家来が殿様に提供した「軍役」のようなサービスを行い、他方で目の前の脅威である朝鮮の「核」を廃棄させるためのプロセスに必要なエネルギー支援では、諸外国に「肩代わり」させるというのは発想が逆転している。

 単純にパワーポリティクスの観点に立っても、6カ国協議に参加していない国々が重油支援に加わることで、朝鮮問題に対する発言権を強めることになり、しかも日本がこれら諸国に「借り」を作ることは決して得策ではないはずだ。日本政府は相変わらず拉致問題を理由に「圧力」という名の「何もしない」路線を続けているが、アメリカ政府の「テロ支援国家」指定解除の件を持ち出すまでもなく、とっくに拉致問題は現実の国際政治においては日朝2カ国間限定の問題であり、もはや拉致問題を核問題に連動させても無力である。しかも「肩代わり」によって朝鮮は結局予定通りの重油を受け取る。キム・ジョンイル政権は重油を受けるにあたって日本に「借り」を作らずにすみ、拉致問題でカードを切る必要が減退するのである。

 インド洋での給油支援と朝鮮への重油支援という2つの「油」に関する日本政府のちぐはぐなリアクションが示しているのは、外交のリアリズムの欠如である。この体質は政権交代程度ではとても治らないだろう。

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by mahounofuefuki | 2008-10-22 00:30


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