厚労省の労働者派遣法改正案はやはり「抱き合わせ」だった

 労働者派遣法の改正作業を巡って、弊ブログでは以前から、「日雇派遣」では規制強化を行う一方で、直接雇用申込義務の廃止や派遣期間の規制緩和などを盛り込む「抱き合わせ」の「改正」を警戒するべきであると指摘してきたが、今月12日の労働政策審議会(労政審)労働力需給部会に厚生労働省が提示した報告書案は、まさに恐れていた通り規制強化と規制緩和の「抱き合わせ」の内容であった。

 報告書案は厚労省のホームページに昨日アップされていたが、読んでびっくり。先日の一般向けの報道では「日雇派遣」許容業種が18に限定されたことばかりが強調されていたが、実際にはそれすらも完全に骨抜きが可能な内容であり、さらにどさくさに紛れてとんでもない規制緩和策が盛り込まれているのである。

 労働力需給制度部会 報告(案)*PDF
 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/09/dl/s0912-3a.pdf

 「日雇派遣」に関しては、1999年の派遣全面解禁以前から派遣が認められていた26業種よりも狭い18業種に限定するとなっているが、そんな表向きの制限条項を事実上無効にする一文が盛り込まれている(太字強調は引用者による)。
 「日雇派遣が常態であり、かつ、労働者の保護に問題ない業務等について、政令によりポジティブリスト化して認める」・・・「これ以外の業務については専門性があり労働者の保護に問題のない業務のリスト化など、適宜リストの見直しを行う
 政令!? 「日雇派遣」が可能な業種を法律ではなく政令で定めるというのである。これではいくら法律で規制しても、政府が「専門性があり労働者保護に問題ない」と判断すれば(その基準は不明瞭)、法改正なしにいくらでもリストに業種を追加できる。これは当初言われていた「日雇派遣」原則禁止方針を事実上骨抜きにするものである。

 これだけではない。もっと重大な規制緩和案が提示されている。常用型派遣の直接雇用申込義務を廃止するというのである。
 「期間の定めのない雇用契約の派遣労働者について、労働者派遣法第40条の5(雇用契約申込義務)の適用対象から除外することが適当である」
 周知の通り、現行法では派遣3年で派遣先に直接雇用申込義務が課せられており、それ故に主に製造業を中心に「2009年問題」(偽装請負から派遣に切り替えた労働者の多くが来年3年の期限を迎える)が起きているが、この問題で厚労省は財界言いなりの案を出してきたのである。

 先の国会で政府は派遣が一時的・臨時的な雇用形態であると改めて答弁していたが、報告書案のこの条項は、常用型派遣の正規雇用化を否定し、派遣の常用雇用代替機能を容認しているのである。これでは派遣は永久に派遣のままで決して直接雇用にはなりえず、そもそも労働者派遣法改正議論のきっかけとなった「ワーキングプア」を放置するに等しい。

 すでに「2009年問題」に対しては、厚労省指針の「クーリング期間」規定を悪用し、派遣期間3年になると取りあえず直接雇用に切り替えるが、3か月で再び派遣に戻すという脱法的なやり方で乗り切ろうとする企業が続出している。今こそはっきりと実効力のある直接雇用化を法的に義務づける必要があるのに、厚労省は労働者に背を向け、派遣法の制度的根幹を改悪しようとしているのである。

 常用雇用の代替機能の強化という点では次の条項も見逃せない。
 「期間の定めのない雇用契約の派遣労働者について、特定を目的とする行為を可能とする」
 要するに常用型派遣に関して派遣先の「事前面接」を解禁するというのである。これも以前から企業側が要求していた規制緩和策で、実際にはすでにさまざまな「抜け道」の方法で行われているが、こうした違法状態を既成事実として追認していると言えよう。特定の労働者を採用するのならば、当然それは直接雇用でなければならない。派遣はあくまで派遣先と派遣会社との間の契約であるにもかかわらず、派遣先が契約関係のない労働者の選別を行うなど矛盾以外のなにものでもない。

 報告書案には規制強化の条項もあるが、そんなものは吹き飛んでしまうほどの、とんでもない改悪案である。経営者側(特に派遣会社)はこれでも不満でいろいろと注文をつけているようだが、こんな内容では労働側としても葬り去るしかない。次の臨時国会が解散になれば、派遣法改正は先送りなるが、いずれにせよこんな「改正」を許してはならない。
 改めて先の国会で野党の改正案がまとまらなかったことが悔やまれる。労政審では経営者サイドの委員が入るので、どうしても折衷案になってしまう。やはり国会が主導して派遣労働者の地位を強化し、保護する法改正が必要である。日和見の態度をとった民主党には改めて猛省を促したい。

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【関連リンク】
厚生労働省:第120回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会資料
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/09/s0912-3.html
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by mahounofuefuki | 2008-09-17 00:05


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