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「議員特権」は問題ではない、「特権に見合った議員」を有権者が選ばないことこそ問題だ

 いつからか国会議員と言えば、利権まみれでダーティーで金持ちで胡散臭いというイメージが普遍化してしまっている。

 確かに最近も自民党幹事長の麻生太郎氏が、政治資金から年間3500万円も高級料亭などでの飲食に拠出していたことが報じられたように(しんぶん赤旗2008/08/14)、主に自民党を中心にそうしたイメージ通りの議員が相当な割合を占めているのは事実である。どうせたいした仕事もせず、大企業からの莫大な政治献金で肥えた議員なんかに、国税から歳費を支出することに反発を覚える人々が多いだろう。

 こうしたことを前提に、財政再建議論の中で国会にかかる経費を削減しようとする主張は根強いものがある。昨日の東京新聞(2008/08/13)「私説・論説室から」に掲載された「『永田町埋蔵金』もぜひ」と題する田畑豊氏の署名記事も、国会議員の文書通信交通滞在費の廃止を訴えている。
(前略) 福田政権は行政支出総点検会議を発足させるなど、「ムダ・ゼロ」を旗印にしている。何ら異論はない。ただ財宝のありかは霞が関だけではあるまい。
 ぜひ永田町埋蔵金も発掘してほしい。当然“土地勘”はあるはずだ。何がムダで、何がムダでないかの。
 まずは議員個人に毎月百万円支給される文書通信交通滞在費をやめたらどうか。実際は使途制限がない「つかみ金」(閣僚経験者)なのだから。廃止すれば、単純計算で年間約八十七億円が浮く。
 議員歳費や政党助成金のカットなども検討課題になろう。何より高給に見合った仕事をしているか-。これに答えられない議員こそムダのらく印を押されても仕方がない。
 国会議員の文書通信交通滞在費については、しばしば「第2の歳費」とか「使途不明金」としてやり玉に上がってきた。今年に入ってから新党大地の鈴木宗男衆院議員が、この文書通信交通滞在費の使用目的や使途報告義務の免除の理由などについて質問主意書を提出しており、これに対して政府は、使用目的は「公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため」、報告義務免除の理由は「承知していない」と答弁している。政府もわからないことに「怪しさ」を感じるのが一般的だろう。

 しかし、本来の国会の在り方や、国会と内閣の関係を考慮すれば、文書通信交通滞在費は必要不可欠なものである。

 まず、国会議員は行政官や司法官と同様、公務員なのだから、その職務にかかわる文書郵送や連絡にかかる経費は当然公費から支出されるべきである。これを私費に負担させるということは、たとえば官庁Aから官庁Bへの通達なり照会なりを個々の公務員が自腹で行うようなものである。民間企業で言えば、会社の電話代を社員に支払わせるようなものである。歳費とは別建てなのは、給料とは別の所要経費であるからにほかならない。

 次に、なぜ使途を報告する必要がないのかというと、議員の立法調査活動の独立性を担保するためである。本来、議員は歳費や立法事務費など公費のみでその活動をまかなうべきで、その場合、あまり細かく用途を決めてしまえば、それは活動の制約となる。政府が議員の活動に介入したり、あるいは政府に不都合な調査などが妨害される危険性が高まる。
 実際は議員への公費支出が高いのではなく、現実の議員の多くが公費以外の政治資金を外部から得ていることが問題なのである。特に企業・団体の政治献金は、本来「全国民」の代表者たる国会議員の地位を歪めており、これの廃止はすぐにでも行いたい課題である。

 「交通」については、すでに国会議員には列車やバスや航空機などの利用特権がある以上、二重取りではないかという疑念が生じるが、これは単に言葉上の問題で「文書通信交通滞在費」から「交通」の文字を削れば問題ではない(その分減額する可能性は認める)。いずれにせよ、本来議員が政府・行政から独立して、本気で国政の問題を調査・研究しようとすれば、当然カネがかかる。カネが不正に使われるリスクよりも、議員が資金難からたとえば政府が隠している問題を暴けないリスクの方を私は重視する。

 結局のところ、文書通信交通滞在費に限らず、議員特権があることが問題なのではなく、その特権に見合った仕事をする、真に主権者のために働く議員が選ばれていないことが問題なのである。議員が金持ちなのではなく、金持ちを議員に選ぶ有権者こそ問題なのである。前記東京新聞のコラムは、「高給に見合った仕事」をしているかと議員を批判するが、むしろ「高給に見合った仕事」をする議員を選んでいるのか有権者こそ責められるべきだろう。
 「無駄ゼロ」の掛け声で、議員の経済的基盤が弱体化させられ、貧乏な野党議員の活動が阻害されることを私は特に恐れる。議員定数の削減も議員特権の廃止も、結局は大企業の提灯持ちのような金満議員を喜ばせ、真に民衆に奉仕しうる議員の立場を弱くするという現実を忘れてはならない。

【関連記事】
「ムダ・ゼロ政府」構想は行政の責任放棄

【関連リンク】
国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律 - 法令データ提供システム
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO080.html
国会議員に渡される文書通信交通滞在費のあり方に関する質問主意書
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a169019.htm
衆議院議員鈴木宗男君提出国会議員に渡される文書通信交通滞在費のあり方に関する質問に対する答弁書
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b169019.htm
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by mahounofuefuki | 2008-08-14 22:44


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