「金持ち減税のための消費税増税」という真実

 自民党税制調査会は今日総会を開き、来年度税制改正の議論を始めた。すでに福田康夫首相が来年度の消費税引き上げ先送りを示唆し、与党内でも次期衆院選を睨んで消費税増税には手をつけない方向が大勢となっているようだが、先送りはあくまで先送りでしかなく、依然として社会保障目的化を口実とした消費税増税路線は変わっていない。

 今回の消費税増税議論の引き金は、来年度から基礎年金の国庫負担率が3分の1から2分の1に引き上がることだが、一方でずっと伏在しているのは、大企業の法人税と富裕層の所得税を減税しようという目論みである。「上げ潮」派の理論的支柱である竹中平蔵氏も、「消費税増税」派の代表格である与謝野馨氏も、法人税減税を主張しているという点では全く同じだ。庶民にはさらなる負担増を押し付け、巨大企業はますます優遇というわけである。

 額賀福志郎財務大臣は最近テレビ番組で「消費税率を20%前後とし、所得税や法人税を下げてバランスを取っているのが世界の姿だ」「働く人に(社会保障の)負担を任せたら日本経済は沈没する」などと言ったというが(共同通信2008/06/29 12:21)、これなど典型的なデマゴーグである。

 法人税率・負担額だけ見れば、確かに日本は欧米各国に比べて高いが、社会保険や年金など社会保障負担も含めれば、日本の大企業の負担はむしろ低すぎるくらいだ。垣内亮「法人税の空洞化に歯止めを」(『経済』2006年5月号)が国内総生産(GDP)に占める民間企業の税・社会保障負担の国際比較を提示しているが、スウェーデンが13.3%、フランスが12.7%、ドイツが10.2%、イギリスでさえ10.0%で、これらに対し日本は7.7%にすぎない(浦野広明「社会保障目的税を理由とした消費税増税のウソ」『週刊金曜日』2008年6月27日号)。

 また浦野論文によれば、消費税も日本の税率自体は欧州諸国に比べて極端に低いが、国税全体に占める消費税収の割合は23.0%で、イギリスの21.8%よりも高い。よく直間比率が直接税に偏っていると言われるが、実際は日本の直接税負担は決して高くはないのである。

 「日本経済が沈没」発言はさらに輪をかけて噴飯ものである。すでに目に見えて物価が高騰している中で、むしろ消費税増税の方が景気に悪影響を与えるのは確実だ。これはネット左翼の戯言ではない。民間シンクタンクのエコノミストが次のように指摘している。
(前略) 今後、消費税率を引き上げた場合の成長率押し下げ効果はどの程度見込まれるだろうか。三菱UFJ証券景気循環研究所の試算によると、2%引き上げでマイナス0.6%、3%の場合にはマイナス0.9%となり、駆け込み需要の反動減も加えると、1%前後、成長率が押し下げられる計算となる。(後略) (鹿野達史「消費税率アップへの検討開始 3%引き上げならGDP1%マイナス」『エコノミスト』2008年7月1日号)
 だいたい額賀氏はあたかも消費税が現役世代の負担を抑制するかのような詐術を用いているが、政府・与党は消費税率を引き上げる一方で、国民年金保険料を毎年のように引き上げ、厚生年金の保険料率も現行約14%から2017年度までに約18%まで引き上げようとしている。現実は消費税率にかかわらず、現役世代の負担は増えているのである。

 当ブログでは何度も主張しているが、現在の日本に必要なのは、社会保障給付削減でも保険料増額でも消費税増税でもなく、所得再分配効果を強化するための直接税(法人・所得・相続各税)増税である。一方で社会保障費抑制路線に対する反抗、もう一方で逆進税である消費税増税への批判を行うことで、直接税増税を議論の俎上に上げなければならない。朝日新聞(2008/07/01 03:01)によれば、相続税の増税を消費税の増税と合わせて行うことで、貧困層の不満をそらそうとする動きもあるようだが、消費税増税の露払いではなく、消費税増税の対案として真剣に検討するべきである。相続税が潜在的な財源たりうることは森永卓郎氏が指摘している(関連リンク参照)。

 税制問題はある意味、日本社会が新自由主義路線を継続するか、福祉国家路線へ転換するかの決定的岐路であると言っても過言ではない。まず経済的平等度を高めない限り、「高負担・高福祉」など夢のまた夢である。そこを見誤ってはならない。

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消費税増税問題リンク集

【関連リンク】
消費税増税論議を吹き飛ばす、相続税改正の大きなパワー / SAFETY JAPAN [森永卓郎氏] / 日経BP社
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/o/122/
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by mahounofuefuki | 2008-07-01 22:54


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