社会保障切り捨て路線の是非と生存権裁判

 生活保護給付の老齢加算母子加算の廃止・減額は憲法第25条の生存権保障規定に反するとして、受給者らが自治体を訴えていた「生存権裁判」のうち、東京地裁の老齢加算廃止違憲訴訟の判決が下った。結果は残念ながら原告の請求棄却であった。

 この訴訟は単に生活保護受給者の問題ではなく、「構造改革」路線のもとで強力に進められている社会保障切り捨て政策そのものを問う意味を含んでいたが、今回の判決は厚生労働大臣の裁量権を広く認め、事実上切り捨てを追認したと言えよう。おそらく控訴するだろうし、まだほかの各地の訴訟もあるが、当面は政府の社会保障費抑制路線を後押しする効果を与えよう。以前、当ブログでは「この訴訟の帰趨は今後の社会保障政策全般に影響するだろう」と述べただけに本当に残念だ。

 今年の経済財政諮問会議の「骨太の方針」も、相変わらず社会保障費の自然増分の2200億円削減を継続し、歳出削減を「最大限」続けるという内容になる見通しだし、「上げ潮」派の巻き返しで政府・与党内の歳出抑制批判の声も抑えられ、またしてもしばらくは生活に直結した公的給付が削られたり、負担が増えたりする状況が続くだろう。

 庶民への負担増となる消費税増税は先送りされたものの、「無駄遣い」削減とたばこ税増税では再分配効果はなく「庶民いじめ」に変わりない。以前も指摘したが、現在の政界における「無駄」とは、軍事費や需要の低い大型開発のような「本当の無駄」ではなく、専ら人件費と社会保障費を指す。人件費といっても高級官僚の給与が減るわけではない。だいたいが福祉や医療や教育などの民生分野で下の職員が有期雇用や民間委託に置き換えられるのがオチだ。行政能力を落とし、不安定雇用を増加させるだけである。いいかげん騙されるのはやめて欲しいが、相変わらず「居酒屋タクシー」のような目くらましで、またしても世論は歳出削減路線に流れてしまう。

 社会保障の切り捨てと非正規雇用の増大が「官製貧困」の原因である以上、これらをやめることが急務であるにもかかわらず、裁判所までが自民・公明政権の悪政を追認してしまった。改めて日本の司法権の存在意義を問い直す必要があるだろう。


《追記》

 原告団・原告弁護団が東京地裁判決について声明を発している。
 東京生存権裁判の判決について*PDF
 http://www.news-pj.net/siryou/pdf/2008/tokyoseizonkensaibangenkokudan-20080626.pdf

 「本日言い渡された本判決は、第1に、生活保護基準以下の生活を強いられている国民(とりわけ高齢者)が存在する事実に対して、この貧困を解決するのではなく、この貧困状態に合わせて生活保護基準を切り下げ、格差と貧困を拡大する政府の不当な政策を是認したものであり、第2に、老齢加算が果たしてきた重要な役割を何ら理解することなく、老齢加算が廃止されることで高齢保護受給者の生存権を侵害している実態から目を背け、行政の違憲・違法な措置を追認した不当なものである」という批判は正鵠を得ている。

【関連記事】
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【関連リンク】
全国生活と健康を守る会連合会【生存権裁判】
http://www.zenseiren.net/seizonken/seizonken.html
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by mahounofuefuki | 2008-06-26 17:35


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