トヨタの取締役の平均報酬1憶2200万円にもっと怒るべき

 この国のマジョリティーは、公務員の「厚遇」にはほんのわずかなものでも目くじらを立て、民間の劣悪な労働条件を「官」にも押し付けようとする。本来は公務員を叩くのではなく、「自分らも公務員並みにしろ」と「引き上げ」を要求すべきところを、とかく自己の「引き上げ」よりも他者の「引き下げ」を求めたがる。「他者の不幸」にしか「救済」を見出せないのが現在の日本社会の特徴だが、どうせなら少しは「官」の不公平だけでなく、「民」の不公平にも目を向けるべきではないか。

 トヨタ自動車が今日株主総会を開き、役員報酬を決定したという。以下、東京新聞2008/06/24夕刊より(太字強調は引用者による。漢数字をアラビア数字に転換した)。
 トヨタ自動車は24日午前、愛知県豊田市の本社で株主総会を開き、2008年3月期の取締役29人と監査役7人に対する役員報酬や賞与などの総額を、前期比約17%増の39億2000万円とすることを決めた。
 取締役の人数を増やしたことや08年3月期決算の純利益が過去最高となったことを反映させており、取締役の平均では、年間1人当たり約5%増の1億2200万円となる。(後略)
 役員報酬の総額が昨年よりも17%も引き上がり、取締役1人当たりでは平均1億2200万円。「天下り官僚」の退職金には血眼になる人々はなぜこれには黙っているのだろうか。

 税金でまかなう官僚の給与と一緒にするなと言う人もいるだろう。しかし、私に言わせればトヨタの空前の収益は多くの労働者の犠牲の上に立っており、本来労働者に配分されるべきカネを収奪しているにすぎない。税金はまだ公的給付という見返りがあるが、こちらはただ労働力を搾取され、過労を強いられ、賃上げも抑制されている。役員たちは巨額の報酬を得てウハウハだが、その陰で何人もの社員が過労死や病気に追い込まれたり、下請けや孫請けの企業が上から求められるコストカット要求に苦しめられ、さらに底辺では非正規雇用に押し込められた無数の人々が死屍累々と横たわっているのである。そういえば「秋葉原」の彼もトヨタ系企業に派遣で働いていた。

 藤田宏「大企業の労働分配率は52.3%」(『経済』2008年4月号)が、「法人企業統計」を用いて資本金10億円以上の企業の労働分配率(人件費÷付加価値費)を算出しているが、今世紀に入ってからは次のように推移している。
2001年 62.9%
2002年 60.0%
2003年 58.1%
2004年 55.3%
2005年 53.8%
2006年 52.3%
 一目瞭然。6年間で10%以上も低下している。一般に労働分配率を算出する際、役員給与も人件費に含むが、藤田論文では役員給与は付加価値扱いで、より経営の実態に即している。役員報酬の増加と労働者の給与の低下という事実は明白である。

 ちなみに余談だが、今日英会話学校「NOVA」の猿橋望元社長が、社員の福利厚生のための積立金を横領していた容疑で逮捕されたが、なぜかこういう「ずるい経営者」はバッシングの対象とはならない。以前、彼の趣味の悪い社長室について当ブログで批判したことがあったが、当時「あれが男の夢」というようなことを書いていたブログがあった記憶がある。不当な官僚には憎悪をむき出しにするが、不当な経営者は依然として「憧れの的」というわけである。いくら憧れても、なれるはずもないのに。

 「構造改革」の罪の1つは企業経営者のエゴを公認してしまったことにある。労働者には苦しみだけ与えて、自分らだけで富を独り占めする彼らを決して許すことはできない。

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by mahounofuefuki | 2008-06-24 21:05


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