米兵の婦女暴行の賠償金を肩代わりさせられる日本政府

 日米安保体制の歪みについては、最近もアメリカ兵の公務外の犯罪に対する一次裁判権(日米地位協定第14条及び第17条による)を放棄する密約を1953年に締結していたことが明らかになったように(東京新聞2008/05/18朝刊など)、もはや何でもありの無法状態であることが「常識」となっている。日米安全保障条約や日米地位協定の内容自体が不均衡で不正であるのに、それすらも厳密に守られていない事実を前にすると暗澹たる気分に襲われる。
 そんないびつな戦後日米関係史に新たな1ページを刻むニュースがある。朝日新聞(2008/05/19 20:13)より。
 防衛省は19日、02年に神奈川県横須賀市で米海軍兵から性的暴行を受けたオーストラリア人女性に対し、見舞金300万円を支払った。民事訴訟で賠償金を支払うよう命じられた米兵はすでに帰国。米側も支払いを拒んだため、日本政府が肩代わりをする異例の決着となった。

 同省によると、女性は02年4月に米兵から暴行されたとして、同年8月に東京地裁に民事訴訟を起こした。同地裁は04年11月、300万円の賠償を命じたが、被告米兵は裁判途中に除隊・帰国してしまった。

 日米地位協定では、米兵が公務外に起こした事件事故で賠償金が支払えない場合は米側が補償する仕組みだが、今回のケースは発生から2年以内とする米国法の請求期限を過ぎているとして、米側が支払いを拒否。このため防衛省は、日米地位協定で救済されない米軍被害の救済を定めた64年の閣議決定を適用し、見舞金の支給を決めたという。
 この事件が示すところは、アメリカ軍人は日本で婦女暴行をしても、事件から2年以上裁判を引き伸ばせば、日本政府が賠償金を肩代わりしてくれるということである。朝日の記事中にあるように、日米地位協定第18条により、駐留軍人の公務外の賠償案件についてはアメリカ政府に慰謝料支払義務があるが、これが全く遵守されていないことが今回改めて明らかになったのである。これを「逃げ得」と言わずして何と言えようか。
 あいにく私は1964年の閣議決定について知らないので、2004年の判決から3年半以上たった現在までにどういう経過で日本側が肩代わりするのに至ったのか、なぜ外務省ではなく防衛省が支払ったのか、判決の「賠償金」を「見舞金」で代償する法的根拠が何なのか、わからないことだらけだが、少なくともアメリカ政府が自国の国内法を盾に請求権を認めないのは著しく不当である。

 婦女暴行は親告罪で刑事上の捜査や訴訟そのものが被害者を鞭打つため、ただでさえ刑事事件になりにくい。しかも前述のように日本政府は一次裁判権を事実上放棄してしまっている。その上、民事訴訟でも賠償責任を問えないとあってはあまりにもやるせない。
 被害者が日本人ではないためか、あまり話題になっていないようだが、日本のアメリカへの従属ぶりがもはや極限にまで達している実例として見過ごすことはできない。

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【関連リンク】
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定 – 外務省*PDF
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/pdfs/fulltext.pdf
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by mahounofuefuki | 2008-05-20 17:47


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